この話はオリジナル主人公登場の魔法少女リリカルなのはASの二次創作です。

  自分の文才の無さが原因で登場人物の人格及び性格が変わっている可能性もあります。その様な事に耐えられない方は気合を入れられて見るかブラウザの戻るを押される事をお勧めします。

 

  またこの物語は外伝ではなく幕間に位置していますが、殆どが本編には直截関係の無い話で構成されています。

 

 

 

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魔法少女リリカルなのはAS二次創作

【八神の家】

 

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「う〜〜、速人は〜ん。やっぱり考え直さんか〜?絶対祟られるって〜」

  今にも泣き出しそうなほど怯えきった声で速人の胸にしがみ付きながら声を出すはやて。

  対して自分達が居る場所の雰囲気やはやての怯えを一切気にせず、いつも通り淡々と速人は返す。

「不安ならば扉の前で待つという選択もある」

「力の限りお断りさせてもらう!

  つうか扉の前でもメッチャ怖いって!」

「ならば素早く終わらせてこの場を離れるため、はやても調べて作業効率を上げる事を薦める」

「いや、うちは素早く終わらせるより素早く止めてこの場を離れてほしいんやけど!?」

  毎度毎度恥ずかしいお姫様抱っこで胸に抱かれているはやてだが、今回は恥ずかしさよりもひたすらに周囲への恐怖と、その恐怖に辛うじて拮抗する安心感しか今のはやては感じていなかった。

 

 

 

  先日3月3日に雛祭をやる際に、はやてが格安で祝えないだろうかと速人に尋ねた。

  はやてとしては雛祭はそれほど盛り上がるイベントでもないし、あまり何を祝うのか判らなかったので形だけでも祝おうという軽い気持ちだった。

  しかし速人から「京都の先方の保管庫まで此方が赴けば無料で人形一式が手に入る」と言われたので、金券ショップに流れるはずだった商店街のくじ引きで当った特等の京都旅行券一式(ツアーではない)に行くついでに人形一式を貰いにいく旅行を計画し、無目的に移動したがらない速人に目的という大義名分を翳してはやては速人と京都旅行をしていた。

  が、いざ京都に着き、意気揚々と先方の保管庫とやらがある所に行ってみれば、そこは古めかしい寺院だった。

  只管に嫌な予感がしだしたが黙って会話を聞いていたはやてだったが、その内容は【供養するはずの人形一式を簡単に祓った後、処分代わりに此方が引き取る】というとんでもない内容の会話だった。

  唖然とするはやてを速人は特に気にせず、はやてと共に住職の案内に従い人形の安置所に案内され、この中から雛人形一式を探して運び出す事になった。(住職は案内した後直ぐにどこかに去ってしまい、その場には速人とはやてしか残っていなかった)

  人形の安置所は所狭しと人形が並べられているのでかなり狭く、車椅子に乗ったはやては部屋の入口に入るのがやっとのことだったのではやてをそこに残して速人は一人で人形探しに取り掛かろうとしたのだが安置所はかなり広くて薄暗く、速人が奥に行けば麦電球の照明では殆ど見えずはやては不安になり、無茶を言って速人にお姫様抱っこされて一緒に探しているのだった。因みに外で待つのは速人が直ぐ確認できない場所にはやてがいることを拒否した為その案は否決され、はやてもなんとなくこの寺自体が不気味思えてきたので、何処に居ても怖いなら速人の傍がいいということで安置所に居る事になったのだった。

 

 

 

「ヒッ!?速人はん速人はん!今そこの人形こっち睨んだーーっっっ!!」

「光源が揺れているのでそう見えるのだろう。

  それに祟りと謂うモノがあるならば、人工生命や魂と呼ばれるモノの研究の際に曰くのあるモノを1347点を検査し、その物品を保持したまま心霊現象が起こるとされる47箇所で120時間以上各場所で研究員の放置や、曰くのある物品の破壊――――――」

「―――あーーーーーっ!

