この物語はオリジナル主人公登場の魔法少女リリカルなのはA‘Sの二次創作です。
自分の文才の無さが原因で登場人物の人格及び性格が変わっている可能性もあります。その様な事に耐えられない方は気合を入れられて見るかブラウザの戻るを押される事をお勧めします。
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魔法少女リリカルなのはA‘S二次創作
【八神の家】
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１２月７日、午後の昼下がり、喫茶店翠屋の一角にはやて達は居た。
そして一昨日アリサ達が言った通り新たな友達…………アリサとすずかは日が浅いが、なのはとはかなり前からの知り合いだったらしい少女もいた。
はやて達が先に自己紹介する前にその少女はなのはに促され自己紹介をした。
「私の名前はフェイト……………フェイト・テスタロッサ。なのはとは転校する前から、アリサとすずかは転校してから仲良くなった」
それを聞き次ははやてが自己紹介した。
「あたしは八神はやて。すずかちゃん達とはつい最近知り合って仲良くなったんよ。
休学しとるけどすずかちゃん達と同じ３年生で、こっちの速人はんと家族なんよ」
はやてに視線で会話のバトンを渡され自己紹介をする速人。
「天神速人」
…………………不機嫌さも冷たさも温かさも無く、名前を告げただけで他に一切情報を明かさない速人。
「………………えーと、私って嫌われてるのかな？」
他の面々を見てどうしたらいいのか問おうとしたらなのはからフェイトへの援護があった。
「この人こんな感じだから気にすると損だよ、フェイトちゃん」
やたらと攻撃色の強い感じで喋るなのはに戸惑うフェイト。
「速人さんは特に人を嫌ったり…………好きになったりもしない人だから、嫌ってるってワケじゃないよ？」
すずかからフォローにあまりなっていない奇妙なフォローを入れられさらに戸惑うフェイト。
「ほら学校で言ったでしょ？常識外の常識外の奴がいるって。
速人は無表情無愛想無遠慮と三拍子揃ってるから気にしたら負けよ」
フェイトは学校でなのはからは冷たくて優しく無い人と評価され、すずかからは良い人だけど善い人じゃ無いと評価され、アリサからは優しさより面白さと清々しさが先に立つ究極の奇人と評価されていたのを思い出した。
（なのははっきりと嫌ってて、すずかは嫌っちゃいなさそうだけど好きでもなさそうで、アリサははっきりと好きって解る。
……………………冷たい上優しく無くて、良い人だけど善い人じゃ無くて、面白くて清々しくて、人を嫌いにも好きにもならないで、無表情無愛想無遠慮の人で、なのは嫌ってて、すずかはどっちでもなくて、アリサは好き。
……………………どんな人か全然解らない………………）
フェイトが速人という人物がどういう者かサッパリ理解出来ないで考えている最中、はやてから速人に疑問が投げ掛けられた。
「…………………速人はん………………、前回はきちんと自己紹介したのに何で今回はせんの？」
「前回は友人関係の構築を試みるという事だったが、今回は友人関係構築を試みる気は無いからだ」
速人の発言になのはは露骨に眉を顰め、はやてとすずかは毎度の事と呆れ、アリサは面白そうに速人を見、フェイトは少し驚いていた。
「なんか失礼そうな理由が有る気がして聞かん方がいい気がするんやけど、とりあえず理由を教えてくれへんか？」
「アリサとすら現状では友人関係とは言い難い状況にも拘らず、友人関係構築対象数を増やすのは一名に対して友人関係構築に注ぐ力が減少すると判断し、非効率的だと考えた為現在アリサ以外に友人関係を構築しようとは思っていない」
フェイトの都合は完全無視で、アリサを想ってという訳でも無さそうで、自分の都合のみなのだが、決して的外れな意見では無いのでどうフォローしたものかとはやてが考えていた時にフェイトから声がかかった。
