「ねぇ、圭一」


「ん? 何だい梨花ちゃん?」


肉じゃがを口に運ぶ作業を一時中断して圭一は梨花の事を見た

ずっと圭一に喋りかけていた羽入も梨花のことを不思議そうに見た

梨花はどこか迷ってるのか難しい顔をしていた


「レナ達はどうするの? できれば巻き込みたくないんだけど……」


その言葉に羽入はハッとした

鬼には勝ちたい

でも、だからと言って大切な人達を戦いに巻き込みたくない

できれば自分と圭一、羽入の三人でことを済ませたいのだろう


「それは無理なんだ。レナ達の存在も運命の脚本には書かれている」


今までと打って変わって魔法使いの顔になった圭一

羽入は落ち込んだが梨花は予想していたのか、あまり動揺はしていない


「つまり、レナ達もいないと勝てないってことね」


「理由は……のちのち説明するよ」


「それで、どうやってみんなを説得するの?」


梨花の疑問に圭一は、いつもの不敵な笑顔を見せ






「あいつらは仲間を見捨てはしないさ」






 ひぐらしのなく頃に

  〜裏運命編〜


第二話 動き出す運命


昭和58年5月

雛見沢・雛見沢分校 放課後






「8・2・2・3、これで俺の勝ちだ!」


「やっぱ大貧民は圭ちゃんの独壇場だね〜」


「おう! それに今日の罰ゲームは全員だからな気合のはいりかたが違ったぜ!」


「はぅ〜圭一君何させるつもりなのかな、かな?」


圭一が雛見沢に来てから1ヶ月がたった

梨花と知り合いだったということで、転校から三日で部活に参加することになった

記憶があるので、できるだけその通りにして信頼関係を作っていった

そして十分信頼関係ができたと判断して今日、圭一たちはある行動に移る




「よし、今日の罰ゲームは…………まず俺の話を最後まで聞いてくれ。質問は後で受け付ける」




とたんに雰囲気が変わった圭一を見て部活メンバーは一斉に頷いた

圭一は今ここで、これから起きることを話すつもりだ

何故、今かというと転校してきて信頼関係が十分に結ばれていない時に話しても冗談だと思われるから

次に何故5月かと言うと、みんなが魔法を使いこなす期間が欲しかったからだ

ちなみに、梨花と羽入はこの一ヶ月みっちり特訓して、かなり使いこなせるようになっていた

圭一は、みんなが真剣な表情をしていることを確認すると語りだした…………惨劇とオヤシロ様、そして鬼について、すべての事を話した












「――以上が俺が話したかったことだ」


圭一が喋り終わってから数分間は誰も何も喋らなかった

いきなりの情報に頭が追いつかないのだ


「圭ちゃん、あんまり笑えないよ。この冗談」


さすがというべきか最初に情報を理解した魅音が言う

しかし、その言葉には動揺が込められていた

圭一の話の中に思い当たる部分がいくつもあったからだろう


「圭ちゃん、惨劇とオヤシロ様はまだわかる、けど鬼って? さすがに信じられないわよ」


人に住む鬼ってならわかるけどね、と呟く詩音


「私も、そう思いますわ。惨劇はまだ、わかりますけど。鬼って言うのは理解できませんわ」


詩音に続いて沙都子も鬼について否定する


「まあ、そう思うのは当たり前だ。それについては今から答えてやる。でも、その前に――」


圭一は先ほどから下を向いて小刻みに揺れているレナを見て


「レナお前は何か言いたいことは無いのか?」


バッとレナは顔を上げる。その瞳は黒く濁っていた


「圭一君そんな事、冗談でも言ったらダメだよ? オヤシロ様が怒っちゃうよ?」


言葉こそ優しいものの、その眼は狂気に満ちていた

圭一は、そんなレナを見て一瞬、悲しそうな表情をして




「さっきも言ったがオヤシロ様は祟りなんか起こさない」




「嘘だ!!」




「嘘だと思っても構わない、真実から眼を背けたいなら、そうすればいい後で後悔しても知らないがな」




レナは先ほどの剣幕はどこにいったかと思わさせるぐらい呆然と圭一を見た

それほどまでに圭一の声は冷たかった

それこそ、まさに凍てつく氷の言葉だった




「圭一!」(圭一!)




