トライアングル IZUMO   

不破たる剣の閃記

 

 

 

間章「救世主」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ・・・・・」

激しい光に包まれて目を閉じ僅か数秒。

その数秒を越えた勇吾の前にはありえない光景が写った。

「此処は?」

先ほどまで恭也達と一緒に学校に居たはずが気付いたら荒野のど真ん中である。

此処が本当に日本なのか疑うくらいの荒れ果てた大地に深い悲しみすら込み上げてきた。

「ううう・・・」

「琴乃さん!・・良かった」

先ほどの戦闘で気絶していた琴乃が目を覚ました事に嬉しさを感じる。

だが同時に巻き込んでしまったと言う後悔、そして何時も恭也しか見ていない事への不満が渦巻いていた。

 

 

 

 

 

 

 

「おい」

「・・・?」

背後からの声に黒い思考が吹き飛ぶ。

通常ならば人間らしい声が聞こえたのだから喜ぶのだが状況が状況だけに警戒心を抱いていた。

模造刀の刀を握りなおして振り向き睨んだ

「其処のお前に言ってる」

剣と甲冑に身を包んだ若い・・下手すると勇吾よりも1つか2つほど年齢の低い少年が不適そうな顔で剣を向けていた。

だが剣を向けて居られているのに何故か安心してしまう。

「俺か?」

「お前以外に誰が居る?」

琴乃も居るんだが完全に無視だろうか?

と言う心の声を無視して少年は手にした剣を構えてきた。

「此れで斬り合ったら分かってるのか?」

動揺を隠しながら冷静そうに勇吾は問う。

自分の刀は模造刀であるが殺傷力はないとは言えず、相手の剣に至っては養父のシュミで集める武器を見ていて本物と分かった。

その勇吾の声も虚しく少年は姿勢を低く突撃してきた。

 

 

 

 

 

「殺しはしない!」

低い姿勢からの振り上げを勇吾はバックステップで交わす。

反射的に取った行動だが正解であった。

「止めろ!分かってるのか?」

細い体の割りに凄まじいパワーであったが、技術と体格の為か振り上げた剣に引きづられホンの一瞬であるが隙が生まれる。

常人では捕らえられないが恭也の相手をしていた為に反応できたといっていい。

正眼に構えなおして飛び込んだ

「・・・!」

「はぁ!」

飛び込みながらの胴。

受け止められたが、すり足で間合いを取り直して面を放つ。

だが此れはフェイントだった。

「いい・・加減にしろ!」

「ぐっわ!」

勇吾の面は少年の頭を狙った物ではなく持っている剣。

渾身の一撃を受けた剣は叩き落され、そのまま流れるように体当たりを受けて吹き飛ばされたのだ。

 

 

「さて・・・」

模造刀を突きつけて牽制しつつ少年と共に居た中年・・壮年かもしれない男性に目線を移す。

少しでも状況を知りたいと言う冷静さが残っていたのだろう。

だが・・

「甘いぜ」

「どわ!」

倒れていた少年は砂を目潰しに使い、怯む勇吾を押し倒した。

一瞬だが離れていた琴乃がBLな想像をしていたが関係はない。

兎に角マウントポジションを取られて形勢は逆転だった。

「甘いな・・・戦場じゃ真っ先に死ぬぜ?」

「卑怯な・・」

悔しそうに呻くが負け犬の遠吠えとは理解していた。

隠し持っていたと思われるナイフを突きつけられていたが死ぬことへの恐怖はない。

だが武道家としての屈辱感は在った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめなさい、ミナカタ」

「あっ・・・?」

凛とした声に目の前のミナカタと言われた少年は勿論だが勇吾も目を奪われた。

「ヒミコ様・・・」

(ヒミコ?)

ミナカタの呟いた言葉に既視感を感じる。

その一方で先ほどから黙っていた男性が口を開いた。

「下がれミナカタ・・・力試しは十分だろう?」

「父上・・」

納得いかない顔だったが素直に下がった。

立ち直した勇吾に籠の女性は静かに告げる

「我が同胞が大変失礼しました・・救世主様」

「君は・・?」

女性の声に聞き覚えがある。

「我が名はヒミコ・・この世界の行く末を憂うものです」

此処まで来て確信した・・

「貴女を此のネノクニに呼び出したのは私です・・救世主様」

「君は・・夢の中の!」

最近見るようになった夢

助けを求められていた夢の正体は目の前の少女だったのだ。

「救世主様・・・貴女の名前を教えていただけますか?」

その言葉に勇吾は静かに答えた・・

「大斗勇吾・・俺の名は大斗勇吾だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

程なくして彼等はヒミコ達の本陣に案内される。

そして物語の大まかを聞かされ・・

 

 

 

「話は・・分かった」

「そう・・ですか」

大まかな内容は前回のアマテラスの内容を悪霊サイドに移したもの。

ただ違う事もある。

「私達のやっている事は決して許されることではないと思っています・・ですが」

ヒミコは自分達が世界を滅ぼす事に対して罪の意識を感じていることだった。

「それでも私達は進まねばならないのです・・」

「・・・考えさせてください」

その言葉に勇吾は即答できない。

彼には分かっている。

此の世に勧善懲悪と言う物は本来は無い事。

そして絶対に在ってはならないと言う事。

(人間として・・彼女達に味方するのは間違っているはず・・・だが・・)

ヒミコの言う事も完全に間違っているとは決していえない。

一度道を踏み外しても、目的が一緒ならば方向を変えられるという人は居る。

だが、本当に変えられるものなのか?

一度ゼロに返してやり直さなければならない・・そういう破壊的な解決方法も勇吾の中に大きく根付いてきていた。

 

 

 

「ヒミコ様。ご報告があります」

「何でしょう、オオナムジ?」

報告と聞いて席を立ち上がろうとした勇吾と琴乃だがヒミコは構わないと手で制した。

オオナムジも気にせず話し始める。

「先ほどですがカグツチ達の里の在る森を突き止めました」

「そうですか」

朗報であるがヒミコは複雑である。

オオナムジは話さないが、カグツチ達に友軍が敗走する結果として見つけた成果である。

つまり味方に大勢の被害が出たのだろう。

「そして結界も解除の目処が立ちました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「分かりました・・・全軍に戦闘の用意を」

「承知しました・・・」

ヒミコの命令を受け、勇吾を一瞥するとオオナムジは部屋を出て行く。

不安そうになる琴乃。

そして勇吾は決心しヒミコに告げた。

「俺も同行する!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

邂逅は目の前

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


後書き

 

神楽:私には強さがある〜(栗林みなみ声で)

猛:遂に・・狂いやがった

麻衣:元からでしょ?でも、行き成りなんで?

神楽:いや、ガンオケ青のキャラの声優の一人がアニメ版の北河麻衣の声の人だから

猛:それだけ?

神楽:ああ

猛・麻衣:・・・・

神楽:今回は短いしシリアスばかりだな

猛:お前・・・何か在ったか?真逆拾い食いでも?

神楽:するか!

麻衣:ゲームやりたいだけでしょ・・?

   

   




今回は勇吾サイドのお話〜。
美姫 「勇吾はやっぱり悪霊側に付いてしまうのかしら」
一体どうなるのか!?
美姫 「次回は恭也たちとの再会になるのかしら」
それとも、再会はもう少し先になるのか!?
美姫 「次回も待っていますね〜」
ではでは。



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