トライアングル IZUMO   

不破たる剣の閃記

 

 

 

12話「青龍の社で」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此処が青龍さまの住んでる祠よ」

川を渡って付いた洞窟を前にサクヤは言う。

が、その言葉には何時に無く緊張感が漂っていた。

「ねぇサクヤ・・・本当にこんなところに青龍って住んでるの?」

「青龍様は四聖の一人だから普通の人間とは住まないのよっ!」

その言葉には少し前までの懐っこさも無く、だからと言って出会った頃の勘違いされていた時の雰囲気とも違う。

(二人のことが心配か・・・)

自分達や他の人員を逃がす為に少ない兵力で殿を務めたカグツチとアマテラス。

アレだけの大軍を相手に無事かどうかは保障できない。

幾ら信じていると言っても安心しきれないとサクヤの内心を恭也は理解していた。

「まったく・・はう!」

だが、その瞬間にサクヤは見事に転んでいた。

恐らく歩を早めようとして石に気付かず躓いたのだろう。

「サクヤさん?今、わきゃっ!」

更に助けようとした那美も転んだ

彼女の場合は何も無い場所なのだが、まぁ那美だからである。

その様子を微笑ましく笑う芹。

「何やってんだぁ、サクヤ、那美・・・・ひぃっ!」

だが洞窟の天井から落ちてきた水滴が服の中に入り込み奇声を上げて恭也に抱きつこうとしていた。

最後まで残っていた明日香だが、

「きゃぁ!」

悪霊とは違う普通の蝙蝠を見て驚いていた。

最早、混乱のきわみである。

「まったく・・やれやれだ」

先が少し不安になってしまったとは言いたくてもいえない恭也だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた方が来るとは分かっていましたよ、サクヤ」

「セ、青龍様?・・」

恭也の不安は見事に杞憂に終わり祠の奥の祭壇に付くと一匹の龍。

それも人間が頭に乗れるサイズ、一言で言うなら漫画○本昔話のOPにでてくる程の巨体を誇る龍が居た。

「うわぁ」

「これが・・」

芹は呆然として那美や明日香が口をあんぐりと上げたままで見上げていた。

そして眩い光と共に。

「よくきました・・・」

其処には青いチャイナドレスを纏った女性が立っていた。

目の前の光景を前に遂には恭也まで呆然としてしまう。

(綺麗な人だな・・ん?)

その清楚な微笑みに周囲の女性や某所に居る女性に○されかねない感情を一瞬だが持ってしまった。

同時に1つ気になったこともできた。

「すいません・・・少しいいですか?」

恭也の問いかけに笑顔で肯定を表す青龍。

しかし恭也の質問は流石に予測していなかっただろう

「何処かで御会いしませんでしたか?」

「はい?」「ええ!」「何ですって!」

反応したのは青龍ではなく明日香や那美たちであったが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「恭也!アンタ、アタシが居るのにフラグ立ててんじゃないでしょうね!まさか、小さい頃に得体の知れない約束でもして・・英国とか!病院とか!それだけじゃなく実は兄弟同然の従兄弟が居るとか、一緒に戦った友人の友人とか!」

何気に的確に当ててる芹には薄ら寒い物があるが、悲しい事に恭也には覚えが無かった。

あくまで覚えが無いだけである・・・

それに気おされながらも声を絞り出す。

「いや・・・近くのCD屋に買い物に行ったときに出会ったような気がしただけだ」

タイトルは「横須賀の呂布」だが其れは置いておく。

何故か視線をずらして微笑んでる青龍に今度はサクヤが話しかけた。

「青龍様・・里がミナカタの軍に襲われているのです。お父様とお母様がっ!」

その言葉に安心させる微笑で。

「あの二人なら大丈夫ですよ。」

一発でサクヤは安心しきっていた。

恐らく何かカグツチの安否を確認できる物があるのだろうか、自信に満ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

「それと、あなた方はアシハラノクニの方々ですが・・どうやら何者かの力によって連れて来られたみたいですね」

何者の仕業と言う点で少し複雑そうな顔をしたが微笑を崩さず言う青龍。

その理由が気にならないわけでもないが今の恭也達にとっては重要とはいえない。

「俺たちは元の世界に帰れるんですか?」

ネノクニ=死後の世界と聞いた以上は簡単に帰れるものではない、と言うか普通帰れるのか?と考えてしまう。

何よりも今のところ1番信頼できそうだったカグツチたちの生死不明は大きかった。

「可能です・・私の力を込めた勾玉を使って反魂の術を使用すれば元の世界に帰れるでしょう・・・」

「帰れるんだ!」

その事実を知って少なくとも明日香と芹は凄く喜んでいた。

那美も背後のサクヤに気を使ったのだろうか表には出してないだけで喜んでいると恭也は思った。

しかし恭也には如何しても言わなければ成らない事がある。

「それほどの大きな術で制約とかはありますか?使える時期とか・・場所とかです」

恭也の覚悟を決めた表情に明日香は一瞬で恭也の考えが理解できた。

「場所につきましては勾玉さえあれば何処でも可能です。ですが、何時でも使えるというわけではありません・・・この術は星の位置や季節の流れに呼応して行う術」

つまり時間は限られていると言う事だろう。

「時間の猶予はどのくらいありますか?」

「殆ど無いといってもいいでしょう・・・恐らくは3日から4日」

何か考え込むと口にした・・・

「里を攻めた悪霊達の移動先は分かりますか?」

 

