この話はSS【八神の家】の幕間ではなく、もしも(IF)の話です。
ですのでSS本編がもしStSまで進めば、必ず相違点が出る代物です。
ですから二次創作のIFを了承できる剛の方以外は読まれないのが賢明です。
注1)速人のインチキ級能力でリインフォースが空に還らず闇の書の闇はどうにかなっています。
注2)階級に関しては自衛隊で使用されているものを流用していますが、将官の階級は原作通り第二次世界大戦時の日本軍の階級名に倣っています。また作中階級が明記されていない面面の階級については作者の捏造設定です。
注3)速人の外見年齢はリインフォースと同じかちょっと幼いぐらいです。(髪の長さは身体比的にリインフォースとフェイトの中間程度で、ストレートです)
注4)速人ははやて達とは暮らさず一人暮らしです(住所登録は地上本部近辺の見た目廃墟のアパートですが、書類上だけで実際には住んでいません)。
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魔法少女リリカルなのはA‘S二次創作
【八神の家】
とある可能性編 二つめ:とある騒動 其の陸
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――― とある訓練場 ―――
速人はティアナとエリオが自身を発見していると承知しているにも拘らず、何時も通り軍人や戦闘者ではなく侍従や秘書に近い緩急の少ない静かな歩き方で二人に近づいていた。
対して待ち受けている二人の対応は、エリオは行動指針を自身で立てられない為ティアナに判断をまる投げしているので命令待ち状態であり(命令を承服するかは別だが)、ティアナは遠距離から攻撃しても弾速と連射の関係で魔力を無駄にするだけと判断していたので行動せずに機を窺っていた。
結果、二人の近くまで速人は一切妨害されることなく近づくことが出来た(途中で何度かエリオが自滅に限り無く近い特攻を行なおうとしていたが)。
そしてエリオの間合内と間合外の間で歩みを止めた速人を見、ティアナは其処で歩みを止めるならば何故態態姿を現したのか疑問に思ったが、それは直ぐに解消した。
「今回の模擬戦に置ける表向きの趣旨の成否に因る損益に思い至ったと判断したので現れた」
「「?」」
訊ねようとはしていたが、自身が訊ねる前に速人が先回りして答える容で独白したので、何故態態自分から話したのかという真意を図りかねてティアナは眉を顰め、エリオは速人が何故現れたかを考えもせずに発言の意味自体を理解しきれずに眉を顰めた上に首を傾げた。
そして速人はティアナとエリオだけでなく、視界外も警戒しつつティアナに顔を向けて語りだす。
「非魔導師の私が時空管理局対外広告要人高町なのは教導官の教導を受けた陸戦C及びBランクで構成された魔導師を打倒した場合に置ける損益を理解しているならば、既に自身以外にエリオ・モンディアル三等陸士のみが残っている現状では、私を打倒するのに最適と判断される作戦を尽く不当拒否される為、私の打倒が極めて困難と理解していると判断した。
模擬戦としては既にほぼ無傷である私は逃走を続ければ極めて高い確率で判定による勝利を得ることが可能であり、其の事を双方理解している以上、事実上既に私は勝利しており、ならば残された時間を用いて両者を見極め、そして益が在る人材と判断を下した場合、平時での教導では得難く且つ有意義と私が判断される経験を積ませる為に現れた。
故、除隊処分を下されたくないならば、自身の有用性若しくは可能性をこの場にて示せ」
そう言い放った後、両手に撥を握った以外は自然体という、ある程度の武術者が至れる境地の構えで以って速人はティアナ達を観察しだす。
だが、速人の発言に納得がいかなかったエリオがストラーダを強く握り締めながら反論する。
「待ってください!
