この話は(ってか私の書く作品は)ALLエンド+オリジナル設定です

例えば桜は遠坂のままだったりします

読むに当たってそれでもいいと言う人だけにしてください

















「シロウ! 頑張ってください」


「士郎! 負けたらどうなるかわかってるわよね」


「先輩ならきっと優勝できますよ!」


「衛宮! 私の目が確かだったことを証明してよね」


「士郎〜! お姉ちゃんは信じてるからね〜!!」


「ああ。任しとけ」


ここ何年か着ていなかった

でも、着慣れた袴で身を包み片手にこれも使い慣れた弓がある

何となくわかるかもしれないが俺は弓道の大会に出ていた

その応援にセイバー、遠坂、桜、美綴、藤ねぇが来てくれていた

一成や慎二は用事で来れないらしい

一成はもちろん慎二はいつも通り嫌味を言っていたが言外で頑張れと言ってくれていた

何だかんだで良い奴だからな


「それにしてもこうなるまでトントン拍子だったな」








Fate/stay night



幸せのあり方










話は一週間前


「やっぱり納得できないわ」


最近日課になってきた屋上でのお昼ごはんの最中

いきなり遠坂が不満げな表情で声をあげた


「……えっと何が?」


「姉さん、ちゃんと何がか言ってください」


俺と桜が聞き返すと遠坂は俺に指を突き刺してきた

行儀悪いぞ


「何で士郎が評価されないの! ってか何でゴミ(間桐慎二)何かが人気あるのよ!!」


「いや、別に俺は評価されるような所ないし、慎二だって根は良い奴だぞ」


ただ単に気分屋なだけである

慣れさえすればおもしろい奴だし

それに俺にはない派手さと言うかそういうものがある

だから俺より人気があるのは当たり前だと思うが


「確かにそれは納得できないことですね

でも、いつもならこんなこと心の贅肉だって言うのに今日はどうしたんですか?」


「うん。それは俺も思った」


遠坂凛は生粋の魔術師だ

半人前な俺や正式な指導を受けてない桜ならおかしくはないが

遠坂が言うなんてありえないハズだ


「そうよ。心の贅肉よ

でも、でもねそこら辺にいる女子生徒が私と士郎がいるのを見て似合わないって言うのよ」


「…………それってどこがおかしいんだ?」


遠坂は学校では優等生で通っている

家訓でもある、“いつでもどんな時でも余裕をもって優雅たれ”を存分に行っている

男子生徒からは高嶺の花の存在である

唯一、一成だけが女狐と呼び嫌っている

かくゆう俺も聖杯戦争前まではその他大勢の男子生徒と一緒であった


「姉さんは学校では完璧ですからね」


「何か含みのある言葉に感じるけどいいわ

それより、何とかして士郎を学校のみんなに認めさせることは出来ないかしら」


「俺は別に認められなくてもセイバーや遠坂、桜達が認めてくれたらいいよ」


俺は自然と二人に対して微笑んでいた

聖杯戦争前はこんなに自然に笑えなかったと思う

でも、今の俺は少しずつだが自分の事を見ることができてきた…………と思う

セイバー達のおかげだな


「ん? 二人ともなんで顔赤くしてるんだ?」


「べ、べべべべ別になんでもないわよ! ねえ桜!」


「は、はははははい!!」


「そ、そうか」


何故か壊れたように大声をあげる二人によくわからないが頷いといた

ってかそんなに慌てて食べてると喉に詰まらせるぞ


「ん! んんん!!」


「あっ姉さん! お茶! お茶!」


「ハァハァハァ…………ありがとう桜」


「えっと、もしかしてコント?」


冷や汗を流しながらとりあえず聞いてみた

いや、だってあまりにも遠坂らしくないし

桜だって焦っていたのかお茶探すのにカバンをかき回していた

正直言って全然優雅じゃない


「ウルサイ! もう、話戻すわよ。ったくあんたが不意打ちするからじゃない」


「何か言ったか?」


「言ってない! とりあえず士郎の評価をどうやってあげるだけど、桜何か案ない?」


「案ですか……先輩の得意なこと、修理と家事…………は無理ですね」


「そんなんじゃ無理わよね。もう士郎ほかに何かないの?」


俺に聞かれてもな

そもそも何で遠坂はこんなに拘るんだ?