 

 

 

 

「ちょ、ちょっと恭也?」

「お兄ちゃん?!」

「恭也さん?」

芹や那美は兎も角として、自分の考えていた内容と違う事を言った恭也に明日香は驚いた。

「恭也君・・・」

その一方でサクヤも複雑な表情である。

アマテラスとカグツチの娘と言う責任感からの彼等を帰したいと言う考えと一人でも仲間が欲しいという葛藤があった。

「・・・・聞いてくれ」

一呼吸置くと静かに言う

「川を下ってる最中だが悪霊軍の部隊の中に理由は分からんが二人が居た」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦勝祝いだ!どんどん飲め!」

一方、里を壊滅させた悪霊軍は祝勝会を開いていた。

ミナカタの号令と共にあちらこちらで笑い声や酒を一気飲みする様子が見られる。

全員の機嫌がよくなったのを確認すると全員を見渡せる位置に着き

「そして・・一つ聞いてくれ!」

ミナカタは後ろに控えていた人物たちが出てこれるように場所を開けた。

出て来たのは勇吾と琴乃

その表情は少し硬くなっている。

「此の男はヒミコ様が直々に異世界から召喚した戦士、我らの救世主だ!」

意味も無く「コイツが救世主です」といっても誰も信じないだろうし、まして彼は人間である。

しかし勝利と言うタイミングと先ほどの戦いでの功績。

程よくミックスされた其れは納得と歓声になっていた。

「そして、その隣に居る娘は琴乃・・・多分嫁だ!」

「いや、違うんだが・・」

嫁と言う言葉に赤面しつつも否定する勇吾。

ちなみに琴乃は表面上は困惑していた、内面はヒミコ張りのオーラをだしているが。

「何だ違うのか・・・負債か?」

「何か字が違うが・・・ソレも違う」

どこで名作を汚した監督達の表現を知ったのかは不問である。

「そうか・・・スマン、琴乃は勇吾の友人だ。失礼のないようにするんだぞ!」

また上がる歓声。

いきさつは兎も角だが二人は同胞として悪霊軍に認められていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなぁ・・・」

早く帰りたいが姉も心配である明日香の顔は複雑だった。

「恭也・・」「恭也さん・・」

芹も那美も悩む顔をしているが恭也の決意は固い。

「すまないが・・・二人が一緒じゃないと帰れない!!」

その決意に納得できたのか3人は頷く。

改めて青龍に向き直り叫んだ。

「貴女なら分かるのではないですか?二人の居る場所を教えてください!!」

「分かりました」

恭也の問いかけに簡単に頷く青龍。

此れでもかって位に簡単に了承した事に何故か芹が呆けた。

「普通は試練をクリアしたらとか、実力を見せて見なさいとか言う物じゃないのかしら?」

原作に忠実なシナリオを要求する発言である。

だが青龍はニコリと微笑んだ。

「大丈夫ですわ。此処に来る途中自体が試練ですし」

(((あれがか!!!)))

都合上、削除されたが此処に来る途中は実は大量の罠とかに遭遇していたりする。

定番のインディジ○ーンズ張りの落石や突風の回廊。

はては両脇の壁から激しい勢いで水が噴出する場所での吊り橋をわたるなど多岐にわたっていた。

決して書くのがめんどくさいからとか、後から思いついたとかでは決して無い

作者の言い訳が進む中で恭也は叫ぶ。

「・・・教えてくれ!二人は俺が連れて帰る!」

 

 

 

 

 

13話に続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 


後書き

神楽:今、誰かオレを笑っただろう?

猛:矢車隊長化してるぞ・・・

神楽:どうせオレなんて・・・

麻衣:此れだけ時間がかかっても此れしか進まないんじゃダメね

猛:調子に乗って仮面ライダー響鬼のSSも同時に書こうとするからな・・・

神楽:猛・・オレと一緒に地獄に墜ちよう

猛:落ちるならニニギと墜ちてくれ!

麻衣:此の後書きって意味あるのかしら?

     





青龍の登場で、元の世界への戻り方は分かったものの。
美姫 「まだ、勇吾や琴乃がいないのよね」
で、当然の如く、帰還は一時お預けと。
美姫 「さてさて、次回はどうなるのかしらね」
無事に、勇吾たちに会えるのか!?
美姫 「次回も待っていますね」
待ってます。



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