Interlude

  ――――??????――――

 

 

 

(そんなことが本当に可能だとでも?)

 

(思っていない。

  だが、不可能と断ずるにも判断材料が少なすぎる)

 

(………詭弁だな。

  分の悪い賭けをする輩が用いる論法だ)

 

(失敗しようが実行しまいが行き着く先が同様ならば、成功する可能性が否定されていないだけ分は良い方だろう)

 

(………仮に成功したとしても、全員揃って事が終息する可能性は楽観的に見ても万に一つも無い。

  まず残された者の心に深い傷痕を残してしか終わらない)

 

(残る者が居るならばそれでも構わない)

 

(…………………………分かった。その案に賭けよう。

  烈火の将、異論は無いな?)

 

(無論だ)

 

(ならば私はその案に………いや……………貴様に全身全霊で報いよう)

 

(私もだ。

  たとえお前が力及ばず倒れようと、後に続く我等が必ずお前の後を継ごう)

 

(過剰に労力を払う必要は無い。

  余力は残せるなら残しておいたほうが得策だ。

  時空管理局の縁の者がその場に居るだろうしな)

 

(………本当に空気を気にしないのだな………)

 

(あまり気にするな。

  天神との交流は意思を交わすモノであって、想いを交わすようなモノではないからな)

 

(なるほど………それならば人との付き合いが異質なのも納得だな)

 

(暫くすれば味の有る付き合い方の気がしないでもないような気がしてくるかもしれん)

 

(………酷く迂遠な言い回しだな)

 

(接され方で評価がいくらでも変わってくるからな)

 

(つまり私がどう思われているかに係っているということか………)

 

(そういうことだ)

 

(ならば全てが無事に終わった時の楽しみに加えておくとしよう)

 

(そうしておくといい。

  ……まあ……その前に我等三名には主はやての特にキツイ御叱りを受けるだろうがな)

 

(それと除け者にされた紅の鉄騎達からの文句もあるだろうな)

 

(違いない。

  特に天神、お前は主はやてとヴィータから怒涛の如く御叱りや文句を受けるぞ。覚悟しておけ)

 

(覚悟せねばならぬモノではないだろう。

  寧ろ俺にとっては、はやてやヴィータの願望や欲求の最深奥から発せられる言葉は興味深く思っている)

 

(…………少なくとも御叱りと文句が終わるまでは、主はやてやヴィータの前では自発的にそんな事を言わぬようにしてくれ。

  最悪此方にまで飛び火するからな)

 

(考慮する)

 

(ぐ………確約されぬのが不安だが、まあそれで納得するとしよう)

 

(分かった。

  では他に何も無ければ俺は地下研究施設の全機能の確認後仮眠したいのだが、構わないか?)

 

(む、ならばこの対話は些か名残惜しいが又の機会と思ってこれで終わるとするか)

 

(いや、一つ訊きたい事があるが、構わないか?)

 

(なんだ?)

 

(…………不興を買うのを承知での質問だが……………貴様は何を視たいのだ?

  主と守護騎士を守り、そして私を呪縛から解き放ったその先に何を視たいのだ?

  ………別に詳細に話してほしいとは思わない。そもそも誰かの最も深い部分の概要は自らが想い図るモノで、それを本人に訊ねるのは理解の放棄だと思っている。

  だが…………これから共に挑む者が何を見たくて挑んでいるか程度は知りたい。

  要約すれば行動理由ではなく行動目的を僅かでいいから話してくれと言うことだが…………構わないか?)

 

(もし………あの時と同じ思いで空を見た時…………今度は違うモノが視たい。

  それだけだ)

 

(…………………………十分だ。

  何を指しているのかは解らないが、少なくとも肩を並べて挑むのに足る理由だとは感じた)

 

(…………天神………それは主はやてならば解るようなことか?)

 

(解ることではなく、知っていることだ。

  俺の記憶違いかはやてが記憶障害を起こしていない限りはだが)

 

(………疑り深いという限度を超えているな………)

 

(それが天神だと納得せねば付き合っていけぬぞ。

  さて………それでは―――)

 

(―――いや、二度中断して済まないが、最後に一つ告げさせてくれ)

 

((………))

 

(……………先も述べたが私はこの案に全てを賭けるつもりだ。

  完全にとはいかずと成功するならば、私は身命問わずに賭し、必要ならば捧げ尽くそう。

  だが…………書の闇と呼ばれる部分は官製人格の私でも制御出来ず、最悪私の意志を捻じ曲げる可能性すらある。

  故に…………もしそういう事態になったならば……………私の内に居られる主が目覚めるまで耐え続けてほしい。

  たとえ私がどれだけ暴走しようとも…………)

 

(分かった。

  あとその程度は誤差の範囲だ。気に病む必要は無いだろう)

 

(私も天神と同じだ。

  言われずとも耐え続けよう。主はやての御目覚めの時まで)

 

(…………済まない…………)

 

(……さて、それでは終わりとするか?)

 

(そうだな。

  それと、よければだが全てが終わった時、今度はゆっくりと語り合おう)

 

(ああ、私は構わない)

 

(時間的余裕が有れば応じよう)

 

(では、その時を心待ちにしていよう。

  それでは………)

 

(ああ。

  また後で………)

 

(後程)

 

 

 

――――??????――――

Interlude out

 

 

 

 

 

 

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魔法少女リリカルなのはAS二次創作

【八神の家】

第十八話:油断無き弱者と慢心する強者

 

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  エレベーターから出たクロノは速人の姿を認めると鋭い眼差しで告げだす。

「時空管理局本局執務官クロノ・ハラオウンです。

  あなたをロストロギア闇の書及び守護騎士ヴォルケンリッターとの重要参考人と判断しましたので拘束します。

  直ちに武装解除して投降するように」

  全身黒尽くめの格好で睨み付けながら告げるクロノ。

  そんな視線と言葉を受けた速人だが、一切気にせず普段通りの対応を返す。

「時空管理局などという正気を疑う傲慢且つ横柄な名前の機関、記憶している限り地球上には存在しなかった筈だが?

  妄言を言う為に来訪したのなら即座に退去しろ。戯言や遊戯に付き合う程時間的余裕や寛容さは持ち合わせていないのでな」

「なあっっ!!??」

  拒否されるのは想定内だったが、拒否の仕方が想定外だった為一気に激昂するクロノ。

  が、直ぐに執務官としての役割を思い出し、平静になるよう努め、そして少し落ち着いた後に再び話し出す。

「………端的な説明になりますが、時空管理局とはあなた達の住んでいる世界の外の司法機関です。

  あなた達は知らないでしょうが、時空管理局とは数多の世界………総称して次元世界と言いますが、その平和の為に活動している組織です。

  そしてあなたはその次元世界を揺るがす程の危険な古代超文明の物品、【闇の書】と呼ばれるモノの重要参考人です。

  故に直ちに武装解除し、大人しく捕縛され事情聴取を受けるように」

「つまりこの地球上の国家若しくは機関ではないと?」

「そうです。

  本来こんな管理外世界に管理局は干渉しないのですが、それが次元世界の平和を脅かすとなれば話は別です」

  話しながらもクロノは速人相手に丁寧語で話さなければならないこの現状に苛立ちを覚えていたが、それ以上に以前論戦で苦渋を舐めさせられた屈辱を晴らせる機会とばかりに嬉嬉として高圧的に話をする。

  そんなクロノの内心や高圧的な話し方など気にしていない速人は、神経を逆撫でするような普段通りの話し方をする。

「一切証拠を提示せずに常識外とされるコトを納得させられると思っているのか?もしそうならば新興宗教でも創設し、世間一般の思考を実体験で学べ。

  それと先程も言ったが戯言や遊戯に付き合う時間は無いと言ったが、語句の意味が解からなかったか?ならば解り易く訳そう。戯言とは冗談、つまり馬鹿馬鹿しい話や巫山戯(ふざけ)た話を意味する。遊戯とは遊び戯れるコトを意味する。

  解ったなら速く此処から出て行け」

  法による後ろ盾と理論武装で説き伏せられると思っていたクロノだったが、そもそも相手にされていないと知り再び激昂するが何とかそれを押し止め、先程より長い時間を使って少し落ちついた後に話を再開する。

「ならば今す―――」

「仮に証拠となるモノを提示したとしても、この星最大規模の組織を一切介していないと判断される無法且つ傲慢な者の言い分など了承するに値しない。

  二度も理解できなったようなので、読解能力が著しく乏しいであろうお前にも解るように言おう。帰れ」

「―――ぐに…………」

  真っ当な意見も存在しているが、それ以上に露骨に相手の神経を逆撫でする言葉をふんだんに使われ、三度(みたび)クロノは激昂した。

  そして今回は落ち着こうにも平静さを取り戻す程は落ち着けず、やるべきことは見失っていなかったが丁寧語ではなく攻撃的な言葉遣いになってしまった。

「フザケるな!

  お前がさっき守護騎士の一名とアリア………猫耳と尻尾が生えた者をここに運び込んだのを見ているんだ!

  応急手当をしていたからアリアの傷害容疑を本人が告訴するまで不問にしてやったというのに、これ以上ごねるなら傷害容疑だけでなく執務官侮辱罪や諸々の罪状を追加してやろうか!?

  それが嫌なら僕の事務処理の負担にならないようとっとと捕まれ!」

「堂堂と盗撮宣言とは、益益何らかの司法機関に属しているか疑わしいな」

「フザケるなって言ってるだろがっ!お前が管理局の存在を知っているのは分かっているんだ!

  これ以上惚けるなら拘束した後に尋問しても構わないんだぞ!」

「五月蠅い奴だな。

  だがその稀に見る底の浅さは短時間ならば観察に値するので暫し話に付き合おう。

  疑問があるならば尋ねてみろ」

「くっ……どこまでも人をバカにしやがって!………………まあいい。

  それじゃあ聞くが、ここに来る前……、地上にいた薄紅色の髪の女、あれはヴォルケンリッターで間違いないな!?」

「そのような個体名の者など俺は知らん」

「……………ならば騎士に類するような言葉を自身に使ってなかったか?」

  速人の返事でクロノは質問の仕方が間違っていると気付き、同時にある程度の冷静さは取り戻せ、言葉遣いはそのままだが怒鳴り声は何とか治まった。

  が、相変わらず速人は一切無関心と言わんばかりに今まで通りの口調で返事をした。

「自身を指して騎士と誇称していた事は在ったと記憶している」

「次だ。魔法………ここの科学では説明がつかない若しくは限り無く不可能に近い現象をそいつは起こしたか?」

「衣服を1秒以内に分解及び再構築していると思しき現象を見たことはある」

「………次だ。先の者が蒐集行為をしているところを見たことはあるか?」

「何らかの既製品を蒐集しているのを見たことがある」

「訂正だ。他者を害する行為をした現場を見たことがあるか?」

「地上でリーゼアリアと名乗る者が襲撃した際迎撃するのを見た」

「迎撃ではなく襲撃するのを見たことは?」

「無い」

「………次だ。闇の書………名称は兎も角、明らかにこの世界の本の機能を逸脱した、本の形をした物を見たことはあるか?」

「在る」

「………………」

  不気味なほどあっさりと次次に肯定していく速人に、凄まじい疑惑の目を向けながらクロノは確信一歩手前の疑念をぶつけた。

「…………次だ。魔法について僕以外から―――」

「流石は稀に見る底の浅さだ。何度も的を外した質問を重ねる。

  問い質すのは、フェイト・テスタロッサの戦闘関連情報を先の者が保有していたのにどれだけ関与しているか?、この一つで済むというのに、よくここまで益体の無い質問を続けられるな」

「―――魔法を…………」

  明らかに連続魔導師襲撃事件の容疑者と取れる発言を聞き、クロノは馬鹿にされていたと判断して一気に激昂した。

「っっぅ!!やっぱりお前はヤツラの仲間だったんだな!?」

「俺も、そして相手も仲間と思ったことは無いだろう」

「フザケるなっ!!あんなこと知っていて無関係のはず無いだろうがっ!!