  速人はーーんっ!お願いやからそんな祟られそうなことをこの場で言わんでや〜〜!」

「祟りと謂うモノがこの寺院で在るならば、現状ではこの寺院の住職が誰よりも先に対象となるだろう。

  供養の経も読まずに灯油で人形を焼却していたそうだが、最近では煤で汚れるのと地球温暖化を考えてプラスチック製の物は塵として分別して捨て、短期間で土に還る物は破砕――――」

「―――あーーーーー!あーーーーーーーーっっっ!!

  やめてえな〜〜〜!!そんな罰当たりな話しは頼むから今はせんでや〜〜〜〜〜!!」

「罰当たりとは思えないが?

  地球温暖化を抑制すれば現生態系の調和の崩壊も防げ、各種の絶滅までの期間を延長させる事が可能だ。多くの種の絶滅までの期間を短縮させる選択を回避しているので問題は無い筈だが?

  それにもし祟りがあるならば保管義務が過ぎた人骨を境内に肥料代わりに撒いているらしいので人形とは無関係に――――」

「―――あーーーーー!あーーーーーーー!!あーーーーーーーーーーーーっっっっ!!!

  いやや〜〜〜!もうこないなトコ居りたくない〜〜〜!帰ろ!?今直ぐ帰ろ!!??そんで立派でキチンとしたお寺で御祓いしてもらお!!!???」

「では手近な人形を回収して直ぐ離れる。

  はやて、先程言っていた通り俺の代わりに持っていてくれ」

「えっ?」

  はやては憶えていなかったが、はやてを胸に抱える際に速人ははやてに人形を持つように言っており、はやては恐怖心でつい碌に考えもせずに頷いてしまっていた。

  速人もはやてが録に記憶していないことくらい解っていたが、はやてが持たなくても抱き込む様に置いていけばはやてが特に何もしなくても目的は果たせると判断し、はやての返事も待たずに素早くはやての胸や腹に大量の人形を置いていった。

「は   ぅふぇ    すぉひぁ   ひゃし へぃ     ぅ?!?!?!?」

  自分の胸や腹と言う至近距離に、明るい所で見てもどこか不気味な京人形が次々と置かれていき、あまりの恐怖に上手く声帯を震わせる事も出来ないはやて。

  最早目を瞑ることさえ恐怖ではやてが忘れている最中、はやての胸に置かれている一つの雛人形の顔が、首が壊れかけていたのが原因でゆっくりとはやての方を向いた。

「ぁ                ぃ」

  最早碌な発音も出来ないはやての目に次の瞬間飛び込んできたのは、首が折れ、髪を振り乱しながら転がる人形の頭。

「………………………………………………」

  既に言葉を喋るという機能が失われた様に呆然とそれを見ていたはやてだったが、転がり終えて止ったかに見えた人形の首が震えるはやての体が原因で、まるで自分の意思ではやての方を向いたように向き直った。

                                    

  そして痛んでぼさぼさの髪の隙間から覗き見る様な人形の目と視線が合った瞬間、はやては糸が切れる様に脱力しながら無言で気絶した。

  一方速人は頭が外れた人形の代わりを再びはやての胸に置き、丁度それが最後だったのか足早に人形の安置所を気絶したはやてと一緒に離れた。

 

                                   

 

「あーーーーぁぁぁぁぁ、トラウマになるほど怖かったぁぁぁぁ」

  先程まで自分が居た罰当たり寺(はやて命名)を視界の隅に入れながら、そこから遠ざかっていく事に凄まじい安堵を感じながら脱力気味にはやてはそう言葉を吐いた。

「はやて、なぜそれほどの体験をしてまで入手した雛人形一式を放棄したのだ?」

  速人ははやてが寺に入ってから恐怖で若干錯乱しているのは解ったが、実在するかも不確かな心霊現象を、見知らぬ者が(ひしめ)く雑多の中という心霊現象より分かり易い危険と恐怖に晒されていた時以上に怖がっているのがいまいち理解出来なかった。

  はやては特にホラー関係の番組を好んで観るわけではないが、さりとて徹底的に避けているわけでもなく、いつも観ている番組に特集が組まれていれば普通に観てその後一人で就寝する至って普通の感性の持ち主なので、はやての怖がり様や意見は速人には理解できない類のものだった。

 

 

 

