トライアングル IZUMO
不破たる剣の閃記
11話「撤退戦」
「・・・大丈夫か恭也君?」
「はい・・・これは?」
響く轟音と未だに散発的に降り注ぐ火の玉の中で二人は走りながら互いの安否を確認する。
戦場を慣れしたんだわけでもなく、一応は平和な世界の民間人でありながら平静を保っている恭也をカグツチは頼もしく思っていた。
「敵襲・・・しかも、かなりの規模の攻撃だろう」
「なっ?!」
突発的な遭遇戦というならば驚く必要もなかったが、大規模な攻撃ならば別だった。
其れは結界の侵入妨害が破られた事を意味している。
「ああ。長距離からの投石器とと呪術による砲撃は悪霊軍の拠点攻めの合図と言って良い」
説明を受けた恭也だが内心では一つの疑念が生まれている。
自分達が来た事が結界を破られた理由ではないかと?
「兎に角だ・・大事な話があるんだ、軍議所に行くが付いてきてくれ!」
「・・・分かりました」
疑念を打ち払うかのように頷くと砲撃を避けながらアマテラスの屋敷の近くの小屋へ走り出して行った。
「して、状況は?」
軍議所に付いた早々でカグツチの問いかけにた一人の側近が報告する。
「敵の数は約1000ほど・・・内訳はヒト型が20、獣型が700に亜人型270。更に大型種が10ほどと思われます」
少し説明が入るが悪霊には幾つかのカテゴリーで分類される。
一つ目の獣型だが要は大型で凶暴になったオオカミや鳥、虫などが振り分けられる。
能力的には人類側の兵士よりも弱いが数が多く実質的に悪霊軍の中核を受け持っていた
亜人種とは狼男などの獣人やゾンビなどをさし、数は獣型よりも劣るが能力は全体的に上まっている
そしてヒト型というのは文字通り人間と姿は変わらないタイプ。だがその能力は標準的な兵を遥かに上回り一騎当千の猛者まで居り、更に指揮官として存在する。
もっとも個体数は極端に少ないのが救いだった。
「現在ですが南の回廊を抜けて此方へ直進しております」
「そうか・・」
副官であるゼンギョウの報告にカグツチは悩む。
数日前の戦闘で勝利したが部隊の再編成は完全には済んでいない。
現在動かせる戦力を考えると互角に戦えるかギリギリである。
―――引くか、戦うか―――
一方、森に突入した悪霊軍の先鋒と人間の軍は始まっていた。
「でおらぁ!」
激しい怒声の元に放たれた横薙ぎが鎧ごと人を断ち切っていた。
そのミナカタの剣劇には応対していた人間の部隊達が怯ないはずもない。
隙を見逃すはずも無くオオカミのような悪霊が数匹の集団で一人の人間に飛び掛かる。
更には全長4mもある大男が同じく長大な腕を振り回し人間を蹴散らしていた。
(俺は・・・・)
その様子を後ろから眺めていた勇吾は複雑な思いにとらわれていた・・・
「不本意ながら撤退する・・・」
それがカグツチの出した答えだった。
数日前の戦闘で実際に大打撃を与えたにもかかわらず大規模な攻撃である以上、敵も残された戦力の殆どを注ぎ込んだ後のない戦いだと思う。
と、同時に負けられないからこそ絶対の秘策も用意した必勝の作戦の可能性も高い。
「では、女性と子供を優先に撤退・・行き場所はオモイカネ様の里で?」
「頼む・・・」
カグツチの考えは直ぐに理解されていた。
小屋に居た4分の1の人間が出て行き行動を開始する。
「南の回廊での攻撃が山場ですな・・」
ゼンギョウの言葉に頷くカグツチ。
そして恭也は歯がゆく見守るしかなかった。
「何か・・・周りが騒がしくなったね・・」
「悪霊との戦闘が近く始まったらしいの」
明日香の問いに興奮を隠さずサクヤは答えた。
里の重要な拠点に部屋を貸してもらえただけあって彼女たちの所には砲撃は届かない。
それでも慌しく走る人の怒声や足音は十分に彼女たちに異常を知らせていた。
「悪霊!」
芹が驚くがサクヤは逆に不敵な笑みを持っていた。
「今聞いたんだけど南のほうから大規模な部隊で来てるって」
「大規模な部隊・・・」
大規模と言う言葉に不安を隠しきれない明日香だが、サクヤは何時もと変わらぬ笑顔だった。
以外にもソレに気付いたのは那美。
「サクヤさん、何か嬉しそうですけどどうしたんですか?」
「うんうん」
相槌を打つ芹にサクヤは本当に喜んだ感じだった。
「南の回廊には私が考案したスンゴイ罠があるのよ!此れで悪霊共は一網打尽!」
「そうなんですか・・・?」
いかにも聞きたそうな那美の疑問の言葉にはサクヤも答えないわけにもいかない。
と言うか説明したくてうずうずしていたらしい。
「えっとね・・カクカクシカジカ・・・なのよ」
「へ〜そうなんですか」
どうやって通じたのか分からないが余りの規模の大きさに全員呆然としていた。
その罠の目の前で人間の軍の指揮官は木の陰や岩の陰に隠れながら待っていた。
おのおの槍や剣を持って息を殺す。
そして彼等の目の前に悪霊軍の本隊。
「収束と共に開始する・・・突撃準備よろし?」
隊長である彼の言葉に殆どの物が頷いた。
彼等は決死隊である。
敵の数は進撃してきた数の殆どである900
対する人類側は50にも満たない。
彼我の差は20対1.