まだ勝負はついてませんっ!!」
しかしエリオの反論を速人は―――
「ならば即座に仕掛けろ。
お前達の様な者が敵性存在の眼前で警告や宣告の意味が通じたかを確認する以外の意志疎通を試みるのは愚行だ。
分際を痴れ」
―――普段の教導では言われないだろう言葉で返した。
そして速人の言葉にエリオが怯んだ隙に速人はティアナに顔を向けた儘更に告げる。
「そも、私を打倒するならば私が歩いている最中に突撃し、自滅覚悟で自身の肉体を持って私を拘束し、その隙にティアナ・ランスター二等陸士が大出力攻撃若しくは物量攻撃で私を攻撃すれば打倒の可能性は在ったぞ。
無論お前も巻き込まれるが、恐らく私の打倒確率が万分の一を超えるだろう数少ない作戦だ。
そして其れを踏まえた上で問う。
何故実行しなかった?
必要が無いと判断を下したか?
彼我の実力差を未だ理解出来ずにか?
考えが及ばなかったか?
危機に際して使い古された特攻にすら考えが及ばないのか?
痛苦を忌避したか?
前線に立つ役職に就いているにも拘らずにか?
捨て駒にされるのを拒否したか?
代案も立てずに保身を優先したか?」
「ち………………違………う」
「…………………………」
淡淡と告げられた速人の言葉にエリオは打ちのめされ、僅かに俯いた儘辛うじて否定の言葉を出すだけが精一杯だった。
対してティアナは自分達に注意を払い続けながら言葉を紡ぎ続ける速人を不振に思い、何かしらの意図が在るのだと推測し、速人に注意を払った儘考えを巡らせていた。
しかし速人はそんな両者を無視する様に独白の如く話す。
「それと先程お前達が敵性存在と警告と宣告の意味が通じたかを確認する以外での意思疎通を試みる事を愚行と述べた理由だが、現状が答えだ。
私の話を聞いた為にエリオ・モンディアル三等陸士は動揺及び精神的衰弱の状態へと変化し、ティアナ・ランスター二等陸士は私の発言の意味を考察する為に注意を私のみに集約させてしまっている。
私が単独で行動しているのでなければ強襲を受けて全滅しているだろう。
故、身の程を知れ。
対峙する敵性存在と意思疎通を図る事を望むならば最低限の力を得ている必要が在る。
そしてそれだけの力が無―――」
唐突に、速人は予備動作を殆ど排した疾走をし、エリオとティアナが補足する前にエリオのやや左眼前に移動した。
「―――い―――」
突如エリオに肉薄した速人は、左手に握った撥の塚尻とも呼べる部分をエリオの右手首に打ち付けてエリオの関節を破壊し、ほぼ同時に右手に持った撥でエリオの顎を逆袈裟気味に打ち払った。
「―――のな―――」
更にエリオが崩れ落ちる前に速人は右足で半歩踏み込み、身長差を活かしてエリオの頭頂部と側頭部の境目辺りに頭突きをした。
「―――らば、―――」
そして踏み込みに使用しなかった左足でエリオを股間から押し上げるように蹴り上げ、自分の目の高さまでエリオを蹴り上げた直後、速人は後ろに倒れ込むようにしつつ、右足のみで自分だけでなくエリオごと跳躍してサッカーで言うオーバーヘッドキックの体勢へと移行し、速人はエリオを攻撃した上でエリオを空中でティアナに対する盾にするという、曲芸師顔負けの動きをした後見事に着地した。
「―――条件を満たすまでは自粛しろ」
撥を握った儘にも拘らず左手でエリオの右爪先を掴み、そして左腕だけでエリオを盾の様に速人が構えた時、漸くティアナは速人を補足し且つ状況を認識出来た。
だが速人はそんなことは気にも留めず、持ち上げているエリオの腹部を撥で乱れ突きしつつ独白の様に話し続ける。
「然もなくばエリオ・モンディアル三等陸士の様に容易く不意を突かれるからな」
そして速人はエリオの内臓を破裂寸前にした後、エリオを持ち上げている腕の力を抜いてエリオを頭から地面に落としつつも、エリオの頭頂部が地面に着くのとほぼ同時に震脚をエリオの顎下に行なった。
