この話は、本編には全然関係がないのであしからず

ちなみに、闇の書の事件は終わっています

















しんしんと降る雪

薄暗い世を彩る白

独り身には肌をさすような寒さが心にまで及ぶ

今日は、12月24日

いわゆるクリスマスと言うものだ

純粋な子供達は、プレゼントに胸を躍らせ、サンタの正体に気づいた子供達も、やっぱりプレゼントに胸を躍らせる

ここ、高町家には前者に値するかしないか曖昧な子が何人か集まっていた

この家の住人である高町なのはを始め、友達のフェイト、はやて、アリサ、すずかである

サンタの存在を知らなかったフェイトを除く、四名はサンタの正体に気づきつつも確信を持てないでいた


「サンタは絶対いるってば」


訂正、一名は完璧に信じているようだ

まぁ、これにも訳があるのだ

信じている子――なのはにプレゼントを渡すのは高町恭也である

士郎じゃない理由は、ひとえに恭也の方が気配を消すのが上手いからだ

恭也曰く、熟練しなければ身に危機が襲い掛かるからだそうだ

つまり、毎年恭也は気配を消してなのはの枕元にプレゼントを置いていたのだ

更に言えば恭也は真顔で嘘をつく男だ

だから、元々あまり鋭くないなのはがわかるハズもなかった

しかし、それでも普通に生きていけば不法侵入だか、友達の話で知るものだ

そう、なのはが魔法などと言う、常識はずれなものに出会わなければ

要するに、魔法があるならサンタもいる的な拡大解釈をしてしまったのである

この介錯に、また恭也が関わっているのだが、どのような事を言われたかはお任せする


「だ・か・ら! サンタなんていう可笑しな存在がいるわけないじゃない」


何度か言い合っているのか、若干声に怒気が含むアリサ

信じてる派と信じてない派で分かれているのか、テーブルを挟んでなのはの正面にアリサとすずか、はやてが座っていた

ちなみに、フェイトは少し離れた所でお茶を飲んでいた


「何で言い切れるの」


一歩もひく気がないのか、アリサから視線を逸らさない

もちろん、気が強いアリサも視線を逸らさない

はやてとすずかが苦笑するなか、いつまで続くかと思われた空気は一人の男の登場で崩れる


「……悪い、お邪魔だったようだな」


男――不破恭也は、直に異様な空気に気づくと撤退しようとする

全く、表情を変えなかったのは流石と言うべきだろう

だが、全く意味はなさないのだった


「「待って(待ちなさい)」」


「これから用事があるのだが」


何とか逃げ出そうとするも、二人の笑顔の前に何も言えなくなる

しかも、いつの間に接近されたのか肩を掴まれている

内心驚きつつ、恭也はこの場をやり過ごす方法を考えるが何一つ思いつかなかった


(プレッヂ)


(諦めなさい)


最後の頼みとばかりに名を呼ぶが、返ってきたのは哀れみの混じった声だった

結局、恭也は不毛な争いに巻き込まれるのだった
















あれから、数十分

争いは混沌を極めていた

恭也の周りではなのはとアリサだけでなく、フェイト、すずか、はやてまでもが顔を突き合わせていた

ちなみに周りと言うのは、みんなが恭也を中心に囲んでいるからだ

何故、このような事になっているかと言うとサンタの話からクリスマスの話に変わった時のことであった

議論は、クリスマスはどのような日なのかに及び、アリサの発言が引き金を引いた


『好きな人と過ごす日よ!』


瞬間、恭也の体に電流が走り逃げようとした物のフェイトのバインドに捕まった

恭也はまさか、フェイトが捕まえようとするとは思っていなかったため唖然とした

気づくと、みんなが笑顔で恭也を囲んでいたのだ

余談だが、恭也は捕まった意味を理解していない

更に余談だが、恭也(高町)の方もこの時、美由希達に追いかけられていたとか


「それで、恭也君は誰と過ごしたいの?」


自分が選ばれると分かりきっているかのように余裕の笑みを浮かべるなのは

実際、恭也となのはの繋がりはこの中で一番だ

だが、恭也は別に異性としてでなく、どちらかと言うと家族だと思っている


「えっと、あの、その」


珍しく、はっきりとしない恭也

これが、歴戦の戦士たるヴォルケンリッターを倒し、その名を知られた戦士だとはわからないだろう

それぐらい、その表情は歳相応の物だった

この事はプレッヂや恭也(高町)としては喜ぶべきことだが、恭也からしたら非常に困った事態だ

誰もが期待に満ちた視線を送ってくるのだから仕方がない

しかし、黙秘はいつもでも許されない

みんな、と言う選択肢は事によったら地獄を見るはめになる

これが、クリスマスを二人っきりで過ごそうなら逃げ道はあった

だが、あくまで今回は夜に高町家で行われるクリスマスパーティーまで誰と過ごすかだ

故に、反論する隙がない


(プレッヂ……)


