お読みくださる皆様へ
この作品では「IZUMO2」「とらいあんぐるハート3」のクロス作品ですが原作とは違った人間関係や世界関係が成り立っています
念のためですが「恭也は一歳だけ年が若くなってる」「海鳴の住人の一部が出雲に居ます」
「IZUMOのキャラの数人が、とらハのキャラと入れ替わってます」
ご容赦ください
トライアングル IZUMO
不破たる剣の閃記
6話「異世界での初日」
「琴乃さん!?」
「おねえちゃん?」
「勇吾!?」
消え去った二人の名前を叫ぶが後の祭りである。
小太刀の模造刀を構えなおし駆け出す。
「俺は2階と3階を探す!二人はこの辺で待っててくれ!」
恭也の足は速く、言った傍から彼女達の視界から消えた。
展開の急さに反応できない二人だが、それでも気をとりなおし
「せめて、この辺だけでも探そう!」
「はい!」
やはり行動的な二人であった。
「何処に行ったんだろ・・?」
先ほど調子よく探し始めた二人だったが結果は芳しくなかった。
何処の教室からも発見できず、まさかと思って食堂の冷蔵庫の中も調べたのだが居なかったのだ。
「帰った」と言う選択肢もあるが琴乃の性格ならば明日香を置いて帰る可能性は低い。
「おねぇちゃん・・・・」
だとしたら此の場には琴乃は居ないことになる。
うすうす感じてたのか明日香の声は弱弱しく怯えていた。
「ダメだな・・2階にも3階にも居ない」
「うわ!」「きゃっ!」
唐突に現れた恭也に二人は言うまでも無く驚いた。
此の時恭也は此処が戦場であるかのように感じて自覚は無いが気配を遮断していた。
「帰った・・のかな?」
「とりあえずだが師匠や綾香さんに連絡するべきだろう?俺たちまで行方不明扱いされかねん」
言いながら携帯電話を取り出しコールしようとした。
だがモニターには電波状況が悪いのか圏外と表示されている。
「むぅ」
「とりあえず帰って、おじいちゃんに相談しようよ?」
恭也も芹の意見に賛成であり、不安そうな表情の明日香に声を掛けながら行った。
芹の機嫌は最悪になってしまったのだが・・
帰宅という案は即効で却下となってしまった。
理由は明確である
「アオウン!!」
「ガウゥゥ」
闇の中で雄叫びをげながら牙を剥き出しにしてくる大型の狼を相手に小太刀で正確に急所を突き刺す。
時刻的には夜で辺りは暗く、夜目の聞かない明日香と芹を後ろに下げて恭也は奮戦中だった。
「ちぃ」
鍛錬で夜目が利くといっても獣のソレと比べて劣る。
今は数が少ないが増えれば話は別である。
正直に言えば自分だけならば良いが二人を守りながら戦うのは少々酷なのだ。
「一旦校舎に戻るぞ!」
手合図で後者に行けと二人に命じながらも殿で夜の闇を睨みながら考えていた。
(勇吾と琴乃は無事なんだろうか?)
「此処で野宿って事になりそうだな」
「やだ・・・着替えも無いのに・・」
外の現状を考えれば仕方ない事だが抵抗はあるのだろう。
女の子らしい事を良いながら明日香は困った顔になる。
「仕方ないけど、朝一で帰って着替えましょ」
「うん・・・」
同じく女性である芹の説得で何とか納得はしたが顔に笑顔は浮かばない。
琴乃の失踪や謎の怪物の襲撃
常識的に考えれば現実逃避していてもおかしくないほどの異常さなのだ。
「すまない、明日香ちゃん」
「ううん、お兄ちゃんの所為じゃないよ!キャンプみたいで楽しいし」
恭也の心情を汲み取ったのか無理やり笑顔を作る。
他にも雰囲気を変えようとした意味もあるのだろう。
つい、芹も恭也も小声で笑ってしまった。
「でも、寝るとなると何処で寝る?」
「だったら保健室にならベッドも毛布もあるよ」
明日香の提案に少なくとも芹は異論は無かった。
だが恭也は違っていた。
(雑魚寝よりはマシだが・・・俺は男だぞ?まさか男性として見られてないのか?)