結果、強制的に下顎を上顎に叩きつけられた為に歯が数本砕け、更に脳の中枢神経に衝撃が走り抜け、その衝撃を表わすかの様にエリオの頭頂部が地面に触れた箇所付近に皹が発生していた。
本来ならば上下の顎と歯が砕け、更に浸透勁若しくは呼気を激しく吐いて爆発勁を行なって威力の底上げを図った震脚で頭蓋が踏み砕かれるか振動で脳が破裂するかのどちらかだったので、現状が相当手加減された結果だと隊長陣全員は分かっていた(フェイトはそこまで理解はしていないが、以前速人がクロノの下顎を引き千切ったのを覚えているので手加減していることは気付いた)。
因って―――
『エリオ・モンディアル三等陸士、隊長陣三名以上の判断に因り敗北』
―――キャロの時と同じく、敗北を告げる声が周囲に響いた。が、速人はエリオの敗北が告げられ終わる前に崩れ落ちているエリオを再び片手で掴み、そしてその場で半回転して遠心力を発生させ、その後腕を鞭の様に撓らせてエリオをティアナに投げ付けた。
だが、エリオはティアナに衝突する前に転送魔法によって回収され、速人はティアナの視線と射撃を遮る盾を失った。が、それを気にした様子も無く、ティアナに話しかけているのか独り言なのか判断し難い口調で言葉を発する。
「敵性存在の弁に惑わされるとは、度し難い醜態だ。
そも、何故相手が主観を交えた発言を行なった段階で別の観点から考察しようとしない?
主観を含まぬ発言ならば情報の真偽を考慮するだけで事足りる。
だが主観を含む発言は主観を排さねば情報に付与若しくは欠損、若しくはその両方が存在する為、先ず主観に類する情報を全て排除し、次に情報の欠損箇所を可能であるならば補完し、更に最後に情報の真偽を考慮する必要が在るにも拘らず、だ」
流石にエリオを投げ付けて暫く言葉を紡いでいれば、ティアナも余裕で移動していない速人を補足することが出来、撥を右手は順手で、そして左手は逆手に握りながら自然体でそう述べた速人に、ティアナは緊張と躊躇いが混じった声で問い掛けた。
「……出鱈目を言ってる………ってワケですか?」
「相手の発言の真偽をその者自身に訊くとは、愚行以前に無駄だ。
そも、訊ねる相手の思考原理を欠片も理解及び理解に至る為に出精もしていないとは、度し難い愚かさだ。
この程度の存在が機動六課に存在するとは汚点でしかないな。
故、速やかに投降し、即刻辞職して退局しろ。
今のお前如きを免職する為に費やされる時間は浪費でしかないのだからな」
そう告げた速人は馬鹿にするわけでも面倒というわけでもない、普段通りの容貌をティアナの方に向けていた。
尤も、顔はティアナに向けているが、その視線はティアナではなく、ティアナが握るクロスミラージュに向けられており、宛ら、[ティアナ・ランスター個人に対して意識を払う必要は無い]、と、述べているようであった。
そして速人から挑発や虚仮にしているとしか思えない発言と態度に曝されているティアナは、懸命に自制しつつ思考していた。
(落ち着くのよ……落ち着くのよ………落ち着くのよあたしっ!
…………今逆上したら天神先輩の動きを捉えられなくなるし、図星を突かれて逆上した挙句アッサリ負けた四人目っていう、局に居られなくなる程の赤っ恥を曝す羽目になるわよ!!
そう、だから落ち着くのよ。…………落ち着いて…………………だけど天神先輩から意識を外さずに考えるのよ)
懸命に自制しつつティアナは速人を睨みつける。が、それは窮鼠猫を噛むというような自棄とも取れる瞳ではなく、僅かでも隙があればそこを糸口に打倒する若しくは逃げ遂せてみせるという意志が宿った瞳だった。
そしてティアナが自棄にならずに熟考し、その上で自分から注意を逸らしていないと判断した速人は、集中力が切れるのを待っている若しくはそれ以外の目的が在るのかを表情からティアナに読み取らせず静観していた。
(………………疑問その一。
どうして天神先輩は攻撃してこない?
