『HOLY CRUSADERS』





    第六幕『自動人形と悪魔』





高町家に来て一週間目の夕方、家に帰りついたシルフィは部屋に戻ってロゼットに膝枕をしてもらっていた。

ロゼットはひざの上に載っているシルフィの頭をなでながらシルフィにたずねた。

「ねえ、シルフィ。ほんとにここに悪魔いるのかな?」

 ロゼットはあまりの平和さに少し疑問を抱いているらしい。確かに、悪魔がいるといわれてきてみれば、そんな気配は全くない。

むしろ、平和すぎて恐ろしいような気もする。

「時代が変わったんだよ。こんな街中じゃ、前みたいにおおっぴらに人を拉致るのは不可能だし、

アイオーンみたいな奴がいたらかえって目立つだろ?向こうも攻めあぐねてるんじゃないかな?むしろ、

悪魔は表に出てこないで人を使うのが定石なのかもしれないね。でも、それなら俺たちじゃなくて警察の仕事だし。

ま、その辺りは手を打ってるようだから安心してもいいんじゃないかな?とにかく俺たちが討つのは悪魔。人を討つのは警察だ。」

 シルフィはそういって起き上がった。そろそろロゼットの足がしびれてきたようだ。ちょうどそのとき、ドアがノックされた。

返事をして入ってきた人は、美由希だった。

「あ、お取り込み中でしたか?」

 美由希は二人を見てそういったが、シルフィはそんなことないよといって用事があるならと立ち上がる。

それにしてもシルフィの背は高い。美由希も161センチあるが、シルフィは196センチもある。

美由希はかなり見上げることになってしまう。シルフィは長い話だったら美由希の首が疲れると思いいすに腰掛けた。

「えっと、この前、恭ちゃんと闘ったんですよね?」

「まあ、見てのとおりだけどね。」

 シルフィはそういって美由希に次を促す。

「私、いつも夜、恭ちゃんに稽古つけてもらってるんですけど、良かったら今から少し相手をしてもらえませんか?」

 その美由希の申し出にシルフィは少し驚いたが笑顔でいいよと答えて部屋を出た。ロゼットはそれじゃあと机に向った。

どうやら日本語の勉強をするようだ。

 玄関を出ようとしたとき、ちょうど、恭也が学校から帰ってきたところだった。正確には翠屋の手伝いから帰ってきたといった方がいい。

「出かけるのか?」

 恭也が美由希にそうたずねた。美由希はシルフィさんと手合わせするといって玄関を出る。

シルフィは、恭也に加減はするといって美由希の後を追う。恭也は二人を見送ると何か考え込むかのように頭を落とし、部屋に入った。

(偶然とは思えない・・・。あれはどう考えても故意だ・・・。)

 何のことかははっきりしないが、何か深刻な問題を抱え込んでいるような雰囲気を持ったまま八景を抜き放つ。

(しかし・・・だが、しかし・・・。)

恭也は黙ったまま八景を収めると、木刀を手に道場に向う。

(守らなければならないものを守るのが御神の剣だ・・・。)

