トライアングル IZUMO   

不破たる剣の閃記

 

 

 

8話「リリカルにて彼女に出番を求む」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・」

「・・・・」

「・・・」

短い休憩を終えて歩き出した3人。

カグツチに教えられた隠れ里まで時間から判断する距離としては目の前なのだが、此処に来て黙るしか出来ない現象が目の前にあった。

「ねぇ恭也」

「・・言うな」

確かに彼等の通ろうとしてる道は周りが森で囲まれてるだけの普通の道である。

其処に「ある物」がなければの話だが。

「踏まないといけないのかな?」

「分からん」

明日香の苦笑交じりの言葉に恭也は答えられるわけも無い。

道の中央にして恭也達から見て14mぐらい先の場所には地面を掘ってから再度埋めた後が複数あった。

 

 

何気に恭也達が立ち止まった理由にはもう一つ。

森の中で彼女は恭也達を監視していた。

「ふっふっふ・・どうやら私の罠に恐れおののいてるみたいね」

頭に枝を2,3本だけ括りつけて身を隠しながら睨みつけ

「視てなさい・・悪霊共」

と言っているが恭也には気配がバレバレだったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森の中の奴だろうな・・・此処まで来ると

「おにいちゃん?」

何となく口にした言葉に意味は分からない明日香。

ソレは置いとくとして彼等は未だに立ち止まったままだ。

「定番ならさ・・埋めた場所の隣とか少し離れた場所が本当の罠なのよね」

「かもな」

ソレが理由だからこそ立ち止まっていた。

(時間稼ぎが理由だったのか?)

と考える恭也に対して先ほどから森にいる少女はというと

(さぁ!其のまま歩きなさい!ほら、ぐぃっと!)

恭也の真剣差を余所に裏口の無い罠と心の中で明言。

このまま行く完全に期待している。

だが・・・

 

 

「・・・仕方ない」

呆れたような表情で回れ右し

「少し遠回りになるが森の中を走っていくとするか」

恭也一人ならば目立つ道を通らずに森を道に選ぶ。

その方が敵に発見されにくいし、大型の敵がいたとしても行動が阻害されるからだ。

「少し疲れるかもしれんが大丈夫か?」

「平気だよ!」

「まぁ、ソレが妥当よね」

移動速度の低下や体力の消費も踏まえたデメリットも残り僅かの距離ならば問題は無い。

森の中にも罠があるかもしれないが、設置できる場所は限られる。

と、恭也達には色々と都合は良いが一人だけ都合が悪い存在があった。

「待ちなさい、悪霊共!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様達、良くぞ私の罠を見破ったな!」

叫びと共に現れた少女を前に恭也たちは

「あはははは・・・・」

「見破ったと言うか・・」

「・・・」

彼女の言葉から確信を得た、あの罠は本気なのだと。

現実を知らないと言うのは不幸なのか、理由は兎に角だが止まったのを好機として愛用の鉄扇を出し構える少女。

「私の名はサクヤ!覚悟!」

駆け出した・・・・罠の上を思いっきり踏んづけて

 

 

「きゃぁぁぁぁぁ!いやだぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

「ねぇ恭也・・・どうする?」

「むぅ」

罠の中に仕込んであった縄が上がり逆さ吊のサクヤが完成していた。

迷うだろう。

目の前の敵味方不明の少女を助けるべきかどうか

「私達の事を悪霊って呼んでたよね?」

「だな。仕方ないか」

悪霊でないのならば助けといて損はないだろう。

そう思って助けようと3人は歩き出した。

しかし

 

 

 

「きゃぁ!」

「えぇぇぇぇ!」

「何!」

 

 

叫び声と共に足の半分が地面に埋まる

(これは・・)

何度も足を上げようとするが地面が粘ったかのように思うように動かない。

地面も何時の間にか泥の沼のような空間が出来ていた。

「粘着質の泥による簡易式非致死性型兵器を使った罠か」

「恭也!何冷静に解析してるのよ!」

二人の漫才を余所に明日香はサクヤを睨むがサクヤも混乱している。

「えええ!私じゃないよ!」

誰が犯人にしても結構ヤバイのは変わりない。

しかし助けとは意外な場所からやってきた

 

 

――恭也様――

ふとポケットの中に入れておいた勾玉が光ってるのに気付く。

落さないように取り出すと声の主に思い至った。

(蔓か!?)