「う〜ん、これといってないぞ」


「…………いっそ魔術でも使ってみる?」


何を言い出すんだ遠坂は

まぁ、冗談なんだろうけどそれはさすがにマズイ

それに、俺が使える魔術と言ったら強化と投影だけだ


「そりゃ強化を使ったら陸上とかで優勝できるだろうけど俺は嫌だぞ

いくら俺が魔術使いと言ってもみんなの努力をそれ一つで無にするのは」


「わかってるわよ。それと一つ言っておくけど士郎なら普通の状態でもかなり足速いわよ」


「そういえば前、陸上部の部長と短距離で勝負して勝ってましたね」


そうなのだ

俺は先月陸上部の部長(どうやら遠坂姉妹に憧れている)に勝負を吹っかけられたのだ

負けたら遠坂たちから身を引けって言われたから魔術なしで全力で走って勝ったのだ

後から一成に聞いた話では彼は県の中でも五指に入るスプリンターだったらしい


「でも、あれは相手が油断していたからだろ」


実際相手は最初は少し手を抜いていた


「わかってるわよ。でも士郎は自分を卑下しすぎよ」


「そうですよ。先輩はいつも人を立てすぎなんです」


何故俺が攻められるような眼で見られるんだよ

セイバーにも良く言われるけど俺ってそんなに卑下してるのか?


「う〜ん、わかった。今度から気を付ける」


「よろしい」


「でも本当にどうしましょうね」


「何が?」


「士郎をどうすれば目立たせることができるかってことよ…………って綾子!?」


「「「いやいや、さっきからいただろ(いたわよ。いましたよ)」」」


三人の同時ツッコミに遠坂はうっとなった

いつも通りうっかりがでたんだろうな


「わ、わかってたわよ。それで綾子は何の用事?」


屋上には基本俺たちしかいないためここに来るということは俺たちの誰かに用事があると言うことだ


「いや、ちょっと遠坂に…………って桜ほうに用事があってきたら何かおもしろいこと話てたから聞いてたんだ

衛宮の評価を上げるっていうのは私も賛成だよ。それにしても遠坂はともかく桜は何で気づかないだろうね」


「ちょっと待て。いつから話を聞いてた?」


「遠坂が衛宮の評価を上げたいって言ってたところからよ

まぁ、聞き取れない部分も多かったけど大筋は間違ってないでしょ?」


どうやら魔術については聞こえてないみたいだな


「ええ。それで気づかないって何をですか?」


「そうよ。私達がわからないのに綾子がわかるって言うの?」


遠坂、その発言は少し恥ずかしいぞ

実際、桜は顔を赤くして俯いてるし

美綴は美綴でニヤニヤと俺と遠坂を交互に見てるし


「いやいや、もうそこまで仲が進んでるとねぇ」


どうたら遠坂も気づいたらしく顔を赤くした

けれど、桜と違って俯くことはなく美綴から視線をはずさない


「そ、それより綾子は案があるんでしょ」


「まぁ、それは今度聞くことにして。衛宮って言ったらやっぱり弓道でしょ」


「「ああ〜!!」」


弓道…………確かに特技の一つではあるな

聖杯戦争であいつはアーチャーだったし才能は少なからずあるんだろう


「でも、弓道は「盲点だったわ」遠坂?「私が真っ先に思いいたらなかったらいけなかったのに」桜?」


「桜、悔しいのはわかるけど失態は失態あきらめましょう

それより今は方法が見つかったことを喜ぶべきよ」


「だから俺の話を「そうですね。私早速藤村先生に聞いてきます」


は、話を聞いてもらえない

桜行っちゃったし藤ねぇなら絶対OKするに決まっている


「衛宮あきらめて弓道部に戻ってきな。ちょうど男子の大会も来週あるしね」


「…………ずっとやってなかったんだぞ。一週間でどうにかなるわけないだろ?」


「私の眼をなめてもらっちゃぁ困るよ

何となくだけどあんたは昔より数段上にいる。ちょうど遠坂と一緒にいるようになった頃から」


美綴の言葉に俺と遠坂は驚きを隠せなかった

まさか、そこまで見抜かれてるとはさすがに思っても見なかった

実際、弓自体はあまり握ってはいなかったが集中力などは格段に上がっている

多分だが、昔の時より腕は上がっていると思う


ず・い・ぶ・んと士郎について詳しいみたいね」


うおっ!

何故か遠坂から異様なプレッシャーを感じる

いつもつけてる優等生の笑顔の裏には赤いあくまが潜んでいるに違いない

ってか一般人である美綴にその状態はヤバイんじゃないか!?

俺みたいに無駄に頑丈な奴なら大丈夫だが


「いやいや、私だって人並みには嫉妬するんだよね。自分でも意外だったよ」


嫉妬?