驚きで梨花と羽入が圭一を見て叫ぶ


    ・・・
「別に、そんなレナだったらいてもいなくても変わりないし」



「ちょっと、圭ちゃん! それどういう意味!?」



魅音が縋る様に圭一を見る

周りを見るとレナも含めた全員が圭一に説明を求めていた

圭一はため息をついて説明を始めた


「さっきもいった鬼についてだが普通の人間じゃ対抗できない

だから俺は鬼に対する対抗の手段として知り合った魔法使いに魔法を教えてもらった」


「「「魔法!?」」」


「論より証拠梨花ちゃんやってみて」


「はいなのです」


梨花ちゃんが手を平を突き出すと、そこに氷の塊が発生した

4月の時と比べて格段にレベルアップしている


「「「ええ〜!?」」」


「驚くのは後にして話続けるぞ。それで俺は魔法の才能があったらしく普通の人の十倍ぐらいで成長した

それでも一年かかった、だからここでお前らを鍛える時間は無い」


「それなら、どうするのでございますか? と、いうよりそれじゃあ、なんで梨花は使えるんですか?」


沙都子の問いに得意げな表情をして懐から前、梨花達にあげた玉をだす


「そこで登場するのがこいつ名は神清綬(しんせいじゅ)これは、使った人の潜在魔法能力を開花させる物だ

そのかわり自分に一番あった力しか使えないがな」


「それで、なんで今のレナさんじゃ意味がないんですか?」


「それは、これの特性でこれは作った奴のことを信じない奴には使えないんだ」


ちなみに、これは俺が作ったからなと言いながら圭一はレナを見る


「つまり、俺を信用していないレナには使えない。そして魔法が使えない奴が決戦の場にいても足手まといになるだけだ」


みんな何も言えなかった。

しかし、みんな(レナ以外)圭一の話は理解できるが何か釈然としない物を感じていた

              ・・
確かに理解できるが、それでもあの圭一が仲間にあんな事を言うとは思えなかった

             ・・・・・・・・
圭一はそんなみんなの考えに気付いていながらレナへと最後の行動に出る



                    ・・・・・・・・・
「ためしに持ってみろよ。まっ、俺のことを仲間って思ってないレナに使うことはできないだろうがな」



「え?」



圭一の言葉を聞いた瞬間レナの脳裏に何かが掠めた

それは、前の世界でのレナの記憶――何故か、みんなが敵に見えて誰もがレナのことを殺そうとしていると思ってしまって

心配してくれた、みんなに言ってしまった一言




『心配するフリなんかやめてよ! 仲間のフリをしてレナを殺そうなんて手に乗らないよ!』


『レナ聞いてくれ。俺らは本当に仲間としてレナのことを心配して』


『嘘だ!! それに仲間として心配する? なら大丈夫だよ! レナはみんなの事仲間なんて思ってないからね!』








『圭一君……みんな、なんで助けてくれたの?』


『決まってるじゃないかレナは俺達の――』


『『『『仲間なんだから(でしょ、なのですから、なのですよ)』』』』


『み……みんな…………レナのこと許してくれるの?』


『許すも何も俺達は仲間だろ? それだけで十分だろ?』


『うん…………そうだよね!』




「あっ」



レナが全てを思い出した途端に神清綬が輝きだす、そして光が収まると神清綬は燃え盛る炎の様な赤になっていた

そして神清綬は自然とレナ中に入りレナの体から一瞬、火花散った

それを見て圭一は全てを悟ったようでレナの方を見てにっこり微笑みながら




「久しぶりレナ。ここで会うのは初めてかな」




「圭一君!」




レナは思いっきり圭一に飛びつく

圭一はしっかりと受け止め二人は抱きしめあう




「ごめんね圭一君。レナまた……」




「いいんだよ。思い出したんなら。それに俺の方こそ、ごめんなレナに酷いことばかり言って」




「圭一君……」




「レナ……」




「「「って! ちょっと何いい雰囲気作ってるのよ!(いるんですか!)」」」


何が起こったのかわからず眺めていた面々だったが二人が見つめあっている光景を見て瞬時に我に戻った

そして眼をつぶっているレナから圭一を放す

