『HOLY CRUSADERS』
第四幕『白煌と双翼』
「さて、話によると迎えに来てくれてるはずなんだけど・・・。」
シルフィはそういって駅の周りを見渡す。
「とはいえ、向こう側から接触してもらわないと、誰が迎えに来てくれてるのかわからないわけだ・・・。」
そのシルフィの言葉にロゼットは半ば呆れ顔になっている。
「それじゃあ、どうしようもないじゃない。これからどうするの?」
ロゼットの言葉にシルフィは頭をかきながら何とかなるんじゃないと返す。ロゼットは肩を落としてため息をついた。
(これから先が思いやられるわ・・・。)
ロゼットはそう思いながら町の景色を眺める。開発は進んでいるものの、ニューヨークほどではない。
どちらかというとベッドタウンのような雰囲気である。が、今はそんなことを考えている場合ではない。
迎えに来てくれた人を見つけないと、どうにもならないのだ。と、そのとき、2人の独特な髪の色をした少女が騒ぎ出した。
「何で顔写真みたいな、顔を確認できるもの貰ってきてないんだよ!!」
青い髪の少女がそういって緑の髪をした少女に食って掛かる。
「誰のせいで遅れたとおもっとるんや!!あんたが準備に手間取ったからやろが!!」
緑の髪をした少女も負けじと食って掛かる。
「その間に顔確認できるやつを貰っとけ!!気が利かないんだよお前は!!」
「なんやと!!気付いとるんやったらあんたが貰えばよかったやろ!!」
「俺が準備してる間に貰う暇ぐらいあっただろうが!!」
「ウチはあんたがもらっとるとおもっとったんや!!」
「アホ言え!!俺は準備してる間にお前が貰ってると思ったんだよ!!前にも言ったけど、気が利かないんだよ!このカメ!!!」
「なんやと!!おサル!!」
二人の口げんかはどんどんエスカレートしていく。ロゼットとシルフィは止めようと近づいていくが2人は気付く気配はない。
そして二人がある程度近づいたそのとき、ついに二人が手を出した。青い髪の少女は右のハイキック、緑の髪をした少女は左掌底。
シルフィはひるむことなくその間に踏み込んでいくとそのハイキック、掌底を片手ずつで受け止める。
「喧嘩は良くないよ。抑えて抑えて。」
シルフィそういって二人を治める。2人は全く予期していなかった止められ方に毒を抜かれている。
2人は暫く呆けていたが、謝ろうと2人の顔を再び見てあることに気付いた。
「あ、あの、もしかして、シルフィさんとロゼットさんですか?」
青い髪の少女がそう尋ねる。
「え?知ってるの?」
ロゼットは反射的にそう聞くが、英語で聞いたため、2人は驚いてなんといっているのか考え始める。
「ロゼット、英語じゃきついってば。じゃあ、二人が俺たちを迎えに来てくれた人?」
ロゼットには英語、2人の少女には日本語でシルフィが話しかける。
「あ、はい。そうです。俺は城島晶です。」
そういって、迎えに来たことと自己紹介をする晶。
「ウチは鳳蓮飛言います。」
レンも続いて自己紹介をする。ロゼットとシルフィも自己紹介を始める。
「俺はシルフィ・H・ヒースクリフ。日本とアメリカのクォーターだよ。」
「私はロゼット・クリストファ。二人とも迎えにきてくれてありがとう。」
ロゼットとシルフィはそういって二人と握手をする。
「え・・・と・・・」
二人はとりあえず握手をしたものの、ロゼットの言葉を何とか和訳しようとしているようだ。
何かに対して感謝してくれていることはわかるのだが、返事がわからない。晶とレンは向かい合って、小さな声で話す。
「おい、どうやって答えればいいんだよ?」
「あんたの方が一年年上やろ。何とかならんのか?」
「えっと・・・こういうときは・・・」
中学校では優等生の晶とはいえ、ネイティブな英語を外人から直接聞くのは初めてのため、困惑している。
そのやり取りにシルフィがさっきのロゼットの言葉を日本語にする。
「迎えに来てくれてありがとうって言ったんだよ。」
その言葉に晶がしどろもどろにロゼットに返事をする。
「You’re welcome.」
返事にロゼットは微笑み、シルフィに話しかける。
「ねえ、私も日本語しゃべれるようになるべき?」
シルフィは笑いながら、
「どちらかといえば話せるに越したことはないね。」
と答え、再びレンと晶に話しかける。
「さて、良かったらそろそろ案内してくれるかな?」
晶とレンはついてきて下さいと言って先を歩き始める。シルフィとロゼットは外国人らしく、町並みを見回しながら後に続く。
家までの道、四人は話しながら歩いた。シルフィは日本語だからいいものの、ロゼットは英語である。