美綴が誰かに嫉妬してるってことだよな


「ま、まさか綾子まで!?」


俺が意味を理解したと同時に遠坂が焦ったように大声を上げた

俺たちの前では結構普通な遠坂だが今日は普通を通り越しておかしい


「この学校で一番先に目をつけたのは私なんだよ」


「確かにこの学校では綾子が先だけど私は中学の時から気になってたのよ」


「そういう言い方をしたら藤村先生が一番になっちゃうでしょ?」


よくわからないが二人の間に火花が散っているように見える

いったい何にたいして言い合ってるかわからないがものすごく逃げ出したい

でも、一歩動いたら標的が俺になるような気がして動けない

願わくはチャイムがなってほしんだが悲しいことに昼休みはまだまだ残っている

あとは桜が帰ってきてくれることだけだ

桜、早く帰ってきてくれ


「先輩ただいま戻りました!!」


願ったと同時に桜が戻ってきた

桜は肩で息をしていて全力疾走してきたのは明らかだった


「だ、大丈夫か?」


「先輩の声が聞こえましたから! 私こと桜は先輩のためなら例え火のなか水のなかです」


「あらあら美綴さん。頭がかわいそうな子がいるわよ」


「ハハハッ、遠坂妄想ぐらい許してあげなよ」


共闘した!?

さっきまでの対立を一転して二人で桜を口攻めする


「誰が頭のかわいそうな子ですか!! 私は先輩が私を呼べばどこにいてもわかるんです!!」


「はぁ、こんなのが妹とはね。士郎嘘つかなくていいから真実を言ってあげなさい」


「嘘は桜のためにならないからね」


「先輩! 先輩達に私達の愛をズバッといってください!!」


「あっ、えっと考えました」


怖い怖い怖い怖い怖い怖い

ランサーに殺されそうになった時より数段ヤバイ

下を向いてブツブツ呪詛を呟いてる遠坂と美綴

遠坂に至っては左腕の魔術刻印が鈍く光っている

桜は桜であっちの世界に旅立っている

時折、俺の名前が聞こえるが気のせいだ、うん気のせいだ


「し〜ろ〜う〜」


「え〜み〜や〜」


「ごめんなさい!」


「先輩をイジメるのはやめてください! 姉さん、美綴先輩現実を見てください先輩は私を選んだんです」


俺の危機に敏感に反応した桜が俺をかばうように前にでた

……でも、桜。選んだっていったい何のことだ?

そもそも遠坂達は何で怒ってるんだ?


「そもそも遠坂達は何で怒ってるんだ?」


疑問がそのまま口から出てしまった

そして直に後悔した

答えのかわりに遠坂達の周りに渦巻くオーラが増した

これはタイガー道場行きになってしまう

何で聖杯戦争終わったのに死亡フラグがあるんだよ……

しかし、助けは意外なところからやってきた


「士郎! 弓道部に戻ってきてくれるって本当!?」


「おわっ! 藤ねぇドアは静かにあけろ!!」


藤ねぇがその力の限りに開けたドアはプラプラと揺れていた

上のちょうつがいは潰れてる

ドア自体も桜と藤ねぇが壁に叩きつけたからところどころへこんでる

今までギリギリ持ってきたけど今日で天寿だな

ここ最近で大分消耗したからな…………主に俺たちのせいで


「聞いてるの士郎!」


「ああ、もう! 俺は今、ドアと最後の別れをしてるんだ!!」


「そんなことはどうでもいいの!! それよりどうなの!?」


「俺は別に「大会までですけどね」遠坂!?「違いますよ戻ってきます」桜!?「それで部長をするって」美綴まで!?」


さっきから切り替え早すぎだろ

それに三人の意見食い違ってるし(桜と美綴は近いけど)

あ〜あ、藤ねぇ混乱してるよ

…………未だに藤ねぇが教師になれたのが不思議だ


「士郎は別に部に戻るなんて言ってないわよ。そもそも士郎は一度やめてるんだから」


まず大会に出るとは言ってないんだがな


「何言ってるんです先輩は無理やりやめさせられたんですよ。自分の意思じゃありません」


いや、別に無理やりじゃないし俺の意思でやめたんだが


「それに今でも衛宮の弓を忘れられないって奴もいるしね」


美綴以外にそんな物好きがいたんだな


「え〜と、え〜と結局はどうなの?」


「俺に聞かれても…………そもそも俺は大会に出るとは一言も言ってないし」


「え? でも桜ちゃんが士郎が弓道するって」


「それは遠ング!」


俺が藤ねぇに説明しようとしたら後ろから美綴に口を防がれた

遠坂はと言うと藤ねぇに説明していた

ヤバイ、絶対藤ねぇは遠坂に言いくるめられる

それ以前に藤ねぇも時折、遠坂と同じ事いってたし

どうにかして手を振りほどこうするがあまり体を動かせない

なぜかって言うと…………さっきから背中に女特有の二つの塊が当たっているからだ

下手に動くとデンジャラス

遠坂達に気づかれてもジ・エンドになる(経験上)