何処かの少女に間違えられる海鳴市在住のS・Aさんと同じような悩みを持ってしまっていたりする。
実際は色々と違うのだが彼がソレに気づくかと言うと当面は期待できないだろう。
史実がそう語っているのだから仕方ない
「・・了解した」
少々恭也が落ち込んでしまったのだった。
「さて・・・」
保健室で入り込むと直ぐに二人は寝てしまった。
悩みや問題が起きたときに眠くなるのは良くある事である。現に作者も高校時代に試験勉強期間中ほど良く眠れた時期は無いのだからだ。
話しはズレたが恭也は保健室の外に居る。
「勇吾・・琴乃・・」
保健室の鍵は蛸ひもを使った密室トリックで鍵をかけたままで部屋の外に出て考え事をしていたのだ。
別に保健室の中でも問題は無いかに見えるが同部屋の二人を考えると色々と不味い気がしたのだ。
(色々疲れたな)
本当に疲れていたのだろう、恭也は一つの事を忘れていた。
「GALOOO!」
「くぅ!」
謎の怪物は校舎の外だけではなく中にも居た事である。
そもそも最初に戦ったのは校舎の中だったのだが外に居た数や大きさで完全に失念していた。
「ちぃ!」
武器を持ち歩かないと落ち着けない癖なのだろうか、保健室に置いてあったカッターナイフで狼の爪を辛うじて捌いた。
そのまま蹴りを入れて吹き飛ばしながら身を低くして突進する。
武器がカッターナイフである、狙える場所は嫌になるくらいに少ない。
「・・・?」
だが突進は直ぐに止める事になった。
突如現れた根が狼を縛り上げて窓の外に放り投げたのだ。
「何だ?」
「恭也様・・」
振り向いた先には優しい笑みを浮かべた女性が立っていた。
「誰だ?」
初対面の女性に警戒剥き出しになるのは気が引けると感じつつも状況が状況過ぎてせざる得なかった。
何よりもタイミングが良すぎたのだ。
「私は、蔓と申します」
「蔓?」
蔓と聞いて植物を連想するが直ぐに考えを打ち消した。
一度目は襲われ2度目は助けられた。
そして目の前の蔓と名乗る女性。あまりに出来すぎている。
「先ほどは、お見事でした。私を倒したのは貴方が初めてです」
「矢張りか!」と恭也は理解した。
目の前の女性は既に初対面ではない。
既に戦った大型植物なのだ
「私は草木を操る精霊。そして、此の神聖な場所を守護する役目」
精霊と聞いても理解できない恭也だったが一つだけ確かにわかることはあった。
(一人で勝てるか?)
先ほどは明日香や芹たちが居たからどうにか出来たような物だが今は一人しかし居ない。
勝てるかと聞かれて「はい」と答えられない現状だった。
「怖がらないで、今は味方です」
「信用しろと」
期待を良い意味で裏切る言葉だったが嘘で無いという保障は無い。
元々不破家の目的は御神家を守護する事である。
時には暴力ではなく策略を相手にすることもあり、そういった事から相手の言葉を直ぐに鵜呑みにする事の危険性は嫌と言うほど知っていた。
「はい・・・その為に私の主になって欲しいのです」
「主?」
言葉の意味は分かるのだが聞き返してしまう内容である。
何となく月村家の忍とノエルを考えてしまったりしたが、流石に止めた。
「そういう訳で契りを結んでいただければ私の力を行使する事ができます」
「契り・・・?具体的に何をするんですか?」
段々と嫌な予感が恭也を蝕んでいく。
具体的には同じクラスの男子からの嫉妬の視線と数日前に再会した幼馴染からの暴力の制裁だが。
「気を分けていただくだけです。具体的には体を重ねて互いの機を交換する事が出きるのです」
「そうですか」
最早、一刻の猶予は無い。
冷や汗を垂らしながら恭也は逃げる準備をしていた。
このまま行けば帰ってから即刻バッドエンド逝きという末路を想像してしまったのだ。
幼馴染の手にかかってバッドエンドといえば、最早サウンドノベルの世界であるだろう。
「では案ずるより産むが易しです」
「俺の意見は!?」
と、恭也の意見も虚しく蔓の唇が恭也の唇を遮った。
其処から10秒経ち
「此れで契約は終了しました。此れからは私は貴方をお守りします」
「・・ふぅ」
唐突に呼吸困難に陥られさせられた為に呼吸が少し荒かったが直ぐに気を取り戻す。
「最悪の事態は何となく迎えなかったと見て良いだろうな」
ライオンが恐竜に比べれば大人しいという理屈だが。
「はい、本当は其処から先の描写は色々と面倒がありますし、何より作者が書けないから口づけが契約となっています」
「そうですか」
何を言っているのかは分からなかったが、触れてはいけない気がしたのでスルーした。
そうこう言っている内に気が遠くなり始めた。
「では・・後ほど会いましょう」
段々と蔓の声が遠くなっていく
いつの間にか握り締めていた翠色の宝珠を握り締めながら恭也は眠りに落ちた。
「ふあぁ」
目を覚ますと其処は廊下だった。
そして昨晩の事を思い出し
(黙ってよう!)
何故かは知らないが絶対に話せないと心に誓っていたりする。
気を取り直して恭也は保健室に居る二人を起こそうと腰を上げた時
「火事?」
窓の外で遠くが燃えているのが見えた。
麓の方であるという事は分かるが正確な位置は分からない。
詮索する間もなく恭也は屋上へと上がっていた。
(方角は・・・家のほうか?)