(誰かを選ぶよりは、みんなって言ったほうがいいと思う)


もちろん、プレッヂだって危険なのはわかっている

だけど、このまま行けば危険度が更に増していく

戦いで言えば、美沙斗と戦うか士郎(全盛期)と戦うかだ…………どっちも変わらないような気がする


「み、みん……ゴメンナサイ」


どこまでも落ちてゆく恭也

既に睨まれただけで言葉を紡ぐ事ができないほどだ

どのぐらい時間が経ったのかと時計を見ると時刻は十一時

最高で四時間、最低でも二時間は時間がある

普段の恭也としたら、そこまで問題がある時間ではないが今日に限っては限界が近かった

助けを求めるにも、先ほどから部屋の前に気配を感じるが去って行ってしまう

異質なオーラでも放っているのかもしれない


「いい加減はやてって言いやがれ!!」


「「「ヴィータ!?(ヴィータちゃん)」」」


恭也の態度に業を煮やしたのか突如ヴィータが怒鳴り込んできた

気配が察知できていなかったのか恭也も驚く


「ったく。根性叩きなおしてやるから来い」


そう言って、手を掴み引っ張っていこうとする

何故か、頬が赤みを帯びていた

だが、恭也としては渡りに船


「わかった」


なのは達が気づく前に逃げ出す

恭也達が出て行ってから数十秒後

出し抜かれたことに気づいたなのは達の声が響き渡った
















ヴィータのおかげで九死に一生を得た恭也

しかし、神はえらく恭也の事が嫌いらしい

気にいってるかもしれないが

とりあえず、恭也は更なるカオスに出会っていた


「邪魔すんじゃねぇぇぇ〜!」


デバイスのグラーフアイゼンを持って空を翔るヴィータ

本気の一撃は同じヴォルケンリッターであるシグナムに向けられていた

つまりは、そういう事だ

別に、シグナムとしては少し模擬戦に付き合って欲しかっただけだ

だが、ヴィータに取ったら唯のお邪魔虫だ

そして、そのまま戦闘の流れだ

既に達観しかかっている恭也にとって矛先が自分にこないだけマシと言う物だった


「落ち着くな」


どこからか持ってきたお茶を飲み一息つく余裕すらあった

余裕ができたことによって冷静にもなれた


(そもそも、何故俺があそこまで追い詰められなきゃならなかったのだ)


十人中十人がわかるであろう事だが、天賦の才と言われるほどの鈍さを持った恭也は原因が全然わからなかった

都合のいい介錯を打ち消しているわけでもなく、何も思いつかないというのが凄いところだ

当初、二人が同じ根の物とは知らない者達は恭也が恭也(高町)並に鈍いのに絶句したとか

無愛想、才能、モテる、鈍い等の共通点もあり、更に混乱に陥るのだが本人達のあずかり知れぬ所での話だった


(そんなの見ててわかるでしょうに)


恭也の教育係を自負するプレッヂとしては今まで女心について教えてこなかったことを後悔した

まぁ、ここまで鈍いとは思ってもいなかっただろうが


「恭也」


「ん? ヴィータ」


声に反応して顔を上げるとボロボロの姿のヴィータだった

疲れているようだが、足取りはしっかりしている

つまり、この事はヴィータが勝ったと言うことに繋がる

シグナムはヴォルケンリッターの将である

そして、最強でもある

まさか、ヴィータが勝つとは思っておらず無表情ながら驚いていた


(恋する乙女の力は凄いわね……)


しみじみと呟くプレッヂ

無論、恭也は言葉の意味を理解していなかった


「ど、どこか行こう」


「あ、ああ」


いつもと様子が違うヴィータに少し戸惑いながら差し出された手を今度は恭也から掴んだ

ヴィータにも、こんな一面があったのかと思うと同時にヴィータも女である事を再認識された


(マズイ、ちょっと動悸が早い)