「えと、はやて………………そういう理由なら私は気にしないから、はやても気にしないでいいよ？」
「……………よかったぁ〜。なのはちゃんの様に嫌われたらどないしようかと思っとったよ」
「あ、やっぱりなのはは速人と仲悪いの？」
「う〜ん、速人はんはなのはちゃんに興味も関心も無くて、なのはちゃんは速人はんの思考その物を否定している感じで、なのはちゃんだけ一方的にストレスが溜まっていく感じなんよ。
仲が悪いというより仲にすらなって無い感じやね」
「そうなんだ……………。ねぇなのは、なのはが誰かを嫌いになるって初めてじゃないかな？」
そう言って左の席のなのはを見る。（席順は窓際の奥からすずか・はやて・速人、その向かいがなのは・フェイト・アリサで机を一つくっ付けていた）
なのはは眉を顰めながら不機嫌そうにフェイトの質問に答える。
「人を傷つける言葉を………………今だってフェイトちゃんにとんでもない事平気で言うし、家族が大切だからってアリサちゃんとすずかちゃんを囮に使うし…………。
あたしははやてちゃんとアリサちゃんがどうしてこの人が好きなのか全然納得いかない……………」
『ぶすっ』と言う擬音がぴったりの顔をしながら話すなのは。
それを聞き、笑いながら話すアリサ。
「現実主義者の速人と、夢想主義者のなのはの相性はもう最悪って言って構わないわね。
どっちが正しいって訳じゃないけど、速人はなのはの思想の発展系みたいな所に居るから、なのはは理論的な反論できなくて嫌っちゃうのよ」
それを聞き、なのはは不機嫌にアリサの言葉に反論する。
「あたしは成長してもこの人みたいには成らないもん」
「それでいいんじゃない？さっきも言ったけど、どっちが正しいって訳じゃ無いし」
特に気に留めず返事を返すアリサ。
「むぅ〜〜、なんか馬鹿にされてる気がする…………」
そう言いながら引き下がるなのはを見ながらフェイトはますます速人という人物が判らなくなった。
「えと………………結局どんな人かあんまり解らないけど、どんな風に接すればいいのかな？」
フェイトが恐る恐るといった感じで速人に訪ねる。
「そちらの好きに接すればいい。ただし家族にとって害悪と判断すれば即座に処理乃至排斥行為に移る」
死体の目の様に意思も感情も無い眼でフェイトを見ながら平淡に告げる速人。
フェイトは速人の眼に意思も感情も篭っていないが、虚勢も恐怖も篭っていない事から言葉通り淡々と実行すると理解した。
（……………なんだかなのはに会う前の私……………ううん、それよりもっと虚ろなのにどうして慕われてるんだろう……………。なのはには嫌われてるけど…………。
名字が違うから血は繋がっていない筈なのに二人とも仲よさそうで羨ましい………）
フェイトがそんな事を考えて黙り込んでいると、怖がっていると勘違いしたはやてがフォローを入れてきた。
「速人はんの言うた事やけど気にせんでいいよ？刃物持って襲い掛かったり、骨折ろうとしたりせん限り、特に何もせんから。
アリサちゃんの様にツッコミで頭叩く程度でどうこうする程、速人はんの沸点低く無いから安心してや」
はやてがフォローを入れるがそれに茶々を入れる形でアリサが続ける。
「だけどもし害悪と認められたら怖いわよ〜。頭蓋骨を陥没させたり、ナイフを刺し返したり、肝臓を破裂させたり平然とやってのけるわよ。
いや〜、いまからはやてが彼氏連れて速人に紹介する時どうなるか楽しみだわー。やっぱりウェディングマーチ前夜みたいな事とかするのかしら？」
「多分はやてちゃんが速人さんを一喝して止めて終わると思いますけど、はやてちゃんが居なかったら彼氏の人は再起不能になりそうですね」
「あ！そんな事よりも速人とはやては既に肉体関係があるからそのまま名字だけ変えるという事も十分有り得るわね」
「ぶぅぅっっ！」
「「ええっっ！？」」
眉を顰めながらアリサから話された内容を聞き驚く三人。
