第一話『開幕の血』
――――――それは、ありえるはずのない物語。
それは紙片だった。悪徳に螺旋過った、悪夢に染まった物語の。
それは欠片だった。少年の、少女の歪み凶った想いの物語の。
だがそれは断たれたはずだ。心優しき神殺しの刃によって。荒唐無稽の英雄によって。
では、一体なぜ。それがここにあるのだろうか。
外なる神は微笑む。憐憫とも嘲りとも哀愁とも憎悪とも狂気とも愛情ともとれる微笑だった。
『やれやれ。こいつは本当にイレギュラーだ。だけどまあ、暇つぶしくらいにはなるかな僕もそっちにはあまり干渉できないかわりに我が愛しき怨敵たる彼らも干渉できない。
なにより意味がないしね。』
闇よりさらに深き深淵の中。燃えるように耀く三つの眼が浮かぶ。
『さて、そろそろ開幕みたいだ。いったいどんな具合に螺旋過ってくれるのか。悲劇かな?喜劇かな?それとも荒唐無稽なヒーローものかな?ふふふ。
じゃあ僕も、今回は一観客として楽しもう』
「ふう・・・。恭也は相変わらず容赦がないなあ・・・腰ぐぁ」
「そういうお前も容赦がなかった気がするんだが・・・・・?」
そう言って恭也はあたりを見回す。
道場のあらゆるところに深々と切れ込みがはいっている。・・・・というか主要な柱にだけ無傷だと言うのが奇跡的な惨状だった。
もっとも、その張本人は床にへばっているわけだが。その身体には無数の赤い斬戟の後が刻まれている。
とはいっても恭也が使ったのは刃落としされた刀だったので全て擦過傷であとはところどころが鬱血しているだけだ。
よろよろとふらつく身体に鞭を入れながら青年、は立ち上がった。その時にどさりとなにか分厚い本がの懐から落ちた。
本はパラパラと捲れながら――――――ページがほどけていく。解けたページが渦巻き序々に一箇所に集まりやがて人のような形へと変わって行く。
そんな異常な状態をみてもはもとより恭也も表情をかえない。恭也はどこか慣れた感じだった。
そうして、それは完全に人の形をとった。
そこにたっていたのは銀髪の少女だった。紫の衣を纏い、腰より少し上のあたりから虫の翅のようなものが広がり発光している。
だがすぐに翅は折りたたまれ収納される。どこかぼんやりとした少女の瞳は焦点をとりもどし恭也とを見て口の
端を少しだけ吊り上げ
「・・・・これで全戦全敗記録更新だね、」
と、こともなげにのたまった。
「だあ!人が気にしてることをさらりというなハヅキ!」
「・・・・・・やはり気にしていたのか・・・・」
ハヅキの容赦ない物言いに心の中で号泣しつつもは必死にハヅキに抗議という名の言い訳をするが暖簾に腕押しもいいところだった。
――――は魔術師。そしてハヅキはあの翅が証明するように人ではない。魔導書『セラエノ断章』の精霊だ。
恭也とが出会った切っ掛けは海鳴で起きた事件が原因。
怪異の増殖・・・というのだろうか。突然海鳴で怪奇事件が激増した。その頻度はあのロンドンに匹敵するほどだった。
そもそも海鳴には怪奇現象はあまり起きない。理由は不明だがおそらくは神咲の家の者がよく出入りするため自然とある種の結界が形成されるようになったのだろう。
だというのにこの頻度は異常すぎた。
もちろん神咲家もすぐさまその対応に入ったが如何せん事件の数が多すぎた。最初の方こそそうでもなかったが一番ひどい時は神崎家をかなりの数の動員をしても
追いつかないほどだった。原因は怪異が日を重ねるにつれて強くなりしかも数も増えてきたことだった。
そんな事情から、のようなフリーの魔導師にも依頼がいくようになったのだ。これに神咲家はあまりいい顔はしなかったが状況が状況だったためうなずくしかなく
そのおかげかどうかはわからないが現在ではなんとか収束の方向にむかっている。
「んじゃまあ、後片付けするかー」
「そうだな。それじゃあ俺は風呂先につかわせてもらおう」
は頷き恭也は道場の外へとむかっていく。
――――PiRiririririri
途端、出鼻をくじくように携帯がなった。
「すまん。俺のだ」
今時めずらしく恭也の着信音は普通の電話のものだったのですぐわかったのだろう。道場の片隅においてあった携帯の元まで小走りで駆けよっていく。
その間もとハヅキは壊れかけの壁などの復作業を黙々とこなしている。