そのため、ロゼットとの会話はすべてシルフィを通じてすることになってしまう。
レンと晶は英語の授業の大切さを改めて感じながらの帰路となった。
「桃子さーん。ロゼットさんとシルフィさん、連れてきたよー。」
晶が玄関でそういうと家の中から桃子が姿を現した。
「あらあら、いらっしゃい。ささ、どうぞ。あがってちょうだい。」
桃子がそう促すので、二人は後に続いて居間に入る。そこには恭也をはじめ高町家の面々が勢ぞろいしていた。
二人は上座に座らされ、自己紹介が始まる。まず、シルフィが一番最初に自己紹介を始めた。
「暫くの間お世話になります。俺の名前はシルフィ・H・ヒースクリフです。あ、ミドルネームは父方の日本性、緋皇乃宮のHです。
趣味は歌ですね。」
シルフィの自己紹介が済むと、次はロゼットが自己紹介を始めた。
「お世話になります。私はロゼット・クリストファって言います。
ほとんど日本語はしゃべれないんで迷惑かけると思いますがよろしくお願いします。あ、趣味は・・・お昼寝です。」
ロゼットの自己紹介が済む。しかし、当然のこと高町家の面々はフィアッセ以外なんといったかほとんど聞き取れていない。
なのはにいたっては、頭に複数の?を浮かべている。状況的にどうしようもないのでフィアッセが和訳したものをみんなに話す。
そして全員がロゼットの自己紹介内容が理解できたので自己紹介がロゼットの隣に座っていた美由希が自己紹介を始める。
「えっと、風芽丘高校一年高町美由希です。趣味は読書です。これからよろしくお願いします。えっと・・・これくらいかな?」
美由希の自己紹介が終わり、その隣の恭也に順番が回る。
「風芽丘高校三年高町恭也です。趣味は昼寝と盆栽です。暫くの間よろしくお願いします。」
恭也も簡潔に自己紹介をすませ、また隣のフィアッセに順番が回る。
「翠屋チーフウェイトレスのフィアッセ・クリステラです。あと、クリステラソングスクールにも所属してます。
今年の海鳴ホールのコンサートに出るから、よかったら見に来てね。」
そういってフィアッセの隣、なのはに自己紹介の順番が回る。
ちなみに、今までの自己紹介はフィアッセが英訳してロゼットに伝えている。
「えっと、私立聖祥大学付属小学校二年高町なのはです。得意なのはデジタル機器関連の操作です。」
続いて隣のレンに順番が移る。
「あ、ウチは鳳蓮飛言います。私立海鳴中央中学校一年です後はさっき紹介したとおりです。」
そして晶に順番が回る。
「俺は城島晶です。私立中央中学校二年生です。あ、あと、空手やってます。」
そして最後に高町家の中心人物、桃子が自己紹介を始める。
「じゃあ、私で最後ね。翠屋で店長をしてる高町桃子よ。この子達の母親でもあるわ。」
そういうと桃子はおもむろに台所に足を運び透明な飲み物を持ってくる。そして桃子はそれを一人ひとりに配って回り、
立ち上がって音頭をとり始めた。
「じゃあ、今日は二人の歓迎会ってことで思いっきり騒いじゃおう!ささ、新たな出会いにかんぱーい!!!」
そういって高らかにコップを上げて飲み物を飲み干す。回りもそれに乗せられて乾杯するとその飲み物を飲み干す。
「かーさん・・・・。おれたち、まだ未成年なんだけど・・・」
おそらくはという面持ちだった恭也がそれを飲んだ後そう言った。
「いいのいいの。今日は。」
そういって再び自分のコップにお酒を注ぐ。
「あ、俺にもください。」
シルフィはそういって自分のコップを桃子の前に出す。ロゼットもそれにつられてもう一杯飲む。
(明日、学校なのにな・・・・)
恭也はそう思いながらも自分のコップに注がれたお酒を飲む。晶たちも少しずつながらお酒を飲んでいる。
どうやら今日はすさまじいことになりそうだ。
結局、その日は昼過ぎから始まった宴会が夜まで続いた。恭也たちは量を控えていたためによってはいないが、
桃子たちはかなり酔ってしまっている。既にソファーで寝息を立て始めている。晶たちは既に自室に避難して居間にはいない。
避難せざるを得なくなるほどひどくなってしまったのである。恭也は後片付けを終え、桃子を部屋まで連れて行くと自室に戻り、八景を手に取る。
(緋皇乃宮・・・・偶然とは思えないな・・・・)
恭也はそう思い、鯉口を切るがすぐに鞘に収める。
(聞くわけにもいかないか。でも・・・。)
暗闇の中恭也の目が何かを見つめる。恭也は既に何かに気付いているようだった。
「さて、じゃあ、荷物の整理をしようか。」
シルフィは部屋に置かれているダンボールに手をかけてその中から自分の荷物を取り出す。
「何でそんなに元気なのよ〜?うっぷ・・・・きもちわる・・・・」
