この話はSS【八神の家】の幕間ではなく、もしも(IF)の話です。
ですのでSS本編がもしStSまで進めば、必ず相違点が出る代物です。
ですから二次創作のIFを了承できる剛の者以外の方は読まれない方が賢明です。
注1)リインフォースが空に還らず闇の書の闇はどうにかなっています。
注2)階級に関しては自衛隊で使用されているものを流用していますが、将官の階級は原作通り第二次世界大戦時の日本軍の階級名に倣っています。また作中階級が明記されていない面面の階級については作者の捏造設定です。
注3)速人の外見年齢はリインフォースと同じかちょっと幼いぐらいです。(髪の長さはリインフォースとフェイトの中間程度で、ストレートです)
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魔法少女リリカルなのはA‘S二次創作
【八神の家】
とある可能性編 二つめ:とある騒動 其の肆
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――― とある訓練場 ―――
両膝を砕かれ、気絶しながら崩れ落ちている最中のスバルだったが、速人はスバルが完全に崩れ落ちる前にスバルの背の側に回り込み、即座にスバルを自分の背中に仰向けの状態で乗せるように背負い込んだ。
そして自分の背にスバルを盾として背負った速人は、ティアナの射程範囲から脱する目的と、その後を有利に進める為、近くの廃墟ビルに向かって駆け出した
対してティアナは、両膝に攻撃を受けて脱力して速人へと倒れこむスバルを見ている時と同じく、迂闊にも呆然と見逃してしまった。
―――
不意を突かれたとはいえ魔力ランクがF(簡易測定)で、しかもデバイスすら所持していない者に、バリアジャケットを纏った魔導師ランクC〜Bの者が呆気なく倒されてしまい、ティアナにとっては呆然としていなければ大声を上げて吶喊するか逃げ出すかのどちらかを採っている程の衝撃的な結果だった。
だが現在は模擬とはいえ戦いの最中であり、そのような隙を晒せば不利になるか好機を逃すのは当然であり、事実、盾とされているスバルを非殺傷設定にした攻撃で巻き込むことを厭わず攻撃し続けていれば高確率で仕留められたのだが、呆然としていたため速人が廃墟となったビルへと駆け込むのを許してしまっていた。
―――
そして速人がティアナの視界から消えて数秒経った時、地面に刺さったストラーダを回収したエリオが―――
「キャ、キャロ!!大丈夫!?」
―――涙声でキャロに呼びかけているのを聞き、漸くティアナは我に返った。
そして我に返った瞬間ティアナはこれからどうするかを急いで考え始めた。
(落ち着くのよ……………恐怖や激昂に任せて追撃なんてしたら多分あっと言う間に全滅するわ)
何度か深呼吸をしてティアナは気を落ち着け、それからエリオがキャロに呼びかけている声すら気付かぬ程深く考え込み始めた。
(………………現在あたし達は既にキャロが倒されてるから完全な空戦は不可能で、限定空戦可能なスバルは担がれていったから、限定空戦も現状では不可能。
しかもスバルがやられたかどうかはこちらから全く分からないわね。
………………負けた時に態態あたし達に知らせるかどうかの確認なんて取ってなかったわね……………。
いえ、これが可能な限り実戦に近づけた模擬戦なら間違い無くあたし達に敗北を知らせたりしない。
ならさっきキャロに敗北判定が付いた放送は天神先輩に知らせる為で、私達に聞かせるためのモノじゃないはず。
ならスバルがやられたか、それともさっきのキャロみたいに盾代わりにするためにやられてないかは、あたし達が知る手段は無いわね。
……………ならスバルはもうやられたと考えるべきね)
先程速人と舌戦した為か、いつも以上に頭を働かせる癖が若干付いたティアナは、何とかギリギリのところで思考を働かせることで自棄にならずにすんでいた。
(……………………現状確認の次は彼我の戦力の分析ね。
現在あたし達の戦力はあたしとエリオだけ。
一応スバルが無事な可能性もあるけれど、当てにするのはあまりに無謀ね。
で、あたしは魔力も然して消耗してないし怪我もしてないからほぼ万全。
だけどエリオはたぶん右肩が折れるか外れるかしてて、あたし達には直し方が分からないからエリオは左腕だけでストラーダを操らなきゃいけないから突進力は大幅に落ちるし、攻撃力も大幅に落ちてる。
対して天神先輩は多分無傷。
一応エリオがあの棒で殴ったのを受け止めてはいるけれど、エリオの肩にダメージを負わせた後いつの間にか抜き取るなんて事が出来てる以上、恐らく痛んですらいない。
………………こっちは数が半分まで減らされた挙句内一人は右肩負傷で戦闘力激減状態。
対して向こうは無傷で、おまけにこちらが補足していないのに向こうが一方的にこちらを補足している可能性大)
考えながらティアナは自分達が無能者と呼ばれてもしょうがない醜態を晒していると痛感した。
(……………たしかにあたし達を低能と言うだけあって天神先輩は凄い。
………リボルバーナックルがプロテクションを自動展開出来ないよう、多分スバルの右手の位置を誘導や計算して攻撃したはず。
それにどういう理屈か分からないけれどバリアジャケットをあの棒の攻撃だけじゃなくて、接触した状態でバリアジャケット越しにでも気絶する攻撃を放てる。
しかもただ接触さえすれば気絶させられるなら、ケリュケイオンのように脅威として認識されなくて自動防御の対象外になる。