 ある一つの思いを胸に恭也は道場で一人、素振りを始めた。







 同時刻、八束神社に美由希とシルフィの姿があった。いや、もう一人、そこで巫女のバイトをしている那美の姿もあった。

「あ、美由希さんこんにちは。」

 那美は境内を箒で掃きながら美由希に挨拶する。

「那美さん、こんにちは。」

 美由希もそれに応じて挨拶をする。那美は美由希の後ろに立っていたシルフィの姿を見てシルフィにも挨拶をする。

「あ、最近うわさの転校生ですよね?始めまして。神咲那美って言います。」

「こんにちは。いま、美由希ちゃんの家にホームステイさせてもらってるシルフィ・H・ヒースクリフだよ。よろしく。」

 シルフィも那美に挨拶をして握手する。那美の身長は156だからその差は実に40センチ。

ここまでくるととてもではないがまともに顔を見ることもままならない。

「あ、あう・・・。身長高いですね・・・。」

 うつむいて首をさすりながら那美はシルフィにそういう。シルフィも大きすぎると何かと不便なようだ。

美由希は那美に今日も使わせてもらうということを伝えて裏の林に入った。





 日も落ちた6時過ぎ、二人は倒れた木に座っていた。

「しかし、よくその歳で御神の剣をそこまで修めたね。俺もまだ射抜以外修めてないのに。」

 シルフィはそういって美由希の剣腕をほめた。事実、シルフィの服は何箇所か斬られていた。美由希の服も何箇所か斬られていたが、

表立った外傷はない。

「そんなことないですよ。シルフィさんには及びませんし。」

 やはり、美由希が負けたようだ。しかし、シルフィにそこまで言わせる美由希の剣腕もさすがといっていいだろう。

「さて、そろそろ帰ろうか。大分暗くなってきたし。」

 そういってシルフィが立ち上がったそのとき、何かのうめき声が聞こえた。それは美由希にも聞こえていたらしく、

うめき声の先を見つめる。

「この声・・・」

 そう。その声は以前夜の稽古で恭也が殺した悪魔のそれだったのだ。しかし、美由希はそれがなんなのか把握しきれていない。

しかし、シルフィはそれが悪魔のものだと理解していた。

「どうやら、話は本当みたいだね。」

 シルフィはヤシャを抜き放つとうめき声の先をにらみつける。暫くもしないうちにその目線の先から悪魔が現れた。

それは以前恭也が殺した悪魔と同じ姿をしていて、どう見ても二人を敵視している様子が見て取れる。

「美由希ちゃん、ちょっと動かないでね。」

 シルフィは言うが早いか近くの木に手をつけると、その場から一瞬にして消え、次の瞬間、

目の前に現れた悪魔は数箇所から血(?)を流し、その場に倒れこんだ。

それは間違いなく御神の奥義の中でも最長の射程距離を誇る高速の刺突技にしてシルフィが唯一使える御神の奥義『射抜』だった。

射抜の直撃を喰らった悪魔は確実に息の根を止められ、二度と動くことはなかった。

「始末するにもしようがないね。まあいいや。ここに埋めよう。」

 そういって近くにあった、以前恭也たちが悪魔を埋めたときに使ったスコップを使って現れた悪魔を地中に埋めるシルフィ。

そのこなれた光景を見て美由希がシルフィに問いかける。

「これがなんだか・・・知ってるんですか・・・?」

 その美由希の問いかけに悪魔を埋め終えたシルフィがヤシャを手にとって返事をした。

「まあね。でも、ちょっといえないことに入っちゃうかな。いずれは言わなきゃいけないんだろうけど、まだその時期じゃないし。」

 シルフィはそういうと美由希に先に帰るようにいい、その場に残った。

美由希の気配が完全に消えたことを確認して悪魔を埋めた地面に目を落とすシルフィ。

(とはいえ、やっぱりいたか。やれやれだね。でも、代行者(アポスルズ)のところには現れないとなると・・・。

推測しだいではまだ代行者(アポスルズ)を必要とする領域までプロセスが進んでないと見るべきかな。

ということは、今は秋姫ちゃんよりも他の人のほうが危険っていうことにもなるね。

ま、どちらにせよ、パンデモニウムは復活させるわけにはいかないんだけど。)

 ひとしきり地面を見つめていたが、シルフィもその場を後にした。シルフィの推測、

他の人のほうが危険という推測はまさしく的中していた。しかも、それはこの後すぐ起ころうとは誰が予測しただろうか。





 シルフィは迷っていた。来たとおりの道を戻ったはずなのに、いつの間にか今まで来たことのない場所に出ていたのだ。

かれこれもう30分は歩いている。

(弱ったな・・・。携帯も家に置いてきてるし・・・。小銭も持ってないもんな・・・。)

 シルフィはどうしようもない状況の中とにかく道の続くように歩いていた。

(どこかに交番ないかな・・・。)