はやては飲んでいた水を噴き出したが、咄嗟に速人がメニュー表を対面者達の間に差し込んだのでさして被害は出なかった。
速人は咽るはやてを介抱しながら濡れたテーブルとメニュー表を備え付けのティッシュで拭き、そこに驚きが多分に混じった声でなのはから声が掛けられた。
「は、はやてちゃん………………、まさかもうそんなエ………エ………エ………エッチな事………………………この人と………………………………………………してるの？」
恐る恐るという感じで問いかけるなのは。一方問いかけられたはやてはまだ咽ていて返事が出来ず速人に介抱されていた。
はやてが喋れず咽ている事をこれ幸いとアリサとすずかが好き勝手に喋る。ただアリサはやや憮然と、すずかは楽しげに話していた。
「胸やお尻を素手で揉まれてるから、間違い無くエッチな事ね」
「はやてちゃんも速人さんも肯定していましたから間違い無いですよ」
二人の言葉を聞きさらに驚くなのは。
はやては意見しようとしたが却って咽てしまい未だ速人に介抱されている。
「そ、そんな…………………、はやてちゃん、まだあたし達にはそんなの早すぎるよ…………」
「なのは、なのはの知る世界以外には１０歳前後でに結婚して赤ちゃん産む風習があるところも有るよ。
なのはとはやては友達なんでしょ？だったらお祝いしなくちゃ……………」
騙され易いのかフェイトはすっかり信じ込んでしまい、なのはを諭して祝福させようとしている。
未だ派手にはやては咽ているが、内容がとんでもないのでなのはもフェイトも気が回らず、アリサとすずかは知ってて黙殺していた。
「うん………………そうだね……………………」
このままだと話が完結してしまいそうな所で速人から水を渡され、一気飲みして落ち着いたはやてがすかさず会話に割り込んできた。
「ちょいと待ったー！その解釈は大間違いやで？」
それを一昨日脅かされた事を根に持っていたのか、不敵な笑みでそれを制すアリサ。
「ふっふ〜ん。何が違うのかしら、は〜やて〜？
速人〜、私とすずかが今し方はやてが咽てる間話してた事が嘘なら嘘と答えて。嘘じゃ無いなら嘘じゃないって答えて。それ以外の発言は認めないからね？さぁ答えて頂戴」
「うわっ！アリサちゃんズルッ！」
速人が話すに足ると判断している者からの質問ならば、嘘偽り無く答えるのを利用して意図的に誤解させるように仕向けるアリサ。そしてその思惑にはやては気付いて速人に喋らないように頼もうとするが時既に遅くしっかり喋られていた。
「嘘じゃない」
なのはは速人を嫌ってはいるが、嘘を吐かない事は重々承知しているので、なのはの中ではやてと速人がカップルだという事が急速に現実味を帯び始めてきた。
「なのはちゃん！誤解や！あたしと速人はんはなのはちゃんが思っとるような関係とちゃうから！」
興奮気味に捲し立てるはやてに、冷静というより単に無感動に速人が声をかける。
「はやて、大声で話していると店員から注意されるので音量を控えることを勧める」
はやては自分が大声を出して注目を浴びているのに気付き、顔を興奮と羞恥で真っ赤に染めながら周囲に頭をペコペコ下げながら「お騒がせしてすいませ〜ん」と謝罪した。
周囲への謝罪が終わり声を潜めながらはやてはなのはに話しかけた。
「と、兎に角あたしと速人はんは家族やけど恋人とかじゃ全然無いから。
アリサちゃん達の言うとった事は本当やけど、それは全部治療に必要やからしとるんや」
「治療？」
「そうや。えーと……………うーと………………………あーと……………………………………………速人はん………………説明代わってもらえるか？」
上手く説明できそうに無い上、赤面して余計な事まで口走ってしまいそうなのではやては速人に説明を代わってもらう事にした。
なのはの嫌悪感大量搭載の視線とフェイトの純粋な疑問の視線を受け速人は説明を始めた。