かといってデバイスが天神先輩の接近の度に一々自動防御を展開していたなら魔力が足りなくなる可能性は高いし、それにシールドが邪魔でこちらから攻撃するのも難しくなる。
つまりデバイスには今まで通り、明確な攻撃行動以外は自動防御しないようにさせつつ戦うしかないってことか。
……………まあ、直撃したら多分一発で戦闘不能になる凄い攻撃を放てるんだろうけど、逆に防御力はこちらの牽制用の攻撃一発が直撃すれば戦闘不能になるほど低いだろうし、シールドも多分貫けないはず。
なら十分勝算はあるわね。
一番安全な倒し方は遠距離から攻撃し続けること…………なんだけど、………誘導弾を撃っても多分片端から迎撃されるか障害物に隠れてやり過ごされて魔力切れになるわね。
くっ………最初の間合いの時にスバル達にガードさせつつ数撃っていたら倒せてたはずなのに…………)
今更ながらに最初の時に油断していたことを痛い程後悔するティアナ。
(つっ………今は後悔するより作戦を考える方が優先よ。余計な考えは頭から締め出さなきゃ………)
僅かに頭を振って後悔の念を吹き散らし、そして気を取り直してティアナは更に熟考する。
(………現在一番の安全策は時間切れまでこの場で待機してこれ以上の損失を出さない。
………却下。
そんなみっともない真似できないし、第一そんなこと言ったらエリオが勝手に飛び出していって各個撃破されて、最後に残った私も撃破される可能性が高い。
………リーダーが油断して仲間を一人失い、その後判断が追い付かずに一人拉致され、更に下を抑えきれずに暴走させて一人失い、最後に一人になって自分も倒れる。
………もしそうなったら自殺級の赤恥だわ。
よって却下。
じゃあ天神先輩が立て込んだ建物にエリオと一緒に侵入し、天神先輩がどちらかを攻撃してきたら、攻撃された方は戦闘不能になっても構わないから動きを止めることに専念し、そしてそれでできた隙に残りの方が巻き込むのを承知で攻撃を放って打倒する。
…………穴だらけだけどこれしかなさそうね。
そもそも天神先輩はこのまま隠れ続ければ、二人を倒し且つ一人の戦闘力を激減させたにも拘わらずほぼ無傷だから、間違い無く判定勝ちになる。
そして常識的に考えれば時間切れまで隠れてれば勝てるのにわざわざあたし達に攻撃しかけてくる必要なんて無いんだから、それでも引っ張り出すには虎穴に突っ込まなきゃならないのよね。
………まあ、虎穴が墓穴って可能性は高いんだけど)
リスクの高さに涙が出そうになりながらも何とか堪えつつ、作戦の概要を考え始めるティアナ。
(作戦って言っても………正直特別なことなんて何も思い付かないわね。
離れれば確固撃破されるから固まってないといけないし、固まってて採れる策なんて精々片方を捨て駒にして打倒するぐらいしかないし………てっ………あーーーーーーーーーーっ!!??!?
今気付いたけれど、この作戦の一番の問題点は、エリオにいざという時は捨て駒になるよう言わなきゃいけないことだわ!?
しかも天神先輩に接近戦で隙を作らせるなら、あたしが襲われた時に可能な限りエリオに割って入ってもらって囮になってもらわなきゃいけないから、エリオに危険な役を押し付けることになるわ!
………………………ど、どうしよー。
何て言って切り出せばいいのかしら?
素直に勝つ為に捨て駒になれなんて言えないし、言っても作戦通り動いてくれるとも思わないし………。
かといって、[襲われた方が捨て駒になって足止めしてる隙に捨て駒役諸共倒す]、って言ったら、多分あたしが天神先輩に襲われて、その上ろくに足止めできずにやられるわ………。しかも残るエリオもほぼ確実に確固撃破される。
と言うか、そもそもエリオが捨て駒役もろとも攻撃できるとも思わないからこの作戦自体に無理があるわ)
あっと言う間に自分が立てた拙い作戦の前提が崩壊してしまい、途方に暮れるティアナ。
(ど、どうすればいいのかしら…………。
黙っていたらエリオが暴走して確固撃破されて自殺級の赤恥晒しコース。
かといってエリオが捨て駒になる可能性大の作戦を採ったら、最悪仲間割れして全滅した挙句、模擬戦後に確執が残る………。
じゃあ仲良く半々の確率で捨て駒になる作戦を採ってもエリオは土壇場で攻撃しないだろうし、逆にあたしが攻撃したら勝っても物凄まじい確執が残るし、そもそもほぼ確実にあたしが攻撃されるから負けはほぼ確定………。
駄目だわ………完全に手詰まりだわ)
既に自分達が積んでいる状態に近いコトを自覚するティアナ。
(……………あのビル群の中に行って確固撃破されるくらいなら、ここから延々と物理設定にした遠距離攻撃でビルを破壊し続けた方がまだ勝算があるような気がするけれど…………、いえ、負けないだけで勝つことはないわね。
……っていうか、撤退か現状維持すれば被害が増大しないっていうのに、わざわざ物理設定で乱射しまくった挙句成果が建築物の破壊だけならクビよね、普通。
……天神先輩が凄いのは間違いないけれど、…………それ以上にあたし達が駄目駄目なのがツライわね。
………いつだったかヴィータ副隊長が、〔馬鹿を味方にしてると勝算ゼロの策でも実行しなきゃならねえから気をつけろよ?〕、って言ってたことがあったけど、…………それってこういう状況を指してたわけね)
厄介な相手より厄介な味方の方が性質の悪いことに気付き、顔を顰めながら更に熟考するティアナ。