………どう考えたってこの距離ならあたしの攻撃を回避や迎撃しつつ倒せるし、仮に離れていても逃げに専念した天神先輩の回避力と迎撃力を上回る弾幕や範囲攻撃を今のあたしは多分出来ない。
にも拘らず攻撃してこないっていうことは、少なくともあたしを倒すのが目的じゃない……………いえ、現状のあたしを倒すのが目的じゃないというのが正解でしょうね。
疑問その二。
どうして天神先輩は話をしている?
……………エリオならまだ油断を誘う為というのは辛うじて納得出来るけど………、あたしに話すのはどう考えたって天神先輩の勝率を低くしているだけとしか思えない。
なら天神先輩は勝つことが目的じゃない。
疑問その三。
天神先輩は何を考えている?
………少なくともあたしに何かをしようとしているか、それともあたしが何かをするように仕向けているか、若しくはその両方。
疑問その四。
あたしは天神先輩に何を強いられてる?
………………………………………………分からない。
…………………こういう場合、分かってる事をとりあえず思い返すのが一番ね。
……………天神先輩は機動六課の第三部隊長補佐で三等陸士。
部隊長達やヴィータ副隊長たちから凄く信頼されてる。
リインフォース一尉やツヴァイ曹長とは事実婚。…………ツヴァイ曹長の立ち位置が微妙だけど。
規律に凄く厳しい。
凄いお金持ち
凄く頭が良い
技量だけならヴィータ副隊長に自分達より遥かに上と言われてる。
容赦が無い。
無駄なことはしない。
冷静沈着。
場の雰囲気に流されない。
………………………………前提は、容赦が無くて無駄な事をしない、ってことね………。
……で、その前提の後に付け足すのは…………、六課の第三部隊長補佐で部隊長達…………じゃなくて部隊長に凄く信頼されている………、で、いいのかしら?
…………………そうして考えると……………………………………、天神先輩は六課の為に行動していることになるわね。
なら………………、この模擬戦は六課か部隊長、若しくはその両方の特になる…………だけじゃなくて、損を最小限に抑えるってこともありえるわね。
……………損する方は分からないから後回しにするとして、得するとしたらあたしたちを倒したら得するのかしら?
……でもあたし達を倒すだけならこの模擬戦じゃなくても普通の訓練時にでも倒せただろうし、第一倒すのが目的なら既にあたしは倒されてる筈。
にも拘らずスバル達が倒されたのは何かの布石………………だけじゃなくて……………………………まさか…………篩いをかけた?
…………………………………………あ……あああああああああああああああああああああああっっっ!!!???)
何かに思い至ったのか、ティアナの表情と瞳に驚愕が宿る。
だが、驚愕して集中が乱れた瞬間、速人が足元の小石を半歩踏み出すついでにティアナの右眼球へと蹴り飛ばした。
更に速人は小石に追走してティアナへと接近し、左手に握った撥を振るった。
しかし小石はクロスミラージュが自動展開した防壁で防がれ、左腕で振るった撥はティアナが前方に跳躍する様に突撃したので握り手に近い部分が当たってしまい、その威力は殆ど発揮されなかった。が、それでも握った撥の重さと腕の動きの速さとティアナの脚が地面を踏み締めていないという要因が在った為、ティアナは片腕で成されたとは思えない程の距離を押し飛ばされた。
だが、押し飛ばされる前から攻撃が最大の防御と言わんばかりに至近距離から速人に魔力弾を多数発射するつもりだった為、押し飛ばされ始めた瞬間からクロスミラージュが大まかな照準設定を施していると仮定して魔力弾を連続で撃ち出した。
そしてその結果、速人は至近から放たれた魔力弾を回避は出来たが、回避直後に密度も厚みも薄い弾幕とは云え掻い潜って追撃するのは費用対効果が釣り合わないと判断したのか、速人は追撃せずに迎撃と回避に専念した。