  あの後気絶から覚めたはやては、たとえ只でも夜中に髪が伸びるどころか人間を殺して乗っ取ろうとすると思われるほど不気味な人形一式を貰うことを頑なに拒否し続けた。

  そしてはやては今回の件で只より高いものは無いと深く胸に刻み込んだのだが、速人が直ぐにそれを「雛人形の殿と姫の人形を先方が指定した物を此方が責任を持って受け取るというのなら報酬で5万円貰える」と只ではではないと恐ろしい否定をしたので、絶対に今日中にお祓いをしてもらうとはやては固く胸に誓ったのだった。

  因みにはやてが罰当たり寺と名付けた理由は、卒塔婆を火箸代わりに木製のマネキンや人形を焼却しつつ焼き芋をしていたのを見たからであった。

  尚、目の部分のガラス球等が抉り貫かれていた顔の部分が破裂したのを見た時、はやては傾斜と段差の低い階段を見事に車椅子で下りながらその場から逃げ出した。

  尤も直ぐに追走し追いついた速人にはやてが半泣きで即座にここから離れようと頼み込んだので、階段から寺にいる住職にその旨を伝え麓に降りた時丁度バスが来ていたので乗り込み現在に至っている

 

 

 

  速人から普通ならば感覚で理解できる事を改めて問われてどう答えるか少々はやては悩んだが、結局理解されなくてもまずは思った儘を伝える事にした。

「あ〜〜〜なんて言うたらいいんやろ………………………………う〜〜〜〜〜ん…………………………………感覚的な事やから上手く伝わらんかもしれんけど、多くの人はまず暗いところが苦手なんよ。

  あと、人形は少なからず人間の様に見てしまうモンなんよ。そやからもし人間が動きもせんでずらーーーっと並んどったら恐いし、首が取れたら…………………………そのうえ首だけになったのと目が合ったらメチャ恐いやろ?」

「念の為に確認するが首だけと言っているのは、首から上だけが存在するという意味で間違いないか?それとも文字通りあの人形の首のみを指し、首には眼が描かれていたり付与されていたりしていたのか?」

「サラリと恐ろしい確認せんといてくれん!?人間でその状態考えてしもたやん!!」

「首に目が在り機能しているヒトが存在する可能性は或るので、恐怖する理由は無いと思うが?」

「どんな妖怪なんやそれ!?奇形児でもありえんやろそれ!?」

「外科手術を行えば医学的には十分可能だ。それとヒトは状況さえ整えれば血液も心臓も要らず、首を切断されても生存可能だ。

  又、理論上脳の機能が停止しなければ死は回避でき、その後容器となる身体に脳を搭載すれば再活動が可能になる。

  殺すべき対象は行動不能であろうと脳を破壊するまで対象から外さぬよう留意するようにしてくれ」

  物騒を通り越して通報モノ話をいつもの無表情且つ平淡な声ではやてに説く速人。

「………………………なんか幽霊よりも速人はんの過去が怖い気がしてきた……………」

「はやてが指す幽霊が現代科学で干渉する事が不可能な存在を指すならば、俺の過去など比較にもならない」

「いや、もうこの話はお終いにしようや。これ以上はうちの精神や自我がイカレてまう…………………………」

  ゲッソリとしながら速人に告げるはやて。

「精神安定剤を調達し服用する選択があるが、行動に移したほうがいいか?」

「………………せっかく京都まで来たんや。京都の町並みでも堪能して癒されるとするわ」

「それで精神が安定するならば構わない。存分に堪能し精神の快復を図ってくれ」

「……………………あんな、せっかく商店街のくじ引きの特等で京都旅行しとるんやから、速人はんもじっくり京都の町並みを堪能しよや?