(ヴィータ副隊長が度々なのはさんに個人技能ばかりじゃなくて精神鍛錬なんかを勧めてたのって、間違い無くこういうことになるって分かってたからなんだ。
っていうか、ヴィータ副隊長って天神先輩から教導方法とかを教わったって話だし、だったらあたし達の弱点なんて多分筒抜けじゃないの。
……間違い無く機動六課に来てからのあたし達の戦闘記録とか、殆ど天神先輩は目を通しているだろうから戦術的に裏なんてまず突けないし、戦略に関してはあたし達ってなのはさん譲りの正面からの突撃しかできないから話にもならないじゃない。
あ、ダメ。
もう、どう足掻こうとチェックメイト状態じゃない)
戦略で完封され、戦術で引っくり返そうにも足の引っ張り合いになって引き分けすら儘ならず、しかもそれを相手が熟知していることを知り、ティアナは素直に潔く負けを認めるのが色色な意味で一番傷が浅いと思い、降伏を宣言しようとした。
だが、不意にそれも駄目なことに気付いてしまう。
(あ、でもここで素直に降参したら後でスバル達に合わせる顔が無いわ………。
かといって降伏しなければ教導してくれたなのはさんだけじゃなくて、八神部隊長………いえ、六課全体に盛大に泥を塗るわね。
…………個人的理由を優先して部隊の面子に盛大に泥を塗るような選択をを採るか、それとも部隊の面子を重んじて後で針の筵に包まれる及第点に届くかもしれない選択を採るか。
…………どっちを選んでもストレスで胃に孔が空きそうだわ)
人の上に立つ辛さを僅かに知り、心からはやてと部隊長補佐陣とヴィータを尊敬するティアナ(両隊長は当然だが、偶に模擬戦だけしてあまり仕事をしているように感じられないシグナムも、ティアナの尊敬対象から外れている)。
(…………〔憎まれ役も指揮する奴の仕事〕、か……。
そう考えると天神先輩は本当に凄いわね。
この模擬戦で負ければ未熟なあたし達に負ける部隊長補佐ってことになるし、勝っても絶対スバル達から恨まれる。
しかも普通に負ければこれを見学している偉い人たちから顰蹙を買うし、勝てば六課の面子に泥を塗る。
おまけに模擬戦に漕ぎ着けるまで何日も徹夜してるし。
………って、…………………あれ?)
そこまで考えたティアナは速人が自分達を完封して六課の面子に泥を塗るような真似をするのかということに疑問を持つ。
(……………そうよ。
冷静に考えてみたら最初から天神先輩の言動や行動はどこか変だった。
多分倒すだけならとっくにあたし達は全滅してる。
なのに二人も残ってるってことはあたし達を倒す事が目的じゃなくて、多分あた―――)
―――ティアナが答えに至りかけたその時―――
「―――ティアナさん!天神さんがこちらに来ましたけどどうするんですか!?―――」
―――と、ティアナの考えを裏付けるようなエリオの怒りと恐れが混じった大声が辺りに響いた。
――― とある訓練場 ―――
――― とある観戦場 ―――
「う〜ん。なんだかハヤトもすっかり丸くなったよな」
「全くだな。
9年前からすれば考えられない程丸くなったな」
空間モニターに映ったスバルの状態を見ながら朗らかに言うヴィータ。
そしてそれに全くの同意見であるシグナムも同意の声を返す。
が、全くそれに同意していないフェイトが慌てて反論混じりの疑問を投げ付ける。
「全然丸くなってないよね!?
っていうかスバルが両手両足を砕かれて、その上デバイスを引き剥がして半分壊しちゃってるんだけど!!?
いったい何所が丸くなってるの!!???」
「落ち着けよ。
べつにデバイスを引き剥がす時は平和的だっただろ?」
「全くだ。
以前なら引き剥がす時間も惜しいとばかりに、問答無用でスバルの左腕以外は千切られていた筈だ」
「え!?
そこを思考の基準にしないといけないの!?!?」
たしかにシグナムの発言通りになっていないことを考えたら十分丸くなったと言えるのだが、フェイト的には嬲られているようにしか感じられなかった。
「兎に角まず落ち着けよ…………って、あ」
興奮しているフェイトを落ち着けようと声をかけたヴィータだったが、何かに気付いたらしく唖然とした表情でフェイトの後ろの方を見ていた。
そしてそれに疑問を覚えたシグナムもヴィータの見ている方向を見た。
「どうした。何があった……………って、………ああ、どうりで静かだと思った」
「?シグナムもヴィータも何を見てるの……………って、………なのは………」
ヴィータとシグナムが何を見ているか気になり、後ろを振り向いたフェイトが見た光景は、体中の至る箇所をリングバインドで拘束された上に凍結魔法で足の先から首までを凍らせられ、更に凍結魔法と同じく首までクリスタルゲージでバインドされたなのはの姿があった。
しかも首から上が旅の鏡の応用なのか別の場所に転移されており、傍目からには首無し死体にしか見えなかった。
「…………あーいう応用法は絶対ハヤトが教えたな」
「まず間違いないだろうな。
………迂闊に術者を倒せば旅の鏡の効果が消えて首無し死体の出来上がりとは、………恐らく対象が近距離に居ないと発動出来ぬのだろうが、…………発動すれば概ね隙は無いな。
恐らく拷問……もとい、訊問用の術式だろうな」
「…………闇に沈められるのとどっちがいいんだろう?」
「断然こっちの方だろ?
身動き取れない以外じゃ特に困らねえはずだし」
「ああ。
それにバリアジャケットを展開しているので凍傷の可能性も低いだろう」
「そうかもしれないけど…………初めて見る人はトラウマになるかもしれないよ?