対してティアナは追撃を受けなかった為辛うじて転倒せずに着地が出来、在る程度の距離を稼いだと判断したら弾幕を張る事を止め、再び速人を睨みつつ熟考を始める。が―――
「今の対処は及第点だ。
咄嗟にその判断と行動が可能ならば、戦闘要員として最低限保有すべき資質乃至技術乃至技能の一つは獲得しているだろう。
故、評価を上昇修正しよう」
―――速人のその言葉を聞き、熟考するまでもなくほぼ確信した。
(…………やっぱり………あたし達に訓練をつけるのが目的みたいね………。
……大方、この程度で潰れる様ならさっさと潰して他所からベテランを引き込むつもりだったんでしょうね。
……たしか、あたし達フォワードはなのはさんとフェイトさんが…………主になのはさんが相当ゴネて人員を決めた挙句捻じ込んだみたいだし、そこまでして捻じ込まれた人員が弱いせいで問題が引き起こされるなら、さっさと問題に成らない内に事故で処理して片付けたいわよね。
………で、今あたしを試しているのは、あたしが天神先輩の期待に応える……じゃなくて、最低条件を超えられれば、使える存在と認識してスバル達のまとめ役、若しくは全く別の役職を用意するためでしょうね。……逆にあたしが最低条件を越えられなければ、スバル達と纏めて窓際に直行ね。
……負ければ役立たずの烙印を地上のお偉いさんの前で刻まれ、勝てばスバル達とは明確に線引きされて溝が出来る……。
………だけど、別の見方をすれば負ければ夢は閉ざされるけど、勝てば三佐相当権限持ちの部隊長補佐に最低限目をかけられる上、大幅なレベルアップもしてる筈だから夢に大きく近づく。
……………………………………………上等じゃない!!
悪いけれど、実力不足以前に精神的幼稚さが原因で脱落した相手に構って夢から遠ざかるつもりは全然無いのよ。
…………まぁ、スバルにはあたしの訓練に付き合わせた借りがあるけど、ここで付き合うのは利息込みにしても釣り合い取れないから却下よ却下。
……よし。
他にも天神先輩には思惑が在るんだろうけど、今のあたしの手持ちの情報じゃ仮定に仮定を重ねてもこれが限界っぽいし、恐らくあたしに関係在る一番の事柄がこれだろうから問題無いでしょ。
さて……それじゃあ意地でも食らいついてやるわよ!!!)
意地でも食らいつくとティアナは心に決めたが、周りに漏れ出した雰囲気は平均的精神強度の者ならば確実に気圧される、執念と呼べる程のモノだった。
尤も、対峙する速人は精神強度が規格外な為、ティアナは速人が先程と何ら変化無く見えたので自分が放つ雰囲気を自覚出来ずに速人に問い掛けた。
「やっぱり……この模擬戦はなのは隊長の要望を叶えるためじゃなく、あたし達を鍛える為………いえ、篩いにかける為のモノなんですね?」
「それだけではないが、立場を考慮したならば辛うじて及第点だな。
察した通り、この模擬戦ならば問題無く重傷を負わせて戦線から外すことが可能であり、残りし者は戦闘者として最低限必要な技術と精神と思索を保有していることを内外に知らしめ、現場だけでなく戦場においても有益な働きが可能だと戦闘経験の浅さを指摘している者を納得させ、機動六課の運営を円滑にする為の意味も今回の模擬戦には在る。
尤もこの話―――」
ティアナの疑問に答えていた最中、再度速人は予備動作を殆ど見せずにティアナにフラッシュムーブに匹敵する速度で肉薄しつつ、右手に握った撥をティアナの喉目掛けて突く。が、寸での所でティアナが交差させたクロスミラージュ本体と自動展開されたシールドに防がれ、速人は至近距離での銃撃を封じる為、急場のシールドとは云え非魔導師が自力で破るのが困難なシールドを容易く砕きつつ、そのままティアナを押し飛ばして間合いを空けた。
「―――そのもの―――」
だが、押し飛ばされながらもティアナは、無防備に押し飛ばされていれば追撃を受けると判断し、又しても速人に置き土産とばかりに多数の魔力弾を発射し、速人を迎撃と回避に専念させることで再度追撃を防ぐことに成功した。