  …………………………まあ、町並み堪能する前にお祓い堪能するんが先やけど…………………………」

  はやてのその言葉を受け、速人は近くで本格的な祓い落としができるところをはやてと二人で探すことにした。

 

                                   

 

  ある程度整備されているとはいえ車椅子を押すに不向きな山道と石段を、左腕で胸にはやてを抱えて右腕で車椅子を持ち背に旅行鞄を負って速人は進んでいた。

  目的地は寺院でも神社でもなく破魔の剣術を伝えると囁かれている剣道場で、麓までの往復で鍛錬効果があるほど道は険しく、はやてと車椅子と旅行鞄を抱え・持ち・背負って進む速人はまだ肌寒い3月の山風に吹かれているとはいえ汗だくだった。そしてはやては3月の肌寒い山風に吹かれているが、汗だくの速人の体温がカイロ代わりになっており、本来肌寒い山風は寧ろ心地好く感じていた。

  零れ落ちそうな汗を速人ははやてに拭いてもらい、無言のまま30分程歩き続けて二人は目的地に到着した。

  神咲楓月流】との看板が掲げられた門の前で速人は車椅子を地面に置いてはやてが座れるように整え、それからはやてをそこにゆっくりと座らせ背負った旅行鞄からショールを取り出しはやてに掛け、旅行鞄を地面において速人は漸く一息吐いた。

  息こそ然程乱れていないが深呼吸をしながら整備体操をする速人に、新しい汗拭きタオルを渡そうとはやてが旅行鞄を漁っていると速人は急に整備体操を止め、はやての真後ろの半歩ずれた位置に立ち、旅行鞄は軽く掃ってはやてに押し付けた。

  はやてが不思議そうに首を傾げているが、速人はとりあえずそれに構わず門扉の向こう側が見えているように門扉を凝視していた。

  すると門扉の向こう側から声が発せられた。

「驚いたよ。ここにくるまでの山道と石段を人と大荷物を抱えて上ってきたのも凄かったけど、まさかこうも見事に隠れてるのがばれるなんてね」

  門を開けながら笑顔でそんな事を話す者を視界に納めつつ速人ははやてが何かを言う前に喋りだした。

「此方は此処が破魔の剣術を伝承していると聞き及んだので祓い落しを依頼に来た。

  其方が敵対行動と此方が判断する行動を行わない限り戦闘行為に及ばない。が、其方から見て右側に潜ませた者をこのまま潜ませ続けるならば敵対行動と見做す」

  確信に満ちた眼と言うよりは常識を語る眼でいつものように淡々と話す速人に、門を開けて出てきた妙齢の女性は驚きながらも笑顔で返した。

「はははっ。本当に驚いたよ。あの時只者でないって思ったのは間違いじゃなかったってわけか。私の目利きは狂っちゃいなかってわけだ。

  …………………っとと、楓ー!何時までも隠れとらんで武装解除して出てきんねー!あんたんとこに頼ってきたお客さんやろがー!」

  肺活量で以って発せられる不安定な大声ではなく、声量を高めて発せられる安定させた大声が周囲に満ちる。

  あまりの大声に咄嗟にはやての耳を速人が塞いで尚はやては目を回し、声をかけられた者は離れた所の茂みから倒れるように出てきた。尚、声を出した本人と速人は平然としていた。

  そして茂みから出てきた女性は耳を押さえながら非難の声を上げた。

「薫〜ぅ。そんな馬鹿でかい馬鹿声で言わんでも聞こえとるって〜。耳が変になったらどうするんや?」

「サラッと馬鹿と二度重ねて言うんやなか。……………そやけど言うちょる事は間違いやなかね。

  …………………すまんね。いきなり大声だして驚かしてしまって」

  はやてと速人のほうを向き門の前にいた女性が頭を下げて軽く謝るのを見、どこかで見たような気がするはやては首をひねって思い出そうとしていた。が、思い出す前に目の前の女性が先に話し出した。