  いいかっ!?もう一度聞くぞ!君はあいつらの仲間なんだな!?」

「相手の返事を制限する発言、並びに制限外の対応をした場合武力行使による強制的な発言撤回を示唆する恐喝行為。

  更には本質から外れた質問を立て続けにするという識見の低さにも拘わらず、執務官という字面通りならば要職だろう地位に就いているとするならば、魔力と応用の利かぬ知識のみで要職に就ける浅薄な組織と判断できるな。無論発言が虚言でない場合だが。

  が、その害悪な低能さと、並ぶモノを知らぬ程の傲慢さと横柄さを兼ね備えていると推測される組織に属していると判断されるクロノ・ハラオウンは、俺が聞き、そして推測した時空管理局の尖兵なのだろう。

  因ってこれから交渉するならば其方の要求を呑むかは兎も角、交渉自体に異論は無い。

  後、先の問いだが、俺は仲間とは思っていない」

  自分と管理局を虚仮にされるどころか完全に侮辱されていると判断したクロノは、激昂を通り越して暴走しかけたが、ここで執務官の本分を忘れて暴走すると速人の言を全面的に自分が肯定することになると思い、暴走せぬよう心中で落ち着くよう半ば暗示めいた言葉を繰り返し、落ち着きは取り戻せなかったがなんとか暴走を抑えることには成功し、臨界点寸前が容易に感じられる不気味な冷静さで話しだした。

「………………………交渉に応じるということは、いきなり本題に入って構わないんだな?」

「構わん。不明な点があればその都度問う」

「解った。では本題に入る。

  連続魔導師襲撃事件容疑者守護騎士ヴォルケンリッター並びにロストロギア闇の書及びその主との重要参考人として事情聴取をする。直ちに武装解除して投降するように」

「拒否する」

「ならば武力行使による無力化後、拘束して事情聴取になるが構わないか?」

「拒…っぅくっ」

  またも速人は拒否しようとしたが、突如嘔吐感を催し、戦闘中ではなく交渉中と言うことと、この後高確率で戦闘に移行する事を考え、このまま嘔吐勘を引き摺って戦闘になるよりは今嘔吐感に逆らわず素直に嘔吐するべきと判断し、素直に嘔吐した。無論依然隙無く警戒したまま。

「!!?」

  突如嘔吐した速人を見て驚くクロノ。

  無論胃の内容物を嘔吐しただけならばクロノも驚きはしなかった。

  だが、嘔吐と言っても血を吐いている吐血であり、しかも口に一含み程度の量ではなく、手酌1杯分程の量を二度に分けて吐き戻し、その後咳と一緒に口に一含み程度の吐血を数度繰り返す。

  突如吐血した速人を呆然と見ているクロノだったが、速人は呆然としているクロノと周囲を以前油断無く警戒していた。

 

 

 

―――

 

  速人が突如吐血した理由は、先程のリーゼアリアとの戦闘時に脳内多量分泌した劇薬のアドレナリン、それと僅か1回の後方跳躍が原因だった。

 

  健常時の速人ならばその程度ならば然して問題ではないのだが、魔法で傷を癒したとはいえ度重なる戦闘訓練での負傷は未成熟な速人の体を確実に蝕んでおり、更には栄養剤や覚醒剤を使って限界近くまで睡眠時間を削り続けたツケの結果、内臓が最早戦闘に耐えられない程にまで衰弱しており、健常時はまるで問題無かった反動でもあっさりと吐血してしまっていた。

 

 

  もしシャマルに見せていればここまで悪化はしなかったのだが、戦闘訓練で負傷した内臓を治療してもらっても尚内臓が衰弱していっていたので、速人はシャマルの魔法は怪我を治療するのであって病気や衰弱を快復させる事は極めて困難なのだと判断した。

  故に、シャマルの治療を受け続ければ快復は出来ずとも衰弱の速度を緩められると承知していたが、その場合自身が衰弱していると知られ、単独での戦闘を決して認めないばかりかはやてにその旨を知られて行動が著しく制限されると思い、シャマルの治療を受けずにその事を誰にも告げていなかったのだった。

 

  尤も、告げられずともはやてとヴィータは何と無く速人が無茶しているのを感じていた。はやては勘で、ヴィータは観察力で。

  だが、はやては何かに打ち込む速人の行動を制限したくなく敢えてそれを見逃し、ヴィータは以前蒐集が終わるまでは睡眠時間についてあまり文句を言わないと言った事を内心激しく後悔しながら黙っていた。

 

―――

 

 

 

  吐血が混じらない咳を数度繰り返し、その後僅かな時間で呼吸を落ち着けた後、速人は飲料型の薬を一気に飲み、その後使用準備され固定された注射器が入った試験管を取り出し、中から注射器を取り出して静脈注射する。

  そして一通りの処置を終えた速人は未だ呆けているクロノに告げる。

「遅れたが返事は、拒否する、だ」

  それを聞いて我に返ったクロノだったが、クロノが我に返るのと同時に今度は速人から話しかけられて機先を制されてしまった。

「さて、次は此方が意見する番だ。

  即座にこの場より立ち去れ。そして闇の書の主とその守護騎士と俺には干渉するな」

「随分と都合のいい主張だな。

  無差別に魔導師を襲撃している以上、その関係者を含めて放置することは出来ない。

  何より闇の書が完成すれば無差別襲撃の比ではない被害が発生し、誇張抜きでこの星は滅びるだろう。

  罪も無い無関係な者達が巻き込まれて死ぬであろうそんな提案など呑めない。そんなことも予想できないのか?」

  口元にこびり付いた血を強引に拭い取りながら聞いていた速人は、クロノと違って微塵も動揺せずにその言葉に返事をする。

「主観的意見になるが守護騎士は無差別に襲撃していない。闇の書の頁を埋めに足る者を選別して蒐集行為をしている。

  それと其方の法は知らぬが、無差別でなければ刑罰が変化するのか?」

「………訂正しよう。無差別ではない。

  それと無差別でないからと言って刑罰は変化しないだろう」

「解った。

  次の問いだが、なぜ無関係な者を気遣うのだ?

  自分達に関係のある者を無関係な者の為に危険に晒す行為など、組織としては最も愚かしい行為だと思うが?」

「優れた者が力無き者を守るのは人間として当然だ」

「人間として当然かどうかは兎も角、組織としては正真正銘無駄に人員や機材を割く行為だと思うが?」

「何の罪も無い者が死ぬのを見過ごすような組織に人は集まらない。

  そんなことも解らないのか?」

「その発言通りに解釈するのなら、時空管理局は罪が無いのを生存する条件にしており、疑う余地も無く傲慢だな。それも恐らく時空管理局が認識している範囲では並ぶモノが無い程に」

  その言葉に堪忍袋の緒が千切れたクロノだったが、辛うじて堪忍袋の口を手で閉めながら返事を返そうとしたが、

「あと先程の発言から考えるに、どれだけ徳を積もうとその過程で必要悪とも言える罪が僅かでも発生すれば一切の徳を無視して罪を裁き、罪が無くとも存在が不都合ならば存在を罪として自分達の正当性を主張して裁く。

  こう解釈したが間違いないか?」

「………………っ………………」

  極論だが的外れではない速人の指摘を受け、反論することが出来ず黙り込むクロノ。

「流石は恥知らずにも時空管理局などと名を掲げる組織と言うべきか。狂人でもなければ管理と平和を履き違えんしな。

  問うが、管理が征服や支配、若しくは蹂躙だと理解しているか?」

「なっ!?……ふ……ふざけるなっ!!僕達はそんなものじゃない!!

  多くの者………次元世界の平和と安定の為に法を定め、そして法を犯す者を裁き、次元世界の平和と安定を維持しているんだ!!

  断じて支配や征服、ましてや蹂躙が目的じゃない!!」

  相性の悪さに加え、以前の雪辱を晴らせると思えば以前より扱き下ろされ、あまり頑丈とは言い難いクロノ堪忍袋はとうとう裂け始めた。

  対して速人は相手の主張を一切気にせず話を続ける。

「その発言と発言内容がそうだと理解していないようだな。

  時空管理局の言い分など時空管理局に属す者以外には無関係だ。

  大義・信念・正義・理想・理念、他にも呼び方はあるが異なる二つの主張があるならば、主張を通せる者は力ある者だけだ。

  他者の思考を言葉により犯し主張を通す者、他者を武力で以って制し主張を通す者。様様な方法が在るが最終的には力ある者しか主張を通せない」

「正義や理想の名の下に主張を通して何が悪い!!?」

「圧倒的多数の肯定意見を得ただけの主張などを正義と呼べると思っているようだが、その認識は侵略戦争を行う者が掲げる常套文句だと気付いていないようだな。

  侵略戦争を行う者の殆どは善を是とし悪を否とし、自身達を絶対的な善とするか他者を絶対的な悪とし、主観でだが自身達の主張と行為の絶対的な正当性を得、躊躇せずに蹂躙行為に及ぶぞ。その最たる例が時空管理局だな」

「黙れ!お前らみたいに野蛮な質量兵器を未だ使い続けて魔法も知らない文明の幼年期の奴等が平穏に暮らせるのは、僕ら管理局が次元世界の平和を維持しているからだって分かっているのか!!?」

「その台詞は平和の為に切り捨てたモノに対して言える台詞ではないと理解していないみたいだな。

  管理外世界とは、全てを掌握しようとすれば破綻するので、魔法を使っておらず且つ自分達に害を成さない文明圏という存在を切り捨てるという烙印のようなものなのだろう?」

「違う!!

  非殺傷設定も出来ない野蛮な質量兵器を使い続ける文明圏に新たな技術を伝えれば新たな火種になると判断したからだ!!

  自分達の野蛮さを棚に上げて被害者面するな!!」

「被害者意識等微塵も無い。寧ろ完全に不干渉にしろと言おう。

  切り捨てたにも拘わらず管理外と呼称し非干渉地帯にせず自分達の都合で干渉できるようにし続け、干渉する時は自分達の存在を隠蔽しつつ時には数十万規模の殺戮が可能な兵器を現地民に通告無しで使用する。

  踏み躙ったモノを省みないことを正義と言うならば、時空管理局が正義と名乗るのは頷けるな」

「くっ………!だがそれもより多くの者の平和の為だ!!

  死なせた数を上回る者の平和を守れるならその処置も止むを得ないだろうが!!」

「大を生かす為に小を切り捨てるのは否定しない。

  だが切り捨てられた小にも、傷を負った大にも、双方に説明どころか存在すら明かそうとしない者が言う台詞ではないな。

  第一この文明圏で突如としてそのような状況になれば疑心暗鬼が発生し、戦争へ発展する可能性も十分にある。そして現在の軍事科学力で殲滅を主体とする戦争になれば、此の星は砕け散る可能性すらあると理解しているか?被害を抑えると主張しているが、その事を考慮して軍事施設も根こそぎ滅ぼすのか?そうでないなら放置していろ。

  理解していないようなので告げるが、自らの存在を隠蔽したままの介入など、一定以上の組織力を持った文明圏にとっては害悪にしかならないぞ」

「ならお前は誰かを救える力を持ちながら見殺しにしろと言うのか!?」

「傲慢な考え違いをしているようなので指摘しよう。

  時空管理局に殺されるのではなく、脅威に晒されている者達が相対しているモノに殺されるのだ。

  それと他者の死ぬ原因や巻き込まれた理由や戦う理由を略奪して悲劇に酔う者は、普通悪感情しか持たれんぞ」

「それはお前個人の考えだろうが!?

  力無い者はそこに助かる術があるなら飛び付く筈だ!!」

「その力無い者とは戦闘能力が低い者を指しているのか?そして人間の意志が生存本能に劣ると言っているのか?

