『紅き翼と漆黒の双剣』




紅き翼と漆黒の双剣  第13話  〜2人の役割〜




 
 今は放課後、昨日と同じ顔ぶれが薔薇の館に集まっていた。

「さて、おおまかな役割はこんなものね。お二人ともよろしいですか?」

そう、集まっている理由は今週末行われる学園祭で山百合会が中心となって行われる劇に

紅薔薇様提案、白黄薔薇様推奨で恭也と蓮が参加する事になったからである。

渦中の2人はもうあきらめているのか、真面目に話を聞いているが

「内容についてはおおむね理解できたので大丈夫なのですが・・・・・・・・・・」

恭也が言いづらそうにしている

「途中から入ってきた俺達が主役級の役というのはいかがなものかと」

蓮も戸惑いながらも恭也の言葉の続きを言う

「その点に関しては問題無いわ。容姿も問題ないし、昨日の試合を見ても2人がこの役をやって下されば最高の仕上がりになると思うわ。」

そう2人を説得するように喋っている蓉子

ちなみに他の会議参加者はとばっちりを防ぐためあえて何も突っ込んでいません

「まぁ内容自体は難しいものではないし、セリフも決まっているものはそんなに無いからあとはアドリブで入れてもいいし、あえて何も言わなくても良いし」

江利子は簡単に特徴を説明してくれたが2人はまだ腰が引けているようだ。

「まぁ蓮君も恭也君もそんなに身構えること無いって。」

いつもの様子で軽く言い放つ聖

「まぁやれるだけやってみます。ね、恭也」

「あぁ、やれるだけやってみよう」

こうして2人の参加が確定し、練習と言うことになった。


----------- 2時間後----------------


「二人ともなかなか良い感じよ。あと最後とその前の戦闘シーンはアドリブでお願いするわ」

「はぁ、見てるのも楽しいけど参加しても面白そうよね〜」

「祐巳ちゃんが慌ててるところ、可愛いわね〜」

薔薇様方は三者三様に感想を述べている
そこから少し離れた場所で

「紅、アドリブなんて言われているがどうする?」

「う〜ん、恭也はどうしたい?」

いきなり主役級にさせられた男性2人組の会話だ

「前回の続き・・・・・・・・というのはどうだ」

恭也の言葉に

「同じ事を考えてたみたいだね」

頷く蓮だった。

「ただ流石に2連チャンでやり合うのはちょっとな、だから最後の前・闘技場でやり合うときは真面目に、そして最後の方は話の流れ的に良い方が勝つという段取りで行こう」

「わかった、それで行こう。」

2人の打ち合わせも終わり、本日の練習はこれにて終了となった。

その後、薔薇の館で休憩しそれぞれ帰宅となる。

今回も帰宅が遅いため2グループに分かれて蓮と恭也が送っていくことになった。

今日に限って小笠原家の車が故障していたため両グループとも歩きになっていた。

ちなみにグループ分けは

恭也+紅薔薇ファミリー+志摩子

蓮+黄薔薇ファミリー+聖

と、こんな感じである。



「・・・・・・・・・」

恭也は嫌な予感がしていた。

いくら何でも都合が良すぎるのだ。

小笠原家にある車、恭也が確認しただけでも4台はあった。おそらくそれ以上に有るだろう。

それが全て故障なんて事がありえるだろうか?いや、ありえない事ではない

それが人為的に行われたのなら・・・・・・・・・・

学園から少し離れた場所、恭也はふとある気配に気がついた。

この先10mほど行った曲がり角にあきらかにおかしい気配が3つ

微妙に気配を隠そうとしている事から一般人では無いと分かる。

(さて、どうするか・・・・・・狙いは全員と言うところだろう・・・・・・・む、動き出したか・・・・・・・・・)