レナは空気呼んでよね、よねとか言いながら魅音に喧嘩を売っていた

圭一は沙都子と梨花(ついでに羽入)に説教を受けていた

詩音はレナさん大胆〜って感じで顔をにやにやさせていた




















「それでレナさんは何で記憶を取り戻したんですか? それと神清綬が使えた理由」


あの後、騒然とした場をさすがにやばいと感じた詩音が収め、なんとか話が再開した


「ああ、それはレナなら記憶を思い出せる可能性があったから思い出す、きっかけになりそうな言葉を言ったんだよ

神清綬が使えた理由は記憶を思い出し俺への信用が復活したから」


みんなが納得した、だから圭一はわざとあんな態度をしたと言う事だ


「でも成功して良かったよ。レナのオヤシロ様への事に対してだけ対応の仕方が思いつかなかったからな」


「それじゃあ、私達は普通に神清綬でしたっけ? それが使うことできるんですか?」


「ああ、とりあえず神清綬を握り集中してみて」


「「「うん」」」


三人が握り締めて開いたら


魅音は風のような透明な色に


沙都子は土のような茶色


詩音は雷のような黄色になっていた


それから圭一の指示で神清綬を体の中に入れた時、みんなに変化が起こった


「え? 何この記憶」


「何かが頭の中に入ってくるみたいですわ」


「一体なんなの?」


三人もレナと同じように前の世界の記憶を思い出していた

神清綬が潜在魔法力を開花させる時に理由はわからないが前の世界の記憶を復活させている






『魅音人形やるよ。お前だけ何ももらってないしな』


『い、いいよ! おじさんには似合わないし』


『いいから、俺があげたいからあげるんだ』


『圭ちゃん……』




『魅音! お前なんでこんなことをしようとしたんだ!』


『圭ちゃんが私の事を見てくれないからだよ!』


『ばかだな! 俺はお前達みんなを大切に思ってる。もちろん魅音お前だって』


『うん……わかってたバカだな私。ごめんね。みんな』








『おっ! うまい、さすが沙都子また料理お願いしてもいいか?』


『しょうがないですわね。今度も作ってあげますわ』


『サンキュー沙都子』


『べ、別にいいでございますわよ』




『沙都子! 俺の手を掴め絶対にお前を助ける!』


『でも、私が頼ると圭一さん、までにーにーみたいに……』


『大丈夫だ! 俺は消えない! 沙都子……お前の前からは』


『け……圭一さん!』







『よっ! 詩音今日はどうしたんだ?』


『ちょっと調べ物をしているんですよ』


『……悟史の事についてか?』


『っ!? 圭ちゃん何を知っているの?』




『詩音! 悟史は生きている!』


『あんな扱いされて生きているも死んでいるも変わらないでしょ!』


『バカやろう! 生きているなら可能性はあるだろ! お前が一番にあきらめてどうするんだ! お前は悟史の恋人で沙都子のねーねーだろ!』


『わかってるわよ! わかってる、わかってるのよ……』








「「「思い出した……」」」


「「「え?」」」


突然ハモッテ呟いた三人に、これまたハモッテ疑問の声を上げる三人


「おじさん達も前の世界の記憶を思い出した」


「圭一君、神清綬にはそんな効果あるのかな?かな?」


「いや、ないはずなんだがな…………まあ記憶を思い出したんなら鬼についても思い出しただろ」


みんなが一斉に頷く


「あれと対抗するため、みんなには一ヶ月間みっちり魔法の練習してもらうからな」


圭一が言うと誰も反論はしなかったが魅音が


「鷹野さん達はどうするの?」


確かに惨劇を越えなければ鬼は出てこない


「それは、俺が何とかしておく」


魔法使いの圭一にとっては鷹野達普通の人間なんか敵ではないだろう

そういうことで、鷹野達については圭一が一人で何とかすることになった


「それじゃあ、早速「ちょっと、待って圭ちゃん」なんだ詩音?」


圭一の声を遮り詩音が疑問の声を上げる


「さっきは忘れてたんですけど大丈夫なんですか? 教室でこんなことやって先生とか来たらどうするんですか?」


同時にレナ達はポンと手の平を叩いた

確かにこんな所で騒げば先生に見つかってしまう