そうこうしてる間に巨大な火の手が上がった。
「・・・突入!」
その言葉に突撃開始。
地雷の如く設置された火玉(勾玉)の発動と共に巧妙にしかれられた油や乾燥した草に燃え移る。
「30騎は俺に続け!他は右から!」
その燃える空間の中で火の手が上がってない場所から突入した。
火の所為で動きがとれず混乱してる中、予め用意された火の影響を受けない場所を進み指揮官を打つ作戦だった。
だが・・・
「うぇぇぇぇぇぇい!」
火の中から飛び出したミナカタの剣が馬・鎧ごと最後尾の騎馬兵を両断。
同時に矢が降り注ぎ致命傷を追うものや落馬するものが出た。
しかしそれ以上に馬から落ちた指揮官は目の当たりにする。
火が収束していく様を
「は!てめらの作戦は全部お見通しだ!」
どこぞの大学教授と組んでる手品師のように人間軍に指を刺して叫んだ。
(・・・盗聴器でも仕掛けてるのか?)
陣頭に立って鼓舞してるミナカタの後ろで勇吾は思う
詳しくは知らないが秘密の情報源を持つオオナムジはギリギリで気付き、持てる霊力と方術能力の高い部下全てを注ぎ込み火の消化を行った。
多少こそ出たものの打撃と言うには程遠い程度の被害しか受けなかったのだ。
(ん・・?)
ふとミナカタの後ろの藪が微かに動く。
そして何が起きようとしてるのか理解できた。
「ミナカタ!危ない!」
言うよりも早く駆け出し剣を抜く。
大声と共に斬りかかる人間に向かい・・・
「大変です!南の回廊が抜けられました!」
伝えられた情報にカグツチも恭也も焦った。
少なくとも1時間は時間を稼げると思っていた作戦が一瞬で無力化された。
此処まで来ると最早一刻の猶予もない
「武器は最低限に留めとけ!食料は全て放棄・・いや、火玉を仕掛けろ!」
的確な指示をだして残った部下を走らせた。
と、同時に恭也に向かって一振りの刀を差し出す。
「この刀・・本当はあと一振りだけ君に上げたいのだが時間がない・・預ける」
「わかりました・・」
その言葉で恭也は察した。
自分達も早く逃げろと。
「お父さん!」
都合が良いのか分からないがサクヤ達が入ってくる。
だがソレにも慌てずカグツチは捲くし立てるサクヤをなだめた。
「屋敷の掛け軸の後ろに通路がある。其処から川を下って行けば青龍の祠へ行ける!」
「青龍様の祠?」
サクヤだけでなく、青龍と言っても誰だか分からない他の面々も頭に?マークを浮かべる。
その様子すら惜しいと言わんばかりにカグツチは部屋に常備してある弓と矢を取り明日香に手渡した。
「君にも此れを預ける・・・皆、サクヤを頼む」
時間は惜しい。
それは分かっているからこそ言葉は無い。
全員強く頷き返した。
「しっかし・・・こうやって肩を並べて戦うのは久しぶりだな?」
「ですね・・あの頃を思い出します」
大半が撤退した里の中でカグツチとアマテラスを含む部隊が突入してきた先鋒部隊を殲滅しながら立て篭もっていた。
「本当・・・昔を思い出しますわ」
20年以上も前の戦いは今でも彼等には忘れられない。
そして今日の出会いも・・
「さて・・・全軍抜刀!全軍突撃、ガンパレード!敵の本陣を突き抜けるぞ!」
雄叫びを上げてカグツチ達は一陣の閃光となった
続く
後書き
神楽:フハハハハハハハハ・・バタッ
麻衣:なんで海馬コーポレーションのトップのまねやってるの?
猛:いや、其処突っ込むとこ違うし
麻衣:じゃあ・・・神楽歌死亡確認
神楽:つよきすにMSイグルー・・迫るガンプラ・・時間って重要ですよね
猛:要は他にかまけてSS書かなかっただけだな
麻衣:バイトさんが一気に辞めて仕事きついとか言わないようね・・・
神楽:それにしても・・なぁ猛?
猛:?
神楽:お前って主役だよな?
麻衣:恐らく・・
猛:恐らくかよ?!
神楽:いや、ニニギとか剛は勿論だが・・つよきすのレオやデュエルセイヴァーの大河に比べると特徴が薄いよな〜と
猛:だから俺を出さなかったのか?
神楽:いや、俺の基本スタイル。
麻衣:いじけてる彼は放置して・・・どうしたの?
神楽:少しオリキャラに置ける議論が某サイトで展開してな・・俺も色々と考えたのよ
麻衣:貴方の知人はやり過ぎですけどね・・・
神楽:あのキャラですか・・・(滝汗)
余談:物語に出てくるカグツチの副官「ゼンギョウ」の元ネタはGPMの善行忠孝です(だから?)
襲撃に撤退を余儀なくされる!
美姫 「カグツチは恭也たちにサクヤを任せる」
恭也たちは無事に青龍の祠へとたどり着けるのか!?
美姫 「うーん、緊迫した展開が続くわね」
ああ。次回はどうなるのかな。
美姫 「次回も待っていますね〜」
待ってます。