「はやては一日の大半を車椅子で過ごすので上半身、特に腰に疲労が蓄積され易いので整体でそれを補正しつつ、同時に東洋医学のツボというモノを刺戟して新陳代謝の活性化を促す事をしており、その際に素手で素肌を圧迫したりする。
ツボは胸部や臀部にも存在するので先程アリサが発言した内容に嘘は無い」
それを聞き納得するなのは。
一方フェイトは何故態々素肌を素手で触るのかと疑問が湧いてきたので訪ねる。
「どうして服の上からじゃないんですか？薄布の上からするとか他に方法があると思うんだけど…………」
「東洋医学は効果を及ぼすモノが対象の素肌に接触する事で最大の効果を発揮するとされている。鍼灸を服の上からしないのと同じだ。
器具で圧迫し無いのは、指先や掌でなければ圧迫度合いの適正判別精度が俺の技量では著しく低いからだ」
その言葉を聞き納得するフェイトと更に納得するなのは。
「特に疑問が無いならばこれで説明を終了する」
速人はそう言い説明を終えた。
そして二人が納得したのを見てはやてが話しかけた。
「という訳なんやけど、納得してくれたか？なのはちゃん？フェイトちゃん？」
「納得したよ。あ〜吃驚した〜」
誤解と分かり安堵するなのは。しかしフェイトは疑問が有るのかはやてに訪ねてみた。
「説明は納得したけど……………はやては男の人に触られるの平気なの？」
「あ」
フェイトの言葉を聞き、急ぎはやてを見るなのは。
はやてはその言葉に顔を真っ赤にしながら………………しかし嬉しそうに答えた。
「滅茶苦茶恥ずかしいけど……………、そりゃもう最初の頃は気絶してしまったくらい恥ずかしかったけど………………、速人はんが１００％医療目的で下心無いのは知っとるし、それに先生の許可得る為に鍼灸師の資格取ったのも知っとるから、あたしが恥ずかしいからって断って速人はんの想いを踏み躙るなんて事出来んよ」
「「そうなんだ……………」」
納得するなのはとフェイト。
そしてそこにアリサが自分の事の様に自慢気に二人に話しかけてきた。
「昨日はやての家に行って速人が所持してる資格とか免許とか称号とか見せてもらったんだけど、年齢制限を無理矢理お金で納得させた以外は全部実力でトランクケース３つ分も取得してたわよ」
「あ〜、あれはあたしも驚いたわ〜。速人はんってあんまり自分が何出来るかなんて言わんし」
「トランクケースに入っていたし、量が量だからてっきりキャッシュカードや機密文書の類かと思ったよね」
三者三様の意見を聞き、なのはは速人がやたらと常識外なのは知っていたのでさして驚かなかったが、フェイトは凄く驚きながら聞き返した。
「え？速人ってそんなに資格とか色々持ってるの？」
「そうなのよフェイト。速人はメンコや焚き火出来る程沢山資格とか所持しているし、大抵の事は一度成功すれば再現可能だし、偏差値は１１０〜１３０程と信じられないくらい高いし。
こんな超ハイスペックで痛快な変人なんて世界に二人と居ないわよ」
「アリサ…………変人って褒め言葉じゃないよね？」
「褒め言葉も褒め言葉よ。あ〜あ、あたしもはやての様に速人と一緒に暮したいわ。絶対驚いたり怒ったり笑ったり和んだりと楽しい生活を送れるんだから」
羨ましそうにはやてを見るアリサ。
「アリサは本当に速人の事が好きなんだね」
「まぁね〜」
「「「…………………………………………………」」」
照れる事も臆す事もなくサラリと認めるアリサに呆然とするはやて・すずか・なのはの三人。
「うん？三人ともどうしたの？そんな鳩が豆鉄砲くらったみたいな間抜けな顔して？」
「だって………アリサちゃんが………男の人を好きって言うから………」
「こんな公衆の面前で告白するから驚いてたんよ…………」
「アリサちゃん…………一緒に暮したいって………………そういう意味だったの？」
三人の言葉を受けて自分の言葉をアリサは振り返り、たしかにそう取れる発言をしたと思い特に慌てる事無く言葉を継ぎ足す。