「―――がお前の注意を逸らす為という可能性は在るぞ。
何しろ自分が考えた果ての答えが正解だと肯定された時、大抵の者は隙を曝す。
特にお前を教導していた高町なのは教導官はその典型例だ」
先程と同じく速人は瞬間的に多大な運動をしたにも拘らず、その最中にすら言葉乱したりはせずに紡ぎ続けた。
対してティアナは金属音や魔力弾の発射音で聞き漏らした部分も前後から推測し、又もや執念を溢れさせつつも速人を睨みながら告げる。
「仮にそうだとしてもあた…………失礼、私には関係在りません。
今は私が隙を曝すかどうかが問題なのであって、他の方が隙を曝す可能性は関係在りません」
「この程度の挑発を気にも留めず且つ相手より情報を収集しつつも注意を散らさぬのは評価しよう。
故、更に情報を追加することで反応を観察しよう。
今のお前が時間無制限で限定を解除した高町なのは教導官と模擬戦を行なうならば、初戦では極めて高い確率で勝利し、初戦以外でも分が悪いと判断される程度の勝率が存在すると私は判断しているが、此の評価にお前はどの様に対応する?」
「…………高評価………と、受け取るべきか、隙を誘う為のお世辞と受け取るべきか、それともそれ以外なのかは判断に悩みますが、軽々しく頷けない内容ですね」
「この件の返答に関して発言を控える必要は無い。
今回の模擬戦は外部と通信を行なっておらず且つ重要機密以外の発言ならば無条件で容認される。
例え自らの上官を侮辱する発言を行なおうとも、戦闘中の駆け引きとして処理されるので咎められることは無い。
要約するならば、〔兵は詭道なり〕、であり、即ち騙し合いも戦術や戦略としては当然と云うことだ」
「…………………………」
速人の言っている事をティアナは十分理解出来ていたが、だからと云って安易に自分がなのはよりも上位に位置すると認めれば、後程本人と周囲(特にフォワード陣)からどの様な冷遇や逆襲が待っているかを想像することは難しくなく、思わず黙り込んでしまう。
だが、速人はティアナの逃げ道を塞ぐ言葉を発する。
「仮に此の場で自身が高町なのは教導官より下だと認めたならば教導官を変えはせぬが、最低でも自身が高町なのは教導官より教わることが無いと明言するならば、私が一線級で活躍可能な戦闘者若しくは戦争者に鍛えよう」
速人のその言葉を聞いたティアナは、今直ぐ此の場で頭を抱えて蹲りたい衝動に駆られたが辛うじて堪えつつ、速人に注意を払いつつも熟考しだした。
(…………………せ………性格悪っっ!!!
仮になのはさんから教わることが無いって言えば、後でなのはさんが、[少し、舞い上がった頭冷やそうか?]、とか言って粛清しにかかるだろうし、スバルはスバルでヒステリーの言葉を無限再生するだろうし、フェイトさんととちびっ子二人は喧嘩腰か無視かの態度になるのは想像に難くないし………。
かといってあたしがなのはさんより下だと認めても、結局なのはさんは納得しないであたしに勝負を挑むのは目に見えてるし、そしてソレは多分天神先輩が第三部隊長補佐として止める筈だから、結果的になのはさんの不信が消えずに不機嫌だけが募って風当たりが強くなることになるのは簡単に想像が付く………。
つまりなのはさんを見限れば副隊長以外の前線部隊の全員と敵対状態になって、なのはさんより下だって認めても真綿で首を絞められ続ける毎日が待ち受けている…………。
…………………多分あたしは天神先輩に認められて上層部に顔を覚えられることになって出世コースに乗ったんだろうけど…………、その代償に天神先輩が役立たずと判断したスバル達との縁切りを強制させられるって……………、ホンッットに容赦無いわねっ。
……大方、公私の区別が出来ないスバル達との間に半端な縁が残ってると碌でもないことになると踏んでのことだろうけど……………、それをあたしにさせるのが本っっ……当に性格悪いわねっっっっ!!!