「久しぶりだね。お正月に舞った後奉納品を受け取った以来だね」

  そう告げられ合点がいったのか、はやては目を見開いて話し出した。

「あーー〜〜〜っ。あの時のカッコ好くて綺麗なお姉さん!」

「思い出してくれたようだね。

  遅くなったけど本当に美味しかったよ」

「そう言ってもらえたらあたしも速人はんも鼻が高いです」

「……………もしかしてそこの男の子と一緒に作ったの?」

「あ、はい。お菓子は出来合いでしたけど、御節はあたしと速人はんが作ったのが半々くらいで入れました」

「………………………………………」

  そこまで話すと急に沈黙し、どうしたかと思っていると先程茂みから出てきた女性が苦笑いをしながら言ってきた。

「何でもないから心配しなくていいよ。

  薫は剣とかばっかに人生注いできたから他の事…………………………特に家庭的な事は人並以下…………人並未満だからね。

  君の様な女の子らしい女の子に負けたのはともかく、彼の様な実力者が美味しい料理を作れると知ってショックを受けてるんだ」

「で、でも、お正月に見た舞はほんま綺麗でカッコ好かったですよ!?」

  フォローのつもりではやては話すが、それに対して楓と呼ばれた者は笑いを堪えながら話す。

「いや、学生時代に剣道部で似たような意見を多くの女子から言われてね。男子には恐れられたけど女子にはお姉様的に想われ―――」

「―――初対面のモンにさっきから何ば言いよっとね楓…………………………」

「…………………………薫、方言全開になっとるよ?」

「べつに隠すモンでもなかし恥じるようなモンでもなかよ。

  ……………………恥と思っちょるモンはさっきから楓がぺらぺらペラペラべらべらベラベラ喋ってくれちょるけどね…………………………」

  そう言いながら更に言い争いが発展しそうになった時、空気を気にしない速人が声をかけた。

「会話の最中とお見受けするが、先程此方が告げた用件への返答は如何に?」

「っとと、ごめんごめん。

  ほらっ!楓っ!早くお客人の相手をせんねっ!」

「薫が脇道に逸らしたんに理不尽や………………」

  そうぼやきながら楓と呼ばれた者は速人とはやての前に移動し、その最中に速人は二人からはやてを遠ざけ先程と違いはやての前に壁になるように立ち居地を移動した。

  そんな露骨な警戒を見せる速人を見ながら楓と呼ばれた者は半眼で薫と呼ばれた者に話しかける。

「薫〜。薫がこの子の実力を見たいとか言って余計な事するから目茶苦茶警戒されとるやんか〜。責任とってや〜」

「お客人前にして何文句言うちょる!はよ仕事せんね!」

「ううぅ、うちの言うとることは間違っとらんのに何でこないぼろくそ言われなならんのやろ…………………………」

  恨めしげな声と視線を後ろから罵声に近い喝を放つ薫と呼ばれた女性へと送りながらも直ぐに佇まいを正して速人とはやてに話しかけだす。

「御見苦しい所を晒し大変失礼しました。

  私は破魔真道剣―――」

「こん馬鹿があああぁぁぁぁ!!!」

「―――じゅっっっ!!!」

  自己紹介の最中であろう楓と呼ばれた女性は、突如後ろに立っていた薫と呼ばれた女性に鞘袋(恐らく刀が入っているであろう)で唐竹割を受けて自己紹介を中断させてしまう。

  突然の展開にはやては呆気にとられ、速人は眼前の女性越しに攻撃されても迎撃できるように改めて周囲を一瞬確認した後に眼前の二人に注意を向けた。

  しかしそんなはやてと速人を楓と薫と呼ばれた者は気にしていないらしくまたもや言い争いが勃発した。

「っっっっっっぅぅぅぅぅぅ!!何するん!?」

「それはうちの台詞や!一般の客人の前でどがん自己紹介するつもりやったんね!!」

「ちょい待ってや薫!もしかして一般人のしかも子供相手に実力見ようと十六夜抜こうとしたりうちに本気の隠行で仕掛けさせようとしてたんか!!?」

「い、いやそれは前見た時から相当な実力者だって思っちょったし、那美と久遠から聞いたあの子達を救った通りすがりの不審者と背格好も一致しちょったし、そん時にやたらと久遠を気にしちょったみたいやけんてっきりこっち側かと思うたんよ」

「なら初めからそう言うてや!いきなり全力で隠行しつつ背後に付けとか言われたら勘違いして当たり前やんか!?」

「祓い落としを頼みに来たと言うとる段階で気付けるやろが!」

「たんに攻撃特化で祓うのが苦手なだけかもしれんやろが!」

 

   

   

   

 