「何三人して色ボケした勘違いしてんのよ。普通に考えれば好きでも無い奴と友達に成ろうなんて考えないでしょが。
速人、フェイト、あたし達はこの三人の様に色ボケした考えにならないようしましょうね？」
「あはは、そうだね」
「はやて達の解釈が色ボケかは不明だが、他者の発言内容の解釈を誤らないようにはするつもりだ」
「ちょっ、さっきの発言はそう解釈するんが普通やろ？フェイトちゃんもあははやないで？」
何時の間にかフェイトははやてと速人と打ち解け、はやてとは仲良くなっていた。
速人に対しては過去の自分より塞ぎ込むというより虚ろにも拘らず、なのは以外の評価が高いので好意は抱いていないが少なからず関心を抱いていた。
速人はノートパソコンに何かを打ち込みながら、他の面々は楽しそうに話しながら時間は過ぎていった。
Interlude
――――八神家――――
穏やかな昼下がり、最近は蒐集活動に専念していた為はやてが居ない時はあまり家に居なかったシャマルだったが、なのはを蒐集した後からは不測の事態の為にはやての護衛以外に一名八神家に滞在している事になり、それは補佐系統の魔法が得意なシャマルという事に決定し、その為シャマルは一人で穏やかな時間を過ごしていた。
有事の際は即座にはやてを此方に召還、その後速やかに指定された場所に避難し、残りの仲間達にその旨を伝える極めて重要な役目だと理解していたが、蒐集活動を行っている者達に比べて危険度や疲労度は比べ物にならないほど低く、はやての護衛をしている速人達と比べても精神を磨り減らすわけでもなく、穏やかに流れる時間に身を置いているシャマルは常に何かしていないと落ち着かず、とりあえずはカートリッジの調整をしていたが直ぐにそれも必要無くなり、ならば掃除をと思いここ数日間勤しんでいたが最早汚れているのは配水管内部や屋根裏ぐらいしか残っていない程八神家は掃除されつくされていた。
（夫が帰ってこない間暇を持て余す人妻はこんな感じなんでしょうかね〜。
この空虚さと不安感を埋めてくれるというのなら、浮気に走るのが少しだけ納得しちゃいますね）
テーブルに顔を突っ伏しながら、世の浮気する女性の心理に少しだけ共感しながらシャマルはどんどん暗い思考に嵌り込んでいった。
（重要な役割だとは解っているんですけど、みんな……………速人さんですら目に見える成果を上げているのに、私だけ一人ここで安寧を貪っているかと思うと、なんだか役立たずと言われているみたいです…………………。
大分前に速人さんは自分の出来る事は全て私達がより高度に実現可能と言って自分を使い潰そうとしていましたけど、私はとても自分を全否定なんて出来ません……………）
腕枕に乗せた頭を胸元に引き寄せるように動かしながら更に思い耽るシャマル。
（先日なんか特殊接触感応でデバイスに直接干渉するっていう信じられない事を実現するし…………………。仮にそれを抜きにしても、正直私が今より冷酷平淡に思考したところで速人さんを超えられるとは思えません………………）
先日、はやてとヴィータが入浴している最中速人はなのはが近接戦闘に疎いと判断した為、一つの対抗策としてデバイスに接触して中の情報を操作できないかという試みがなされた。
結果、血で素肌を濡らしてデバイスに魔力が一定以上纏ってある状態…………つまり相手がそのデバイスに接触している状態で接触するという条件を満たせば、なんとデバイスのプログラムに強制介入し使用者の意思を無視して魔法を強制解除・使用できるという事が判明した。
しかも未知の機械言語体系にも拘らず、僅か５秒で魔法の起動を阻害する程の理解力の速さを見せ、二度目からは約１秒で相手のデバイスを制御下に置くという桁外れの常識外の事象を見せ付けた。
デバイスその物を高速で振るう、卓越した戦闘技術を持つシグナムやヴィータのデバイスに１秒近く接触するのは至難の業だが、魔力はあれども戦闘技術が平均的日本人とさして差異が無いなのはならば、予め近距離に居れば初見に限り１秒程度デバイスに触れるのは決して難しくなく、はやての安全についてはかなり問題が解決された。
