『紅き翼と漆黒の双剣』




  第7話  〜薔薇の館〜

 


 蓮と聖は薔薇の館の前にいた。

「ここが薔薇の館よ。基本的に私達は昼食時間や放課後はここにいるね。さ、はいろっか♪」

そう言って、スキップする感じで跳ねていく聖と、それに引っ張られている蓮。

気がついたら手を繋がれていて少々恥ずかしかったのだが、今更突っぱねてしまうのもあんだかと思いそのままにしていた。

「ちょっと待っててね?」

と、聖がそのビスケットのような扉を開け先に中に入っていく。

「よ、みんな、アイドル聖ちゃんの登場だぞー」

「また、そんな事言って・・・・・・・・」

と、テンション高めな聖とは対照的に少々疲れた感じの顔をしている蓉子

「ごきげんようお姉さま、今日は何かあったのですか?」

「ごきげんよう志摩子、まぁ、ね」

志摩子と呼ばれた女性徒は微笑しながら聖に話しかけた。

「ってあれ?まだ2人しか居ないの?」

「ええ、江利子は令が武道場に連れていかれたから自分も行くと言って飛び出していって、祥子はクラスが忙しいらしく放課後に来るみたい。それで後の2人は・・・・・・」

と、蓉子が言いかけたところで

「きゃぁ、いったい何のようですか?」

と、女性の声が。

「あちゃ、紹介する前に鉢合わせしちゃったか」

と頬を掻きながら気まずそうな顔をする聖だが

「ま、いいか。ちょっとお客さんを連れてきてるんだ。」

そういって蓮の所へいく聖。

そうするとその場では

「どういうご用件でしょうか?」

2人の女性に睨まれてちょっと困り顔の蓮が居た。

「あぁ、祐巳ちゃん、由乃ちゃんその人は良いの。私のお客さんだから」

そう聖に言われて今度は2人組の方が困り顔だ。

「お客・・・様・・・・・・ですか?・・・・・白薔薇様の?」

と噛みしめるように自分に言い聞かせるようにつぶやく祐巳と呼ばれた少女、するといきなり

「す、すみません、まさか白薔薇様のお客様だとはつゆ知らず、ご無礼を申し上げました」

ブンっと音が鳴りそうな程の勢いで頭を下げたのだった。

「あぁ、気にしないで下さい。流石に女学園に男がいると驚かれるのは当たり前ですよ」

「そう言って貰えると救われます」

そう言って顔を赤くしてうつむく祐巳

「そうですね、さすがに少し驚きました。取り乱してスミマセン。」

由乃と呼ばれた少女も一緒に頭を下げた

「まぁまぁ、それまでにしてはやく中にはいろ?」

そう言って、2人組を押しながら、蓮にもなかに入るように薦める聖

聖、由乃、祐巳の後に蓮もビスケットのような扉を開ける。

部屋に入ると蓉子と志摩子は呆然としていた。

「聖、お客さんって・・・・・・・・・・あの方?」

志摩子も同じ事を聞こうとしたのかこくこくと頷いている。

「ええ、そうだけど?どうかしたの?」

「いや、どうもしないんだけどね、いきなりだったから驚いたのよ」

あっけらかんと答える聖にちょっと引きつった顔で話す蓉子。

「あの?やっぱり来たら拙かったみたいですね、では今日の所は退散します・・・・・・・」

「お待ちになって」「ちょっと待った」

蓉子と聖が同時に言った。

「「大丈夫ですよ(だよ)、ここにいてもらって構いませんよ(かまわないよ)」」

あまりのハモりぶりに志摩子と蓮は思わず笑っていた。

そんな笑っている2人を見て緊張が解けたのか祐巳と由乃も笑い始め、みんなに笑われている蓉子と聖はそれぞれ頬が赤くなったり、ふくれっ面をしていたりする。

「とりあえず自己紹介をしないとね、私は水野蓉子、3年生で赤薔薇様とみんなには呼ばれているわ」

と、仕切直しと言わんばかりの様子で自己紹介。

「私は藤堂志摩子と申します。聖様の妹で皆さんからは白薔薇の蕾と呼ばれています。」

ふわっとした微笑とともに喋る志摩子

「それで私は福沢 祐巳です。1年生でそこにいらっしゃる蓉子お姉さまの妹である祥子様の妹になっています。皆さんからは紅薔薇の蕾の妹と呼ばれています。先ほどは失礼しました」