  もしそう言っているならば、傲慢此処に極まり、と言った所だな」

「いい加減にしろ!!生きてる事以上に価値の在る事なんて在るわけ無いだろうが!!」

  今までクロノの発言に僅かにも反応しなかった速人だったが、その言葉を聞いた途端無表情と思われた顔から更に表情が削げ落ち、マネキンの様な無貌でクロノに死刑執行確認をするように問う。

「つまり時空管理局は兎も角、お前は生きてさえいればどのような死を迎えるより価値があるというわけだな?」

  その言葉と共に発せられたモノは、怒りや悲しみや憂いや喜びや恐れの何れでもなく、それらに成る前の無色とも言うべきモノだった。

  だが敵意を帯びていなくとも速人から発せられるソレは途轍もなく膨大で、クロノは熱くも冷たくも無い津波の中で一人佇んでいる様な錯覚を受けた。

  だが、内心を埋め尽くさんばかりの正体不明の恐怖という毒を、張り裂けかけた堪忍袋の中の怒りをばら撒いて恐怖を中和し、何とかある程度の平静を取り戻してクロノは速人の問いに返答した。

「当然だ。生きてさえいればいくらでも遣り直しが出来る。だが死ねばそれまでだ。

  死が生より価値が在るなんて僕は認めない」

  クロノのその発言の途端、今まで速人から発せられたモノは突如消え去った。まるで津波が発生する直前に一部の湾岸の海水が減少する様に。

  だがクロノは兎に角正体不明の恐怖感が消え去って内心安堵していた。

  対して速人は先程までの無表情で虚ろな感じに戻り話しだした。

「死を生と等価値、若しくそれ以上の価値付けをしている俺には理解不能な考えだな。

  始まりがあれば終わりがある。生まれたからには死がある。ならば始まりや生の対極の終わりや死は等価値だろう。

  若しくは生まれ、つまり受精の仕方は選べぬが、死はある程度自身で決定出来る裁量が在る。故にただ生まれることより死ぬ事の方が価値はあるだろう」

  生きると言うことに頓着していないとも受け取れる速人独特の価値観を聞き、クロノは理解不能の為一瞬呆気に取られ、その隙に再び速人が問う。

「問うが、魔導書の主、ヴィータ、ザフィーラ、シグナム、シャマル、そしてロストロギアと称された魔導書。

  此れ等を其方はどのように処するつもりだ?」

「…………闇の書の主は事件に巻き込まれた被害者と判断しているので厳重な保護観察処分若しくは軟禁処分をしつつ快復させる。

  守護騎士達は連続魔導師襲撃事件の容疑者であり確たる証拠も山の様にある。よってプログラムである擬似生命体たる守護騎士達は法廷に立つ権利も義務も無いため、拘束後直ちに消滅させる。

  闇の書は本局で精密調査をした後に主との繋がりを絶ち、その後厳重に封印若しくは消滅させる。

  そして君はアリア………リーゼアリア傷害事件の容疑者だが、関係者からの情報提供によると迎撃と見て間違いなさそうなので正当防衛を適用すれば無罪放免だろう………………いや、まさかとは思うが殺していないだろうな?」

「殺害も死亡もさせていない。

  処置は済ませたので自傷行為に及ばない限りは、傷が癒えるまでに傷が原因で死亡する可能性は0.01%にも満たないだろう」

「そうか。

  ………ならばリーゼアリアの件についてならば、君は最悪でも過剰防衛による軟禁処置で済む。

  ただ連続魔導師襲撃事件の共謀者としての方の罪だが、君が暴走したリーゼアリアの迎撃以外直接戦場に立ったことは無く、且つ守護騎士が殺人を犯しておらず、そして手段は兎も角動機は十分に情状酌量の余地があり、君のその精神の異常性と未成年という事を考慮すれば、やはり保護観察処分若しくは軟禁処置だろう」

  その言葉を肋骨の上から右手で心臓を圧迫しながら聞いていた速人は、別段苦痛に顔を歪めてもいない普段通りの無表情で返答する。

「その処分を前提に投降を呼びかけているのなら、先程の会話から推測した時空管理局の思考原理を考慮した結果、交渉の余地は微塵も無いな。

  他に通告事項が無ければ交渉決裂となるが、何かあるか?」

  言い終わると同時に一度だけ咳をして血を吐き捨てる速人。

  その行為と速人の現状に顔を顰めつつ、怒りが殆ど消え失せてかなり冷静になっているクロノは返事をする。

「無いな。つまりこれで交渉は決裂だな。

  ああ、それと念の為に言って置くが、もし大人しく投降すればこの世界の医療技術を遥かに超える医療を受け―――」

  ―――その言葉の途中、交渉決裂の言葉を聞いた速人が左脇腹に仕込んでいた遠隔装置を心臓の圧迫をしながら操作し―――

                                                                                   !!!!!!!!!!!!?」

―――悲鳴すら上げる事を許さない電撃をクロノに浴びせた。

 

 

 

―――

  クロノに浴びせられた電撃は10億V・20万A・放電時間0.002秒・4000億WSで、地球上で起こり得る最大規模の落雷とほぼ同規模であった。

 

  以前フェイトがプレシアによる次元間跳躍攻撃のサンダーレイジODJに直撃した時は周囲が電離気体(プラズマ)化する程の熱量を発生させなかったが、今回クロノが浴びた電撃はプラズマが発生する程の熱量を発生させられる電撃であり、クロノがフェイトより防御力が高いといっても受けた電撃はその比ではなかった。

 

  だがそこまでの出力の電撃だとクロノが吸収し切れなかった電撃が周囲に放電され速人にも向かってくるので、対策として目標に空気を伝導して到達する為に照射した赤外線を別の位置からも照射して誘電路を作成するという防護策を採っており、そのためクロノは限界まで電撃をその身に吸収せずに済み、結果戦闘不能寸前ながらも辛うじて立っていた。

―――

 

 

 

  突如自身を駆け抜けた衝撃に何が起きたかも理解出来ていないクロノだったが、直ぐに何かしらの攻撃で重傷を負ったと判断し、攻撃の分析よりもデバイスを手に取り牽制しつつその場を離れようとする。

  が、それよりも早く速人は左手でデザートイーグルを構え、クロノの両肘と両膝へと50AE弾を発砲した。

  先程の電撃でクロノのバリアジャケットは崩壊寸前であり、そんな状態のバリアジャケットで万全の状態のシグナムの騎士甲冑越しにでも肌に痣を付け衝撃を骨に届かせる50AE弾には敵わず、着弾部が千切れ飛ぶのを辛うじて抑えただけで関節を完膚なきまでに破壊されてしまう。

「!!??             っっっぅぅぅぅがあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

  着弾の衝撃に驚愕し、そして撃たれた事を認識した瞬間に痛みを認識して大絶叫を上げるクロノ。

  クロノが大絶叫を上げながらデバイスを取り落とすと同時に速人はクロノ目掛け疾走し、両手持ちにしたデザートイーグルでクロノのデバイスに連続発砲する。

  一発目着弾でクロノからの魔力保護が無いデバイスは亀裂を走らせながら空中に跳ね上がり、二発目着弾でデバイスは罅割れながら壁に叩き付けられ、三発目着弾でデバイスは砕け散り、四発目は核と思しき物に着弾し、核と思しき物は粉砕した。

  そしてクロノのデバイスを完全に破壊した時、速人は崩れ落ちるクロノの顔を蹴れる位置にまで到達していた。

  そして速人は崩れ落ちるクロノの口に靴の爪先を捻じ込んだ。

                       ?」

  てっきり蹴り飛ばされると思っていたクロノは朦朧とした思考ながらも怪訝に思ったが―――

                  !!!!!!!!!!!!!」

―――下顎に加重が掛かった一瞬で速人の目的を察し振り解こうとする。が、デバイスを失い、両肘と両膝を砕かれたクロノは碌な抵抗が出来なかった。

  そしてクロノの下顎は殆どの下歯を砕き折られながら、頭部を空中に残したまま引き千切られて床に踏み付けられた。

  舌は喉奥に靴で捻じ込んでいたので千切れてはいなかったが、それを抜きにしても完全に致命傷であり、戦闘どころか身動き一つ出来るか怪しい状態であった。

  だが速人はそれでも足りぬと言わんばかりにスローイングナイフで延髄を切断し、止めとばかりに注射器と強力な麻酔の入った瓶を取り出し、クロノに静脈注射した。

  クロノの無力化を終えた速人は手早く応急処置をしていく。

 

 

 

 

 

  応急処置を済ませた速人は壁のコンソールを操作して医療器具一式を取り出し、血液検査の後に輸血を開始し、切断した延髄はクロノ自身から抽出した骨髄をips細胞の代わりに代用し、電撃により炭化した皮膚や筋肉は切除の後移植縫合し、その後引き千切った顎部を洗浄消毒後縫合し、砕け折れた歯もセメントと人工骨で強引に整形し、両肘と両膝は砕けた骨を除去した後神経の縫合後傷口も縫合した。(ついでに先程使用したスローイングナイフも洗浄消毒した)

  かなり適当な治療だったが、魔法で快復出来るだろうと判断した速人は死にさえしなければ構わないといった程度の治療しか施さなかった。

  仮に魔法では快復出来ず、満足に四肢が動かなかろうが、縫合した顎部が腐り落ちようが、延髄が再生せずに半身不随になろうが、放置すればまず死んでいたところを生きている状態に留めたのだから、生より価値が在るモノなど無いと主張した本人ならば生きてさえいれば不満は無いだろうと推測し、死亡させない程度の処置さえすればはやてに然して心労はかけないだろうと判断し、これ以上クロノの医療処置に労力を割くのを止めた。

  そしてクロノに死なない程度の処置をした速人は、所持品検査を省略する為に全て衣服を脱がし、X線や超音波等を使って体内に何かしら埋め込んでいなかを確認し、特に問題は無いと判断した後にクロノを乗せていた簡易ベッド端に移した。

  クロノの処置が済んだ後は間髪入れずデザートイーグルをクロノと一緒に進入してきた偵察機(サーチャー)目掛け一発発砲して破壊した。

  残弾数が0になったデザートイーグルに糾弾し(薬室内にも一発装填し)、最大数まで装填した後安全装置をかけずに右腰のホルスターに納めた。

 

 

 

  その後再び数度吐血し、先程の吐血と合わせれば思考や活動に影響が出る程の失血量だったが、貯蔵していた自身の血液を輸血して対処し、吐血によって出来た血溜まりは自動洗浄機能で洗い流した。

  しばし休憩をして息を整えた速人はクロノの容態を確認し、過度の衰弱はしていないので蒐集されても衰弱死はしないだろうと判断したのでシグナムに蒐集を依頼する信号と対象の座標等を送信し、それが済み次第迎撃準備を進めていった。

 

 

  そして蒐集依頼の信号を出して3分に達する間際に蒐集が始まり、それを確認した速人はコンソールを操作して通信を開始した

 

 

 

 

 

 

  Interlude

  ――――アースラ――――

 

 

 

  モニターに映し出された戦闘結果にアースラスタッフは呆然としていた。

  如何に敵地とはいえ、AAAランクの魔導師が管理外世界の非魔導師に、しかも子供一人に後れをとるとはアースラの誰もが万が一にも考えていなかった。

  しかし現実には不意打ち気味の一撃で重傷を負わされた後追撃で四肢を破壊され、その上一切の油断無くデバイスを破壊され、更には呪文の詠唱を防ぐ為顎を破壊された。しかも止めとばかりに延髄を切断した後に何かしらの薬品を注射され、完膚なきまでに無力化された。

  その後適切な応急処置が迅速に行われ、速人が本格的な処置を施そうとした時我に返ったリンディ未だ呆然としている面面に指示を下す。

「ユーノ、フェイト、アルフの三名は直ちにクロノ執務官の救出を!