…………夢か情かのどっちかを選べって言ってるんじゃなくて、現状の認識と夢への道筋を見せた代わりにスバル達と縁を切って役に立てって言ってるのと同じじゃないっ!!!)
ティアナは既に自分がスバル達を見切ってでも夢へと大きく近づく道か、若しくは真綿で首を絞められる毎日を過ごしつつも見切りを付けずに出世街道から外れて夢から絶望的な程遠退く道かの、どちらか一つしか選べないと知り、頬を引き攣らせながらも速人を睨みつつ答えた
「………………少なくとも機動六課運営中に魔法自体の教導を行なわないと思われるなのは隊長に請うことは無いと判断しています。
………………体力向上は独学で可能ですし、ガジェットや一般的な犯罪者の枠に収まらない天神先輩のような存在を相手にする場合、幾ら指揮能力が向上しようと指揮下の者が戦闘に耐性が無ければ話にならないのは今回で痛感しましたから、現状で役にも立たない指揮能力の向上よりも個人技能を上昇させたいです」
「ならば私を倒すことだ。
今此の場を敗北せずに乗り切ることが出来ぬならば先程の話は流れ、そして実働部隊で孤立するというマイナス要素を生んだだけになるぞ」
「……あ”っ!……っ!!………っぅっぅっっっ!!!……………」
気力を振り絞ってスバル達を振り切る決断をしたティアナだったが、それに対する答えは負けずに模擬戦を乗り切れと云う、ティアナからすれば詐欺としか言えないモノで、歯を食い縛ることさえ隙になるので懸命に堪えつつもティアナは再度熟考を始める。
(性格悪過ぎな上に黒過ぎっっっ!!!
あそこまで人に厭な決断迫って気力を振り絞らせて答えを出させたってのに、その後に負けずに乗り切れ!!!?
なに?!好きな子は虐めたくなる心理?!それとも千尋の谷に突き落として這い上がらせようっての??!!そうじゃなければ単にSなの???!!!誰かを甚振るのが好きなだけ???!!!普段みんなから離れているのは自分の性癖を隠すためなの?!?!?!)
ティアナは我慢が限界近くになっている為思考が半ば暴走していたが、それでも速人から注意を逸らさず、幾分方向性が狂ってはいるものの更に熟考を続けた。
(ココで負ければ変態の魔の手からは逃れられるけど、代わりにスバル達から粘着質で悪質な厭がらせでしかない洗脳と調教が待っているし、かといって勝てば変態の手に落ちて慰み者になる!
しかも変態を倒すか相打ちに持ち込めば、〔非戦闘員で、しかも非魔導師を倒すことも出来ないママゴト部隊〕、っていう汚名を辛うじて回避して六課の評価が暴落することを免れるけれど、逆に相打ちすら出来ないなら六課の評価は大暴落するから、原因となったあたし達は対外処分を考えて窓際かクビ確定。
………前門の陵辱修行地獄に、後門のアイアンメイデンに幽閉コースって………、普通に考えて最悪じゃない!!!
栄光への陵辱コースと転落への生き地獄コースしかないなんて、いったいどこの三流エロゲーの展開よコレ!!!???
夢の為に身体を寄越せとか、普通にセクハラとパワハラじゃない!!!
しかも一言もそんなこと言ってないから今言っても白を切り通されるし、実際に行動に移す時はあたしの同意後だろうから訴えても普通に負けるしそれに以前に握り潰されるじゃない!!!)
思考が暴走気味ながらも強ち間違っていない推測をし、更にティアナは完全に事実無根の不名誉を速人へと着せ続け、速人もティアナの思考が若干見当違いの方向に向かっているのを表情等から推測していたが、倒すのではなく相打ち以上にすれば良いのに気づいた上に気概にも溢れていたので放置することにした。
結果、ティアナの暴走気味な思考は修正されずに続くことになった。
(いいわよ………上等じゃない…………乗ってやるわよ!!