頭を下げながら自己紹介という奇妙な事をしている祐巳

「私は島津 由乃です。今ここには居ないのですが江利子様の妹の令ちゃんの妹となっています。黄薔薇の蕾の妹と呼ばれますね。」

と、ここまで自己紹介が終わったところで5人の視線が蓮に集まる。

「今回、視察という形でこちらでお世話になることになった紅
蓮です。宜しくお願いします」

と簡単に自己紹介する蓮。

「こちらこそよろしくね、蓮さん、ようこそリリアン女学園へ」

「流石蓉子、固っ苦しいことこの上ない挨拶ね」

と早速ちゃかしはじめる聖に呆れ顔の蓉子

「さっき、祐巳ちゃんと由乃ちゃんがちらりと言っていたけど後3人、居るんだけどね。」

「多分江利子さんには会っていますよ。恐らく同じクラスです」

「え?蓮君3年生なの?そっかぁ、だから隣のクラスが騒がしかったのか」

蓮の言葉に少し驚いた様子の聖

「まぁ立ち話も何なので、どうぞお掛け下さい。」

「蓮君、私の隣においで〜。」

片や微笑みながら、片やにやりと不敵な笑みを浮かべながら椅子を勧めている。

流石に女性の隣に座るのは憚られたので、適当に空いている椅子に座ることにする。

「あ〜、蓮君照れ屋さんなんだぁ。」

「お姉さま、あまり人をからかうモノじゃないですよ、蓮様が困ってるじゃないですか」

と、紅茶を淹れていたらしい志摩子が戻ってきて、蓮に紅茶を渡していた。

「どうぞ、今日は紅茶しかなかったので紅茶になりましたが、よろしいかったですか?」

と、少々申し訳なさそうな顔で尋ねてくる志摩子に

「いえ、大丈夫ですよ。お心遣いありがとうございます」

と、微笑を浮かべながらお礼を言う蓮。

「「「はぁ〜」」」

と、それをモロに見た志摩子、由乃以外の3人からため息が流れる。

「この方、以外に・・・・いえ、かなりカッコいいわ・・・・・・・」

「うわぁ、あの時もカッコイイと思ったけど、改めてみるとね、相当なレベルよね〜」

「・・・・・・・・・・(赤面)」

「どうかしましたか?」

ため息と共に突然黙った3人を見て不思議に思った蓮はそう尋ねるが

「ま、まぁいいじゃない。乙女の事情ってやつよ、男はキニシナイキニシナイ」

との聖の意見に思わず頷く蓉子と祐巳だった

蓮が紅茶を飲み終えた所で昼食時間の終わりが近くなり、お開きとなった。

「まぁ、江利子と同じクラスなら言わなくても連れてこられるとは思うけど、放課後もここで集まってるから良かったらまた顔出して?」

そう聖に言われてちょっと迷った風な顔をした蓮だが

「そうですよ、また来て下さいね。それとお暇があればお手伝いして欲しいこともありますし」

と蓉子に言われ、素直に頷いた蓮だった。

そして、放課後まで一時解散となった。



とりあえず、蓮と蓉子たちの顔見せは無事終了。
美姫 「まあ、騒動大好きの江利子が居なかったしね」
だな。さてさて、放課後はどうなる事か。
美姫 「う〜ん、次回も楽しみです」
では、また次回で〜。



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