  同時に天神速人を公務執行妨害、並びにクロノ・ハラオウン執務官の殺害未遂の現行犯として逮捕!」

  その命令をフェイトは顔面蒼白で僅かに首肯し、ユーノとアルフは蒼褪めた顔でフェイトを気遣った後首肯し、そして三名は直ぐに転送ポットへ向かった。

  それを見届けた後リンディはエイミイに話しかける。

「なのはさんの居場所とレイジングハートの状況は?」

「なのはさんはデバイスメンテナンスルームです。

  レイジングハートの状況ですが、後は自動の最終調整のみで、1200秒〜1800以内に修理完了予定です」

「ならなのはさんはそのままその場所に待機させといて。

  デバイス修理完了後直ちに出撃させるから。

  あと先程の攻撃を分析してそのデータをバルディッシュとレイジングハートへ送信」

「了解です」

「それと八神はやてと守護騎士達の居場所は?」

「依然不明です。

  天神速人と八神はやての名で住居検索をしても、検索結果は全てダミーでした。

  恐らくデータベース上でいくら検索しても判明しないと思われます」

「………なら住居検索は中断し、さっきの攻撃の解析と対策に当たって頂戴」

「了解です」

  と、そこまで指示を出したリンディが再びモニターを見やったら、クロノの顎が縫合されている最中だった。

  その映像を見たリンディは、クロノが治療されているのか改造されているのかの判断がつかなかったので、専門家の意見を聞くことにした。

「攻撃を受けた所からの映像と攻撃の詳細を医療スタッフに送信し、クロノ執務官の容態の予測を仰いで頂戴」

  そう指示を下し、リンディは思考に耽りだした。

(クロノから聞いたグレアム提督の話……………特に軍師って言われている子は………俄かには信じ難い話だったけれど…………今に至るまでの映像を見たら信じないわけには行かないわね)

  明らかに一般の施設とは一線を画していた施設、そして地上では居た守護騎士が居なかったことから単独での戦闘を任されるだけの信頼関係(見棄てられたとはリンディは微塵も思っていない)、そして終わったからこそ解ったクロノとの交渉に隠されていた意味。

  それらを認識したリンディはグレアムがクロノに語った内容が、誇張されたモノでなかったことを漸く認めた。

(初めから………、初めからクロノが怒るようわざと話してたのね…………。

  怒らせて集中力を限界以上に高め気力の消耗を誘う。気迫を叩きつけて恐怖を抱かせて怒りを中和させ、興奮状態が途切れた後特有の倦怠感を生ませ、警戒能力や判断能力を低下させる。

  ………………武力行使をしてなかっただけで、最初から速人君は戦闘をしていたのね……)

  最初から最後まで速人に場を支配されていたと遅まきながら気付き、他の者に気付かれない程度に歯噛みするリンディ。

(……………さっきの戦闘だけじゃはっきりとは解らないけど、狙撃技術と運動能力と判断力だけみたら陸戦Cは固い。…………予想じゃ多分Bの上位に食い込む筈。そして……………さっきの質量兵器の攻撃ランクは私の見立てじゃAAA+〜S+。

  ……………あの閉鎖空間じゃ存分に間合いを取れる事を前提とした空戦能力は殆ど発揮されず、縦横無尽にスピードで翻弄するタイプのフェイトさんや、遠距離からの大出力砲撃を放つタイプのなのはさんは、恐らく本来の力の半分も発揮できない筈)

  気付かれない様に歯噛みしていたリンディだったが、画面の中の速人はクロノの処置が終わったらしく、先程と違った事をし始めたので一旦思索を打ち切り、注意深く観察していた。

  が、直ぐにそれは速人がサーチャーを破壊したので無駄になった。

「サーチャーを直ちに追加投入して。

  あとサーチャーが到着するまで三人とも突撃は絶対に控えるように。 最悪知覚不能な類の攻撃手段があるかもしれないから」

  画面の中で一刻も早くクロノの救出に向かいたい三名は反論したそうな顔だったが、魔法は兎も角質量兵器の知識が殆ど無い三名は、先程クロノが受けた攻撃を思い出し渋渋納得した。(メンテナンスルームに居るなのはだけはひどく反論していたが、リンディはエイミイに説得を丸投げして再度思索に耽りだした)

(携帯している質量兵器の攻撃力は高く見積もってBランクとし、設置されている質量兵器を砲門10として全てS+以上とし、そしてさっき見た戦闘技能を足し、最後に防御力を引いた戦闘ランクは………………多分陸戦B〜A)

  バリアジャケットも纏っていない速人なら牽制攻撃一発で戦闘不能に出来ると考えた、極めて普通の評価を下すリンディ。

  そしてその考えを基に作戦を練っていく。

(突入直後バインドで拘束。もしバインドの範囲内から離脱されたならその隙にクロノを回収し、その後質より量の攻撃で戦闘不能に追いやる。

  もし守護騎士が居てクロノを人質にとっているなら、守護騎士に人質をとる卑怯さを指摘すれば隙は十分に作れる)

  作戦と呼ぶにはあまりに穴だらけの作戦だったが、クロノやリーゼアリアの事を考えると一刻も早く突入して救出しなければと焦っているリンディは、あまり作戦立案に時間を割く事が出来ないと思い、浮かんだ案を十分に検討しないままフェイト達に伝えた。

 

 

 

  アースラのブリッジはこれから現場の者達が対峙するのは魔法の使い手ではなく、長らく遠ざけていた質量兵器の使い手だと認識し、皆僅かに浮き足立った様な不安を抱えていた。

  そして現場のフェイト達は先程クロノが乗り込んだエレベーターに乗り込んだ。

  非殺傷設定という自分達に都合の良いモノが存在しない為、大怪我を負うかもしれないと緊張はしていたがそれでも恐れず、重傷を負ったクロノを助ける為に速人が待ち構えて居るだろう地下に向かった。

  だが、長らく魔法至上主義と非殺傷設定を当然としていた代償として、先程クロノが致命傷を負ったというのに、大怪我を負うという事が単に身動き出来ない程度という認識しか抱けず、そして高位の魔導師が3名もいれば質量兵器相手でも負けはしないと、根拠の無い自信を常識のように三名とも胸に抱いていた。

 

 

 

  ――――アースラ――――

  Interlude out

 

 

 

 

 

 

  Interlude

  ――――八神家――――

 

 

 

  皆で楽しく食事をし終え、はやてはアリサとすずかと歓談をしていた。

  先程見たテレビ番組、最近の流行の漫画、ちょっとした心理テスト、はやてにとっては縁遠くなってしまった学校のこと、そんな他愛無い内容の話だったが、迷い無く幸せだと言い切れる時間を過ごしていたはやての前に、神妙な顔をしたヴィータとシャマルとザフィーラが立ち並んだ。

  アリサとすずかは急に背後に緊張感が漂い、何事かと振り返った。

  そしてはやて達三人が自分達を見たのを見計らい、ヴィータとシャマルはゆっくりと騎士甲冑を纏い、ザフィーラは獣人形態へと変身した。

  はやては突然アリサとすずかの前で魔法を使ったヴィータ達に慌て、アリサとすずかはヴィータとシャマルのありえない着替え方とザフィーラが人(の様な体形)に変わったのを見て唖然としていた。

  そんな三人の反応を見て、冗談や余興とは認識していないと確認した後ヴィータ達三名は、はやてに向かって深く頭を下げた。

  そして事態についていけていないアリサとすずかは一先ず措いて置き、混乱しながらも説明を求める視線を向けるはやてにシャマルが説明を始めた。

 

 

 

―――

  先ず理由は省いたが、現在はやては切迫した危機に立たされているシャマルはと伝えた。

  そして直ぐにはやてが理解はしたが納得はしていないというのを表情から読み取ったシャマルは、自分達がはやてに隠してしていた蒐集行為を大分概略してだが包み隠さず話した。

  無論、速人が魔法を使う者に対する対抗手段を得る為に戦闘訓練(厳密には呼び方が違うが)をしていたこと、はやての眼を掻い潜って蒐集をする為友人を作らせようとしたこと、速人が収集行為の補助の為アリサ救出を利用したこと、そして恐らくこれから敵対する者になのはとフェイトが含まれること、それら全てに自分達の想いという言訳を一切挟まず、在りのままに話すことが自分達に出来る精一杯の誠意だと思ってシャマルは話した。

  たとえ話す度にはやての顔面が蒼白になっていき、気を保つ為血が出かねない程唇を噛み締め、泣きそうなのを無理矢理堪えている様を見ても、シャマルは話すのを止めなかった。

―――

 

 

 

  概略化したとはいえ、今まで隠していた事を全て話し終えたシャマルだったが解放感は微塵も無かった。

  シャマルの胸の内に在るのは、隠していた時もはやてを傷つけたが打ち明けた時はそれ以上に傷付けてしまったという悲しみと、自らの不義理さと不誠実さと身勝手さに対する怒り、この二つを綯い交ぜにした想いしかなった。そしてそれは左右に立つヴィータとザフィーラも同じだった。

  だがシャマル達は悲しみと怒りが綯い交ぜになっていようとそれを表情には極力出さないように努め、自分達以上に悲しみや怒りが綯い交ぜになっているだろうはやてが自分達に遠慮せずにすむようにしていた。

 

 

 

  シャマルが話し終え、しばし深く重い沈黙が辺りに満ちた。

  アリサは速人が速人自身の目的の為に自分の救出に来たと重重承知していたので、良い気分ではなかったが然程気にした素振りを見せず、一瞬だけヴィータ達に複雑な視線を向けた後ははやてを見守っていた。

  すずかは自分がはやてと出逢ったことがある程度仕組まれたことだ知り、少なからず不快感を顕わにしていたが、特に非難はせずにやはりアリサと同じくはやてを心配して見守っていた。

  はやてはシャマルの話を聞き終わった後からずっと俯いていた。

  だが、1分もせぬうちに俯いていた顔を上げ、瞳に強い意志を宿らせ、シャマルに問いかけようとその瞳を覗き込んだ。

  が、突如鳴らされたインターホンの音でそれを中断させられるはやて。

  そんな状況の中でシャマルは、門を閉鎖してインターホンを使用不能しておくべきだったと思い、今更ながら来訪者を無視して話を進めてもらおうとしたが―――

『シグナムだ。自分で鍵を開ける』

―――と、本来今ここに来る筈のない者の声を聞き、無視するという選択肢は霧散した。

  宣言通り自分で鍵を開けるのを聞きながら、シャマルは偽者の可能性を考慮しだした。

  が、絶対とは言わないがまず無いと判断した。

 

 

 

―――

  玄関から鍵を使って開錠するには、模造不可能と言われるディンプルキーとその中に仕込んだ電磁鍵を鍵穴に差し込み、一旦逆に廻しながら手前に引く手順が要り、更に鍵穴に鍵を差し込む前にインターホンのボタンを一度押した指を離さずそのまま強く押して更に強く二度押す必要があり、鍵を奪っただけで進入できるとはとても思えなかった。

―――

 

 

 

  本物と判断したので警戒はしていなかったが、速人と一緒に居る筈のシグナムが負傷したとも思えない状態にも拘らず、何故単独で帰還したのか不安と不審を混ぜた視線でシャマル達はシグナムを見た。

  そんなシャマル達の視線を受けたシグナムだったが、帰還の説明よりも先にシャマル達に倣って自分も騎士甲冑を身に纏う。

  そして騎士甲冑を身に纏い、レヴァンテインの基本形状のシュベルトフォルムを握っていたシグナムは片膝を着き、そして自らの前にレヴァンテインを置いて頭を下げる。

「主はやて……………既に御聞きかと思われますが、私は貴女より賜った尊命に背き、騎士の誓いを破り、………貴女の想いを裏切りました」

  臣下として、騎士として、そしてなにより家族として頭を下げて詫びるシグナム。

  そしてはやてから何を指してそんな事を言っているのかという疑念を感じなかった為、更に話を進めるシグナム。

「本来ならこの場で如何様な裁きでも受ける所存ですが、火急の事態故僭越ながらそれは一時拒否させて頂きます。

  そして非礼を重重承知で先に此方の用件を告げさせて頂きます」

  膝を着いているのは相変わらずだが、下げていた面を上げてはやてに告げるシグナム。

「現在天神は一人で迎撃及び時間稼ぎをする為、地下に居ます。

  交渉や舌戦で可能な限り時間を稼ぐでしょうが、限界に至れば自然と双方武力行使に依って主張を通そうとするでしょう。

  しかし武力行使になった場合天神が管理局の者を長時間無力化するには、対象を殺害若しくは神経系を破壊する必要があります。………尤も天神は主はやてと可能な限り人殺しをしないと約を交わしているらしいので、滅多な事では殺害しないでしょうが」

  シグナムから速人の現状と目的、そしてどのようにそれを成そうとするかを聞きはやては眼に見えるほど焦っていたが、最後に速人が自分との約束を覚えている事を聞いたので速人が危険という心配は残ったが、速人が誰かを殺すという心配は大幅に減って少しだけ安心したはやてだった。

