トライアングル IZUMO
不破たる剣の閃記
9話「ネノクニ国際情勢」
「此処が私達の里だよ!」
サクヤの元気一杯の声と同時に森を抜けると一つの集落が恭也達の目に写った。
前回の戦闘から数分後に戦闘を終えてきたカグツチが来た事でサクヤの誤解も解けて一行は案内の元に漸く隠れ里に到着した。
その際の発覚したのだが
「いや〜スマンスマン!里の周りには結界があって普通には入れないんだ!」
と説明し忘れていたらしく、久遠やサクヤを含めた全員から白い視線を受けたという。
「カグツチ様、おかえりなさい!」
「どうでした〜!」
里に入るなり何人かの人から賞賛の言葉や労いの言葉がカグツチ届く。
それに笑顔で答える彼を視るなり
「カグツチさんは良い指導者のようだな」
「そうだよ!お父さんは皆に慕われてるよ」
恭也の問いに笑顔で答えたサクヤ。
やはり父親を褒められるのは嬉しいのだろう。
「それにしてもさ?」
「何だ?」
カグツチを慕う民衆を遠めにしながら珍しく考え込むように芹は言う
「普通さ・・・私達の服装って怪しく思われるじゃない?現にサクヤさんにだって悪霊と間違ったし・・・でも、さっきの人達、私達の事を見ても何て言うかさ・・・」
其れは恭也も感じていた。
普通の異世界へ行く物語の序盤、大抵は主役達の服装の所為で怪しまれるのは良くある。
にも関わらず此処の民衆達はソレが無い。
それ以上に一部の人達は歓迎の気配すら出していた。
「ああ!多分だけど・・」
何かを思い出したかのようにサクヤが手を打つ。
サクヤ曰く
「20年前にも悪霊に押されていたんだけど、異世界から来た救世主と6人の従者の御蔭で平和が取り戻されたからだよ」
何か含みが在るのがサクヤは更に嬉しそうだった。
答えを聞いた一行は何故か変な因果を感じたという・・
「ようこそ、ネノクニへ。私が村の長、アマテラスです」
村の中で一番大きな家の一室で黒い長髪の女性は名乗りながらペコリと一礼した
「アマテラスは俺の妻だ。そして今更だがコッチが俺の娘のサクヤだ」
紹介されたサクヤもアマテラスに習って優雅に挨拶をしようとするが見事に失敗し、フォローを頼むべく父を見る
「後はアマテラスに。俺は軍議に行ってくる」
そんな現状も露知らずカグツチは言い残して部屋を出て行った。
「それにしても懐かしい光景ですね・・あの頃に戻ったみたいです」
「あの頃?」
聞き返す恭也に微笑みながらアマテラスは続けた。
「はい。あの人達が村にやってきたときの事を思い出しまして」
カグツチのことだろうと恭也達は納得しつつ、何故カグツチとアマテラスが結ばれたのか?
日本におけるアマテラスと言う名前。母殺しの神の意味を持つカグツチの名前。
そう言った疑問も有ったのだが頬を染めて思い出にふけってるアマテラスに聞いていいのか正直迷っていた。
「それにしても消えてしまったという御友達の方は心配ですね・・」
気を取り直したアマテラスの問いに芹と明日香は表情を暗くする
「二人とも無事だと良いんですけど」
「おねえちゃん・・」
その心配を打ち消すかのような微笑を携え
「大丈夫です。此処のような隠れ里で保護されてますよ」
と励まし、そして用意していた料理を勧める。
その一方で恭也は考えていた。
(此処の他にも隠れ里か・・・悪霊は分からんが最悪の場合は人間側は一枚岩ではないかも知れんな・・)
「ねぇ恭也君?」
「む?」
ずっと小難しい顔でいては申し訳ないと思い一旦中断して料理を食べていた恭也に同じく料理を頬張っていたサクヤが話しかけてきた。
「恭也君達ってアシハラノクニから着たんだよね?お父さんと同じく?」
「らしいな」
先ほどの持っていた疑問の一つであるアシハラノクニ出身と言われるカグツチ。
考えようとしたが、ソレよりも先にサクヤは目を輝かせ
「アシハラノクニって、どんな所?興味あるんだ!」
その問いに恭也は勿論だが隣に居た那美や芹も悩む。
「どんな所・・・か」
当たり前の世界だっただけに説明は難しい。
と言うか
「此処とは色々と違うな・・」
「と言うよりも全然違いすぎますね」
那美もフォローする。
が、隣で久遠が「なみ、全然ふぉろーになってない」と言われ凹んだ。
「お父さんもそう言うんだよね・・」
凹む那美をスルーして不満げな顔をする。
「それよりも此処の世界について教えてよ?私達、来たばっかりで何も分からなくて・・」
「ネノクニの事?」
芹の返しにキョトンとした表情のサクヤ。
こう言った質問は彼女も予想もしなかったのだろう
「その事については私が説明しましょう」
今まで目の前の光景を微笑ましく傍観に徹していたアマテラスが口を挟んできた。
隣り合うネノクニとアシハラノクニ。
大地を境界線とした根と葦原の関係に似た世界。
アシハラノクニで死ねばネノクニで生を得て、ネノクニで死ねばアシハラノクニで生を掴む。
2つの世界を繋ぐ命の流れが生と死の理。
しかし、その理に悪霊達の王「ヨモツオオカミ」が危機をもたらす。