その後闇の書に強制接続し、はやての病因を排除しようかと速人は考えたが即座にそれを中止し、シグナム達が理由を聞くと書の秘匿機能を推測したらしく、シグナム達を更に驚かせた。
なお、その後風呂から上がったヴィータに入浴中にあった事を伝えると、役に立って速人が無茶しそうにない能力でとても喜んでいた。
速人がどんどん力を得、非戦闘時は間違い無く八神家の参謀役であると速人以外の全員が認めている状態の中シャマルは暇な時間に襲い掛かる空虚さと不安感に苦しんでいた。
（出番が有るという事ははやてちゃんが少なからず危険な状況下ですから出番を望む事も出来ず、ここで一人みんながはやてちゃんの為に頑張っている間ゴロゴロ暇を持て余して時間を潰すというのは、とてもとても心苦しいです……………。
速人さんがはやてちゃんの為に血溜りで足掻く姿を見たり、最近益々速人さんに心を許すというか私達に接するのと同じように無防備に接するヴィータちゃんを見ていると、速人さんは無感動で無感情ですけど決して案山子や人形じゃ無い気がしてきました………………。優しいのかどうかは疑問ですけど、速人さんが家族と呼ぶ者に対しての行動には少なからず気遣いが最近感じられますし。……………過去の事象に照らし合わせて最適な判断をしているだけの感は否めませんけど……………）
最近速人が苦手な理由が、自身の理想形が虚ろな案山子や人形だという理由ではなく、魔法以外に措いては正しく理想形の気がしだしてきて苦手意識に拍車が懸かってきたシャマルだった。
（虚ろな感じは消えませんけど、空ろではないんですよね。
確証は持てませんけど、少なからず家族に執着している様な感は見受けられますし、もしそうなら損得以外に意思が介在しているという事で案山子や人形じゃ無いという事ですよね………………。
なら速人さんを苦手にしていた理由は消えるから受け入れて然るべきなんでしょうけど、魔法を使えないという一点を除いてですけど……………正真正銘の理想形が目の前に居ると自分が不要と実感させられるようで嫌悪感というより恐怖が湧いてきますね）
速人本人にその気は微塵も無くとも、シャマルは最近の速人を見るだけで自分が不要と痛烈に実感させられ、嫌悪感よりも恐怖が先に立ち、更に苦手になっていた。
（はぁー…………………………落ち込んでいる時に優しい言葉を投げ掛けられてコロッと恋してしまう心理が理解できますね………………。実際今速人さんに私の価値を肯定されたらコロッと恋してしまいそうなほど鬱です…………………まぁ、はやてちゃんが元気になったらでしょうけど………………）
酷く情緒不安定なシャマルはリビングに一人テーブルで頭を胸に抱え込むようにしながら、激しく落ち込みながら時間を過ごしていた。
空調の行き届いた快適なリビングで一人安寧を貪っているのが嫌で、エアコンを停止しようとしたがはやてが帰宅した時に冷えた状態にしている訳にもいかず停止を断念し、外から子供の平和そうなはしゃぎ声の会話が聞こえてきて、一人だけ安穏とした場所に居る事を実感させられてシャマルは酷く惨めになり、益々鬱状態に拍車が懸かっていった。
僅か５日間でシャマルは酷く落ちこんでしまい、何とか他の面々の前では普段通りに過ごしているが、意外と聡いはやてとヴィータはどこか不審がっており、速人はその表情からは何も読み取れないが高確率でシャマルの内面を把握していると思われた。
自己の存在意義を速人というフィルターを通して自身で否定し、精神崩壊が始まる直前のシャマルだったが、テーブルの上に置いている速人から連絡用に渡されたはやての外出中は常に起動しているノートパソコンが緊急通信を告げる警報音を鳴らしたので、即座に画面を覗き込んだ。
警報音の種類から然程緊急事態で無いのは解っていたが、それでも緊張しながら画面を覗き込むと電話ではなくメールであった。