現在の搭間家には六介しか居ないはずである。
師が火事程度でどうにかなるとは思っても居ないが昔が昔だけに体が動いてしまう。
屋上に出ると恭也にとっては最悪の事態は回避できたことは分かった。
「馬鹿な・・・」
もっとも、それ以上に厄介な出来事も理解したのだが。
「起きろ、二人とも!」
「んにゃ?」「何なのよ〜恭也〜」
突然に壁を乱暴に開けて起こされたのだが再起動には少し時間がかかるようだ。
一方の恭也にしては寝ぼけていられては困るほどの重要な用件を持つ。
「時間が惜しい!直ぐに屋上に来てくれ!」
多少の寝ボケを残しつつも二人は直ぐに身支度を始める。
何時も冷静な恭也が慌てているのだ。
「嘘」「何処・・?」
「・・・・」
屋上に上がった時には恭也の慌てぶりが分かった二人。
校舎と周りの森は何時もと変わらない風景である。
だが問題は森の向こうだった。
「何で町がないのよ!」
芹の叫びどおり麓にあった街が平原と森と荒地に変わっていたのだ。
もはや明日香など泣く一歩手前である。
士郎の奇行の耐性で少しは落ち着きを取りも出した恭也も
(漂流教室か?)
と昔やってたドラマを思い出すくらいに混乱していた。
「お兄ちゃん!あそこに人!」
「何だって?」
状況の異常さに混乱している中で明日香は確かに人影を見た。
「うん!大体・・・20歳くらいの女性・・かな?でも直ぐに居なくなっちゃった」
「さっすが弓道部!」
芹の褒め言葉と同時に恭也も感心はするが同時に思う
(直ぐに居なくなり、単独行動か・・・偵察の可能性が高いな?)
既に恭也の意識は完全に臨戦態勢に入っていた。
味方かどうか分からない人物を期待するのには流石に抵抗がある。
かと言って二人に水を差すのは不味いのも理解はしていた。
「まずは下に「あ!おうまさん・・」何だと?」
下に降りようと言おうとしたとき、明日香が口を挟んで言った言葉に恭也は更に混乱した。
明日香の言ったとおり馬に乗った人が森から出てきたのだ。
馬は「大斗家からでてきました」ですむかもしれないが、問題は服装である。
無骨な戦国時代の鎧でも色鮮やかな平安時代の鎧でもない。
(何時の時代の服装だ?)
そう思うくらいの作りで動きやすさと急所のみの防御を考えた鎧なのだ。
其処までは芹も同じ事を考えている。
更に恭也は違う場所も見ていた。
(一人、二人、三人・・・数から言ってリーダーの直援と視るべきか)
森の中で隠れている護衛と思われる人のことを考えていたのだ。
「どうする、恭也?」「お兄ちゃん」
「むぅ・・・」
更に追い討ちをかけるかのように二人は恭也に話を上げてきた。
今から行って先に食堂を確保できるか?
それとも助けを呼ぶ為に音楽室やアマチュア無線部やパソコン部の部室に逃げ込むか?
どのプランなら二人を生き延びさせられるか?其処が恭也の最大の焦点で思案している。
「君達!降りてきてもらえないかい?!!!」
リーダーと思われる男は既に恭也達に気づいてたのだろう、大声で叫んでいた。
その言葉に恭也は話が通じると考えたが同時に未だに信用する気にはなれない。
「今は大丈夫だが、その内に悪霊が大量に来るぞ!早く降りて来てくれ!」
その言葉に明日香と芹は完全に顔を青ざめた。
「恭也・・」「お兄ちゃん・・」
此処まで来ると腹を括るしかなくなっていた。
「分かった・・・・今から降りていく!」
大声で叫ぶと恭也は先頭をきって屋上を後にした。
(罠であろうが何であろうが、二人は絶対に俺が守る!)
昨晩の内に理事長室から回収してきた真剣の小太刀を装備して静かに誓った。
7話に続く
後書き
神楽歌:ようやく一章が終わった気がする・・
クオン:ガウ(遅いな、ボケ)
神楽歌:いやGW中は休み無しで一日10時間以上の労働が毎日だったんだぞ!
クオン:ガウル(さて言い訳を無視して、遂にあの人が出たな)
神楽歌:ああ・・・描写がかけなかったから蔓のシーンは物足りないかな?
クオン:アオウ(・・・わざとか?)
神楽歌:何が?
クオン:ガウ!ウウ!!(とっとと逝け!)
数分後に神楽歌は病院に運ばれたという・・死因は出血多量の切り傷多数であった・・
遂に本格的に動き始める。
美姫 「果たして、恭也たちの前に現れたのは敵か味方か」
一体これからどうなる!?
美姫 「消えた二人の行方も心配だしね」
次回も待ってますね。
美姫 「それじゃ〜ね〜」