大軍を擁する悪霊に各地で個別に防衛戦を繰り返す人間と神は劣勢に立たされていた。
「ですが、そこに予言があったのです?」
「そういえばサクヤさん、さっき救世主がどうとか言ったわよね?」
芹が思い出していった言葉に頷きながらアマテラスは続ける。
其処に現れた救世主と6人の従者達。
封印されし四聖を解き放ち見事にヨモツオオカミを倒す。
そして救世主カグツチと従者の一人アマテラスは結ばれ、神となり世界を見守っていく事となった。
「わぁ!ロマンチック!」
つい、明日香は感激の言葉を漏らす。
「と、言うか・・・カグツチさんとアマテラスさんが救世主!」
「そうだよ!」
驚く那美の言葉に偉そうに胸を張るサクヤ。
聞き方・見方によっては親の威光を自慢してるように見えるかもしれない。
が、少なくともサクヤには見当たらないのが回りの見解だった。
「ところが最近になって平和を乱すものが現れたのです」
「ソレが今戦っている悪霊たちのことですね?」
話が終わってない事に気付いていた恭也の返答に頷き
「ヒミコと名乗る王が統率し勢力が一気に拡大してきたのです」
続く言葉に他のメンバーも真剣になった。
全員が理解しているのを確認しつつ
「今の所は何とか互角に戦っているのですが・・・」
(何時戦線は崩壊するか分からない程に消耗が激しい、もしくはヒミコとやらが想像を絶する戦闘力を持っているということなのだな)
言葉を濁したアマテラスの続きに気付くが決して声に出さない。
今に必要なのは良い情報なのだ。
「何か大変なところに着ちゃったな・・」
芹の何気ない一言に連鎖反応が起きる。
「帰りたい・・お母さん」
「おじいちゃん・・・」
「みんな元気出してください」「くぅ〜〜ん」
うつむく芹と明日香に気遣いの励まし出す那美と久遠。
其の様子をアマテラスは微笑みながら
「うふふふふ・・帰る方法はありますよ」
「本当ですか?」
にっこり笑うアマテラスに恭也は内心の動揺を隠しながら聞き返した。
「はい・・原因は兎も角ですが、反魂の術を使うことで生きたまま返せます」
「わかりました・・・ですが、少し待ってもらえないでしょうか?」
喜びあがる明日香と芹に申し訳ないと思いつつ言わずにはいられない。
「お友達の事ですね?」
「「あ!」」
アマテラスの指摘にハッとする二人。
「はい。二人を置いていくわけにはいかないんです」
「そうですね。それまでは、この村でゆっくりしていってください」
此処まで来ると完全に恭也の警戒も解けている。
「ありがとうございます」
先ほどまでのような複雑な裏事情を想像せずに静かに礼をした。
「眠れん・・」
夕食を終え、貸して貰った小屋で寝ようとしたが一行に眠りにつけない。
この2日で起きたことを振り返ると眠気が直ぐに覚めてしまったのだ。
(父さんとの付き合いで慣れてると思っていたが・・・)
それ以上のインパクトを匂わせる発言も気になるが無視。
とにかく眠れないのだ。
「ヤレヤレだな・・」
少し前に隣の部屋から芹や那美が出て行ったのは「心」で確認済みである。
「俺も行くか・・」
「少し良いかい?」
「カグツチさん?」
部屋を出て夜空を眺めていた所、鎧を外していたカグツチが声を掛けてきた。
「どうしても聞きたいことがあってね・・別の事だが、さっきも大須芹さんから聞いた所だよ」
「聞きたいこと?」
疑問点を浮かべる。
アシハラノクニの近況ならば芹に先ほど聞けたはずなのに自分にも聞く。
と言う事は別の事だろう考えた。
「君の動きや構え・・・御神流・・・永全不動八門小太刀2刀御神不破流をやっていないかい?」
「どうして・・・それを!?」
自己紹介のときに「不破恭也」とは名乗ったのは認めるが其処から御神流についてくるとは思いもしない。
動揺を隠せない恭也を微笑みながら
「昔の知人に君が似ていたのでね・・・」
懐かしむように言う
「不破士郎という男を知ってるかい?」
10話に続く
あとがき
神楽:書いた〜ブランクが少し長かったな・・
猛:ヴァルプロ2やってるから遅くなるんだろ?
麻衣:サツキさんが新しい話を出すたびに必死に書いてる時点で終わりね・・
神楽:だって・・・ネタに・・・
麻衣:裏で無名世界とクロスさせようとしてる人の言葉?
神楽:グハァ!
猛:ゲームでの俺の最強武器を赤星に全部やって、俺の代わりに頑張ってる恭也に変な武器装備させるつもりって聞いたが?
神楽:いや・・あの武器はカグツチに縁のある武器だからいいと思う
麻衣:それにしても・・・従者の数(救世主の言い伝え)増えてない?
神楽:ああ・・・一人増やしたな
猛:思いっきり認めてるよ・・
神楽:魔、そういうことで次は早めに・・・
麻衣:20日を過ぎれば停滞するでしょうね・・・
カグツチから出てきたのは、驚くべき名前!?
美姫 「もしや、従者の一人!?」
その辺りは、恐らく語られるだろう。
って言うか、気になる。
美姫 「そうよね〜。次回も楽しみに待ってますね」
ではでは。