急ぎメールの内容を読むシャマル。
［フェイト・テスタロッサと名乗る少女の紹介を受けた。
先程シグナムとメールで確認を取ったが高町なのは襲撃時に参戦した者の一人らしい。
現在シグナムははやて捕縛の可能性を考え遠距離の護衛から近距離に移動中なので俺が代わりに連絡を行っている。
現在までの主観的意見としては、高町なのはと同様に戦闘技術は低いと判断しているので危険度は高くないと判断されるが、万が一に備えはやての召還を行える様にしていてくれ。
緊急時の連絡及び警戒解除の合図はシグナムが送る手筈になっている。
尚、フェイト・テスタロッサの容姿は添付されている画像を参照してくれ。住所も就学先の名簿と照会した場所を同様に添付しておく。
自己の存在意義を否定しているようだが、シャマルは闇の書の守護騎士ヴォルケンリッターの一であり、何よりはやての家族だ。
瑣事に囚われ家族の調和を乱す行為をするな。
要件は以上だ］
速人からのメールを読み終え少しの間呆然としていたが、直ぐに口元に笑みを浮かべるシャマル。
添付された画像を展開してフェイトの容姿を確認し、更に別に添付されている住所とその名義人と家族構成とその建物の設計図を確認しながら、先程とは打って変わって晴れ晴れとした顔で思考するシャマル。
（私は闇の書の守護騎士ヴォルケンリッターが一、湖の騎士シャマル。
私の責務は闇の書の主を護る事。譬え速人さんが私の全てを上回ろうが私のする事に変わりは無い。速人さんが私より上ならば私が速人さんを補佐して主を護ればいい）
守護騎士ヴォルケンリッターの責務を思い出し、自分が誰より優れていて誰より劣っているかという事は些事だと気付き、速人が自分より上ならば自分はそれを補佐して主を護ればいいと思い至ったシャマル。
（それに私ははやてちゃんの家族。はやてちゃんは無能とか低能という理由で決して家族を切り捨てたりはしないし、私の居場所はいつでもココに在る。
それに私は闇の書の責務とは関係無く初めて心からその主、はやてちゃんを護りたいと想った。それは誰かが私を上回ったからといって放棄する程軽い想いなんかじゃない）
自分の立ち位置と想いを再認識したら先程までの鬱状態が信じられない程綺麗サッパリ消え去り、胸の中に清々しい気持ちが広がっていた。
（そう、私は私の出来る事の全てではやてちゃんを………………家族を護る）
家族の中にははやて以外に当然自分達守護騎士が含まれ、そしてはやての付属物としてではない速人が含まれていた。
（ふふふ……………普通はああいう時は優しく温かい言葉で励ますものなのに、端的で痛烈で……………だけど清々しい言葉でしたね。
残念でしたね、速人さん。さっき速人さんに依存するように優しい言葉をかけられていたら速人さんに恋していたかもしれませんが、もう私はしっかり自分の足で立っていますし、二度とあんな状態にはなりませんから千載一遇の好機を逃しましたよ？）
暖かな微笑を浮かべながら冗談とも本気とも付かない事を考えるシャマル。
（うんっ、無感動で無感情な所は相変わらずですけど、速人さんが家族を大事にしているのは認めることにします。
凄惨な目に遭うと判っている戦闘訓練を……………寿命を削り副作用で身体がボロボロになると解っている薬を服用しながらあれだけの回数挑み続けるなんて………………人はどうでもいい事の為にあそこまで自分の身体を自ら壊したりはしない）
そう考えたのなら速人に対する苦手意識は霧散し、逆に家族の為にと自分の意思であそこまで出来る速人に尊敬の念を抱き始めたシャマル。
そして速人が帰って来たら様々な書籍等を借り受け、速人の様に色々な知識を身に付けようとシャマルは思っていた。
速人の無感動で無感情な所までは倣いたく無いが、速人は自分に足りない物を多く持っている為、少しでもそれを自分に投影できるようにシャマルは努めようとした。
――――八神家――――