ロゼットは飲みすぎたせいか、非常に危険な状況になっていた。
一方シルフィの方はロゼット以上の量を飲んでいたにもかかわらず素面のままである。
「弱いのにそんなに飲むからだよ。それなら寝ててもいいし。俺が荷物の整理はしとくよ。」
「おねがい〜。もうだめ〜。」
その言葉を最後にロゼットは布団に突っ伏して動かなくなる。
(二日酔い・・・確実ね・・・・)
ロゼットはそう思いながら意識を落としていった。
「さて・・・」
シルフィは一通りの荷物をまとめて使って言いといわれていた箪笥を閉じるとその横においていたヤシャを手にとって抜き放つ。
(恭也君・・・だったっけ・・・只者じゃないね。美由希ちゃんも同じか。)
シルフィはヤシャを水平に構える。その瞬間、柄尻から50センチほどの短剣が飛び出す。
(近いうちお手合わせ願いたいものだね。)
シルフィはヤシャを鞘に収めると箪笥の横においてロゼットの隣にもぐりこむ。
「お休みだね。」
シルフィはそうつぶやいて眠りについた。
翌朝4時30分、恭也は何かに導かれるように目を覚まし、八景を持って道場に向う。そこにはシルフィが立っていた。
「気がついたみたいだね。恭也君。」
シルフィは恭也のほうを向くことなくそう言い放つ。恭也も顔を地に落としたまま返す。
「緋皇乃宮という名字はそうそうないからな。緋閃抜刀術・・・継承者・・・か・・・?」
その言葉にシルフィが振り向いて初めて恭也のほうをみる。
「そう。緋閃抜刀術正当継承者『白煌』ことシルフィ・緋皇乃宮・ヒースクリフ。俺のポジションだよ。
それよりも、恭也君のことが知りたいな。ここまできて唯の人ってわけじゃないよね?」
その言葉に恭也は顔を上げてシルフィを見る。
「小太刀二刀御神流剣士高町恭也・・・。」
その言葉にシルフィの顔が喜びに満ち溢れた表情になる。
「そっか。じいちゃんの言う緋閃を越える剣の使い手か。面白いね。非常に面白いよ。」
シルフィはそういいながら抜刀の構えを取る。同時にヤシャの柄尻から短剣が飛び出す。
「とーさんから話だけは聞いたことがある。唯一御神を超える可能性を持つ剣、緋閃抜刀術・・・。一度みてみたかった。」
恭也もそういって二本の小太刀のうち、一本を抜き放ち、もう一本を腰にかける。
「じゃあ、これから先のことは刀で語ろうか。」
シルフィがそういって腰を落とす。いつでも抜刀できる状態だ。恭也も臨戦態勢をとる。
二人の間に張り詰めた空気が流れる。
一秒のときが一時間にも一日にも無限にも感じるその空間の中。
二人の剣士、『白煌』と『双翼』は出会った。
あとがき
はい。HOLY CRUSADERS第四幕でした。
(フィーネ)次回はやっぱり?
もちろん。恭也とシルフィがぶつかるぞ。
(フィーラ)うずうず。
いや、お前たちがうずうずする必要ないから。
(フィーネ)そうそう。うずうずした場合は・・・
まて!!ちょっと早すぎるぞ!!
(フィーラ)じゃあ、話を変えて・・・髪の毛の色について。
ほっ・・・。髪の毛の色か。
(フィーネ)確かに、青とか緑って街中じゃほとんど見かけないよね。
普通は似合わないって。赤ですらかなりきついのに。
(フィーラ)コスプレ?
する人はほとんどカツラじゃないのか?でも、コスプレ用のカツラって好きじゃないんだよな。なんか、安っぽいっていうか・・・。
(フィーネ)確かに。やっぱりコスプレの際も地毛を染めるべき?
それもきつかろう。あそこまで地毛を伸ばすのは1年やそこらじゃできないだろうし。
(フィーラ)それもそうね。やっぱり、エクステを使わないと無理か。あれだと、いろんな色あるし。
だな。それが一番無難だろう。
(フィーネ)じゃあ、話を戻して・・・
あらは?
(フィーネ&フィーラ)空刃地雷剣!!!!!
きゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!
(フィーラ)今回は今まで以上に吹っ飛んだわね。
(フィーネ)ま、あいつなら大丈夫でしょ。じゃ、第五幕『非現実と日常』でおあいしましょう♪♪
激突は次回か〜。
美姫 「うずうず」
……こっちでもうずうずしてるよ〜(泣)
美姫 「駄目、我慢できない。離空紅流、紅閃!」
ぐげろばぁぁぁぁーーーー!!
い、いきなりかよ………バタリ。
美姫 「それじゃあ、次回を待ってるわね〜」
美姫 「ほら、浩。これぐらいでくたばらないでよ。まだまだうずうずしてるんだから。
……起きないわね。そっか。こうして、身体を木に括りつけて。
うん、これで良し。これなら、ちょっとやそっとじゃ倒れないでしょうし…。
それじゃあ、行くわよ〜〜」