 完全に迷子状態になってしまったシルフィは目の前にあったコンビニに向って歩き出した。

どうやら地図をみて何とかしようと思っているらしい。と、そのときコンビニから忍が出てきた。

どうやら立ち読みをしていたようだ。手には何も持っていない。忍もシルフィに気がついたのか手を振ってシルフィのもとにいこうとする。

が、そのとき、一台の真っ黒な車が赤信号を無視して法廷速度を優に超える速度で二人の間に割って入った。

いや、シルフィにはそれが確実に忍を狙っているように思えたのだ。

シルフィはそう気付いた一瞬すぐ隣にあった電柱に手を当てると一瞬にしてその場から消えた。

忍も自分に向って車が突っ込んできていることに気付き、避けようとするが、もう間に合うような距離ではない。

と、そのとき、車ではなく何かに弾き飛ばされた。一瞬何がなんだか理解できないうえ、力一杯突き飛ばされたために、

足を捻るかたちで尻餅をついてしまう。と同時に車に何かがはねられる音が忍の耳に届いた。

忍は顔を上げると、車は既に走り去り、道路には頭をさすっていたシルフィが目に飛び込んできた。

「シルフィ君!!」

 忍はシルフィの名前を呼んでで駆け寄ろうとしたが足を捻ってしまっていたため、立つことができなかった。

シルフィは忍が無事であることを確認すると、立ち上がって忍の手をとって立ち上がらせた。

「ん。怪我はないみたいだね。いや、足捻ってるのかな。」

 そういってしゃがみこんで足首を見るシルフィ。しかし、忍はそれよりもシルフィの方が心配だった。

「ちょ、ちょっと、シルフィ君は大丈夫なの?」

 音とその直後の状態からしてシルフィが車にはねられたことは明白だが、シルフィはまるで何もなかったかのように平然としている。

「ああ。大丈夫だよ。跳ねられ方っていうのがあるからね。うまくはねられたら怪我はしないんだよ。」

 そういいながら忍の足首を少し握る。忍の顔が歪んだのを見ると歩けそうにないなとつぶやいて忍をおんぶした。

「だ、大丈夫だよ。」

 忍は顔を少し赤らめてそういったが、どう考えても歩けるような状態ではなかった。捻った足首は赤くはれていたのだ。

「いいからいいから。家まで送っていくよ。っと・・・忍ちゃんの家についたら警察にも連絡しなきゃね。」

 シルフィはそういうと忍に道を教えてもらいながら忍の家までたどり着いた。

「これはこれは・・・・。豪邸だね・・・。」

 忍の家に着いたシルフィは第一声にそういった。

「そうかな・・・あんまり考えたことなかったけど・・・。」

 忍はそういうが、その広さたるやすさまじいものだった。シルフィは門を開けて広い庭を抜け、ドアの前に立つとドアが勝手に開いた。

正確には内側から薄紫色のショートヘアーのメイドが開けたのだ。

「お帰りなさいませ。忍お嬢様。」

 そのメイドは頭を下げると表情一つ変えることなく忍を背負っている男性に顔を向けた。

シルフィはそれに気付いて自己紹介とここに来た経緯をメイド、ノエルに話した。

「そうですか。ご迷惑をおかけしました。」

 ノエルはそういうとしのぶを受け取り、ソファーに座らせた。シルフィはそれを見ていたが、ふとあることを思い出して忍に話しかけた。

「あ、忍ちゃん、よかったら地図を貸してくれないかな。実は道に迷っちゃってて恭也の家がわからないんだ。」

 今になって自分が道に迷っていたことを思い出したようだ。忍はノエルに地図を持ってくるように言う。

ノエルが地図を取りに席をはずすと忍は改めてシルフィに御礼を言った。

「ありがと。助かったよ。」

 シルフィはそれを聞き、大事にならなくて良かったよと返し、さっきのことについてたずねた。

「ねえ、俺が見たところさっきの車、ただの信号無視というよりはあからさまに忍ちゃんを狙ってるような気がしたんだけど。」

しかし、忍はそんなことないよといって否定した。

シルフィはならいいけどといって地図を持ってきたノエルから地図を受け取ると忍の家を後にした。

「またですか?」

 シルフィがいなくなると、ノエルは無表情で忍のほうを向いてそういった。

「だね。シルフィ君には感謝だよ。今回は本当に危なかったから。」

 忍はそういってソファーから立ち上がって歩き始めた。不思議なことに、足の怪我はもう治っているようだ。

 シルフィは家をでて庭の真ん中ほどまで行くとそこで立ち止まった。

(やれやれ・・・。さっき別の人が危ないとは思ったけど、まさかその人がこんなに身近にいたとはね。)

