〜プロローグ〜

「…………」

光が入らない薄暗い部屋の中。

中にはおびただしいコードの束が部屋中を埋め尽くしており、まるで生物のように蠢いている。そんな一つの空間を支配しているコードの太さはまちまちだ。

ヘッドホンに使われているコードを何個にもまとめて一束にしているものもあれば、広いとはいえない部屋に鎮座する太いコードの姿があった。

そんな太さが違う全てのコードが一つの場所に向かって伸びていた。まるで、何かに吸収されているのかのように。

その場所には一つの白いカプセルが存在していた。

カプセルの周りには白衣を着た人が数人おり、鬼のような形相で近くのモニターを凝視し、カプセルを睨みつけている。白衣を着た人達は会話をしない。ずっと沈黙を保っている。

部屋の中ではキーボードを打つ音だけが唯一、辺りを賑やかせている。

白衣の人達は片時も離れず、カプセルの中身を見続ける。

その先には年端も行かない黒毛の少女の姿があった。

ガラス越しの裸の少女はうずくまった形で眼を閉じていた。オレンジ色の水の中で短い髪が踊り、少女は生きていた。まるで、カプセルが少女にとっての母体であるかのように。

少女から聞こえてくる生命の息吹を白衣の人達はただ、見つめていた。

だが、その静寂も今日、終焉を迎えた。

白衣の人達の後ろの壁にヒビが入る。

次の瞬間、壁は全壊し、黄金の光が入り込んできた。白衣の人らは無機質だった顔に驚きが現われ、後ろを振り向く。

そこには、両手に黄金の大剣を持った黄金の少女が悠然と立っていた。

黄金の少女から放たれている光で部屋が鮮明に映し出された。闇が光によって消されていく。

「私は時空管理局執務官フェイト・T・ハラオウンです。全員、手を上げて投降しなさい」

執務官と聞き、白衣の人達は自分の計画が足元から崩れていく事を感じ、絶望感に打ちのめされ、その場に崩れ落ちた。

黄金の少女―フェイトは後ろにいた部下に拘束するように指示をする。部下達は部屋に続々と入り、力なく倒れている白衣の人達を拘束していく。

フェイトはそんな部下達の動きを確認しながら、ゆっくりとカプセルに向かって歩み寄る。

タッチパネルを操作し、カプセルの扉が開く。水は流れ出し、少女も倒れこんできた。

それをフェイトは優しく抱きとめた。

外の空気に触れたのか、水で濡れた少女はゆっくりと瞼を開ける。

その先には優しい笑顔を浮かべていたフェイトの顔があった。黒毛の少女はその姿が天使のように見えた。

少女の意識は光から闇へと落ちた。





投稿ありがとうございます。
美姫 「これからどんな物語が綴られていくのかしらね」
うんうん。続きは、この後すぐ!
美姫 「それじゃあ、また後でね〜」



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