Interlude out
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はやてと速人がフェイトの友達及び知り合いになったが護衛については、速人が有る程度の戦力になった事も要因し、特に今までと変わらない護衛体勢を続ける事で決定された。
その際シャマルは自分が速人をはっきりと家族と認めた事を本人に告げ、シグナムとザフィーラは酷く驚き、風呂から上がってきたはやてとヴィータには戦闘訓練等の経緯は伝えなかったが、それでも自分が速人をはっきりと家族と認めた旨を伝えた。
はやては凄く喜び、ヴィータも喜んだのだが独占欲なのか少しばかり不機嫌さも混じっていた。
速人は何時も通り無表情だったが、感謝の意を端的ながらもシャマルに述べた。
はやてはそれを微笑ましそうに見詰めていた。
そしてその翌日、前日の取り決め通り全員の親睦を深めるという事になり、月村鄭で鍋及び泊る事になった。
しかし、なのはは一人男の速人が混じる事を反対し、フェイトは一緒の部屋で寝るのには難色を示し、すずかは速人にパジャマ姿を見られる程度は気にしておらず、はやては流石にどうしたものかと迷ってはいたが反対も賛成もしておらず、アリサは速人が泊る事を寧ろ賛成しており、賛成者１名の現状で速人は自分の代わりにザフィーラ（狼形態）を供として連れて行くなら弾かれても構わないと告げ、その案に可決されるかという時アリサが「反対者２名でそれ以外が３名でなのはの意見は却下！」と告げ速人も泊る事になった。
フェイトは男と認識しての警戒以外は特に嫌悪感は無いのであまり嫌がってはいなかったが、なのは凄まじく不服そうで、アリサが速人に限って襲い掛かるなんて真似は絶対にないから納得してくれと頼みこまれ、なのはは不承不承認めた。
そして当日外泊に心躍らせて、速人と一緒に鍋の材料を用意しつつ月村鄭で全員の集合を待つはやて。その際はやては洒落で人肉が欲しいと言い、速人が手配しかかっているのを見て慌てて止めるというお約束があった。
しかし何時まで待ってもアリサは来ず、はやてが心配し速人にアリサの携帯の位置を調べるように頼み、速人が調べると月村鄭からそう遠く無い路上に在る事が解った。１時間以上前から。
不審に思い全員でその場に行ってみると、そこには壊れかけたアリサの携帯とアリサの物と思われる荷物が散乱した状態でそこにあった。
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第十一話：友になろうとする者と家族と認める者――――了
【後書】
前回の後書でアリサに活躍してもらうと書いておきながら、シャマルが話しの中心になってしまいました。
そしてフェイトはどうでもいい扱いになっているというこの有様。
しかし、久しぶりにノリノリで楽しく今回は書けました。
正直こんなに伸び伸び書けたのは第四話以来です。前半は兎も角後半は珍しく我ながら満足しています。…………後半はですけど…………。
最後の引きで次回アリサがどうなるかは、このサイトに訪れるほぼ全ての人が知っているのではなかろうか的な展開がアリサに待っていますが、フェイトとなのはも絡む予定です。
これはアリサを登場させた最大の理由なので変更する気は無く、速人も次回から動き出します。
気付けば十話全て御読み下さり、励みになる感想と共に掲載して下さる管理人様に感謝を申し上げます。
そしてこのＳＳを御読み下さっている方、文章に激しいムラが有る不出来な文を御読み下さり感謝します。
フェイトとの関係は特にないみたいだな。
美姫 「認識的には顔見知りって感じかしらね」
後半では、落ち込んでいたシャマルも速人を家族として認めたな。
美姫 「これから先もとっても楽しみよね」
ああ。けれど、ちょっと不吉な空気が。
アリサはどうなってしまうのか。
美姫 「次回も待っていますね」
待ってます。