っていうか実際さっき心臓が止まるかと思ったし………」
空間モニターを見ながら首無し死体の様ななのはを視界に納めながら話し合うシグナムとフェイト。
尚、一応三名とも模擬戦の様子はしっかり監視しており、更にシグナムとヴィータは周囲にも気を配っていた。(ヴィータはシグナム達と向かい合う位置に移動して死角を補って警戒していた)
そしていまだ動かないティアナを見、ヴィータは先のフェイトの独り言の様な文句を無視するように溜息混じりに呟いた。
「はあぁ、………たしかに見晴らしの良い所に陣取るのは、接近戦主体の奴からの不意打ちを防ぐって意味合いじゃ間違いじゃねえけどよ、……単に結果オーライってのは問題だな」
「それに関しては教導されていないのだから仕方あるまい?」
「そうだよヴィータ。
少なくとも運も実力の内だよ?」
「オイオイ、シグナムまで平和ボケしたのか?
仕方ないで済めば実戦で怪我なんてしねえし、始末書や訓練は要らねえだろが?
だいたい運も実力の内って言うけどな、訓練でカバーできる範囲を運任せにするのは問題ありまくりだろが………」
珍しく意見の割れたシグナムに呆れた表情と声で反論するヴィータ。
そして戦闘教官として至極真っ当な意見を返されたシグナムとフェイトは、尊敬と感心の中間の様な表情でヴィータを見ていた。
「な、なんだよ………。
シグナムもフェイトもマヌケ面とニヤケ面が混じった様な顔して…………」
「いや、素直に凄いと思っただけだ。
………良い鬼教官だと思うぞ」
「おい……」
「私も立派だと思ったよ。
………うん。ホント厳しくて可愛い立派な教官だと思うよ」
「おい、お前ら、本当は馬鹿にしてるだろ?」
シグナムの鬼教官発言も納得がいかなかったヴィータだったが、はやて以外が言う可愛いという言葉には更に納得がいかないらしく(はやての言葉は母親が子供に言うような言葉と受け止めている)、胡乱な目でシグナムとフェイトを見るヴィータ。
と、丁度その時ヴィータの後ろから、頭部の無いなのはの体を置き去りにして近づいてくるリインフォースが声をかけた。
「素直に賞賛として受け取っておくといい。
それと、少なくとも私は純粋に素晴らしい教官だと思っている」
そう言って空間モニターに映るティアナを見ながらリインフォースは続ける。
「高町教導官の教導だけならば恐らく既に全滅していただろう。
だがランスター二士は全滅を辛うじて回避可能なところで奇襲に思い至り、そして無謀な追撃をせずにその場で考えを巡らせている。
………少なくとも試合形式の個人技能に専心していた高町教導官の教導だけではこうならないだろう」
そうリインフォースに言われたヴィータだったが、それに複雑な表情をしながら言葉を返した。
「…………あー、………褒められるのは嬉しいんだけどよ、…………うん、………ホントだぜ?
だけど………あんまり褒められても素直に喜べないから止めてくれ。
……たしかになのはの教え方じゃ、ハヤトみたいな戦闘だけじゃなくて戦争や殺し合いも理解してる奴と敵対すればほぼ確実に負けるし、仲間と助け合えば必ず勝てるとか甘くて温過ぎる考えをしてるなのははたしかに問題だと思うぜ?
だけどよ………だからってなのはの考えが不要とは思ってねえし、寧ろ管理局にはなのはみたいな奴に教わった奴が大勢居なくちゃいけねえと思ってる。
だから…………なのはの教え方を下に見た褒められ方は喜べねえんだ……」
ヴィータのその言葉にリインフォースは内心は驚嘆しつつも、表情はいつも通り凛としたまま訊ねる。
「……それは高町教導官の教導が優れていると言っているのか?」
「いや、…………そうじゃねえんだ。
ただ……、誰も彼もがアタシみたいに………って言うかハヤトが言った通りに教えると、間違い無く一般受けしないどころかマスコミから叩かれるような集団になっちまうし、おまけにそんなことになれば管理局に入る奴が減っちまってもっと人材不足になっちまうからな……。
だからそうならない為にも、ある程度甘ちゃんで一般受けしそうな人間味を持った奴らが居ねえといけねえと思うんだよ。
………それに局も…………えーっと………広報戦略っていうのか?……まあとにかくソレに役立つと思ってるから、なのはが無茶苦茶なことしても注意だけで済ませて処分してねえんだろ?」
ヴィータの意見を聞いたリインフォースは少しの間眼を閉じ、その後極僅かに笑みを浮かべながら言葉を返した。
「指揮官の答えとしては80点といったところか。
推測でモノを、………特に上官の考えに関して語らなければ100点だったが、………惜しかったな」
「べつにアタシは指揮官じゃなくて遊撃隊員や教官を目指してるから赤点じゃなきゃ十分だ。
………だいたいアタシは好き好んで嫌われまくられたくもねえから、指揮官適正なんてゼロだぜ?」
「………生憎と人を統べる役職とはその地位の高低に関係無く、能力は在れどもその仕事を苦痛と思っていなければ適性が無い場合が殆どだ。
特に他者の命と好意を失うことを苦痛と思わない者は、どうしようもないほど人を統べる役職には向かない。
仮に強いカリスマを有していても、それは地金を隠すメッキにすぎない。
…………受け売りだがな」
凛としているにも拘らず、不敵さと苦笑が混じった表情と声でヴィータに話すリインフォース。
そしてこの後の話の展開が予想できたヴィータは、リインフォースの発言を封じるように話しだす。
「言っとくけど、アタシは現場の指揮官とかになる気はサラサラ無いからな?