「もしもし。どちらさまで――――!?」
『もしもし!?高町先輩ですか!・・・・お兄ちゃんが、お兄ちゃんが!!』
携帯の外にも漏れるぐらいの大音量で見知った声が道場に響く。その声にもぎょっとしてすぐさま恭也へと振り返り近付いていく。
半狂乱のように必死に兄の名を呼んでいる彼女を落ち着かせようと恭也は電話にむかってかたりかける。
「とにかく落ち着くんだ未亜さん。大河がどうしたんだ?なにが起きた?」
『・・・・帰り道で・・・・・道に、赤い本が、落ちててっ。お兄ちゃんが、それにさわったらっ・・・・!血みたいのが!』
「「!!」」
その単語を聴いた瞬間恭也とは顔を見合わせ、理解する。
「――――いまからそっちにいく。大河はまだ無事なんだな?」
『はい・・・・!でも、お兄ちゃん苦しそうで・・・!』
其の後、恭也は二三言いってから携帯をきった。
「・・・・・コンビニの近くの通りだな。魔力濃度が異常だ。結界化してる」
恭也に顔を向けながらそう言うとそのままハヅキを伴って道場の出口へと駆けて行く。無論、その隣には恭也も。
靴を履くと同時にと恭也は道路へと疾走。道路にでるとあたりを見回し人がいないのを確認して
「ハヅキ、たのむ」
「オーケイ、マスター!」
そう言うと葉月の身体から出て来るアザトースがぐるぐると円を描きながら展開し、それがハヅキの身体を覆っていく。
しかしその変化も一瞬。次の瞬間には機械と有機が混ざった飛行物体がそこにあった。
「恭也、これもっとけ。じゃないと死ぬぞー」
「・・・・、わかったからそんなににこやかに言うな・・・」
恭也は苦笑しながらそう言うと目の前のソレに乗る。
そして
「・・・・・・飛ばすよ!」
ハヅキの声とともにそれは光と化した。
もはや風景など存在しない超光速の世界。普通の人間ならば一瞬で焼き尽くされてしまうであろうその世界を三人は疾る。
駆け巡る魔術理論。概念的、物理的側面からの二重構造の加速機関。爆発的な推進力は光速の壁すらたやすく踏破する。
そして一瞬という言葉すら生ぬるい時間で目的地に到達した。眼下に広がる血のように赤い結界。
恭也とは一瞬たりともためらわずその場で遥か下数百メートルの地面に向かって飛び降りる。命綱もパラシュートも無いスカイダイビング。
次いで襲い掛かる重力と慣性の力。恭也より先に飛び降りたは落下コース上に五芒星形の印を展開。二つの力を緩和する。
やがて赤の結界が間近に迫り恭也がの前に出る。そのまま腰に携えた二刀を抜剣する。あと100m、80、50、20・・・・・0!
「はああああああ!!!!」
構えた二刀を思い切り結界に向かって振り下ろす。剣がうっすらと金色に輝くとともにガラスの様に盛大に砕け散った。
が、落下速度はほとんど衰えない。そのまま落ちれば恭也もも肉塊と化すだろう。
が地面に向かって手を伸ばす。今度は地面が淡く光り、再び描かれる五芒星形の印。それが大河を拘束している血を一瞬霧散させ同時に落下とは逆ベクトルの力を発し
物理概念のもと落下速度を打ち消す。
そのまま恭也は神速状態に即時移行。モノクロが支配する世界を駆け抜け左右に構えた刀を縦横無尽に振るい、再び顕在化しかけていた血の怪異を今度こそ断ち斬った。
「・・・・。どうだ?」
「ん。ああ、多分大丈夫だろ」
辺りを見回しながら地面を触ったりして軽く走査していたは恭也に向き直りそう告げる。
・・・・というよりも走査の意味自体があまり意味がない。あの怪異は突然顕われ、倒すと消えるがまたすぐ顕われる。どこかに本体がいるという説が今のところ有力だが
居場所の特定にはいたっていない。あれ自体になんらかの意思があるのであればそうとう頭が切れるヤツだ。
「大河、大丈夫か?」
「あ、ああ。なんとか」
恭也が声をかけるもいつもの大河らしからぬ歯切れの悪さだった。おそらくは目の前でおこったこととと恭也がやったことに対して頭がついていっていないのだろう。
なので
「大河ぁー、お前いくら女に餓えてるからってまさか本にまで欲じょ」
「ちっがああああう!!俺は女の子は大好きだがそこまで堕ちてないっ!それに餓えてなんか無い!」
「そっかあ?んじゃ、前に頼まれた子。紹介しなくてもいいんだな?」
「え?あ?いや、それとこれとは違うというか是非とも紹介してください!」