  長々と言い争いをする二人を離れた所で速人ははやてと傍観しながらはやてに話しかけた。

「余所で祓い落としを頼むという案もあるがどうする?」

「いや、あの二人の喧嘩ってトム&ジェリーみたいでおもろいから終わるまで待とうや。

  速人はんもみてておもろいやろ?」

「全く愉快とは感じない。

  だが恐らく演技ではない感情と主張の衝突は観察の価値がある。

  俺としては二人の騒ぐ様をはやてと観察するのに異論は無い」

「また堅苦しいというか偉そな発言やな〜。

  ま、そやけど自分以外の本音のぶつかり合いを見るんは速人はんにとって損や無いはずやし、なにより楽しそうやから一緒に見よか?」

  苦笑しながら速人を見上げつつ話しかけるはやてにいつも通り淡々と返す速人

「了解した」

  相変わらず素っ気無い速人の返事を微笑みながら受け取り、はやては未だ言い争いを続ける二人を見ながらふと思った。

(薄々思っとったけどやっぱ波乱てんこ盛りの旅行になりそうやな〜。

  ………………ま、速人はんが()るんなら波乱だろうが騒動だろうが楽しくなるから構わんけどな)

  ちらりと速人を盗み見るように見上げたはやてだったがしっかりと眼が合ってしまい、少し恥ずかしげに笑みを返して直ぐに二人の騒ぎ振りへと眼を向けた。

 

  肌寒い三月上旬の風は只管墓穴を掘りながら言い争う二人の女性とそれを観察する速人とその速人と一緒に観賞するはやてを適度に冷やすように吹いていた。

 

 

 

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  幕間二之四話・其一:袖振り合っても多生の縁とは限らない――――了

 

 


【後書】

 

 

  幕間二之三のバレンタインネタがホワイトデーに繋がるようなネタじゃないので、三月のネタとして妥当な雛祭をネタにしようとしたのですが、結果は見ての通り雛祭ネタと言っていいのか微妙なモノになっています。

  尚今回は本編の話を区切る練習の為、大した長さでもないのに強引に前後編に分割しました。

 

 

  速人とはやての二人だけで幕間を進めるのが限界だったので、リリカルなのは勢と縁が薄い(と言うか多分無い)楓と薫に登場してもらいました。

  ただどう見ても薫の性格や喋り方が崩壊気味ですし、楓はOVA見ていないので【美緒のデンタルパニック】のみから将来像を強引に推測しているので殆どオリジナルキャラ状態……………。

  あと速人が本編の4話以降と全然性格違うわ人格も多少違うわで、息抜きで書いたつもりが却って疲れる結果に。

 

 

  順当にいけば幕間二之六話で幕間編は終わりですが、やりたい事が在れば二之●話 〜其の二〜 みたいに際限なく後付け可能だと今気付きました。

  しかし本編の二話の後、幕間を本編でやっていれば、ダラダラしすぎて殆どの人がこのSS見なかっただろうと思うと、いきなり半年近く飛ばしたのは我ながらナイスだと少し思いました。

  因みに幕間二之一話より前からプール若しくは海水浴ネタか温泉旅行ネタをしたかったのですが、幕間二之六が終わるまで封印中です。(尤も永遠に封印される可能性もありますが………)

 

  尚後書の文体が今迄と変わっているのは、謙りすぎも失礼という今更ながらの理由と、ここまで読んで下さった方には最早礼は払えど遠慮は無用と開き直った為です。(今更文体変えずに地面に頭擦り付けるような謙った文体に戻せと言う方が御らっしゃれば元に戻しますので遠慮なくどうぞ)

 

 

 

  それでは毎回誤字修正版も多数投稿して御手を煩わせた上感想を頂ける管理人様と御読み下さった方に感謝を…………。




いやー、俺も人形よりも速人の話す内容の方にびびりました。
美姫 「でも、間違っていないのよね」
いや、刃物をちらつかせながら言わないで。本気で怖いから。
と言うか、何をするつもりだ。
美姫 「……………………別に」
思いっきり気になる間だったけれど、聞くのが怖いから次行こう、うん。
美姫 「今回は薫たちが出てきたわね」
まあ、漫才みたいな事をしていたけれど。
美姫 「掛け合いが結構、面白かったわね」
あはは、お払いに来たはずなのにな。
美姫 「幕間のお話もあと少しなのね」
次回も楽しみにしてます。



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