他にも訓練時間を内勤に回す気も無いからな?
ていうか、この模擬戦が終ったらアイツ等に教えなきゃいけねえことが山程あるからな。
まぁ………この模擬戦が終った時ガキ共が一人も化けてなかったら………、ガキ共は全員実働部隊から外れると思うから、アタシも含めて手は空くと思うぞ?」
「口説き損ねてしまったか…………残念だな。
後…………、やはりフォワード陣は駄目そうか?」
「………駄目駄目だな。
それにアタシも半人前未満のガキを前線に出すのは反対だ。
…………なのは位の魔導師ランクでも油断すればアッサリ落ちるってのに、アイツ等じゃ落ちるよりも死ぬか捕まって解剖とかされて終わりだ」
「…………まあ、スターズは兎も角ライトニングはまず解体されるだろうな。
…………精神があまりに未熟すぎる者を前線に立たせるのは、部隊長陣全員が反対だったからな」
「スターズは解体しないのか?」
「15や16と言えば自身の目標を定めて歩き出しても構わない年頃だ。
しかも両者とも考えが甘いところは残っているが、精神はある程度構築済みだ。
ならば忠告を聞いた上で決定に異議を申し立てるならば望み通り分隊員として続けさせる。
…………そしてその結果が死のうが壊れようが、……………それは自己責任だ。
大人と子供の中間の様な存在にそこまで面倒など看ん」
「………部隊の維持と運営。それに余所との折衝だけじゃなくて、ガキの面倒看のオマケ付き。
その上局の広告塔のなのはが居るから、注目度がえらく高くてちょっとのミスすら許されねえってのに、肝心のなのは本人には問題だらけ。
トドメに派遣されている奴らに一定以上の処罰を科そうとしても、所属が陸じゃないからロクに処罰も出来ずに陸との関係悪化に拍車がかかる…………。
罰ゲームかよ、……………この状況」
そう言ってヴィータは溜息を吐き、それにリインフォースも苦笑で返した。
そしてそれで会話が途切れ、話しかける好機と看たフェイトとシグナムがリインフォース達に話しかけた(尚、フェイト以外は依然周囲を最低限警戒はしていたので、この状況を見聞きしている上層部は然して悪印象を抱いておらず、寧ろ古強者に類する者が現場の指揮官適正以外に管理職適正もあることを驚きながらも評価していた)。
「えと……………この模擬戦の結果次第でライトニングを解体するって話をしてたけど…………私……そんな話全然聞いてないけど?」
「まさか私が頻繁に余所に護衛や任務で出張しているのも原因なのか?」
「………先にシグナム二等空尉の質問に答えるが、それは要因ではあるが原因ではない。
ライトニングを解体する主な理由は、心技体があまりに未熟な分隊員の存在であり、更にはライトニング分隊隊長をスターズの分隊第二副隊長に据え、スターズ分隊隊長の暴走を押さえ込もうという理由もある。
そしてシグナム二等空尉には独立遊撃隊員兼第一部隊長副補佐に据え、私の業務の一部を代行してもらい且つ有事の際には単独で任に当たってもらう。尚、緊急時に非戦闘員のシャマル二等海尉並びに部隊長の使い魔として登録してあるザフィーラへの指揮等も担当してもらう。
それと分隊長陣の誰にも告げていなかった理由だが、一応高町教導官が落ち着き且つライトニング分隊員が一定以上の状態になればこの案件は見送られる予定だったので、無用な混乱や反発を防ぐ為に敢えて告げなかった。
尚、今述べたのは最早ライトニング解体はほぼ決定なので、ならばこの場で告げた方が面倒が少ないと判断したからだ。
それに…………ここならば激昂して少少不敬な発言をしても流すことが可能な上、最悪上官反逆罪で問題無く鎮圧することも可能だからな。
…………忘れているだろうが、今我我が居る此の場も限定的にとはいえ戦時特例措置が敷かれているので、上官侮辱や上官反逆を行った者を殺害したとしても、1週間の謹慎処置程度で済む。
ああ、それと此の案件は第三部隊長補佐が提案し、私と第二部隊長補佐と副部隊長が賛成し、第三部隊長補佐を筆頭にして部隊長に強引に承認させたモノだ。
つまりロングアーチも此の案件には概ね賛成ということだ」
さり気無く部隊長のはやてにフェイト達の矛先が向かないよう、速人を筆頭にした複数の身代わりを用意するリインフォース。
尤も、さり気無く述べたリインフォースの内心はかなり荒れていたが。
だが、リインフォースの内心を読めないフェイトが意見しようとした時、速人が廃ビルからティアナ達の方に歩き出し、それを見たリインフォースの―――
「お喋りは此処までだ」
―――という言葉に遮られた。
若干不満はあるものの、流石に任務を疎かにしてまで話し込むことでは無いと判断したフェイトは渋渋追求を中断した。
だが、フェイトはリインフォースに確認し忘れていたコトを思い出したので訊ねた。
「スバルの敗北判定を聞いてないんだけど………放送してないの?」
「天神三士には通達したが、ランスター二士達には通達する道理が無いので行っていない。
ルシエ三士の場合は他者の判断に因って敗北判定を付けたので天神三士に急ぎ通達しただけであり、ランスター二士達が通達を聞いたのはその場に居たという理由だけだ」
リインフォースは〔今更何を訊いているのだ?〕という表情をしながらフェイトに告げる。
そしてその後速人がティアナ達の視界内に入りそうになった辺りで、いつも通りの凛とした表情でフェイト達に指示を出し始めた。
「ライトニング分隊隊長及び同副隊長は模擬戦開始前の集合場所の上空100m以上に移動し、その後別命あるまで待機。
但し隊長はランスター二士の鎮圧乃至無力化及び着弾していない射撃魔法の無力化、副隊長は残り二名の鎮圧乃至無力化の命令を下す可能性があることを留意するように。
以上だ。尚、復唱は必要無いので急げ」
「了解しました」
