今回の話につきましては「踊る風様」より使用許可を頂いてます
トライアングル IZUMO
不破たる剣の閃記
15話「塔馬家にて」
「と、言うことがあったのです」
夏の夕刻の搭馬宅の居間で恭也を含めた5人の説明は締めくくられた。
花の大怪獣との対決
学校をでれば周りは見ず知らずの土地。
跋扈する悪霊
日本神話に出て来る神々と同じ名前の人達
四聖獣との邂逅
国津神と同じ名の悪霊軍
真夏の怪談が土下座しそうな内容だが聞き手だった搭馬六介は最後まで聞いていた
「それでサクヤちゃんを連れてきたというわけか」
そう言いながら茶をすする。
ネノクニから脱出する最後にカグツチに言われた「搭馬六介」を頼れという言葉は都合は良い内容であったものの、同時に「何で事情が分かるんだ?」と言う疑問が生まれていた。
その疑問を口にする前にカグツチから託された物を思い出した
「それと此れを渡してくれと頼まれました」
そう言いながら一振りの剣を差し出す。
決して煌びやかな物というわけではない。
「フム・・」
差し出された剣を鞘から抜き出すと業物の独特のオーラを放った刃が現れた
(そうか・・・やはり十拳の剣か)
六介ははるか昔に愛用していた剣を感慨深く見つめる。
明治の頃に予言された希望の光とも言うべき存在にして亡き妻との絆の証である、20年前に分かれた息子へ与えた最後の餞別だった。
「サクヤちゃんといったな・・・」
「はっ、はい!」
突然に声を掛けられたサクヤは驚いたように答える。
同時に恭也達にも緊張が走った。
「2回に空き部屋がある・・・此処を自分の家だと思って過ごしなさい」
その場に居た全員が湧いた
「ありがとう、おじいちゃん」
「よかったですね、サクヤさん」
芹が、那美が祝いの言葉を上げていく。
その微笑ましい光景を見ながら、ふと六介はあることに築いた。
(・・・・此の場合、芹ちゃんはサクヤちゃんの叔母になるんじゃろうかのう?)
とりあえず従姉妹と思っておこうと心で考えていた。
(しかし、本当に色々有ったな)
同行して来ていた琴乃の作った夕食を食べ、そのまま2階の掃除によってサクヤの部屋は完成した。
その所為で全員がクタクタになった、決して那美が足を引っ張ったと言ってはいけない。
(カグツチさんと師匠の関係・・・それ以前に確かに父さんと何故、夏織さんとの関係か・・・)
アシハラノクニで生きていたと言う話だが、ソレは彼の本名を知らなければならない。
それが分からない以上は彼の知己の人物に会うことすら出来ない。まぁ既に会ってるのだが気付くわけもなく。
(それにしても疲れた・・)
そういって茶を一杯啜りながら壁に背中をかけた。
謎の夢に始まり、芹の転校に続いて冒頭のアレである。
疲れないほうがおかしいだろう。
コンコン
「恭也君、入って良い?」
「ヤッホー、恭也」
律儀にノックをするサクヤとは裏腹に勝手にドアを開けて入ってくる芹。
内心苦笑するも黙って座布団を2枚差し出した。
「へ〜始めてはいるけど片付いているのね」
辺りを見渡しながら言う芹に云々と頷くサクヤ。
オフレコだが、この辺は流石親戚だろう。
「ただ単に物が少ないだけと言うかもしれないがな」
平均的に言えば少ないかもしれないが、それが返って和風の良さを引き出していたりする。
作者の散らかった部屋とは大違いだった。
「さて、今後どうするかだな?」
「うん、お父さん達から連絡が来ればいいんだけどね」
宝貝を取り出して頷いた。
「何それ?」
芹の言葉に恭也も首を横に振るしかない。
「霊力で長距離でも会話する道具なの」
「携帯みたいなものか」
そう言うもののサクヤが携帯が何なのかわからないのだが。
それはそうとタイミングが良いと言うか、宝貝から声が聞こえてくる。
「サクヤ、聞こえますか?」
「お母さん!」
「サクヤ、無事だったみたいですね」
貝で喋れるのかと半信半疑だった恭也と芹だったが目の前で繰り広げられてる現実の前に認めていた。
そう感じている間にも昨夜の話は進んでいき
「お母さんが少し代わってほしいって」
