短編SS 「現実?」

 

 

 

 

「私、貴方のことが好きです」

 

「・・・・は?」

 

何なんだこの状況は

 

放課後の屋上

 

沈もうとしている夕陽を背景に、正に1枚絵にもならん、というような告白に俺が返したのは間抜けな気の抜けた返答だった

 

だって考えてもみてくれ

 

俺、即ち「林 祐介」は何の変哲もない普通の高校生だ。

 

美形じゃないのかって?生まれてから一度もそんなことを言われたことはない

 

成績も中の下のいったところ、運動神経も成績に同様

 

そんな超平凡といってまったくまごうことのない俺が

 

どうして、学園一美人と言われる「佐藤 真理」に告白されるのだ?

 

・・・待て、悪戯の可能性も十二分に有り得るじゃないか

 

騙されるな、恐らく周囲に男共が待機していてスキを見て「や〜い、騙された〜」とか言いながら出てくるに違いない

 

とゆうことは、目の前の佐藤真理もそいつらとグルか・・・?

 

それはちょっと整合性がないな、噂で聞く佐藤真理の性格はそのようなことをしない感じだが

 

いやしかし、噂が間違ってる可能性も否定できない

 

「・・・どうかしましたか?」

 

急に周囲をキョロキョロと見だした俺に佐藤が怪訝そうに問いかける

 

「いや、その、誰か隠れてるんじゃないかと思って・・・・これって悪戯だよな?」

 

「え?」

 

「だってそうだろ?あんたみたいな超美人で学園のマドンナとも称される人が超々平凡の俺を好きになることなんてあるはずがないじゃないか」

 

それを聞いて、一瞬佐藤は唖然とした目で俺を見たが、すぐに表情を笑顔にして言った

 

「証明してあげます」

 

「え?」

 

証明?どういうことだ?

 

佐藤はとまどう俺を無視し、それが当然であるかのように近付いてきた

 

触れ合うまでに体を近付け、顔を上に向け、背伸びをして

 

―俺にキスをした

 

俺は目を閉じることも出来なかった

 

その閉じていない目の前に、学園一美人と言われる女性の顔が存在している

 

唇に柔らかい感触

 

息遣いが聞こえる

 

その息が甘く感じる

 

長い長い長い永い、永遠に思える一瞬

 

これは夢ではないのか?

 

そうか、そうだよな。夢に違いない。

 

こんな都合の良い事が俺のような平凡な人間に起きるわけがない

 

目を覚ませば布団の中で「ふう、やっぱり夢だったか」と呟きつつもいつもの平凡な日常が始まるに違いない

 

よし起きるぞ、起きろ俺。起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ―

 

あれ?おかしいな、目が覚めない・・・

 

「・・・どうですか、これで私が林くんのことを好きということがわかりましたか?」

 

俺が目を覚まさないことに悩んでいると、いつの間にか少し距離を取って佐藤が微笑みながら言った

 

夢にしては妙にリアリティのある夢だ

 

とりあえず、定番として頬をつねってみる

 

「いひゃひゃひゃ!」

 

「・・・何をしているんですか?」

 

「おかしいぞ、夢なら痛くないはずなのに頬をつねったら痛かった」

 

「もう・・・信じてください!私は貴方のことが好きなんです!」

 

そう叫んで顔を真っ赤にしてうつむく佐藤

 

むう、これはマジなのか?いや、「ドッキリカメラです!」と書かれた看板を手に持ってる男が潜んでるという可能性はまだ否定できな・・・

 

「ドッキリカメラとかでもありませんから」

 

俺の言動を予測して佐藤が言う

 

違うのか・・・

 

「しかし、あんたみたいなのが俺を好きになる理由が・・・」

 

「人を好きになるのに理由が必要なんですか?」

 

「・・・悪い、愚問だったな」

 

「で、あの、その・・・返事を・・・」

 

語尾を小さくしながら、佐藤が顔を真っ赤にしていう

 

なるほど、そういう仕草は殺人的に可愛い、さすが学園一だ。

 

しかし―

 

「まぁ、結論として言うと、俺はあんたのことを好きではないな・・・」

 

事実だ

 

ここで佐藤のことを好き、と言い返し付き合うことは容易だ

 

しかし、好きでない付き合いはいつか破綻する

 

破綻しなくても俺は俺自身にも佐藤にも「自分は佐藤が好きである」という嘘を永遠に通さなければならない

 

そんな面倒なことはごめんだ、嘘は付いたなら嘘を付き続ける責任と義務があるのだ

 

軽々しくするものではない

 

「そうでしょうね・・・、さっきの言動とかから解ります」

 

少し悲しそうに佐藤が言う

 

俺も惜しいとは思うが、仕方はないことだ、と思った

 

しかし、次の佐藤の言動は俺の想像を逸脱していた

 

「だから、貴方を振り向かせて見せます」

 

「・・・・はい?」

 

「とりあえず、友達以上恋人未満からスタートってことでよろしくお願いしますね」

 

「え、あの、ちょっと・・・・」

 

どうゆうことだ・・・状況の変質に頭が付いていかない・・・

 

「あ、もうこんな時間。ではまた明日お昼に会いに行きますので」

 

そう言うと佐藤は屋上から出るときに「さようなら」と言葉を残し去っていった

 

「えーっと・・・・」

 

屋上には混乱しきった俺が残された

 

状況の整理

 

学園一の美人で性格も抜群と言われる佐藤が、超平凡の俺に告白

 

俺が拒否すると、佐藤が「俺を振り向かせる」発言

 

駄目だ、わけわからん

 

とりあえず俺は「まぁ、なるようになるか」と呟き、そして帰ることにした

 

更に明日は混沌の日になるということも知らずに

    

   


あとがき

 

思い付きで短編かきました

きりしまです。何の脈絡もなくまたしてもオリジナルです

読んでくれてる人がいるかどうかはわかりませんが、気分によって続いたり続かなかったりします

新式日常も鋭意製作中であります。ではまた次のお話で

     

      




新式日常とはまた違った、これまた何処にでもありそうな物語の一つ。
美姫 「人が人として生きていく上で、当たり前のように存在している日常」
そんな日常の一旦を垣間見るようなお話でした。
美姫 「何処となく甘酸っぱい青春の一ページ」
胸がほんのりと温かくなるような…。
美姫 「そんなほのぼのとしたお話をありがとうございます」
……何か、感想がいつもと違う感じだな。
美姫 「確かにね。このお話の影響?」
ふむ。たまにはこんな感じで進めるのも良いかな〜という、気紛れだな。
美姫 「ああ〜。折角、珍しいパターンで来たのに、その一言で台無しよ」
お、俺が悪いのか?
美姫 「他に誰がいるのよ」
……ま、まあ、兎も角。
美姫 「誤魔化すな!」
まあまあ。兎も角、続きがあるのか、ないのかという事ですが…。
美姫 「続きがあるのなら、楽しみにしてます」
ではでは。



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