「・・・・・・お・に・い・ち・ゃ・ん!?」
「未亜さんも大変だな・・・・」
の一言からさっきまでの妙な空気は消えた。いつものこのメンバーでのやりとり。がからかい恭也もそれに便乗して過剰反応した大河が未亜に怒られる、そんないつもの
やりとり。日常の一幕。
「。やっぱりだめだったよ」
いつの間にか戻ってきていたハヅキが延々と未亜に説教されている大河を尻目にに告げる。
「そうか。ご苦労さん」
言いながらポンポンと頭をなでてやる。表情はあまりかわらないがどことなく嬉しそうだ。
「、一応那美さんに連絡しておいたからこっちも終わった。あの本は一応回収してほしいとのことだ」
「ん。了解」
そう言って大河と未亜のもとに恭也とハヅキと一緒にいく。例の本は未だそこにおきっぱなしだった。
「ほら、大河。帰るぞ」
恭也がそう言いが落ちている本に手を伸ばす。
「しっかし、なんだったんだか。この本」
大河が足元の本に手を伸ばす。が取ろうとしていたのに気付いたのだろう。にしてもさっきこれのせいでとんでもない目にあったというのに。とんでもない図太さである。
「あ。お前あんまうかつに触るなよ?てーかさっきのもう忘れたんか」
「平気平気。もう大丈夫なんだろ?」
大河の言葉に見ていた恭也はまったく、とため息をつきも苦笑する。
そして大河の手が、本に、触れた。
――――さあ!いよいよ本編のはじまりだ!長いプロモーションは終わり今度こそ幕が開く!
――――さあ!さあ!さあ!はじめよう!はじまりだ!見せておくれ!喜劇を!悲劇を!惨劇を!
キイイィィィンとワケノワカラナイ声が脳髄に突き刺さる。
「「「「「!!?」」」」」
それとまったく同時。足元に血のように赤い、いや血で描かれた回転式魔法陣が描かれる。
「!これは!」
「っく!だめだ、間に合わな――――――――!」
ハヅキの声にとっさに転移術式を展開しようとするが間に合わず――――全員が、血に飲み込まれた。
あとがき
・・・・・・ああ、やってしまいました。リリカルすらまだ終わってないのに・・・・。
白姫&黒姫「バカ」
返す言葉もございません・・・・いや、他の作者さんのDSクロスがおもしろすぎて・・・・
白姫「このあとがき形式もなんかアレですし」
あー、やっぱ楽しそうだったからやってみたいなって。
黒姫「まあそれぐらいはいいだろう」
ありがとう!私はとても嬉しいよ!
白姫&黒姫「まあちゃんと連載できれば」
うぐ。そうでした・・・・精進します。
白姫「ではでは。ちょっとした補足をしますね」
黒姫「この小説はデモンベインもクロスっぽいですが基本的にはDSDととらハ(恭也)とのクロスにオリキャラが出るというものです」
あとこの小説はいわゆる「名前変換小説」と呼ばれるものです。他にも「夢小説」とかよばれています。
最初に出てくる苗字、名前、名前(カタカナで)に自分の名前なり好きな名前を登録するとデフォルト部分がそのとおりに変化します。
都合上毎回入力しなければいけませんが面倒な人はデフォルトで読んでいただいてももちろん問題ありません。入力しなければデフォルトのままですので。
白姫&黒姫「お楽しみいただければ幸いです」
それではこの辺で。ではーーー
白姫&黒姫「・・・・・ところでこのあとがき形式にした本当の理由、教えてください」
う・・・・・いや、その。この形式の作者さん達のあとがきががおもしろかったのもなんだが
白姫「が?」
浩さんとこの美姫さんが素敵すぎました・・・・・・
白姫&黒姫「馬鹿」
なぜだぁぁぁ!
美姫 「な、何よ、急に叫び出して」
何故、お前の人気がこんなにも高いんだ!?
美姫 「それは、この美しくも高貴な私の…」
にしても、凄いな〜。名前を入力して話を読んで行くなんて。
美姫 「って、人の話を聞きなさいよね!」
ぶべらっ!
美姫 「でも、まあ確かに凄いわよね。こんなのが出来るんだ〜」
いやいや、本当に面白い。
美姫 「お話の方も、どうなるのか楽しみだしね」
ああ。恭也にも何かありそうだし。
美姫 「次回が楽しみね」
うんうん。
美姫 「それじゃあ、次回を待ってま〜す」
ではでは。
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