「りょ、了解」
リインフォースは命令を承諾して飛び去って行ったシグナムとフェイトを見やりつつ、残ったヴィータが眼で疑問を投げ掛けていたので訊ねた。
「どうした?疑問があるならば訊ねるがいい。
発言を許可する」
「……フェイト隊長だと命令して動くまで少し間が在るから、最悪撃ち漏らしで相手が怪我すると思うけど………いいのか?」
「構わん。
本来ならば自身で対処するべき事柄だ。
撃ち漏らしが発生しようと非難される謂われは無い。
第一、天神三士が被弾したならばテスタロッサ一等海尉は恐らく負い目ができ、模擬戦後無用な衝突が減るのでその方が都合は良い。
幸い天神三士は非戦闘要員なので、余程の重傷にならぬ限りは職務に問題は無い」
「…分かった」
可能な限り平静を装ってヴィータは答えたが、内心は怒りと悲しみが渦巻いていた。
だが、内心のソレを堪えきれなかったのか、ヴィータはソレを愚痴に変えて吐き出す。
「…………やっぱアタシに指揮官は無理だ……」
「…………………」
その愚痴にリインフォースは何も言わず、黙って空間モニターの映像を見ていた。
空間モニターには先程と比べて見違える動きをするティアナが映っていた。
――― とある観戦場 ―――
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とある可能性編 二つめ:とある騒動 其の肆――――了
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【後書】
A‘S編の本編も幕間も終わってないのに何を思ったのかSts編を書くという暴挙に出てしまいました。
しかも本編の息抜きに書いたのでツッコミ所満載ですが、それでも楽しんでいただければ幸いです。
それとIF編はおまけみたいに軽い感じで書けば丁度いいかな?と思い始めてきました。
正直、「他の作家さんならば多分1〜2話で終る内容を何話書いてるんだよ?〕、って気になってきます。
プロット的には、
[ティアナ殴打の回避]→[速人がシャリオの話を止める]→[フォワード陣が速人に猜疑心を抱く]→[なのは暴走開始]→[模擬戦前にリインフォースの墓穴話(超重要)]→[速人によるフォワード陣への駄目出し話]→[フォワード陣数名敗北]→[ティアナ指揮官能力LVアップ]→[決着]→[????]、
だけなんですけど、本当にいつまで長引かせているのやら………(次で終る予定ですが)。
更新速度は遅く話の展開も遅い上暴走しているSSを掲載して感想を頂ける管理人様と御読み下さった方に沢山の感謝を申し上げます。
● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○
【作中補足】
● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○
【脇役の人達が速人をどう思っているか】(ネタのつもりで見て下さい)
ティアナ…:尊敬・畏怖・好意・憎悪・羨望・嫉妬。
スバル……:軽蔑・憎悪・嫌悪・敵意・不快。
エリオ……:軽蔑・嫌悪・拒絶・恐怖。
キャロ……:苦手・嫌悪・拒絶・恐怖。
グリフィス:苦手・不審・堅実。
ヴァイス…:苦手・羨望・嫉妬。
シャリオ…:苦手・拒絶・実直。
アルト……:苦手・堅実・羨望。
ルキノ……:苦手・堅実・恐怖。
アイナ……:苦手・堅実・実直。
オーリス…:敬意・堅実・実直・信頼・信用。
ユーノ……:苦手。
シャッハ…:軽蔑・憎悪・嫌悪・不仁・不義・非礼・不忠・不信・不孝・不悌・殺意。
と、なっています。
後、最高評議会のメンバーからは目の上の瘤と思われてますが、レジアスとカリムからは切り札と思われていたりと、統治する側には嫌われるが改革する側に好かれるという、かなり複雑な立ち位置に速人はいます(改革成功後に消されるか左遷されるタイプナンバーワンです)。
…………しかし、本当にマニア受けのオリジナル主人公ですね。
平和な時代や平和な考え方をした者達に嫌われるのが普通って………。
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【速人の撥】
正真正銘唯の金属塊で、何一つ機械的な部分はありません。
但し原子核の人工変換をした物質(比重25越え)を使用している為、非常識半歩手前な程重いです。
それと当然、硬度・粘度・劣化・絶縁・熱伝導・対薬品・対光学兵器塗料・等等etc……が、常識を疑う高水準で纏められています。
特に魔力への耐性は病的なまでに拘って作られており、その性能は時限航行艦の装甲を遥かに凌駕しており、はやてやリインフォースでも戦闘中での破壊は実質不可能な程です。
………尤も攻撃に対して障壁が展開されるわけではないので、撥が原形を保っていても速人はまず死にますが。
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【作中補足終了】
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【おまけ】とある日の黒宴会
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「と、言うわけで、ロングアーチの親睦を深める為に2時間程度のパーティーを開催や〜」(←はやて)
「わあーーーーっ(とか色色な歓声)」×沢山
「すんませーん、八神隊長ー、何で他の隊長陣やフォワードの連中を呼ばないんですかー?もしかして虐めですかー?」(←ヴァイス)
「はっはっはっは、ヴァイス君は面白―ないこと言うなー。
地球が誇るアルコール度数96以上のスピリタスを一気飲みさせるで?