「士郎! 大会でなさい! お姉ちゃんの命令です!!」


やっぱり、丸め込まれたか

こうなると俺が何言っても無駄なんだろうな


「わかったよ。でも俺は弓道部として出るつもりはない」


これだけは譲れない一線だ

美綴は主将で桜は人気があり藤ねぇは顧問だ

そんな三人が言えば簡単に戻れるだろう

でも、みんなが願ってないのに戻るなんて俺にはできない


「でも、先輩を嫌う人なんていませんよ」


「間桐ぐらいだろ」


言わずとも俺の本心がわかるみたいだ


「慎二はそんな奴じゃないって」


「あんなワカメなんてどうでもいいのよ

私としては別に優勝してくれればどっちでもいいんだけど士郎の考え方には納得できないわ」


「何がだよ」


「真面目すぎるってことよ。少しくらい自己中になってみなさいよ」


「そうです。先輩は自分を蔑ろにしすぎなんです」


「間桐だって衛宮の言うような奴だったら反対しないさ」


「って言われても…………」


これが俺の性分なんだから仕方がないんだが

でも、俺はあの時――聖杯を破壊する時、約束したしな銀髪の軽やかになびかした少女と


『最後のお願い、お兄ちゃんはシロウは正義の味方を目指すだけじゃなく自分の幸せも見つけて』


『…………でも、俺なんかが幸せになれるかな、なっていいのかな』


『バカね。なっていいにきまってるじゃない。それにシロウの周りにはセイバーやリン、サクラがいるじゃない』


『…………わかった。できるかわからないけど幸せを探してみる』


『うん。私は天国でいつまでもシロウを見守ってる……から…………ね』


『イリヤ?…………イリヤ! イリヤ! イリヤァァァ!!』


少女――イリヤは今はいない

でも、俺の心の中には約束と一緒に残っている

そうだなイリヤ。少しぐらいわがままになってみようか


「…………そうだな。とりあえずは大会まで厄介になるよ」


「「「「え!?」」」」


俺の言葉に四人が驚きの声を上げた

やっぱり、俺がこんなこと言うとは思ってなかったんだな


「し、士郎今なんて?」


「だから弓道部にお世話になるって」


「本当ですか!?」


「ああ」


「まさか、衛宮がそんなこと言うなんて。そりゃ私達がいってたことだけどまさかねぇ」


みんな驚いてはいるがどことなく嬉しそうにしている

俺の変化を喜んでくれているんだろう


「ってことで藤ねぇ。俺、明日から部活に参加させてもらうからな」


「わかった! 他の部員には今日私が言っておくから!!」


「あっ、慎二にだけは俺が言っておくから…………ってもういないし」


まぁ、いいか


キーン コーン カーン コーン


「教室戻らないとな」


「次の授業は藤村先生だから大丈夫なんじゃないか?」


「確かに」


俺と美綴が笑いながら話しているなか遠坂と桜は弁当を食べていた

まだ、半分しか食べてなかったらしい

美綴はもちろん俺も遠坂達が騒いでいる間に食べ終わっている

とりあえず家に帰ってから弓の手入れだな

帰ってからの予定を考えながら雲ひとつない空を見上げた

…………イリヤが微笑んでいるように感じた
















「弓道部に戻るって?」


放課後、俺は慎二に今日決めたことを話していた

予想通り慎二はいい顔をしない


「ああ。来週の大会にでて、その後はまだ決めてない」


残るか残らないかは慎二の対応にも左右されるけど

とりあえず大会での感触で決めるつもりだ


「フン。衛宮にしては珍しくワガママだな」


「そういわれても仕方がない。だけど最低でも一週間は混ざらせてもらうぞ」


一瞬、慎二は眼を見開いて俺を見てきた

こいつとは腐れ縁でもあるからびっくりしたのだろう


「お人よしの衛宮がね。遠坂姉妹だね」


「…………」


「図星みたいだな。ったく遠坂姉妹もなんで衛宮なんかといるんだろうか

あれじゃないか? 女っ気ないお前を弄んでるだけじゃないのか?」


少しカチンときた

俺の事をなんて言われようといいが二人のことを言われるは許せない

どうやら俺が怒っていることに気づいたのか慎二はニヤリと笑うと


「表はどうあれ裏では金とかもらってさんざん遊んでるんだろうな」


怒りが沸点に達した