しかし、圭一は当たり前の表情で


「結界張ってるから大丈夫」


軽く廊下と教室の境目をポンポンと叩いた


「本当なんですか?」


次は詩音も加わって手のひらを叩いた

魔法使いなら結界ぐらいはれるであることを失念していた

みんなが納得していると圭一は突然


「忘れてたがそれと練習には、こいつらも加わるから」


すると梨花の隣に羽入が現れた、正確に言えば実体化した


「「「「「「あっ忘れてた」」」」」


「あ、あうあう、みんな酷いのですよ」


みんな羽入の存在を忘れていたらしい

しかも梨花まで、哀れ羽入!君にもいつかいいことが……あればいいな


「んで、もう一人」


圭一が指を鳴らすと空間が歪んで一人の少年が現れた。その少年とは


「「「「悟史君!?(にーにー!?悟史!?)」」」」


そう病院で寝たっきりのはずの悟史が目の前にいた

みんなが驚いた様子を隠せない

それも当たり前だ。前の世界では悟史は眼を覚まさなかったんだから

悟史は、みんなを見て何を言ってかいいかわからず困っていると圭一が背中を押して詩音と沙都子の前に向かわせる

悟史は二人を見たら自然と




「ただいま。沙都子、詩音」



「「さ、悟史君!(に、にーにー)」」


「むぅ〜!!」


二人は同時に悟史に飛び掛った

悟史は突然の事にびっくりしながらも堪える

二人とも泣きながら悟史に縋りつく

そんな光景を暖かく見守っていた圭一たちだがレナが自然に腕を絡めてることに気付いた梨花が騒ぎ出し二人は口論し始めた

魅音が漁夫の利で圭一の腕をとろうとしたが、何時の間にか悟史から離れていた沙都子のトラップにやられ勝負になった

羽入は、さっきの事を引きづってるのか座って、いじいじしていた

悟史は、沙都子……もう兄離れか、でも圭一なら安心して任せられるかなとか言いながら親みたいに沙都子の将来を考えていた

詩音は、周りのことなんか関係なく幸せそうにしていた

そして圭一は……




「何故こうなる?」




周りの状況を見て首を傾げていた
















圭一たちが騒いでいる頃、ある場所で変化が起きていた


「お前らが鷹野三四、入江恭介、富竹次郎か」

                          ・・
病院で三人が一緒にいると、三人の前に青年らしき男性が突然現れた


「何者だ!」


富竹がいち早く反応して銃を向けようとしたが……


「お前らには我の手足になってもらおう」


それよりも早く青年が何かをした

すると鷹野たちは突然倒れたかと思うとすぐに立ち上がり


「「「わかりました。酒呑童子(しゅてんどうじ)様」」」


三人の眼には生気が無く、瞳は深い深い漆黒の闇であった





「今度は楽しませてくれるかな…………前原圭一」





さあ





運命の始まりだ




ひぐらしの声が雛見沢に響き渡っていた








あとがき


第二話動き出す運命

梨花「みんな記憶を思い出したのですよ」

いや〜人生何が起きるかわからないね〜

梨花「うるさいのですよ。幻は黙るのです」

酷っ! いったいどうしたんだ!?

羽入「あうあう、みんなが記憶を取り戻したからアドバンテージが無くなって怒ってるのですよ」

ん? ああ〜! 圭一のことか! 

確かにレナや魅音に勝つにはアドバンテージがいるもんな〜

梨花「それは、どういう意味?」

ビクッ! い、いや別にけ、圭一ならロリでもOKだと……

梨花「いっぺん死んで来いなのですよ。にぱ〜☆」

ま、待って! その笑顔が恐い!! ってか何注射器取り出してるんですか!?

ちょ、ちょっとタンマ! L5発症しちゃうよ!

梨花「クスクス、サヨナラなのです」

い〜や〜!!

梨花「幻が喉を掻き毟ってるのでサヨナラなのです」

羽入「次回は、ひぐらしのなく頃に〜裏運命編〜第三話、運命を喰らう者なのです」

梨・羽「バイバイ〜」




記憶の復活。
美姫 「でも、それは新たな戦いの幕開けでもあるのね」
これからどうなっていくのだろうか。
美姫 「次回もお待ちしてます」
待っています。



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