  が―――

「………主はやて………先程神経系の破壊と申しましたが、御理解してらっしゃらない様なので簡潔且つ穏便に説明致します。

  つまり脳以外は無事な状態ではないと思って下さい」

―――その言葉を聞き、はやては自分の延命法として脳髄を培養槽に浸すという案を速人が提案したのを思い出し、それではやてはそんな状態にしなければ生きていけない程の怪我を速人が負わせるかもしれないと気付き、一気に顔が蒼褪めた。

  そんなはやての表情にシグナムは当然気付いていたが、今は一秒未満の時間すら惜しかったので、心苦しかったが無視して更に話を進める。

「話を戻しますが、質量兵器は対象を殺害せずに無力化するのは極めて困難且つ非効率的ですが、我我、取り分けシャマルの魔法を用いればそれは比較的容易に可能です。

  尤も天神が無力化対象を無防備状態若しくは衰弱状態にしているのが前提ですが、それでも無力化対象を比較的傷付けずに無力化出来、何より天神の助けになります。

  ですので主はやて、天神と天神が対峙している者の身の安全の為にも、どうか我我に天神が対峙している者に干渉する許可を………」

  今一度頭を下げるシグナム。

  対していきなりそんな事を言われて混乱しているだろうと頭を下げているシグナム以外の全員がはやてを見た。が、やや俯いて眼を閉じて考え事していただけで、混乱しているようには見えなかった。

  そして20秒もしない内に思案は終わったらしく、何度か深呼吸した後にはやてはシグナムに問いかけた。

「今すぐあたしがその時空管理局に名乗りを上げて謝ったら、速人はんは戦わんで済まんか?」

「その場合天神は直ちにこの星の大勢の者を巻き込むのを承知で、確かな証拠とともに魔法の存在を流布し、そして時空管理局と戦争になるよう仕向けます。

  ですのその判断は犠牲を最小とするならば、天神が活動可能な状態の時は最も回避するべきモノです」

「あたしが速人はんを説得するいうんは?」

「現在戦闘を阻害せぬ為にこちらから地下施設には緊急信号等の単純な通信以外は全て不通になっています。

  ただ、あちらから此方には通信可能ですので、この場に居れば連絡が入る可能性はあります」

「シグナム達の誰かが速人はんをこっちに運んできてあたしが説得するいうんは?」

「現在この家を破棄せずに、私・シャマル・ザフィーラ・ヴィータ、そして主はやてが揃わず地下施設に向かうと、地下施設は自爆するようになっています。

  天神が【小事の為に大事を失わぬ為の安全機構】と言って念入りにプログラムを変更したそうなので、事が終わるまでの間に我等がそれを元に戻すのはまず不可能でしょう」

「じゃあ今すぐあたしら全員が速人はんのとこに行くんは?」

「その場合すでに天神に打倒された何者かが培養槽で生きていく事になります。

  説明中故直ぐに御報告致しませんでしたが、約100秒程前天神が何者かを打倒したとの通信が送られてきており、180秒以内に此方が干渉して無力化を始めぬ場合は天神が先程申したような無力化を行いますので、地下施設到着まで最低でも180秒掛かるのでその場合天神が打倒した者は脳髄か首から上だけ培養槽に浸かるでしょう。尚残り時間は107秒です」

「あそこまでパッて行くような魔法は無いん?」

「一定以上の体積の熱源体が突如出現すると自動で光学兵器等により切り刻まれます。

  またその範囲外に転移すれば隔壁等が存在する為天神の所に辿り着くには300秒以上は必要です」

「……シグナムは速人はんよりあたしを優先させる気なん?」

  土壇場ということで寧ろ肝が据わったはやては慌ててはいなかったが、先程から何が何でもはやてを危険な場所に居る速人の傍に行かせないという意志をシグナムから感じ、まさか速人の様に目的の為の必要な犠牲なら何で在れ容認する様になったんじゃないかと思い尋ねた。(はやてはそれを裏切りや切捨て行為とは思っていない)

  そしてはやてのその問いにシグナムは即座に返事をした。

「非礼と不忠と不敬を重重承知で申し上げます。

  主としての命を下されたのならばそうで御座いますが、そうでないのならば私は御身とその下に集った者を家族と想い、皆平等と思っております。無論騎士としての本分は忘れませんが」

  騎士としての本分は在るが、それでも皆平等に思っていると迷い無く言い切ったシグナム。

  そして今度ははやてがそれに返事を返す前にシグナムがはやてに問う。

「主はやて、残り時間が少ないのでこれだけは早急に御答え下さい。

  天神が打倒した者を天神が行う解体から守るか、それとも否か」

  残り時間が30秒を切り、何も言わずとも既に旅の鏡の展開準備をしているシャマルを視界の端に納めながら、シグナムははやてを正視して決断を迫った。

  ただ、正視しているシグナムの心中は複雑だった。

 

 

 

―――

  蒐集を行う事、つまり少なからず相手を傷付ける事を速人の解体から相手を守るということにすりかえ、時間を制限して思考の幅を狭めた上に反論を封じ、脅迫紛いの2択で強引に自分達(シグナムと速人)にとって都合の良い答えを言わせようとしており、シグナムとしては正視して決断を迫るより土下座して床に額を擦り付けたい心境だった。

  が、敢えて蒐集ではなく人助けになるよう話をすりかえることで、はやてが時空管理局に拿捕された時、何も知らされず騙されただけという主張が通るので、速人の優しさ(とシグナムは思っている)を無駄にしない為にも、シグナムは卑怯とも言えるあざとい話術を展開していた。尤も、常に一人で泥を被り続ける速人が、必要な事とはいえ自分にはやてを騙したという泥を被るよう提案したことが密かに嬉しかったというのも理由だったが。

―――

 

 

 

  対してはやては、考えに考えぬけばもしかしたら時間内にどうにかなるかもしれないと思ったが、失敗した時は自分ではなく他人が傷を負うので、はやては思考を一時中断してシグナムの問いに答えた。

「………守ってやって………」

  その言葉を聞いたシグナムは直ぐに速人にシャマルが遠隔蒐集を行う事を知らせる発信機のボタンを押した。

  そしてシャマルははやての言葉を聞き直ぐに旅の鏡を発動させた。

  だが発動させたはいいが、繋げる先の空間の座標が全く把握出来ておらず、今更ながらにどうやって蒐集すればいいのかと途方に暮れた。

  しかしそんなシャマルにシグナムは呆れながらも慌てた素振りも見せず、いつもシャマルが速人との連絡に使っているノートパソコンを示した。

  シャマルがシグナムの視線を追ったと同時に、視線の先に在った蒐集を始めた頃から使い始めて半ばシャマル専用になった愛着のあるノートパソコンが、緊急通信が入った事を知らせる警告灯を動作確認以外で初めて灯していた。

  そしてシャマルがそれに気付いて向かおうとした瞬間、一般回線でなく専用の守秘回線からの送信を知らせる着信音(報告音声付)がリビングの電話機から聞こえた。

  シャマルははやてに軽く一礼して未だ警告灯を明滅させる愛着の在るノートパソコンへ向かい、直ぐに通信を繋げると今速人が居る第二実験室が移り、同時にノートパソコンから蒐集対象のベッドまでの正確な距離と方角が表示され、直ぐに遠隔蒐集を開始しだした。

  そしてノートパソコンの方にはシャマルが向かったが、電話機の方には真っ先にはやてが向かおうとした。が、車椅子に乗っていないので直ぐに向かうことが出来ず、僅かな距離なので這って行こうと床に降りた時、シグナムがはやてを抱き上げて直ぐに車椅子に乗せ、それと同時にヴィータが電話機を操作してハンズフリーモードとリビングのモニター(普段はテレビとして活用)に速人側の映像が表示されるようにした。

 

 

 

  そして直ぐに映像と音声が繋がり、リビングのモニターに第二実験場に居る戦争装備をした(速人以外には戦闘装備と認識違いされている)速人が映し出された

 

 

 

  ――――八神家――――

  Interlude out

 

 

 

―――Side  天神 速人―――

 

 

 

  通信は5秒もしない内に繋がり、モニターに八神家のリビングに居るはやて達が映し出された。

  そしてモニターに映る面面を速人は素早く監察し、最低限の状況説明は行われたと見当を付け、詳細な説明と提案をしようとしたが、それより前にはやてが先に話しかけてきた。

『速人はんか!?』

「そうだ。

  それと受話器に向けて話す必要は無いぞ。

  此方の映像が映っているモニターに集音器が搭載されているので、その場に俺が居る感覚で話しかければ十分此方に伝わる。

  それと興奮しているようだが、落ち着いてくれ。無駄に寿命が―――」

「―――落ち着けるわけないやろ!?

  うちに黙ってみんなで余所様に迷惑振り撒きまくった挙句一人で戦う為にでそこに()るなんて聞いて……………落ち着けるわけないやろ!?」

「ならば落ち着かずとも構わないので此方の話を聞いてくれ」

「うちが話を聞くんやなくて速人はんが話を聞くんや!!

  ええか!?うちは余所様に迷惑振り撒いてまで生きようと思うとらん!

  そらうちだって死ぬんは恐い。……そやけどやっぱり余所様に迷惑かけとない。そしてなによりみんなに危ないメに()うてほしゅうないんや………。

  そやから今からうちが直ぐにそっち行くからみんなと一緒に謝ろ!な!?」

  最初は怒り顔で話すはやてだったが、話すうちに怒りから悲しみの表情に変わっていき、最後は泣きそうな表情で請願した。

  そして周囲が痛ましい視線をはやてに向けている最中、速人はいつも通り冷静且つ平坦な声で返事をする。

「それがはやてのこの件に関する主張か?」

「そうや!

  うちは自分が生きる為に余所様に迷惑かけたり…………なにより家族が危険なメに遭うてほしくなんかないんや!!

  そやからうちの為にこれ以上罪を重ねんでや…………」

  そんな悲痛な願いを告げるはやてだったが、速人は特に気にした様子も無く再びいつも通りの返事をする。

「時間的猶予が少ないので結論を述べる。答えは、拒否する、だ」

  一片の躊躇も逡巡も無い返事に呆然とするはやて。

  そして呆然とするはやてに畳み掛けるように速人は話を続ける。

「それと誤解しているが、少なくとも俺ははやての為に行動などしていない。

  俺は常に俺の利の為にのみ行動する。

  故にはやてが俺の行動に責任を感じる必要は一切無いぞ」

  突き放しているようで気遣うという、実に微妙な話し方をする速人。

  そして又話を遮られる前に話しを続けた。

「それと家族を危険な目に遭わせたくないと言っていたが、この状況下で降伏すれば生存者ははやてを除き0名という事態になる可能性が高確率で起こりうるだろう。

  ヴィータ・ザフィーラ・シグナム・シャマルは、連続魔導師無差別襲撃事件の実行犯として拿捕。その後危険物と認定し即座に処理、若しくは有効利用を探る為に実験し、どのような結果であろうとその後廃棄処分。

  俺は魔導師無差別襲撃事件の首魁及び先程迎撃した者の障害の件で拿捕。その後質量兵器使用とレアスキルの有用性の為、脳髄を摘出後解析され最後は廃棄処分。

  はやてと書は共に厳重隔離。そして時空管理局の技術で封印が可能となればはやて諸共魔導書の永久封印。その後有効利用方が見つかれば封印解除後、司法取引で強制無償労働。

  これらが現状で降伏した際に起こり得る結果の中で、最も可能性が高い事象と判断している。

  故に家族を危険に晒したくないというのならば、現状で降伏するのは自殺行為だと言おう」

  降伏すれば自分以外の家族全員が殺されると告げられ愕然とするはやてとすずか。アリサとシグナム達は予想していたのか露骨に顔を顰めてはいたがが驚いてはいなかった。

  そして相変わらず速人ははやてに構わず話を続ける。

「だが蒐集を完了させ、はやての状態が快復すればその限りではなくなる。

  はやて達級の魔力は時空管理局でも希少且つ貴重である為、その力を制御できるならば司法取引は十分可能だろう。

  因って降伏するとしても蒐集は止めずに完了させてその後の事態を乗り切り、それから降伏するのが良いだろう」

  さり気無く条件付降伏をする等の選択肢を省き、はやての主張を主観的でありながら客観的に聞こえるように話しながら完膚無きにまで否定し、その後に打開策を提示して宛ら介抱詐欺の様にはやての思考を誘導する速人。