そう言いながら差し出された宝貝を手に取る。
「今此方の状況ですが、先の攻勢は成功に終わりました。此れも皆さんの御蔭です」
「いえ・・・そちらこそご無事で何よりです」
そして
「ですが、此方の状況は未だに混沌としています。それに・・・」
「大丈夫です。暫くサクヤは此方で保護させていただきます」
既に六介から了承を取っているので機先を制して言う。
どちらにせよ反魂の術の概要から連続使用は不可能と考えており予測していた事だった。
「うちの父さんの遺言です。一宿一番の恩は忘れるなと・・・」
正確には遺言と言うよりは教訓の分類に入るのだが・・・
そう言ってサクヤに代わり、サクヤも了承したようで二人に向き直り
「此れからよろしくお願いね」
と、此処まではシリアスだったのだが男性の部屋に入る女性。
そして片方は異世界の住人。
彼女たちには恭也の部屋は珍しく見えた。
「なんて言うか・・・いかにも和風って部屋よね」
畳を摩りながら行き成り背中から倒れこむ。
そういえばアメリカに住んでたんだなと久しぶりに思い出す。
念のために言っておくが恭也の部屋には青年が喜び、女性が探すのに必死になるようなものは無い。
それでも恭也としては本能と言うレベルで警戒心を出さなければならないと感じていた。
「この本、何ていうの?」
何時の間にか本棚の隣に居たサクヤが一冊の本を抜き出していた。
「それか・・・まぁ海外の小説だな」
「へぇ〜恭也そんなの読むんだ?」
元々は剣術のアイディアの為に買った小説だが意外と面白く続刊を買い込んでいた物である。
「う〜〜〜読めない」
落ち込むサクヤだが海外だけ会って英語で書かれている。
既に一部では「恭也=成績が低い」と言う認識だが幼少からイギリスに行っている以上は英語だけならば成績は良い筈。
そう言う訳で英語訳版だったのだ。
「具体的に言うなら剣による英雄譚だな」
「え〜っと・・・ケイオウ個人伝?どっかで聞いたような・・」
此れ幸いと恭也は語る。
設定は剣と魔法の世界。
ある日、川で記憶喪失の状態で拾われた主人公「ケイオウ・ロンドゲイル」
知り合った傭兵と共に幾多の戦場を駆け抜け、そして王女との恋。
それでも戦争は続き彼は一心不乱に戦い続けるが悲しい王女との別れと暴走。
そして最後は・・・・
「王道だけど浪漫があるわね」
「うん!素性不明の傭兵と王女って点も感動したよ!」
サクヤにいたっては何げに自分と恭也を重ねていたりする。
しかし・・・恭也は語らなかった。
主役は戦場でバスタードソードの2刀流で毎回特攻したあげくに、ピンチになると体内に貯めた魔力を放出する自爆技が得意技ってことや、その度に集中治療室に担ぎ込まれて3日で退院の繰り返しをしてると・・
(見習いたい物だ)
浪漫をぶち壊すような設定である。
「ねぇ恭也君」
「何だ?」
不意としてサクヤは顔を超至近距離まで近づけていた。
「俺としたことが」と呟く恭也。
「明日、街に言ってみたいんだけど・・」
「そうね・・私も来てからゆっくり見てないし・・・恭也、案内して」
頼むと言うよりは既に確定事項的な言い方だった。
と言っても断る理由もなく。
「だったら、琴乃や明日香ちゃんも呼ぶか」
「「む〜〜〜」」
少し納得できない物があるが露骨は不味いのか頷く二人だった。
「此処は?」
「此処か?」
とまぁ、そんなこんなで翌日の昼下がり。
恭也、サクヤ、芹に加えて明日香、琴乃に縁と言うか那美達、要はネノクニでの戦闘メンバーで出雲の町の案内していた。
神社に行ったり、公園に行ったりと色々と行った訳だった。
途中にサクヤがナンパされて投げ飛ばしたり、恭也がナンパされたりとするが割愛される。
「む・・」
「お兄ちゃんって、あんまりこういう所に来なさそうだよね」
そんなこんなで今はアニメ版のごとくゲームセンターの前に居た。
「恭也じゃない?」
「忍か?」
コイツは常連だったな・・と思い出す。
「えっと、誰?」
サクヤは勿論だが、明日香も結構初対面に近い。
そういう雰囲気に感じ取ったのか、はたまた別の意図があったのか?
