某企業構造(ストラク)(チャ)内部。その中を複数の機械のようなものが銃弾を撒き散らしながら走り抜けていく。度重なるAIからの警告音を無視しながら寄って来るウィルス達をけちらして目的地まで一直線に。

目的の扉に差し掛かるとそれらは腕部を前方にかかげる。途端、僅かな揺らぎとともに先のものより厳つい銃器が出現した。

―――人型戦闘ツール、通称シュミクラム。ネット空間というものが普及し、それと同時に脳内に生体素子を埋め込むことで自我をネット空間に電子体という形で没入(ダイブ)することができるようになった未来。それに伴いネットは日常生活にまで深く入り込んできた。主要な情報はすべてデジタル化され・・・犯罪もまた電脳空間にまで及ぶようになった。こういった戦闘用のツールも現実世界で銃を手に入れるよりは遥かに簡単に手に入り、技術さえあれば年齢や性別に関係なく簡単に企業の顧客データなどの高額で取引されるものを手に入れられ大金が手に入る。ハッカーやデータ強盗(バンデッド)と呼ばれる犯罪者はかなりの数に及ぶ。

 

 

 

出現した銃器が咆哮する。着弾音を響かせながら扉の脇についている制御盤を破壊した。もはや見る影もなくなった制御盤はネットの法則(ロジック)に従い消滅する。盗人(バンデッド)の一人が扉に近付き、別の兵装を出現させ強引にこじ開ける。そして戦闘モードから高機動モードへとシフトさせ再び構造体内部を疾走し始めた。

 

 

 

幾つもある扉を兵装で強引に開け、無数に出現する防衛用のウィルス群を一掃しながら強盗達のシュミクラムはやがて構造体の最奥部のひとつ手前にある扉にたどり着いた。そして彼らの何人かが真っ先に奇妙なことに気づく。

―――ウィルスがまったくいない、のだ。ここに来る前にあれほど執拗にあらわれたというのに。

それぞれがやや困惑するがそれも一瞬。いないならいないで好都合。その扉を同じような手段でこじ開け、そのまま高機動モードを維持して最奥の扉に向かい一直線に走っていく。そして扉に近付くにつれ、何かが扉の前にたっていること気づいた。皆もまた気付いたのか静動をかけ、即座に戦闘モードに。それぞれの手に兵装を出現させ扉の前のシュミクラムを睨み付ける。

 

「警告する。君達のしている行為は違法行為だ。ただちに除装し、投降しろ」

 

目の前のどこか遥か昔に存在したらしい西洋の騎士のようなシュミクラムは、マニュアルどおりの警告を発した。仲間内の誰かが悪態をつき、それを合図に一斉にその銃口を目の前のシュミクラムにむける。そして相手が二度目の警告を完全に言い切る前に引き金を絞った。

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿が」 

騎士風のシュミクラムを駆る―――高町恭也はひとりごちた。

自分に向かって容赦なく浴びせられる弾丸を巧みに回避していく。敵の誰かが何か叫び、その肩口からミサイルが射出される。その間にも恭也は他のシュミクラムから飛来する弾丸を避け続け、しかし頭ではミサイルの迎撃を思考している。

形状、発射弾数からみておそらくはホーミング機能を備えたサーチミサイルだろう、と検討をつけた。一度はばら撒くように発射されたミサイルは一拍置いてすべてがクルリと反転し恭也に向かって飛んできた。通常ならば重火器で撃ち落すのが定石だがあいにくと恭也のシュミクラムにそんな装備はない。飛び道具ならば一応はあるが一度に撃てる数がミサイルをすべて迎撃するには到底足りない。

だというのに恭也はミサイル群に向かって疾駆する。そしてミサイルがすべて恭也へと肉薄し・・・・爆発があたりを覆った。

データ盗人(バンデッド)達はやった、と笑い―――いまだ爆発地点に反応があるのに気付いた。

これが電子体反応ならばさして気にもしなかった。だが反応が示すのはシュミクラムがそこに要るという現実。煙が消え去り、そこに残されたのは両手に二振りのビームセイバーをもつ騎士風の恭也の黒いシュミクラムだった。敵が呆然としている間にも恭也は駆動系を稼動させ高速でせまっていく。我に返った盗人達はあわててマシンガン、ガトリングガン、サーチミサイル、ショットガン等を照準もそこそこに発射する。恭也はそれをうまく回避しつつ確実に距離を詰めていく。そして一体の一番近い盗人のシュミクラムの一つに狙いをつけ・・・・急加速した。

 

 

恭也のシュミクラムの駆動系に組み込まれた特殊な機能が稼動し始める。あらかじめ組み込まれたプログラムに従い脚部に特殊なフィールドが形成され、スラスターが異常な出力をたたき出した。残像を残しながら超高速で移動する恭也のシュミクラムをセンサー系統があくまでスタンダードに近い盗人達のシュミクラムでは捉え切れない。

恭也はそのまま懐に飛び込み両手のビームセイバーを縦横無尽に疾らせ敵シュミクラムの耐久値をすぐさまゼロにし爆散させ、次々にシュミクラムを破壊していく。そして、とうとう最後の盗人のシュミクラムも恭也のビームセイバーで斬り刻まれ爆散した。そのシュミクラムを駆っていた者の電子体が床にたたき付けられるように落下した。

 

 

 

 

 

 

通常、シュミクラムが破壊される事はそのまま脳死(フラットライン)を意味する。だが稀に脳死をまぬがれることもある。その場合でも神経には多大な衝撃をともなうため病院行きは確定なのだがそれでも死ぬよりはマシだ。

落下した電子体の男は神経性ショックでまともに動けない体を、しかし必死に動かして自分達をたった一機で全滅させたシュミクラムを見やる。

そのシュミクラムは全身を黒に染め、ところどころが赤という禍々しい塗装を施してあり見るものの恐怖を容赦なくあおる。その姿を目に納めると同時に、男は驚愕の表情を浮かべた。頭の中にさまざまな単語が記憶から引っ張り出され・・・・・・とうとう限界に達したのか床に突っ伏した。

男は気を失う前、何事かつぶやいていたがそれは声にはならなかった為、恭也には聞こえなかったものの大体の見当はついていた。ため息とともに雇い主に連絡をいれるとともに恭也もネット空間から離脱(ログアウト)する。

 

 

 

黒騎士(ダークナイト)』、『(ソード)(オブ)(ソード)』、『不断(アブソリュート)(ガーディ)(アン)』・・・・・・・・・・・・・・

数在る彼を表す称号。男がつぶやいたのはその中で最も有名で、盗人やハッカー達の天敵の名前――――――

 

 

 

 

 

 

 

黒衣(ブライトネス)(オブ)双剣(ツインエッジ)

 

 

 

 





バルドフォースとのクロス〜。
美姫 「戦う世界が電子となっても、恭也は守るために戦うのね」
既に、幾つもの称号まで持っているし。
美姫 「やっぱり銃器は使わないみたいね」
近接戦闘と高速移動が主なのかな。
美姫 「みたいよね。あー、面白かった」
うんうん。
美姫 「それじゃ〜ね〜」
ではでは。



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