  そしてはやては呆然として話しかけられそうになかったが、速人が肝心な自分の目的を話していない事に気付いたアリサと、シグナムが速人を残して何故八神家に戻ってきたかに納得がいかないヴィータ達が質問しようとしたが、又もや話を遮られる前に話だす速人。

「はやて達の質問の殆どはシグナムも答えられる筈なので、今俺に尋ねるのは勘弁してもらおう。

  そして話は変わるが、アリサ、これから事が一段落するまではやての側に居てくれないか?」

「え!?あ、あたし!?」

  いきなり自分に話を振られ焦るアリサだったが、悠長に焦っていられる場合ではないと認識し、三度大きく深呼吸して落ち着きを取り戻し、瞬きにしては長く思案にしては短すぎる時間瞼を閉じた後答えを返した。

「お断りよ。

  冗談じゃないわ、真っ平ごめんよ。

  フザケんなって言わせてもらうわ。

  そんな人生の分岐点に関する事を、他人(ひと)に言われてホイホイ決める程マヌケじゃないし、状況に流されて重大な決断をする程あたしは軽い存在じゃないわ」

  挑みかからんばかりの目付きと表情をしたアリサがモニターに映し出されていた。

  そんなアリサと驚いた表情のはやて達が映ったモニターを見つつ、速人はアリサの言葉を僅かな間に反芻し、返事をした。

「………見事。

  その速断と速答を可能とする確固とした自我は賞賛に値する」

  その言葉を聞き、自信と喜びに満ちた顔で言葉を返すアリサ。

「当然でしょ。

  少なくとも対等じゃない友達になるつもりなんて、あたしはサラサラ無いんだから」

「……有難う」

  その言葉を向けられた本人とはやて達は大いに驚いたが、ヴィータだけはどこか不機嫌な表情だった。

  そして速人に賛辞を送られ、更に有難うと言われたアリサは暫くの間余韻に浸っていたかったが、それをすると速人が別の事を喋りだして話す機会が無くなると気付き、名残惜しかったが素早く余韻を振り切って速人に話しかける。

「ふん。礼だけじゃなくて後で説明も含めた上で詫びも入れさせるから、覚悟することね。

  それとはやての決断に納得がいったら、あたしは勝手にはやてと一緒に行動するつもりだったから、速人の頼み事とは無関係に一緒に居るはずだから、精精安心してやりたいことやりなさい」

「高町なのは及びフェイト・テスタロッサと相対する可能性が高いと知っていての発言か?」

「その辺りはシャマルさんから聞いたわよ。

  で、その上での台詞よ。

  速人達と戦うと知ってもあたしやすずかに一言も連絡入れようとしなかったり、ロクに隠しも出来ないくせに隠し事しようとしたりとか、色色文句はあるけどとりあえずそれは措いといて、話し合えば戦闘は回避できる…………少なくても理解が出来るなんていう勘違いというか、寧ろ人生舐めてるっぽいあの子達をガツンとイワすくらいなら文句は無いわ。

  あ、ただし最終的には日常生活に差し支えない程度まで快復する怪我に留めなさいよ?」

「はやての主張の譲歩も兼ね、最大限留意しよう」

「その言葉で十分よ。

  なら他にあたしが言うことは、なのはに殺されないよう注意すること、ってことね。

  ………気を付けなさいよ。あの子、根はかなり好戦的であたし以上に高圧的な部類に属すから、魔法なんてワケ解らない力を手に入れているんなら、手加減間違えて殺されかねないわよ」

「その様な事態になっても構わないように事を進めているので問題無い。

  それと今し方この施設へ三名侵入してきたので、この話はこれで切り上げ、手早く残りの話を進めていく」

  コンソールを操作し、またもやこの場にエレベーターが到着する時間を調整する速人。

  そして速人とアリサが話している間に気を取り直したはやてが喋りだすより前に速人は話し出す。

「シャマル、フェイト・テスタロッサと高町なのは以外は、戦闘に一区切りが着き次第直ぐに蒐集を行ってほしい。

  複数名居る状況下で180秒も放置するのは危険度が高いので、蒐集を行わないと俺が判断したのなら即座に死なぬ程度に無力化するので、蒐集をするなら手早く行ってくれ」

「承知しました」

「はやて、俺に聞きたいことがあるのならばそのまま映像と音声を受信しておくといい。相手と少なからず交渉があると思われるので、その際にはやてが聞きたいことは殆どその時に聞ける筈だ。

  それとはやて、一つ告げておくが、時空管理局の言い分に従う義務があるのはそこに属する者だけで、時空管理局に属していない者が従う道理など微塵も無いぞ」

  そう言ってコンソールを操作してクロノを横たえた医療用ベッドを自分の方に来るようにし、又もやはやてに反論を許す間も無く言葉を告げる速人。

「では俺は俺で尽力するので、其方も各自が思い描く終結を実現させられるよう尽力するといい」

  そう言って通信を終了し、戦闘の邪魔にならぬよう着信拒否に設定する速人。

  通信を終了する時に映っていた面面を一瞬思い出したが、邪魔な思考と割り切った速人は即座に戦闘に備え意図的に過呼吸をし、血中酸素濃度を高め始めた。

 

 

 

 

 

  通信を終了して10秒もしない内にエレベーターは到着し、開いた扉の向こう側からフェイト、アルフ、ユーノの三名が見えた。

  そしてフェイト達が速人とその直ぐ側にクロノが居る事を認識した瞬間―――

「「「!!!」」」

―――無造作に速人はクロノの心臓付近にデザートイーグルの銃口を向け―――

「クロノッ!!」

―――フェイトの悲鳴とほぼ同時に引き金を引いた。

 

  撃発音の直後、クロノの胸が赤く染まる。

 

  それを見た瞬間、フェイトはソニックフォームを発動させ、その状態で出せる限界速度で速人に突撃した。

  対して速人は特に焦らずクロノの側から短く跳躍して離脱しつつ、再度クロノの心臓付近に照準を定めデザートイーグルを一発発砲し、心臓付近に赤い液体を飛び散らせる。

  この時漸くアルフとユーノは我を取り戻し、アルフは急ぎフェイトの側へ、そしてユーノはクロノの側に向かう。

  だが、サポートに回る筈だったアルフを振り切るように、フェイトはクロノに再度発砲した速人へと突撃方向を修正しつつ、バルディッシュを構えて突撃した。

 

  そして通常ならば相手の視線から外れることすら出来る程の高速移動での斬撃だったが―――

「!?」

―――速人はフェイトの腕の内側に突撃してバルディッシュの斬撃を躱すことに成功した。

  しかしバルディッシュの斬撃を躱せても高速移動しているフェイトに突撃したため、当然速人はフェイトに撥ね飛ばされる―――

「っ!!?」

―――はずのところを、速人は左手をフェイトの右脇下を通して左肩を掴み、体当たりこそ受けたもののフェイトを抱きすくめるかのように胸に納め、空中を移動するフェイトに引き摺られだした瞬間、心臓付近を右手に持ったデザートイーグルで全弾超至近距離で発砲した。

「っっぅっ!?!?!?」

  元元薄いフェイトのバリアジャケットがソニックフォームになったことにより更に薄くなった状態では貫通防止程度の効果しかなく、その程度の機能ではシグナムの騎士甲冑越しに痣を付けられる威力の50AE弾を防ぎきることは出来ず、フェイトは肋骨を数本砕き折られ、そして心臓に瞬間的に強い圧力を受けて血圧を狂わされ気絶してしまい、飛行魔法は消失し且つ気絶による全身弛緩でバルディッシュを掌から零してしまう。

 

  フェイトが墜落してしまう一瞬の間、既に速人は弾丸の効果を確認する前に発砲終了と同時に左腕をフェイトから離しており、一瞬先に地面を転がることでフェイトの墜落に巻き込まれる事態を回避した。

  そして床を転がっている最中に速人は受身を取りつつ何とかデザートイーグルの弾倉を抜き、そして転がり終わる前に転がる勢いを利用して跳ね起き、撥ね起ききつつ予備の弾倉を取り付け、遊底の固定を解除し、その後軽く遊底を引いて離し、弾丸を装填した。

 

  転がって跳ね起きるまで4秒も経過していなかったが、それでもアルフ達にとっては十分な時間だったらしく、アルフはフェイトの傍に到着し、ユーノもクロノの傍に到着していた。

  到着した両名は素早く目の前の者の容態を調べ、アルフはフェイトの肋骨が数本砕かれ且つ意識が無いことに焦ったが、しかしユーノはクロノの胸に着弾したのはただのペイント弾だったと知り安堵した。

 

 

 

  そんなアルフとユーノを見つつ、速人はどのように動くかを考えていた。

(現状で最も多数の攻撃手段を持つフェイト・テスタロッサを一時戦闘不能にすることに成功。但し一時戦闘不能後20秒から40秒以内に覚醒し戦線復帰可能と予測。因ってその間に最低でもデバイスの破壊若しくは残り2名の無力化をする必要が有りと判断。

 

  現在の身体状況の概要確認。身体衰弱により激しく消耗し、連続最大運用で37秒、最適運用で約2100秒。各受容器官異常無し。骨格は先の衝突時の衝撃による胸骨亀裂骨折以外異常無し。

  筋肉異常無し。内臓は全て衰弱し、消化器官系は機能休止寸前、循環器系は20秒以上戦闘行為等の過負荷を与え続けると生命維持に支障発生と予測。神経系は現在異常無し。身体状況の概要確認終了。

  現在武装確認。魔導師殺し1丁、.700NE弾5発・魔導師殺し1発装填、弾丸予備は.700NE弾30発、魔導師殺しは6発。デザートイーグル2丁、残弾数は双方50AE弾で9発と8発、弾倉は全て50AE弾の8発入りが3個。ギャモン手榴弾2個、OTO M42型手榴弾2個、遅延時間0.5秒特殊閃光弾2個、遅延時間3秒特殊閃光弾2個。半屈曲性高分子ボウナイフ1振、D2鋼ファイティングナイフ1振、W2鋼スペツナズナイフ1振、ATS-34鋼スローイングナイフ3振。小型塗料散布型スプレー1缶、小型二酸化炭素ボンベ1缶。以上、戦闘装備確認終了。

  第二実験場兵装確認。粒子加速器1門、荷電粒子砲8門、電磁投射砲4門、不可視帯域コヒーレント光12門、放電機構5門、高圧液体噴出機構10門、防護障壁50枚、第二実験場内帯電機能、第二実験場自爆機能、全て電力供給中並びに異常無し。第二実験場使用可能兵装確認終了。

  前提条件の確認。第一項目、自身の死及び殺人の可能な限りの回避。第二項目、高町なのは及びフェイト・テスタロッサに、一般的日常生活に支障を発生させる快復が不可能と判断される傷を負わせる事態の可能な限りの回避。第三項目、アルフとユーノ・スクライアは蒐集対象の為殺害の可能な限りの回避、但しユーノ・スクライアはヒトと判断される為、蒐集不可能又は困難と判断を下しても第一項目は適用される。前提条件の確認終了。

  前途の情報を基に行動方針思案開始。目的・はやての快復及び夜天の魔導書の暴走機能除去、条件追加・成功確立1%未満の案件を考察対象外に設定。…思案終了。5件の基本方針と、基本方針から分岐派生する1018件が考察対象、…時間短縮の為基本方針のみを考察対象に設定。

  第一案考察開始。アルフ及びユーノ・スクライアの両名を第二実験場の兵装を用いての無力化…保留。現在の装備で傷を負わせることが困難な高町なのはが対策を得て現れる可能性が在る為、現在装備で打倒可能と推測される者達が相手ならば、最低でも高町なのはが出撃し物理対策を得ていないと推測される状況になるまでは温存が妥当と判断。第一案考察終了。