角まで残り8m程になったところで相手が動き出してきた。

残り5m程の距離になったところで

「ちょっとお嬢さん方、我々に着いてきていただきたいのですがご足労お願いできますかな?」

男の中の1人が話しかけてきた。

「できれば素直に着いてきて欲しいのですが・・・・・・・・・いかがでしょう?」

男の言葉を聞き、しばらく唖然としていた面々だが、意味が飲み込め男達の意図する事が分かったのか、みんな震え始めていた。

「なら私が行きます。だから妹たちには手を・・・・・・・・・」

そう蓉子が言おうとしたが、途中で恭也が押しとどめた。

「あん?あなたは何のつもりですか、せっかくお嬢さんが自分から行くとおっしゃろうとしてるのに」

「貴様らのような下郎にこの方達はもったいない。そもそも渡す気は無い」

ハッキリとそう言い、後ろを振り返り

「みなさん、ちょっと壁側を背にして目をつぶっていて貰えますか?すぐに終わります」

恭也の言葉に従う4人。

「なめてますね、たかが一学生が我々三人に勝てると思っているのですか?対外にして欲しい物です」

「そういうセリフは俺を倒してから吐け。もっとも負けることは無いと思うが。」

「くっ、なめやがって。後悔しやがれ!!」

先ほどまでの口調とはうって変わって乱暴な口調になった男が飛びかかってきた。

(ふむ、この程度なら小太刀を使うまでもない。下手に使って彼女たちに血を見せる事は無いしな)


   ※   ※   ※

所変わって蓮達のグループ

「ぐ、おっ・・!」

蓮の前には五人の男が倒れていた。

聖達はお互い手を繋ぎながら目をつぶっていた。

「さて、誰に頼まれた?」

彼女たちに聞こえないように男につぶやく

「いや、めんどくさいな。今から俺の質問にYESかNOで答えろ。あぁ、一つ断って置くが俺の前で嘘は通じない。」

視線に強く殺気を込めて蓮はそう言う。

「んで、どこから質問しようかな?」

蓮は口ではそう言っていたが、心の中ではもう質問は決まっていた・・・・・・・


    ※   ※   ※

視点戻り恭也側

「では、リスティさん後お願いします」

「OK、任せとけ。何か分かったら連絡するよ」

それはこちらの仕事だしな、そう言おうとしたリスティだが恭也の様子が少しおかしかったのでその言葉を飲み込み別の言葉を口にした

「んで、恭也何か言いたいことがあるんじゃないのかい?顔にそうでてるよ」

「リスティさんには敵わないですね。一つ調べて欲しいことがあります。」

珍しく仕事の事に関して歯切れの悪い恭也に違和感を覚えるリスティ

「リスティさん俺に言いましたよね?俺以外にもう1人男が来るって」

「あぁ、言ったね。あれは僕も当日に初めて聞かされたっけ。それがどうかしたのかい?」

「その彼、紅
蓮と言うのですが彼について調べて欲しいんです。彼と1度手合わせしましたが恐らく俺と互角かそれ以上の実力の持ち主です。その紅がなぜ女学園に視察に来ているのか、それも脅迫状が来ているこの状況で。偶然にしては重なり過ぎている気がします・・・・・・・・」

恭也の言を聞き思案顔をするリスティ

「紅・・・・・・蓮・・・・・・・・・どこかで聞いた覚えのある名前だね。確かに僕も気にはなっていたよ。今回の依頼の際にももう1人来るなんて聞かされていなかったし。わかった、その頼み引き受けるよ」

「ありがとうございます、ではお願いします。俺は彼女たちを送っていかないと行けないので」

そう言ってリスティに頭を下げる恭也
未だ壁の方で目こそ開けているが震えている祥子、祐巳、志摩子を幾分か冷静さを取り戻した蓉子が抱きしめている。

「みなさん、もう大丈夫ですよ。あとは警察の人達がどうにかしてくれますから」

出来る限りの微笑みを浮かべながら4人に話しかける恭也。
その恭也の微笑みを見て、落ち着いてきたようだが、冷静になったところで改めて恐怖が戻ってきたのだろう、志摩子の目に涙が浮かんでいた。

「大丈夫ですよ、志摩子さん」

それだけ言うと志摩子の頭に手を載せ、ゆっくりとなでてあげる恭也だった。

「さて、帰りましょうか」

恭也のその声にみな同意し、帰宅の路に着いた



   ※   ※   ※

「さて、終わりましたよ。後は警察の人がやってくれると思うので」

聖達にそう囁く蓮
その言葉を聞きみな一様にほっとした表情をする由乃と江利子は弱冠震えていた。

「あぁ、あと令さん?」

「はい、どうかしましたか?」

蓮からの呼びかけに反応する令
それから一呼吸ほどの間があって

ぱんっ!