――はい!今から近くの木に頼んで手綱を出します――

その言葉と共に森のほうからツルが恭也たちの目の前に3本飛び出してきた。

「二人とも掴まれ!」

恭也の指示通りツルをロープ代わりにしながら脱出を試みる。

負担こそ大きいものの何とか歩けた。

進めると思ったとき不意に殺気を察知。

 

「があぁぁぁぁぁぁん!」

 

雄叫びと共に6匹もの狼型獣人が迫ってきていた。

「く・・・」

此処に来て手の込んだ罠の犯人が獣人たちと気付く。

もっとも罠の犯人が分かった所で事態が好転するとはいえない。

(芹とサクヤとか言う少女は無理・・明日香ちゃんの弓も足場が足場では難しいな)

相手が一斉に射撃系の武器を使ってきたら回避する手立ては無い。

他にも此処に来る最中に何度かの悪霊との戦いで勾玉を回収することは出来たが、使用のプロセスが理解できず成功確立は半々だった。

少なくとも今の自分達には対抗手段が無い。

言い方を代えれば誰か味方が来ればどうにかなるかもしれない。

(都合のいい想像よりも今は具体的な対処だな)

あえて言うが恭也の性格上で「奇跡を信じる」と言う受動的な答えはない。

自分から進んでいく意思の現れと言える。

が作者は思う。

そういう意思があるから好機というのは引き寄せられるのだと。

予想もしない人がサクヤの出てきた森の反対側の森から出てきたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと・・・なんで恭也さんが居るんですか?と言うか・・此処は何処ですかぁ?」

「那美さん?」「えっと・・だれ?」「那美ちゃん?」

直接的な面識が無い芹は仕方がないとして目の前の人物の出現に二人は驚く。

学校の制服ではなく巫女装束を着込み足元には友達の久遠を連れたドジの代名詞ともいえる学生会長が現れたのだ。

しかし、その3人とは別に那美は普段のイメージを打ち消す表情だった。

「・・・悪霊?分かりました。恭也さん、今助けます!」

懐から小刀を取り出して構える。

はっきり言うがカッコいい。

珍しくシリアスなのだ。

「行きます!」

光りだした小刀を持って突撃。

だが那美は那美であった。

「神咲一灯りゅ・・・「ズルペッターーーン」!わきゃぁ」

何も無い場所で見事に転んだ。

それだけでなく、サクヤが設置したと思われる罠にかかる。

地面から網が飛び出して那美は捕縛されていた。

「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・」」」」」」」」

「うぅぅ・・・私って何で何時もこうなの?」

敵味方全員が止まってしまった。

大体3分ぐらいの硬直の後で1番最初に立ち直ったのは獣人達。

「久遠?!」

いざ駆けようとした獣人達の前に今度は狐の久遠が立ち塞がっていた。

「くぅ〜〜〜ん」

可愛らしい顔と共に威嚇して見せるが相手は顔だけは怖い獣人である。

怯む様子は無い。

「くぅん!」

唐突に久遠が発光する。

「「「久遠?」」」

明日香、恭也、那美が叫んだ先には一人の少女が立っている。

前者二人は目の前の現実が理解できない声、だが那美は流石に自分の友達の秘密は知ってるだけに何で暴露したのかに対する違いがあったのだが。

「きょうやたちはきづつけさせない〜」

その容姿に似合う笑顔と共に暴力的な霊力の渦が吹き荒れる。

「く・・?」

「な、ナンなのよ、あの児」

気配に敏感な恭也とサクヤがソレに気づく。

しかし、目の前の妖怪変幻風の狐少女は可愛らしい笑顔まま

 

