夢を見ていた

二年前、まだ父さんが生きており、未来に希望をもっていた時だ

全てが、幸せだったわけではない

美由希は死んだし、母さんもいない

それでも、俺の前には父さんがいた

守れなかったのが悔しかった

力が無いのが悔しかった

父さんは、俺の才能は御神・不破両家の歴史の中でも郡を抜いていると言っていた

だから、強くなり、大切な人を今度こそ守ろうと誓った

でも、そんな誓いは脆くも崩れ去った

父さんが、仕事で死んでから次々とみんな死んでいった

死ぬ気で戦い、走り回ったのに結局俺の傍には誰もいなくなった

だけど、俺は泣くことはなかった

もう、既に悲しみを感じるだけの心がなかった

その後、師匠とプレッヂに出会わなければと想像するとゾッとする

それほど、このことは俺の中では悪夢と化していた

心の奥底に厳重にしまおう

もう二度と思い出さないように

じゃないと取り返しのつかないことになる…………そんな感じがするんだ








        魔法少女リリカルなのはA'S

          〜漆黒の王者〜

  第三話 序章








恭也が、転校してきてから二週間後の夜

幾重にも並ぶ高層ビル、静寂とは真逆なこの場所は、いつもなら二十四時間人の声が絶えない

しかし、今は人っ子一人いないんじゃないかと思わせるぐらい静かだった

でも、よく耳を澄ましてみると時折風をきる音が聞こえる

そっちの方向を見ると眼がいい人ならば、光の球がぶつかり合うのが視認できた

球が交わるたびに金属音が聞えた

次いでぶつかりあう

そのため球は静止し、人影が確認することが出来た

驚いたことに、二人とも小学生くらいの少女であった

一人は杖みたいな武器を持ち、もう一人は鉄槌みたいな武器を持っていた

更に、彼女達が得物を振ると光に似た

しかし、明らかに物質量を持ったものが現れた

常識ではありえない光景

一般的に人々が思う魔法そのものだった

一度、理解してしまうと状況は直に飲み込める

どうやら、赤い服をきた子が戦いを持ちこんだらしく

白い子は、どこか戸惑いぎみだった

尚且つ、戦闘能力は赤い子のほうが上らしく、白の子は直に追い詰められた

吹き飛ばされ、ビルの壁を何枚か突き破り倒れてしまった

勝負あり、誰もがそう思った瞬間、上空から黒い影が舞い降りた












(まさか、相手がこれ程の強敵とはな。聞いてないぞ、師匠)


上空から現れた黒い影――小太刀の形状をしたデバイスを持ち、身をバリアジャケットに包んでいる恭也は、心の中で今この世界にいない師匠に愚痴をこぼした

恭也は、一度なのはの方を見て命に別状がないと判断すると向き直った

並の敵なら恭也が不意打ちをしたら相手はやられたことを気づくことなく意識を失う

だが、この少女は直感で回避したのだ

もちろん、かわしたわけでなく急所を守っただけだ

しかし、この事は少女が魔導師としてだけでなく、戦士としても並みの実力でないことを示していた

所詮魔導師と侮っていた恭也は自分の甘さを恥じた


(だからといって勝てない相手ではないがな)


恭也の頭の中には既に彼女に対する戦い方ができていた

特に今回は初撃はもちろんのこと相手は恭也の戦法を知らず、恭也は知っているというハンデもあった

次は、わからないが今回に限っては負けることはない

実際に、少女は突然介入してきた恭也を睨んではいるものの動こうとはしない

先ほどの一撃は予想以上にダメージがあったらしい


「お前は誰だ!」


「……不破恭也だ」


恭也は、一瞬名乗っていいものかと考えすえ名前を名乗った


「管理局の人間か!」


「違うぞ」


管理局――正式名所時空管理局は数多に存在する次元世界を管理・維持する為の司法機関

なのはは、ここで働いている

そんななのはを襲ったのだから少女にとって管理局は敵なのであろう

だから、恭也の即答に一瞬ガクッとなっていた


「なら、何でそいつを守るんだよ」


「あいつは、俺が守るべき存在だからだ」


「チッ、ならお前も倒してリンカーコアを手に入れてやる!」


彼女程の強さの持ち主なら、今ここで恭也に勝つことは限りなくゼロに近いことはわかっているハズ

だけど、彼女は逃げずに恭也に向かっていく

そのことから、彼女にも引けない理由があることがわかる


「グラーフアイゼン! カートリッジロード!!」


<Ra'keten Form!>


勝負は、一撃

長引かせれば少女が負けるのは必須

だから、彼女は最大の攻撃を仕掛ける

鉄槌――グラーフアイゼンが形体を変える


「ラケーテンハンマー!」


突如、少女の速度を上がり、その推進力と遠心力を合わせる

決まれば絶対に戦闘不能になるであろう攻撃だが、恭也は一度この技を見ていた

そして、来ると思っていた

だから、恭也は惜しむことなく切り札を一枚使う


――御神流 奥義之歩法・神速――


世界がモノクロと化し、少女の動きもコマ送りで見える

恭也は、紙一重で攻撃をかわすと少女の背後に回った


「何!?」


少女が必殺の一撃をかわされ、尚且つ恭也の姿を見失い、驚きの声をあげる


「どご…………」


そして恭也の居所に気づくことなく意識を失った


(俺もたいがい甘いな)


不破家は、守ることより殺すことに特化している

それは、未来を案じて殺すためだ

結局、行き着くのは守るためだ

だから、不破家の人間としては守る人に危害を加えるかもしれない少女は殺すべきなのだ

しかし、恭也は彼女の表情や態度から何かのために必死に頑張っている事に気づきトドメをさせなかった


(俺は管理局の人間でもないしな)


心で、そう言い訳をして彼女を近くのビルの上に置き、去ろうとした

瞬間、戦士としての本能で咄嗟に飛ぶ

すると、桃色の髪をした女性とすれ違った


「ほぉ、今のをかわすか」


女性は、先ほどまで恭也いた場所に剣を突き刺していた

勘違いでなく、確実にこの女性は恭也を狙って攻撃してきた

いつの間にか、周りに三人の人間が増えていた

管理局の人間であろう少年と少女と使い魔

なのはの容態を確認し回復魔法を展開している

それと、目の前の女性と使いまであろう狼

いつの間にか狼は少女を背に乗せていた


「我が名はヴォルケンリッターが将、剣の騎士シグナム。お前の名は?」


(厄介な状況になった)


管理局は、今は共闘できるとしても正体不明な魔導師として拘束するだろう

目の前にいる女性――シグナムは明らかに恭也を敵としてみている

敵の力が未知数であるため、二人を相手にするなど愚の骨頂


(……どうするにしてもやることは決まっている、か)


「永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術継承者、不破恭也」


とりあえずは目の前の敵を倒すのが先決

そう判断した恭也は、もう一本鞘から小太刀を抜いた


「恭也、か。なら恭也よ。ヴィータの仇とらせてもらう」


閃光が煌いた






ヴィータを倒すまでは良かったけれど……。
美姫 「そこへ突如現れたシグナム」
うーん、この二人の対決はどうなるかな。
美姫 「管理局も出てきたしね」
さてさて、次回はどうなる!?
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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