大きくはないが乾いた音があたりに響いた
令はしばらく呆然としていたが、叩かれた事に気がつき

「いきなりなんですか!」

そう蓮に食ってかかるが、蓮の表情が怒っている様に見え、曇っているようにも見えた
そのため勢いを失い黙ってしまう

「・・・・・・何故、声を掛けられたとき自分1人で立ち向かおうとしたんです。相手は5人でした。令さん確かにあなたは強い。でもそれは剣道というルールが有るという前提でです。しかも今竹刀も持ってませんよね?令さんだって分かっていたはずだ、あそこで立ち向かってもすぐに掴まってしまう。そうなるとその後どうなるかぐらい想像するのは難しくないでしょう?」

そこまで言った蓮の表情にもう怒りはなく、ただただ曇っていくだけだった

「それは・・・・・・・・・・」

令もそのことは分かっていた。でもその間にみんなが逃げ切れればという考えがあったからあの時前に出たのだ。

「自分が囮となりみんなを逃がす、その考えは良くないです。あの場合相手は5人です。令さん1人では抑えきれないでしょう。まるで騎士のようだ、っと言えば聞こえは良いでしょうが・・・・・・・でも・・・・・・・・」

蓮はそこまで言って少し黙った。

「でも?」

その沈黙を破ったのは姉である江利子だった。
そこでふぅとため息をつき少し微笑みながら

「でも令さん、あなたは女の子です。無理をして騎士になる必要は無いんです。」

続きを言おうとしてはっと思い少し恥ずかしかったりする蓮

「それでももし、必要なら・・・・・・その・・・・・・・俺が皆さんの為の騎士になりましょう」

もうかなり顔を赤くしている蓮だが、その微笑みと先ほどの言葉の所為で女性4人はもっと真っ赤だった

(蓮さん・・・・・・・・・・・・・・)

(蓮君かっこいいかも・・・・・・・・・)

(ちょっと胸を撃たれる物が・・・・・蓮様・・・・・・・・・・・あぁ、でも令ちゃんを叩いたのは許せない気がするわね)

(やば、蓮君今のは格好良すぎだよ〜、それにあんなに顔赤くしちゃって可愛いんだから〜)

この沈黙に耐えられなくなった蓮が

「じゃ、っじゃぁそろそろ帰りましょう。あまり遅いと親御さんが心配されますよ。」

それだけ言ってスタスタと歩いていく蓮

「あれだけの事を言っておいて、その上頬まで赤くして。蓮君は女殺しだね」

聖のつぶやきに

「そうね〜、流石にあれだけ怒った後にあの顔は反則よね〜」

そう答える江利子。

「蓮・・・・・さん・・・・・・」

未だにぼ〜っとしている令

「令ちゃん?令ちゃん?帰っておいで〜」

と、一生懸命令を現実世界に引き戻そうと頑張っている由乃だった



     ※      ※      ※

ここは蓮や恭也達がからまれた場所から少し離れたところにあるビル、その屋上に1人の男が立っていた。

「ふむ、秒で全滅したか。やはり奴が来ているか・・・・・・・・」

そう男は呟く

「だが、もう片方の男は何者なんだ?動きを見たところかなり強い・・・・・・・・・・」

そこまで言って男は

「まぁ、所詮常人ではあの人には勝てないだろう。」

男は呟きながらそのビルから出ていくのだった










はい、紅蓮です

今回は結構シリアスな話になりました。

少しずつ蓮の見えない部分が見え始めてきましたね。

それと敵っぽい奴らも動き出しました。

さてさて一体このさきどうなる事やら(マテ

それにしても今回は蓮が臭いセリフを吐きまくってましたね〜

書いてる最中に自分でも臭いなと思ってましたが(笑)

微妙に自分の思い描いている蓮と実際に書いていく上で形成されていく蓮が

少しずつ離れていって居るような気がしないでもないのですが

それもそれで面白そうなので、このまま頑張りたいと思います(何をだよ)

というわけで

ではではまた次回にでも〜┳┳~旦( ̄*)




ちらりと垣間見せた敵の姿。
美姫 「果たして、どんな奴が後ろにいるのかしら」
そして、紅とは一体何者なのか!?
美姫 「これから一体、どうなるのかしら」
次回も楽しみだな。
美姫 「本当よね〜。次回も楽しみにしてますね〜」
ではでは。



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