「内縁の妻の月村忍です」
普段はぜったいにしない、良家のお嬢様らしく優雅な礼をする。
素を知っている琴乃と那美はともかく、そういう裏事情を知らない他のメンバーの死線(誤字に非ず)が恭也に突き刺さる。
(何故!?)
此れが20年前のメンバーだったら洒落にならないかっただろう。
「うわぁ〜〜すごい、きれ〜!ねぇねぇ、あれは?」
対抗意識半分、純粋な興味半分で入ったゲームセンターに昨夜の声が響いた。
「明かりが沢山〜しかも、いろんな色で光ってるよ〜!」
恭也達現代の人間には電気の光は当たり前のものだがネノクニの人間には珍しいものなのだ。
まして、ゲームセンターみたいな場所は戦乱続きで文明の発達してないネノクニは想像もつかない。
いいところ舞を舞ったり、ごっこ遊びが主流で麻雀があるか微妙なところなのだ。
「ねぇ、あれ何?」
「・・・聞かないでくれ」
4基に並んだPODを見ながらいうが恭也に答えることは出来なかった。
なにせ若年寄と評されることがある彼に最新のネット対応3Dシュミュレーターが知ってる可能性は某虚無の担い手の通常の魔法の成功率よりも低い。
「じゃあ、あのカラクリって強い人が、『ふははははははは!これが俺のロードだ!』って叫ぶんだよね?」
「って言うかなんでサクヤちゃんが知ってるのよ?」
と言いつつ実は全然違うゲームを指しながら言うが何で知ってるのかは謎だった。
余談だが麻雀ゲームで琴乃が怒涛の20人抜きをやってたりする。
受難とはとにかく続くのだろうか?
「あら、あら、新しい奥さん?」
家に帰ってくるなりの発言に恭也の心臓に負担は言いようのない負担が襲った。
「葉子さん・・・」
「あらあら」
珍しく顔をしかめた恭也だが当の葉子はどこ吹く風。
「それでは六介さん」
「うむ」
打って変ってシリアスな六介は頷いた。
満足に微笑みながら立ち上がって出ていく。
「ではでは」
「と言う訳じゃが・・」
「いえ、説明になってません」
夕食も終わり一腹ついた頃で六介が切り出した。
お約束のボケは通じないことに少し寂しそうになるが無視。
「海鳴に向かってほしいんじゃが?」
「海鳴ですか?」
周りの芹たちはキョトンとしてるが恭也は少し複雑な顔になる。
彼にとって海鳴には行きたい気半分、帰りたくない気持ち半分の場所なのだ。
しかし、同時に自分が知りたいことが分かる可能性もあった。
「いつ行けばよろしいんでしょうか?」
16話に続く
後書き
半年振りの再開〜
いや・・戦場の絆やアクエリオルタにハマって(まて)
ほかにも戦国BASARA2やったり・・・
来月には聖なるかなやIZUMO3が発売で・・終わるのかな?
それ以前にツヴァイハートもあるんですよね〜
では!
舞台が海鳴へと。
美姫 「しかし、何故海鳴へ」
そこで何が待っているのか。
美姫 「一体どうなるのかしらね」
次回も待っています。
美姫 「それじゃ〜ね〜」