気づくと頬が赤く染まるのがわかり、また余裕を失う

でも、こんなのもありかと片隅で考えていた

ヴィータも、心ここにあらずと言った感じで恭也を見ている

非常に、良い雰囲気だ

だが、これまたタイミングよく事は起こる


「「「「「きょ・う・や・くん♪」」」」」


「あっ! えっと、あのだな」


「ち、違うんだ、はやて!」


もの凄い殺気を含んだ声で正気に戻り、焦りながら弁解する

しかし、なのは達ニコニコしたままである

この時、二人は死刑判決を待つ犯罪者の気持ちがわかったとか


「全力全開――」


「雷光一閃――」


「響け終焉の笛――」


「ちょっと待て! そんなの喰らったら死ぬ!!」


「きょ、恭也!」


どこか壊れているヴィータが恭也に抱きついた事で最後のボタンは押される

でも、やっぱり笑顔だった

…………その裏に何が隠されていたかはわからないけど


「プ、プ、プ、プレッヂ!」


(りょ、了解! サンクチュアリ)


「「「スターライトブレイカー(プラズマザンバー、ラグナロク)」」」
















「恭也君、あ〜ん」


「…………あ〜ん」


あの後、何とか死にはしなかったが一日安静を言い渡されてしまった

そのため、なのは達は順番ずつ恭也の面倒を見ることになった

今は、なのはの番だ

最後――ご飯を食べさせてあげる時間は誰がするかで揉めたが、じゃんけんでなのはに決まった

つまり、これが終われば最後なのだ


「ほらほら、もっと食べて」


「いや、そこまでお腹すいていないから大丈夫だ」


純粋な笑みを浮かべるなのはとは対照的にげっそりしている恭也

フェイト達の看病で既に精根尽き果てているようだ

無理もない

フェイトは、離れるよう言うと涙眼になるし

はやては、嘘泣きし始めるし

アリサにいたっては、拒否権すらなかったし

すずかは、近いを通り越して抱きついていた

あまり、女に免疫のない恭也にとって地獄の様な時間だった

そして、なのは

ご飯を食べさせているのだから、離れているだろうと思った奴は甘い

なら、どこになのはがいるかと言うと


「…………なぁ、そろそろどいてくれないか?」


掛け布団の上だ

正確に言えば恭也の膝辺り

鍛えているから別に重いとかではないが、如何せん近すぎる

しかも、ご飯を食べているせいで視線を逸らしにくい


「ダメ?」


しかも、事あるごとに上目遣いをしてくるからたまったもんじゃない

何度も、これにやられてきた

しかし、流石にそろそろヤバイと感じた恭也は残りわずかな精神力を集める


「だ、ダメだ」


「そっか……」


途端に悲しそうに顔を下に向ける

悪くないのだが、何故か罪悪感を感じてしまう恭也であった

それでも、ゆっくりとしたいためか耐えた


「なら、一つ言うこと聞いて」


「ああ」


何か企んでいる事は丸分かりだが、この状況を抜け出せるなら安いもんだと判断する

すると、また笑顔になる


「目、瞑って」


「ん」


すぐに、目を瞑り視界を黒に染める


(今日は、本当に疲れ……ん!)


恭也は、唇に湿りを感じ目を開けた

そこには、首筋まで真っ赤にしたなのはがいた


「な、なのは」


「にゃ! お、おやすみ!!」


状況がイマイチ理解できず、名前を呼ぶと脱兎のごとく逃げていった


「な、なのはもか」


数秒後、正気に戻った恭也は小さく呟いた


(これで、全員だね)


プレッヂの、呆れた声に恭也はのろのろと立ち上がり窓を開けた

すると、恭也の高まった体温を冷やすようにヒラヒラと雪が降ってきた


「初雪、か」











クリスマスSS〜。
美姫 「ありがとうございます」
傍から見ていると羨ましいんだが……。
美姫 「本人にとってはそうでもないみたいね」
まあ、その前にとんでもない魔法を喰らっているしな。
美姫 「街中で放つなんて、中々に凄いわね」
はははは。ともあれ、投稿ありがとうございました。
美姫 「それじゃあ、まったね〜」



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