俺は握りこぶしを怒りのままに慎二にぶつけた

強化はしていないが鍛えられた肉体が放った一撃はそこら辺のボクシング部の奴より強力だった

無論、慎二は吹っ飛ばされた


「訂正しろ」


だが、今の俺に状況を確認する余裕はなく慎二の胸倉を掴み持ち上げ威圧した

俺を知っている生徒が見たらびっくりするだろう光景だった

俺も後で思い出して自分ってこんなに沸点低かったっけ?って思ったぐらいだった


「ゲホッゲホッ…………まさか衛宮がここまでするとはね」 


「人の話を聞いてるのか? 俺は訂正しろって言ったんだ」


「フンわかってるさ。今のは衛宮がどこまで本気か知りたかっただけだ」


そこでようやく俺は冷静になれた

思えば慎二は嫌みったらしくは言っても本当に人を卑下することはあまり言わない奴だ


「衛宮は来週の大会にでるんだろ?」


「あ、ああ」


「それじゃあボクは来週の大会にでるのはやめるか」


「なんでさ」


「フン、ボクは勝てない勝負はしない主義でね

衛宮も大会では無様な姿をさらさないことだな」


慎二はそれだけ言うと俺に背を向け去っていった

真意はわからない

だけど、あいつはあいつなりに俺の事を気遣ってくれたのかもしれない

みんなが何と言おうとやっぱり慎二は俺の親友であることに変わりはない
















「ったく慎二も素直じゃないよな」


結局俺が部に行ってからはあいつは来なかった

いや、性格に言えば朝練は俺が来る前に放課後は俺が帰ったあとにやっている

朝については的とかを見れば誰かが練習していたことは直にわかったし

放課後だって後輩が見ていて教えてくれた

何だかんだ言って負けず嫌いなのだ

この大会が終わったら本当に弓道部に戻ってもいいかとも思ったぐらいだ

何故過去形かと言うと俺は正式に部に戻ることは断った

やっぱり家事やら何やらが忙しく毎日いけないからだ

みんなはそれでもって言ってくれたけどやっぱりちゃんと来れない奴が部にいるのはダメだ

その代わり一週間に一・二回行かせてもらうことにした

遠坂が一・二回なら家事やっといてくれるといったからだ

当初は、この一週間ずっと遠坂に任せっぱなしだったのにこれ以上はと断ったが


『まったく。代わったと思ったらやっぱり士郎は士郎ね

頼ったっていいのよ。私はそれ以上の事を士郎にしてもらってきたんだから』


頼る…………思えば慎二も俺のこの部分が嫌いだったのかもしれない

傍からみたら俺は何でも自分ひとりでこなして誰にも助けを求めない人間だっただろう

ある意味、究極の自己中である

セイバーだって


『士郎には弓の才能があります。だから弓を続け上を目指すのはいいことです』


言外に弓道を進められてしまった

反論しても弓を極めることは戦いにおいても良いって言われてしまった

桜に至っては


『先輩が頼ってくれたら私は何だって手伝いますよ。今までの恩返しでもありますし

言っておきますけど別に先輩が何かを求めて助けてくれたわけじゃないのはわかってます

だから、私が先輩を手伝うのは私がしたいからするんです』


そんなに大層なことした記憶はないんだがな

思い出すだけで胸の奥が暖かくなるのがわかる

そうだよなイリヤ。俺の周りにはこんなに優しい人達が沢山いるんだもんな

魔術士の原則は等価交換

だから、俺はみんなを助けて、みんなに助けてもらう


「次、穂群原学園衛宮士郎」


まずはこの大会を優勝することから始めよう

俺が俺の幸せを求め始めた証として

あの優勝トロヒィーを


「はい!」






その晩、殺風景な士郎の部屋に似つかないトロフィーがあった






居間から聞こえてくる楽しげな音をBGMにトロフィーは月明かりに照らされていた






「これで安心だね」






一瞬、少女の声が聞こえたような気がした





FateのSS〜。
美姫 「人のためじゃなく、自分のために」
いいお話だったな〜。
美姫 「本当よね〜」
うんうん。全体的に静かな感じ。
美姫 「所々でドタバタしているけれどね」
とっても良かったです。
美姫 「投稿ありがとうございました」
ではでは。



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