 

 

 

             雷

 

 

 

 

瞬間に強烈な電撃が6匹の獣人に襲い掛かった。

某電気ネズミすら真っ青になる電撃を受けた獣人達は一気に消し炭になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん・・あれ・・」

「むぅ」

戦闘は久遠の雷撃によって簡単に終わり、罠も蔓の助けもあって抜け出す事には成功した。

とりあえずサクヤと那美を罠から助けたまではよかった。

しかし、

「フフフフフフフ・・どうせ・・・私なんて戦闘で活躍は殆ど無いんですよね・・・そっちは美由希さんが活躍しますし・・・リリカルでは出番すらなかったり・・」

のように地面に体育座りしながら地面にのの字を書いてたり

「でも美由希さんや忍さんたちが居ない此の世界では・・・(赤面)」

那美が壊れたとしか言えない。

あまり面識が無い芹は引きつった顔で離れてるし、友達の明日香も苦笑しながら悩んでいる。

「きょうや〜」

「久遠でいいんだな?」

声を掛けられた先を見ると人間形態の久遠が居た。

悪霊とか見た時点で今更久遠の変身とかも驚くほどではないのが現実。

と言う訳で簡単に受け入れられたりする。

「なみ・・・おこしてくる?」

「出来るのか?」

此処に置いていくのは不味いが、だからと言っても現状の那美を如何にかできるとは思っても無い。

そういう中で久遠の申し出は嬉しかった。

しかし、少し後悔する事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なみ・・・」

那美の背後まで近づいた久遠は無邪気な笑顔をしている。

本当に邪気の無い笑顔である。

 

「やくたたず(にぱぁ)」

 

その瞬間・・・時が止まった。時の涙さえ見える。

第3者的な立場に居るサクヤでさえ固まってしまった。

恐らく久遠に悪気は無いんだろう。

「く・・久遠?」

引き攣った顔で振り向く那美を無視してトテトテと走りながら久遠は恭也に飛びついた。

「なみおこしてきた〜」

「そ、そうだな」

とりあえず、恭也は久遠を抱きかかえながら意識が遠のくのを押さえ込んでいたという

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9話に続く

 

 

 

 

 

 


後書き

 

神楽:ふぅ・・・ん?何で君らが居るんだ?

猛:俺達が居るのがおかしいのか?

麻衣:クオンなら黒緑に出演してるから代理よ

神楽:そういえばそうだな(忘れてた奴

猛:それにしたって今回は那美ファンから叩かれるだろ?

神楽:ぐぅ

麻衣:そうね・・・私の代わりに当てはめたキャラなのにギャグ扱いされてたら私のファンにも消されるかもね(ニヤリ)

神楽:・・・誰か私を殺した犯人を捕まえてください・・ソレが最後の望みです・・

猛:死んでねぇじゃん

麻衣:最近・・ヘタレになったって思ってるらしいわよ・・元からの癖して

神楽:・・・もうゴールしてもいいよね?

 

 

精神的な虐めを受ける作者に明日はあるのか?<無い

  



え、えっと、どんまい那美!
美姫 「いや、爽やかに言われてもね」
きっと、そのうち良い事があるさ、多分。
美姫 「どうかしら」
こらこら。さて、サクヤも出てきたし、いよいよこの世界についての詳しい話が行われるのかな?
美姫 「どっちにせよ、次回待ちね」
うんうん。一体、どんな展開を見せるのかな。
美姫 「ふと思ったんだけれど、ひょっとして久遠が一番強いんじゃ…」
……ど、どうなんだろう。とりあえず、次回を待ってます。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



頂きものの部屋へ戻る

SSのトップへ



▲Home          ▲戻る