あ、急性アルコール中毒になる前に吐かせて、その後シャマルに治させるから遠慮なく喉を焼かれて気絶して構わんで?」(←はやて)
「すんませんしたー!
あと96以上って、酒に弱いやつなら下手したら一口飲んだだけで死にますよ?」(←ヴァイス)
「少なくともヴァイス君の健康診断データを見る限りは一瓶飲ませてすぐに吐かせれば気絶で済むから安心やでー?」(←はやて)
「全然安心できませんから。
まあそれはともかく、なんで俺達だけなんですか?」(←ヴァイス)
「それは僕も思いました」(←グリフィス)
「「「あたしもです」」」(←アルト、ルキノ、シャリオ)
「あ、それはまず子供に聞かせられんような話をおおっぴらにする為や。
んで次に隊長陣やけど、なのはちゃんはこの前の模擬戦関係の書類の海で溺れてて参加不可能、フェイトちゃんはそんななのはちゃんの身の回りの世話で参加不可能、シグナムとヴィータは大宴会は好きやないそうやから辞退して現在六課の見張り番中や」(←はやて)
「はーっ、両副隊長が居なきゃ乙女は残り一人。
華が少なくて寂しいぜ……」(←ヴァイス)
「「「残りの一人の乙女ってだれ(や)(です)」」」(←はやて、アルト、ルキノ、シャリオ)
「そんなの決まってるじゃないですか。
機動六課内のナンバーワン乙女! クーデレ軍人リインフォース一尉ですよ!
あ、因みに二位が真性ツンデレキャラのヴィータ三尉で、三位が意外と抜けてるお笑い天然騎士のシグナムの姉さんで、それから大分離れて四位以下は団子状態で、選考外の人達は二十歳超えのシャ―――」(←ヴァイス)
「―――フッッッ!!―――」(←シャマル)
「―――マ“ぁぅあっっ!!?」(←ヴァイス)
「あらあらあらあらヴァイス君喋りすぎで喉を痛めたみたいね今直ぐ楽にしてあげますから人生を振り返ってくださいねー」(←シャマル)
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「うーん、やっぱり宴会すると口が滑り易くなって簡単に色々喋ってくれるな〜」(←はやて)
「八神部隊長………もしかしてこれってパーティーという名の暴露大会ですか?」(←グリフィス)
「いややな〜、ただの親睦会やって」(はやて)
「あの………さっきから暴露しすぎた所為か、辺りが怒りで満ち満ちてるんですけど?」(←アルト)
「と言うか、男性のサイズや女性のサイズ当てとか大声でやってるから、女性職員と男性職員が一触即発に近いんですけど?」(←グリフィス)
「て言うか、スピリ何たらとかの所為で泥酔しまくって男女共にセクハラの嵐ですよ?
………制服でやってるところ見られたら、絶対全員クビになってますね………」(←アルト)
「あはは〜、人が酔ってる姿を見るのが正しい酒の楽しみ方やで?」(←はやて)
「清々しいまでに黒いですね」(←グリフィス)
「静脈じゃなくて動脈を切っても黒い血が出てきそうですね」(←アルト)
「上に立つモンは黒くてナンボやで?
まぁ、下衆にはならんよう注意せなあかんけど」(←はやて)
「意外と現実的な意見ですね……」(←アルト)
「………まあそれはそれとして、…………この乱痴気騒ぎ、どうやって止めます?
もうルキノとシャーリーはサイズを当たられた腹いせに相手の男性職員のサイズの予想を叫んだりしてて収拾付きませんけど?」(←グリフィス)
「いや〜、お酒ってホント怖いな〜」(←はやて)
「と言うか、八神部隊長が用意したお酒が怖いってのが正解だと思うんですけど……」(←アルト)
「一口でビール500〜1000ミリリットル換算だからね………」(←グリフィス)
「あ、怖いといえば、持ってきたお酒はな、ふざけてお酒の掛け合いとかしたら、静電気で簡単に着火して火達磨になって死ぬから気を付けてな?
因みに火達磨で死ぬいうより、大抵は肺が焼け爛れて死ぬか、若しくは酸欠で死ぬんやけどな」(←はやて)
「あと肌からアルコールが吸収されて急性アルコール中毒で死にそうですね」(←グリフィス)
「あ、それとなー、それにポカリの粉末を水指定の時の半分ぐらい入れて、その後絞りたてのグレープフルーツジュースを25〜50%ぐらいの比率で混ぜて、最後に普通の睡眠薬を適量入れたら、もうナニしてもまず起きんで?」(←はやて)
「八神部隊長………犯罪ですよ?」(←グリフィス)
「ややな〜、全部合法品やし、組み合わせも全然違法やないで?
ただ、使用上の注意を守っとらんだけやって」(←はやて)
「…………まあ、とりあえず犯罪臭い話は置いときますけど、…………結局この乱痴気騒ぎをどうやって止めるんですか?」(←アルト)
「それは大丈夫や。
こんなこともあろうかと場を静める達人を招待してるんよ。
っつうか、寧ろ場を沈める達人やね」(←はやて)
「あー、もしかして最初から端の方で延延と書類整理をしていた補佐トリオの二人ですか?」(←アルト)
「正解や!
あの二名こそが人を気落ちさせる三柱の現人神の内が二柱!