  第二案考察開始。空調操作による大気成分の変化による無力化…保留。空戦が可能な者が目標の為、大気成分が正常な高度に移動可能と推測される為効果は薄いと判断。更に空気を拡販する移動や爆風が頻繁に発生すると予測され、自身にまで効果が及ぶ可能性が高い為、使用するならば最低でも敵の高度を自身と異なる高度に固定する必要が有りと判断。第二案考察終了。

  第三案考察開始。五感の刺激を補助とした催眠による無力化…保留。緊張又は興奮状態での催眠は成功確率は低く、失敗時に対策を取られる可能性が高い為、実行する場合は意識と意思がが弛緩した時が必要最低条件と判断。第三案考察終了。

  第四案考察開始。現在装備によるアルフ及びユーノ・スクライアの一時戦闘不能化…暫定候補と認定。現状はアルフ及びユーノ・スクライアからの蒐集が目的であり、此方の攻撃の拍子並びに命中箇所及び炸裂座標に誤差が生じても死亡可能性が少ない現在装備での対応は理に適い、更に第一案却下理由も第四案の推奨理由となり、第四案を暫定候補とするには適当な理由と判断。第四案考察終了。

  第五案考察開始。地球上11箇所に配置した核反応爆弾の存在を用いた交渉による戦力解体…却下。確固とした裏付けを示さない限り戦力解体は限り無く不可能と判断。更に実行せずとも事態終結後はやての立場が著しく不利になると判断。第五案考察終了。

  第一から第五までの案件考察終了。最適案件を第四案件と判断、因って行動方針暫定候補から第一候補へと設定変更。

 

  行動方針候補の思料開始。

 

            警報。目標2、襲撃行動開始。要請、思考速度及び肉体出力の限定解除。…承認。

  行動

            方針第一候補思料開始。第一候補より分岐派生する284件の遂行確立計算…終了。

 

  行動方針の思料中止。行動方針第一候補を行動方針と決定。

  行動方針の詳細は基本行動方針より分岐派生した284の案件を状況により最適と最善を計算し、随時取捨選択をすることで代用。

 

  これより通常思考から圧縮言語を用いた限定指向性の高速思考への切替を提唱…承認。

  尚安全処置とし、終了条件をアルフ及びユーノ・スクライアを遠隔蒐集可能領域と推測される状態への強制移行後、若しくは切り替え後30秒経過、この二項目に設定…承認。

 

  切替開始

 

 

 

  デザートイーグルの装填を済ませた後の着地までの僅かな間に、驚異的な思考速度で確認と思考と決定を済ませた速人。

  対してアルフとユーノは成り行きと感情任せの、ほぼ無策で行動を起こした。

  アルフはフェイトを傷つけた速人を半殺しにする為に突撃。ユーノはクロノが重症だが容態が安定していると判断し、フェイトの傍まで医療用ベッドごと移動させて回復と防御の結界を展開しようとしていた。

 

  しかしフェイトに害成すものを排除しようとしているにも拘らず、気絶しているフェイトの護りを放棄してアルフは突撃し、補佐役のユーノは暴走したアルフの補佐を失念して時間の掛かる負傷者同時保護を実行に移すという愚挙を犯した。

  本来負傷したフェイトをアルフがユーノとクロノの傍に移動させ、結界が展開するまでの間アルフがユーノ達を守り、結界展開後アルフは速人に攻撃を仕掛けユーノはその補佐をし、フェイト回復後は転送魔法で一旦全員離脱、その後なのはを編成し再突入。これが最善策であった。

  だが未だアルフとユーノ以外にアースラの全員が魔法を使えぬ速人を侮り、速人を危険な質量兵器を扱う(ただ)の非魔導師と勘違いしており、先程フェイトの斬撃を躱し更にはその体に抱きついて超至近距離での射撃で墜落させたのを質量兵器の性能と偶然が重なっただけと疑わず、身体能力が強化された油断していない魔導師相手にはまともな対応など出来ぬと高を括っていた。

  故に碌な戦術も組み立てずに能力任せに事を推し進めようとした。

  しかしそんな能力任せの無策など、速人にとっては格好の隙にしかならなかった。

 

  速人は自分に突撃してくるアルフと他の三名の位置を瞬時に把握し、速人はアルフがフェイトへの射線上から外れるように横跳びに移動し、一瞬アルフが射線上から外れた瞬間フェイトの胴体目掛けてデザートイーグルを発砲した。

  狙い違わずフェイトの胴体に命中し、フェイトは悲鳴も上げずにただ体は跳ねさせた。

 

「フェイトッ!」

「ッッゥ!?」

 

  ユーノの叫びにアルフは速人から視線を切り、一瞬だけフェイトの安否を確認し、即座に速人に視線を戻した。

  だが速人に視線を戻した時にはアルフの眼前には特殊閃光弾が投げつけられており、それが何かも分からないアルフは今し方フェイトを攻撃された事を考え、フェイトまで巻き込まれる危険物の可能性も十分在ると考え、急遽突撃を中断してその場で大きめにシールドを展開してフェイトへの被害を防ごうとする。対してユーノはこの時に至って漸くクロノを未だ相手が戦力として見ている者(フェイト)の傍へ移動させる危険に気付き、フェイトから離れた場所で既に発動準備を済ませていたラウンドガーダー・エクステンドを、クロノを中心に(ユーノ自身も範囲内に入れる程度の大きさにしつつ)展開させて様子を見た。

 

  直後、凄まじい光と音を撒き散らす特殊閃光弾。

 

「「っっっっっぅぅぅぅっ!!」」

  炸裂する瞬間を凝視していたアルフとユーノはあまりの明度と光量に呻きを漏らす。

  特にアルフは音こそはシールドがある程度緩和したとはいえそれでも一時的な軽い聴覚麻痺で済んだが、光は至近距離で無防備に眼に浴びたので一時的な前後不覚状態に陥っていた(それでもシールドは解除されずに健在だった)。

  対して速人は特殊閃光弾炸裂前に白目をむいて瞼を閉じて光の影響を最小限に抑え込み、音は特殊閃光弾と悟らせない為敢えて無防備に受けたが、驚異的な意識保持力を持つ速人は前後不覚にならず一時的な聴覚麻痺になっただけで、他は特に異常は無かった。

 

  特殊閃光弾の効果が切れると同時に速人は、服から毟り取ったギャモン手榴弾を未だ視覚と聴覚を取り戻せないアルフのシールド手前に向かって放り投げ、自身はギャモン手榴弾から5メートル程距離を取りつつフェイトへと疾走した。

  フェイトへ疾走している最中、朧気に速人を捉えたユーノがバインドで捕縛しようとしていたが、特殊閃光弾を大雑把にユーノの方に毟り投げ、音と光で意識を乱してそれを阻止した。

 

  そしてユーノのバインドを中断させる為に炸裂させた特殊閃光弾の轟音と光量で混乱状態から脱したアルフがフェイトへと疾走する速人に気付き、急いで速人からフェイトを守る為に駆け出そうとした時―――

「アルフッ!」

―――今し方フェイトの下へ駆けつける際にアルフが消したシールドの間近に、自分達が気付かぬ間にいつの間にか存在しているギャモン手榴弾に気付いたユーノが必死に注意を促すが―――

「え?」

―――アルフはただ反射的に疑問を呟くだけで、アルフが疑問の声を上げた瞬間、ユーノの呼びかけの甲斐も無くギャモン手榴弾は爆発した。

 

  爆音から一拍遅れ、爆発の直撃を受けたアルフが、血を撒き散らしながらフェイトの方に爆煙から転がり出てきた。

  無論自力で転がり出てきたわけでは無く、戦車の装甲すら破壊する爆発を至近距離で受け、吹き飛ばされて爆煙から転がり出てきただけだった。

  だが、本来人が直撃すれば爆圧で骨が粉砕され爆風で肉が吹き散らされて殆ど残骸が残らない筈なのだが、バリアジャケットの影響で無数の亀裂骨折と数箇所の単純骨折と何箇所か骨まで肉が削られて血塗れになる程度に軽減されていた。

  当然その程度の怪我ならば、ショックか怪我の放置による出血か感染症以外ではまず死なず、ふらつきながらも何とか直ぐに立ち上がろうとするアルフ。

  そしてそれを見たユーノは、フェイトに結界を張るかアルフに結界を張るか少少時間が掛かるが両者を対象に結界を張るかそれとも速人をバインドで捕縛するかを逡巡したが、未だ容態も把握出来ていないフェイトと血塗れのアルフを放置することは出来ず、クロノを中心に展開した結界の中よりフェイトとアルフの傍を目指して飛び出した

  しかしそんな両者の行動を予測通りと言わんばかりに速人は淀み無く次の行動を起こした。

 

  既にフェイトの許へ辿り着いていた速人は、自分目掛けてふら付きながらも突撃してくるアルフではなく、ユーノ目掛けOTO M42型手榴弾をユーノの近くに床を滑らす様に投げる。が、それはユーノの右前から右後ろに転がり抜け、爆発も起こさずクロノに展開されていた結界に当たって少し跳ね返って止まり、フィールドを張っていたユーノは不発かどうか判断がまだ下せない為その場で足を止めた。

  ユーノがまだ足を止めている隙に、速人はフェイトの頭部目掛けてデザートイーグルを3発発砲し、着弾の反動で舞い上がった髪を掴んで持ち上げ、フェイトの口内にいつも使っている遅延時間0.5秒の特殊閃光弾ではなく遅延時間5秒の特殊閃光弾を捻じ込み、血相を変えて向かって来ているアルフ目掛け―――所謂火事場の馬鹿力と言う力を意図的に使い―――両腕と右脚を使って自分の方に背中を向かせたフェイトを斜め上に押し飛ばした。

 

  宙を舞っているフェイトの許に向かっているアルフへ、右腰のホルスターに挿していた残弾数9発の方のデザートイーグルを左腕だけで8発アルフの首に向けて発砲し、未だ後ろに転がった物体が不発かどうかを図りかねているユーノへは先程まで使っていたデザートイーグルを右腕で牽制に2発発砲する。

  自分へ向けられた銃に対しアルフは自分がシールドを展開して防御するとシールドが邪魔してフェイトの確保が一瞬遅れ、口に捻じ込まれた何時爆発するとも知れない手榴弾を取り除くのが遅れてしまうので、シールドも展開せずに全弾首に直撃を受け、結果急激な神経の圧迫で一瞬意識を失い立ち止まってしまった。対してユーノは展開していたフィールドで2発の弾丸を防ぎながら後方の物体に対し、態態自分から離れた場所で爆発する意味も無く又爆発するまで時間が掛かるなら爆発直前まで普通は投げぬので、因って何らかの原因で誤作動を起こし不発になった、と判断を下した。

 

  そして、宙を舞っていたフェイトが床に落ち、アルフがフェイトを抱え起こした瞬間、フェイトの口に捻じ込まれていた特殊閃光弾は炸裂した。

 

  本来殺傷能力は皆無とも言える代物だが、零距離、特に口内で炸裂すればその限りでは無く、音を撒き散らす為の空気の膨張―――攻撃若しくは防御手榴弾に比べれば数百分の一だが―――により肺と胃に膨張限界を超える量の熱された空気が流れ込む為肺と胃に傷を負い、口内で発する轟音は短時間とはいえ頭蓋を高速振動させて内耳や脳を揺らす。結果フェイトは、口内と胃と肺は火傷と裂傷(肺は火傷と裂傷の為肺活量が減少し、且つショックによる呼吸麻痺を起こす可能性有り)、脳や内耳は頭蓋を高速振動させられ中枢神経系に一時的にとはいえ異常を来たした。

  対してアルフは抱え上げたフェイトの口から漏れる閃光に又一時的に視覚を失い、ユーノは離れていたがそれでも閃光の為眼を瞑り、速人は先程と同じ対処を取りつつも閃光の余韻が消えるまでの僅かな間に両手にデザートイーグルを持ちつつも弾倉が空の方の弾倉を交換した。

 

  閃光の余韻が消えた時、既に速人はフェイトとアルフの許に疾走しており、眼を開いただけでピントを合わせていないアルフの両の眼に向けて左手のみでスローイングナイフを一度に二つ投げつけた。