 シルフィはそう思いながら、顔を上げて一言。

「でてこいよ。」

 そういうと、何もなかった空間から十数体はいるだろう悪魔が姿を現した。

「人の家の敷地内ではやりたくないんだけど・・・。」

 シルフィはそう愚痴をこぼしながらヤシャを抜き放つ

「では。はじめようか。」

 その一言がきっかけとなり、悪魔が次々とシルフィに襲い掛かった。

シルフィは一刀のもとに一匹を切り伏せると片手をついてその場から消えた。

振り下ろされた悪魔の太い腕がついさっきまでシルフィのいた場所をすさまじい音を立ててえぐる。

「な、何!?」

 家の中にいた忍もその音に驚いてノエルとともに家からでてきた。シルフィはそれに目をくれることなく悪魔を一匹、一匹と

確実に殺していく。ノエルはその姿を見て自らも加勢に向った。

ノエルはシルフィの後ろに回った悪魔を腕にいつの間にか腕に装着したブレードで真っ二つにする。

シルフィはノエルに一瞬目をやるが、すぐに目の前の敵と向かい合う。二分後、その場にいた悪魔はすべて地に伏していた。

「シルフィ様、これは・・・。」

 ノエルはその先を言いよどんだが、シルフィはそれに答えることなく手を地に着いてその場から消える。

と、同時に忍の横に一匹の悪魔が姿を現した。忍は一瞬何がなんだかわからなくなってしまった。

SFもどきが現実になって思考がフリーズしているようだ。しかし、その悪魔が忍を襲うことはなかった。

後ろからシルフィが息の根を止めていたからである。

「まったく。街中でも堂々と襲ってくるあたり、前とは少し違うみたいだ。」

 そういいがらシルフィはヤシャについた血を振り払う。その前で、忍は腰が抜けたのか、その場にへたり込んだ。

ノエルは忍を抱えて家に入る。シルフィもそれについて再び忍の家に入って言った。

「ありがとうございました。」

 ノエルはそういって再びシルフィに頭を下げた。

「そんな。こちらこそあなたの手を煩わせてしまって申し訳ありません。」

 シルフィもそういって頭を下げた。

「ね、ねえ・・・シルフィ君・・・。いまの・・・・何?」

 忍はさっき自分が見たもの、悪魔についてそれがいったい何なのかをシルフィにたずねる。

「んー・・・なんていうのかな・・・。ちょっと説明しにくいんだけど・・・。あ、それよりも先に質問。

忍ちゃん、誰かに狙われていたりしてない?」

 シルフィは、悪魔に対する返事を濁し、代わりに忍に誰かに狙われてたりしないかどうか尋ねた。その問いに忍は言葉を濁した。

表情から見ると、言っていいのか悪いのか迷っているようだった。シルフィはその表情から事情を悟り軽く頷く。

「そいつらと少しは関係があると思ってていいよ。でも、ほんの少しっていう程度だろうけど。」

 シルフィはそういってノエルのほうを向く。

「あと・・・」

 シルフィはノエルに何か言おうとしたが、まだ名前を教えてもらっていない。ノエルもそのことに気づいたのか、

「私はノエル・K・エーアリヒカイト。しのぶお嬢様のメイドです。」

 と、簡潔に自己紹介をした。

「ノエルさんにはあれがなんだかわかりますよね?」

 シルフィのその言葉にノエルが頷く。

「連中は人前にはほとんど姿を現さないんですけど、今回こうやって出てきました。おそらくここに何か、

連中が必要とするものがあると思うんですが、心当たりありませんか?たとえば、アンティークものとか、オカルトめいたものとか。」

 ノエルはしばらく考え込んだが思いつく範囲ではありませんといって首を横に振った。

「そうですか・・・。しかし、ノエルさんの戦闘能力の高さには驚きましたね。自動人形・・・いや、

エーディリヒ式・最後期型でもここまでできるのは果たして何体あることか・・・。」