無邪気のツヴァイ、天然のリインフォース、や!」(←はやて)
「「すいませーん、ろくな話が出そうにないので帰っていいですか?」」(←アルト&グリフィス)
「却下や。
まあ、今回は残っとるのがツヴァイとリインだけやから、そこまで厭な話は飛び出してこんと思うから大丈夫やろ」(←はやて)
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「……(何故態態壇上で喋らなければならないのだろうか?)……、えー、それでは一番手、リインフォース一等陸尉、余興として今更知りたくない知識を披露します」(←リインフォース)
「わあーーーっっっ」(←×沢山)
「では最初は抹茶アイスの着色料の原料ですが、これは蚕の糞を使用している物もあります」(←リインフォース)
「……」(←×沢山)
「次にマッシュルームについてですが、栽培物も少なからず馬糞から栽培されています」(←リインフォース)
「………」(←×沢山)
「最後に紙コップ式自動販売機についてですが、中はゴキブリが100匹近く住んでるのが普通です」(←リインフォース)
「…………」(←×沢山)
「以上」(←リインフォース)
「…………通りで部隊長達が自販機使わないわけですね………」(←グリフィス)
「て言うか、もう自販機使えませんよ!!?」(←アルト)
「はっはっは、少し考えたらゴッキーにとって最高の環境やって分かるやん?」(←はやて)
「「言って下さいよ!!!?」」(←アルト&グリフィス)
「ではでは次はツヴァイです!参上です!!」(←ツヴァイ)
「………何故だろう?
雰囲気とは裏腹に厭な予感しかしない……」(←グリフィス)
「あ!大丈夫です、グリフィス準陸尉!
ツヴァイの話は命の儚さと貴さを知る、ハートフルな話です!感動の話です!!
ですから安心して聞いてくださいです」(←ツヴァイ)
「おっ?いつもの毒舌ツッコミやないんか?」(←はやて)
「ツヴァイはそんなツッコミしたことなんてないです。
それとさっきも言いましたけど、命の大切さを知るハートフルなお話なのです!
お兄様とお姉さまに赤ちゃんがどうやって出来るのかを質問した時に聞きましたけど、その時ツヴァイは命の儚さと貴さを知り、疲れて寝てしまうまで泣き続けるほど感動しました。
あと起きた時、お兄様とお姉さまがツヴァイの手を握って寝ていてくれて感動して又泣きました。
それと顔を洗うついでに仲良くお風呂に入ったのは良い思い出です」(←ツヴァイ)
「へえ〜〜〜〜〜〜〜〜」(←×全員―リインフォース&ツヴァイ)
「……(今日はツヴァイと何処かに泊まろう)……」(←リインフォース)
「ではではまずは命の大切さを知るために年間の死亡原因についてです。
年間死亡原因の最大比率は癌ですが、受精直後の胎児も人間と捕らえるならば、人工中絶により殺害される胎児が癌よりも多いです。
つまり管理世界の人間は、毎年自然死よりも胎児を人工中絶で殺害する方が多いということです」(←ツヴァイ)(日本の現状を管理局に当て嵌めました)
「………………………」(←×沢山)
「………凄く欝になってきました」(←アルト)
「………子供が聞いたら大人を信用してくれなくなりますね」(←グリフィス)
「………私の友達二人が私と一緒に10歳になる前にこれ聞いたんやけど、一時期二人とも大人と男性不信になりかけたで?」(←はやて)
「では次に人工中絶についてですが、子宮より引き摺り出された未熟な胎児は悲鳴を上げている表情をしています。あ、悲鳴を上げないのは未熟すぎて発声出来ないからです。
多分その時体外に引き摺り出されると死ぬと分かってるからだと思うです」(←ツヴァイ)
「……………………………………」(←×沢山)
「それと普通人工中絶で子宮から引き摺りだす時は、大抵引き摺り出す前に頭を潰すらしいです」(←ツヴァイ)
「…………………………………………………………………………」(←×沢山)
「ですから皆さん産まれてくる命は大切にするです。
あ、それとお兄様が〔産む事が不幸だと言うのは兎も角、産まれる事が不幸だと言うのは傲慢だ〕と言って、お姉さまが〔まあ、産まれる事が幸せだというのも傲慢だが、産まれれば自死という選択を得られるので幾分マシだろう〕と言ってたです。
ですから悩むくらいならとりあえず産むべきです。
不幸になるかもしれませんが、そしたらそんな人を見た他の人達は自分の幸せを噛み締められるので、他人の幸せの為に産まれてきたという立派な役割を遂げる事ができるので―――」(←ツヴァイ)
「―――残務が終ったのでこれで失礼します」(←リインフォース)
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「………………………………………………………………………………………………………………」(←×沢山)
「ツ………ツヴァイが…………真っ黒な子になってしもうとった…………」(←はやて)
「………妖精というよりや、ミニチュアの悪魔に見えてきました………」(←アルト)
「………身内とそれ以外に少し線を引いてるのは知ってたけど…………考え方がちょっと怖すぎるね………」(←グリフィス)
「と言うか、お酒飲んで精神が無防備の時にあんな話聞かされた周りの人達……って言うか私達以外ですけど……本格的にマズイことになってますよ?」(←アルト)
「………シグナム達呼んで介抱手伝ってもらうわ……」(←はやて)
【投げっ放しで終わる】
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思わず、シグナムやヴィータの意見に頷いてしまった。
美姫 「速人が丸くなったっていう奴」
ああ。ひょっとしてすっかり毒されてる!?
美姫 「どうかしらね。まあ、ティアナたちには良い経験にはなるんじゃない」
下手にトラウマになったりしてな。
美姫 「多分、大丈夫よ」
ヴィータたちの会話の中で、ライトニングの解体の話が出たり。
美姫 「訓練とは別に気になる所よね」
だな。次回も楽しみにしてます。
美姫 「待ってますね」
ではでは。