 

  飛来する物体を認識できなかったのでアルフは無防備に両の目に直撃を受けてしまったが、バリアジャケットに覆われたアルフの眼は傷一つ負わなかった

  だが、貫通よりも対象に運動エネルギーの伝導を目的に投擲されたスローイングナイフは、投擲目的通り運動エネルギーを一瞬でアルフの眼球に伝播させ、その衝撃でアルフの眼筋を一時的に麻痺させてピントを狂わせた。

  それと同時にユーノが速人の進行方向にバインドを展開させ捕縛しようとした。

  だが、眼球や表情筋や手足の動きによる行動予測とレイジングハートから得たユーノの行動統計から推測した思考体系を基に速人はユーノがバインドを発動させることを予測しており、バインドが発生する寸前に方向転換をして効果範囲外に離脱した。

 

  自身のバインドを発動前に察知され回避してみせた速人に驚いたユーノだったが、速人はユーノの驚きを微塵も意に介さずにバインドを回避すると同時にユーノのフィールド正面の境界のギリギリ外に停止するようにギャモン手榴弾を放り投げた。

  そしてユーノが放られた物を見た瞬間慌ててフィールドからシールドに切り替えるのとほぼ同時に速人はフェイトとアルフの許に辿り着き、速人はアルフの耳孔目掛けて残弾数3発のデザートイーグルを一発発砲した。

 

  本来ならば頭蓋を砕き脳漿がばら撒かれる威力だったが、バリアジャケットの為頭蓋を砕くには至らず耳孔で辛うじて停止していた。が、それでも鼓膜は破裂し三半規管の至近距離で衝撃が炸裂した為、アルフは又もや僅かな間とはいえ意識を刈り取られた。

  そして速人はアルフに発砲後即座に残弾数一発のデザートイーグルを口に咥えつつもう片方の手でフェイトをアルフから剥ぎ取りつつ―――足腰を痛めると承知で―――アルフをユーノの右後方目掛けて蹴り投げ、タイミングを計りつつも宙を舞うアルフの重心点目掛け速人は鉄鋼作用を付加した投げ方でOTO  M42型手榴弾を投げ付け、ソレが着弾する僅かな間に可能な限り爆発から身を守る為フェイトを盾の如く構えた。

 

  次の瞬間アルフの重心点に命中したOTO M42型手榴弾は即座に炸裂し、周囲に爆風と金属片を撒き散らす。

 

  ほぼ零距離で炸裂した爆風と破片を浴びたアルフは当然爆風に押されて更に飛ばされる。しかもバリアジャケットで守られているとはいえ、爆風と金属片で重傷とは言わないが無視できない傷を負いながら。

  そして次に爆心点に近かったフェイトと速人は、フェイトは薄いとはいえバリアジャケットを纏っており且つ至近距離ではなかったので無数のギリギリ軽いに分類される裂傷を負っただけで済み、速人は衣服の防御力に加えフェイトを盾にして―――空の弾倉を交換しつつ―――爆風と金属片を防ぎきり、ユーノはフェイト以上に距離があったのでバリアジャケットだけで辛うじて防ぎきり、クロノはユーノと同じ程度爆心点から離れており且つフィールド内に居るので影響は無かった。

 

  そして、吹き飛ばされたアルフが背中から先程不発だったOTO M42型手榴弾の上に落ち、一定以上の衝撃が信管作動の条件になっているOTO M42型手榴弾は信管作動の条件を満たされ、即座に爆発した。

 

  通常ならば爆風に押されてある程度被害を減らせるところなのだが、アルフは爆発方向に向かう運動エネルギーと重力の影響の為殆ど爆風のエネルギーを逸らせず吸収しきってしまい、通常以上の傷を負ってしまった。しかもほぼ零距離且つ大型手榴弾を背中で覆うように密閉していたので、如何なバリアジャケットと謂えども悪条件が重なりすぎた為術者を守りきれず、アルフの背中は即死しない程度に脊髄も含めズタズタになり完全に気絶した。

  そして爆心点がユーノの近くだった為、ユーノも怪我を負ってしまうが、爆心点の近くとはいえ爆発のエネルギーは殆どアルフが吸収してしまい、更にはバリアジャケットも展開している為負った傷は無視できる軽傷だった。

  しかし軽傷とはいえ不意打ちを受けたことによりユーノは動揺し、更にその次の瞬間には速人から眼球を削る様な銃弾を受け、不意打ちを受けた動揺の他に普通ならば痛みとは無縁の箇所に生じた激痛と視覚障害も重なり、混乱と錯乱が混じった状態になってしまった。

 

  だがユーノが混乱と錯乱に陥り集中が霧散した為シールドが消失した瞬間、ユーノの至近距離に在ったギャモン手榴弾は炸裂した。

  そしてそれと同じ瞬間、爆発の殺傷範囲外の速人は盾に使っていたフェイトの頭を床に叩き付け、金属板を仕込んだ靴で常人ならば顔面どころか頭蓋骨が踏み砕かれる威力で顔面を踏み付けつつ口に咥えていたデザートイーグルの弾倉を交換した。

 

  至近距離で爆発に晒されたユーノは先程のアルフの様に血を撒き散らしながら爆煙から転がり出てきた。

  そして弾倉交換後ユーノが転がり出てくる予測座標に向け疾走していた速人は、うつ伏せに倒れたユーノが起き上がる前にユーノの許に到達し、延髄を蹴り踏みながら2丁のデザートイーグルをユーノの後頭部目掛け各8発ずつ連続発砲した。

 

  直撃すれば騎士甲冑を纏ったシグナムに痣を付ける威力の弾丸が短時間で16発ユーノの後頭部に着弾し、床に頭が着いたままのため首を逸らせて衝撃を逃がすということが出来なかったユーノは、着弾の衝撃で脳震盪を起こし気絶してしまった。

  しかしそれだけだと何時回復するか予測し難くシャマルの遠隔蒐集に支障を来す可能性が高いので、速人はクロノに使った電撃の出力を少少弱めてユーノに使うことにした。

  だが、クロノに使用したところをアースラの面面が見、既に重点的にバリアジャケットに耐電効果が付与されている可能性も考慮しているので、速人はユーノを仰向けに蹴り起こして通電性のスローイングナイフをユーノの口から少少はみ出す程度まで口の中に押し込み、空になった2丁の弾倉を交換しながら急いでユーノから距離を取り、1丁を右腰のホルスターに納め空き手にして急いでリモコンを操作し放電の座標・時間・電圧・電流、並びに誘電路の座標と様様な情報を即座に入力し、入力後問題無く放電可能なのを確認した瞬間即座に放電させた。

 

  耐電対策が無い場合も想定し、フェイトがプレシアから受けたサンダーレイジODJ程度の出力に抑えたモノが、ユーノの口からはみ出たスローイングナイフに向けて放たれた。

  そしてスローイングナイフを通じて電解溶液である唾液で濡れている口腔内に通電され、一瞬痙攣した後ユーノは口から薄い黒煙を上げて悲鳴も上げず沈黙した。

 

  湿潤状態では皮膚の電気抵抗値は乾燥状態での10%程度しかなく、更にただ水で濡れたのではなく電気を通し易い電解溶液の唾液で濡れており、バリアジャケットがその殆どを遮ったと謂えども1%でも放電された威力が残れば今のユーノの様に、歯は砕け口腔内は殆ど炭化し、更には口から鼻孔を伝い脳が感電し、他にも気道や食道から肺や胃も感電し、一瞬で感電死2〜3歩手前の状態になってしまう。

 

 

 

  そして、アルフとユーノが蒐集可能状態になったと判断した瞬間、速人は高速思考から通常思考に切替えた。

 

 

 

  演算中の全項目に使用されていた圧縮言語が通常言語に強制解凍された為一時的に処理落ち状態になってしまい、その間体の制御が不完全になってしまい、吐血を堪えきれなくなり派手に吐血してしまった。

 

  衰弱しきった速人の体は既に所謂火事場の馬鹿力の反動に耐えられないどころか、感覚器官や運動器官や呼吸器系の機能を上昇させるために脳内分泌されたアドレナリンの副作用にすら碌に耐えられない状態であり、まるで吐血の量が速人の体がどれだけ蝕まれていてどれだけ先の動きで負担が掛かったかを示しているようだった。

 

 

 

  そして速人が処理落ちしている最中になんとか気絶から回復したフェイトが眼にしたのは、血塗れになって動かないアルフと、口から細い煙を上げて動かないユーノと、どす黒い血を何度も吐いている速人だった。

 

 

 

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  第十八話:油断無き弱者と慢心する強者――――了

 

 

 

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【後書】(十七話への愚痴とも言う)

 

 

 

  いきなりですがすみません。

  アンチクロノを楽しみされていた方、中途半端な出来で本当にすみません。

  十七話の最大の見せ場の『筈』だったリーゼアリアとの戦闘が、寝不足の為構想無視のワケが分からない出来になり、その皺寄せが今回のクロノとの戦闘に収束し、こんな感じになってしまいました。

  本当にすみません。

  本人はノリノリで進めていたつもりだったのですが、ノリノリだったのは後書だけだということに気付いたのは、投稿を終え掲載されたものを見た時でした。

  ………ああ、寝不足じゃない時に見直して投降するということすら考えなかった自分に呆れ果てます。

 

  因みに本来の構想概要ですが、リーゼアリアを舌戦と()()()()()で精神崩壊させ、その後速人がリーゼアリアの精神を再構築(洗脳)し、クロノ戦で有効活用して揺さ振りながら追い込むはずでした。………ちくしょう。

  特に、リーゼアリアにクロノを誘惑させる面白場面がお蔵入りになったのは無念です。慌てまくるクロノ、混沌と化すアースラ、どうやって敵をそんな状態にしたのかという憶測が飛び交いアースラ以上に混沌と化す八神家、と、見せ場になるはずだったんですが既にこのフラグは消滅してしまいました。…………ドちくしょう。

  それと闇の書事件終了後、美少女猫耳メイド(ヤンデレ)を速人とセットにする展開も当然失われました。……………コンチクショウ。

 

 

 

  話題変わって十八話のことになりますが、速人の戦い方がエグすぎないか心配です。

 

  次回は対人兵器ではなく対物兵装を主軸にしたフェイトやなのはとの戦闘と、クロノとの舌戦で省かれた時空管理局についての突っ込み所がリンディに叩きつけられる予定です。

  あと速人が衰弱している理由ですが、睡眠不足とその解消の為の覚醒剤と戦闘訓練での負担以外にも理由がありますが、ついでにそれも明かされます。多分「なのはSSで、こんなオリ主他にいねえよ!」ってくらいぶっ飛んだ理由です。

 

  あと、本来なら蒐集完了するまでが十八話だったのですが、この調子なら400KB超えそうでしたので強引に分けました。

  そしてその余波をモロに浴びたのが最初のインタールードですね。

  かなり削ったので文章崩壊している感が………。

 

 

 

  最早混沌とし且つリリカルなのはの世界観にそぐわないSSにも拘らず、掲載してしかも感想まで下さる管理人様、そして御読み下さった方、本当に感謝を申し上げます。


消滅したフラグ、見たかった!
美姫 「いや、いきなり絶叫しないでよ」
そうは言うが、思わず見てみたいと思ってしまったんだから仕方ないだろう。
美姫 「はいはい。それにしても、改めて速人は容赦ないというか」
まあ、こっちは魔法なんて便利なものはないからな。一撃でも喰らえばお終いかもしれないし。
美姫 「バリアジャケットがあるから、過激なぐらいに攻撃を加えないと無力化も出来ないしね」
ああ、とは言え、一歩間違えれば、ってなぐらいに攻撃しているな。
美姫 「もう気持ち良いぐらいよね」
しかし、アリサもやっちゃえとは言ったものの、ここまでするとは思ってないんだろうな。
美姫 「いや、アリサの事だから理解しているような気もするけれどね。ちゃんと日常生活に〜、って言ってたし」
まあ、前に見ているしな。次回はなのはが参戦するみたいだし。
美姫 「どうなるのか、楽しみにしてますね」
待ってます。



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