 そのシルフィの言葉に今度は忍が驚いた。いや、ノエルも表情には表れていないものの、少なからず驚いている。

何せ二人はまだ会ってから二言三言しか話していない上、会って十分そこらしか経っていないのにノエルを自動人形と見破ったのだから。

「シルフィ君・・・いつ気づいたの・・・?」

 忍がシルフィに恐る恐るそう聞く。少し警戒しているようにも見える。シルフィは二人を見比べて、

「んー・・・。昔からいろいろとあってね。人じゃないものとか、そういうのには敏感なんだ。というか、さっきのあれもそうだし。

ノエルさんは会ってすぐにわかったよ。動かないのだけど、一回だけ自動人形は見たことあるし。

それに、忍ちゃんもどちらかといえば混血種の一族なのかな?俺と同じで。」

 シルフィの最後の一言の意味はその場にいた二人にはわからない。いや、仮にロゼットがいてもその意味はわからなかったかもしれない。

しかし、忍は自分の正体も気づかれていることに驚きを隠せなかった。

「まあ、俺はいろんな意味で特殊だし。そんなに気にすることないよ。

っていうか、自分でもこんな能力はいらないと思ったりもするときあるんだけどね。」

 シルフィはそういって笑う。その笑顔はどことなく自嘲的な表情を見て取れた。

「え・・・と・・・。」

 さすがに、短時間のうちにいろいろなことがありすぎて頭の整理が追いついてないような忍。シルフィはそれを見て、

「ああ、掟とかについても知ってるから。大丈夫だよ。誰にも言わないから。・・・・さて。じゃあ、そろそろお暇するよ。それじゃあね。」

 といって、忍の家を後にした。最後は言いたいことをある程度言って無理やり話を打ち切る形になってしまったが、

シルフィはさほど気にしていないようだった。シルフィがいなくなった後、忍はノエルに話しかけた。

「ねえ、ノエル。シルフィ君は・・・・。」

 そこまでいってノエルの返事を待つ忍。一呼吸おいてノエルが話し始めた。

「彼があの人の手先だとは思えません。かといって、私や忍お嬢様の正体をこの短い時間で見破ったり、

あれほどの戦闘能力を持つあたり、ただの人とも思えません。

それに、さっき、忍お嬢様の正体を知っていると話したときに『俺と同じ』といっていました。

おそらくは、何か隠しているものと思います。しかし、今までの経緯からして、私たちの味方と思って間違いないかと。」

 忍はそれを聞くとふとあることを思いだした。

「あ、誓いを立ててもらうの忘れてた・・・。」

 とはいえ、もうシルフィはこの場にはいない。しかし、今までの経緯からすれば、

友達という形で付き合っていきそうな気がすると忍は思っていた。

「とにかく、今日はもうねよっか。いろいろありすぎて疲れちゃった。」

 忍はそういって自室に向かった。



夜の闇に包まれた月村家の前庭。そこに一人の女性が現れた。

「ふふ。やってくれるわ。まあ、それぐらいはしてもらわないとあの子を産んだ意味はないものね。」

 不意に現れた女性はそういって月村家を見上げる。

「とにかく、あれを手に入れさえすれば残るところは後二つ・・・。『アポスルズ』日下部秋姫と光の歌姫の消去・・・。」

 そこまでいうとその女性の後ろにまた違う女性が姿を現した。

「私が出張れば一番早いんだろうけど、ここで正体を明かすわけにはいかないし。後は頼むわ。黒炎のフランマ。」

 そういうと後ろの女性はぶっきらぼうに、

「わかっている。あれは必ず手に入れるさ。そっちもしくじるなよ。極星のステラ。」

 そういって再び闇の中に消えた。





夜は深深と黒い闇を湛えて。





光を蝕む闇の影は





シルフィたちが思っているよりも近くにあった。







あとがき


という訳で第六幕です。

(フィーネ)経緯からすると忍ルートなのかな?

(フィーラ)でも、ラストの光の歌姫って・・・。

まあ、思ってのとおりでいいと思うぞ。あれ?フィーリアは?

(フィーネ)浩さんのとこ。私たちが行ったから自分も行きたいって。

迷惑をかけなきゃいいんだが・・・・。

(フィーラ)ところで、ラストに出てきた人たちは?

それは後でのお楽しみ。ここで書いたらネタばれだろ?

(フィーネ)わかることといったら、名前の由来がラテン語ってとこかな?

お、物知りだな。そのとおり。フランマはラテン語で炎、ステラは星って意味だ。

(フィーラ)まあね。ところで、シルフィはなんで前回恭也の神速についていけたの?

空絶の応用だな。腕にしか使えないとはいえ、一応使えるわけだから。手を足代わりにして、一足飛びをすると考えてもらえばいい。

だから、直線運動しかできないし、有効範囲は神速とは比べ物にならないほど狭い。相手が特攻してくるとわかってない限り使えないな。

ちなみに、射抜しか使えないのは神速に追いつくために使う空絶で体内の気のほとんどを使うから、『斬り』よりも動きの少ない『突き』

しか使えないからだろう。

(フィーネ)へー。いろいろとあるんだ。じゃあ、次回は?

聞くまでもないと思うが。次回は恭也が主に活躍。

(フィーラ)させられるの?

頑張ります。はい。

(フィーネ)じゃ、いつもの!!

やっぱり?

(フィーネ&フィーラ)一刀両断神断龍月二葉!!!

はぐぅっ!!!!!!!!!!!!!!

(フィーラ)という訳で、第七幕『双翼、魔絶つ刃』でおあいしましょ〜。


おおー!何やら、曰くありそうな人物が出てきたね。
…………あれ?
おーい、美姫〜?
美姫 「ああ、ごめん、ごめん。ちょっとお客さんを案内してたから…」
フィーリア 「初めまして、お邪魔しますね」
う〜ん、千客万来だね。
どぞどぞ〜。
所で、ラストに出てきた人たちって?
フィーリア 「それは、私も教えてもらってないの」
美姫 「そんな当たり前の事、聞くんじゃないの!」
ぐっ。じゃ、じゃあ、次回は恭也が活躍するみたいだけれど。
フィーリア 「みたいですね〜。私も、まだ次回の話は知らないので…」
そ、それもそうだよね、うんうん。
美姫 「ちっ! 人が突っ込む前に」
何か言ったか?
美姫 「ううん♪ な〜んにも〜♪」
ぶ、不気味に怪しすぎるんだが、触らぬ神に、だしな。
美姫 「さて、それじゃあフィーリアちゃん、向こうで一緒に遊びましょうか
フィーリア 「はい」
よし、俺も〜。
美姫 「何しようかしら」
トランプでもするか?
美姫 「チェスも良いわね〜」
よし、対戦だ、対戦!
美姫 「アンタ、弱すぎるから却下!」
のぉぉぉぉ!
って、フィーリアは何がしたいんだ?
フィーリア 「私は、浩さんが再生する所を見てみたいです」
美姫 「あ、それは良いわね〜」
いや、おい、待て!
ちっとも良くないぞ。
フィーリア 「美姫さん、お願いしますね」
美姫 「まっかせないさい!」
いや、だから、人の話を聞け……。
美姫 「バラバラにしてあげるわ♪」
そ、そんなに可愛く言っても、内容が残酷だぞぉぉぉぉ!
美姫 「秘剣、風塵凰乱舞!!」
ぬぐぅぅぅぅぅぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
がぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁっっっ!!!!!
美姫 「まあ、ざっとこんなものね。後は、2〜3時間待つだけよ」
フィーリア 「楽しみですね」
美姫 「それまで、何かしてましょう」
フィーリア 「はい。それでは、皆さん、次回の第七幕のあとがきでお会いしましょう」
美姫 「次回も楽しみに待ってるわよ〜」



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