ココで変態と相打ち以上に成れば六課の面目は辛うじて保たれるし、変態は魔法偏重主義者には分からない様に隙を見せて相打ちに持ち込める隙を曝すから負けても実力者の評価は変わらないし、あたしは大幅レベルアップと出世コースに乗れるんだから、万々歳じゃない!!
それに負ければ全員に迷惑がかかるし、スバル達から陰湿で粘着的で暴力的な嫌がらせを受けるだろうし、変態からは嫌がらせとストレス解消で変態的行為を変態的にされるんだから、悩む必要なんて微塵も無いわよ!!
…………それに………変態に堂々と一撃を食らわせられる機会なんてもう無いだろうから………………この機会に先の鬱憤も籠めた一撃を……あわよくば急所に叩き込んで去勢してやるわよ!!
……よし!女は度胸よ!!
やってやろうじゃない!!!)
速人への考察は殆ど見当違いなものの、それ以外は足りない要素は在るものの全て的中しており、ティアナとしても的中している自信は在ったが、逆にこれ以上は考えても無駄という結論が出たので、ティアナは速人が変態という認識を強めて反骨精神を滾らせつつ熟考を終えた。
そしてそれが話の終わりから約5秒で済ませる程の思考速度だった為、人生初の高速思考を怒りや恐れや恥を糧にして展開したティアナは知恵熱が出ていたが気合で捻じ伏せつつ、睨み付けていた視線を更に強くしながら口を開いた。
「たとえこの身が屈しようと、心までは屈しません!!」
ティアナがそう述べた瞬間、ティアナの発言を聞いていた者達の間に微妙な雰囲気が漂ったが、フェイトは然して雰囲気が読めない為にそれが分からず、速人とリインフォースは何か関係が薄い考え違いをしているだけなのだろうと流し、言った本人のティアナは思考が過剰加速に因る半暴走状態なので自分の発言の妖しさに気づいておらず、場が混沌と化しだした。
だが、流石に会話を続け過ぎた為、速人が、〔自分が勝てない戦いに負けた時の言い訳の為に手を抜いていた〕、と思われるのを避ける為、速人は今から終わる迄はティアナが一息吐けても一息吸えない程の速さで行動し続けることにした。
唐突に、速人は予備動作を殆ど拝して左に三歩分程水平跳躍してティアナの視線を振り切り、その儘ティアナの横を大きく離れて駆け抜けようとした。が、ティアナは右足と右手と右目が利きなので咄嗟に振り向いた方向に速人が居た為辛うじて補足出来た。
だが、速人がティアナに辛うじて補足される寸前、速人は両手両足を蛙の様に地面に着いており、補足された瞬間に四肢をバネの様に伸ばし、後方に跳躍すると見せかけてその実右足を軸にしてその場で1回転し、遠心力を付加しつつ速人はティアナへと疾走した。
対してティアナは速人が四肢を着いた段階で後ろに跳躍すると思い、視線を先読みした方向にずらしてしまっていたので、30度以下の体勢で急接近する速人を補足することが出来なかった。
結果、速人を見失ったティアナは呆気無く接近されることになるが、先読みを排して単純に近づいた時にのみ自動防御することにしていたクロスミラージュが急遽シールドを展開する。
だが、速人はそのシールドの縁の真上の部分に左手に握った撥をで殴り付けるのではなく叩き乗せ、其処を支点に縦回転しながらシールドごとティアナの頭上を飛び越え、更に着地する迄に横方向に身体を四半回転捻じった。
そして着地後速人は即座に右手を開いて撥を手放し、更にその直後に左手で右掌を殴る勢いも加算しつつ右肘打ちをティアナの左腎臓の上(心臓の裏側)にクロスミラージュの自動防御能力を超える速さで叩き込んだ。
一応手加減された為にティアナの心臓が破裂することはなかったが、一時的に心臓が衝撃で痙攣し、その上衝撃が左半身に炸裂した影響で左手に握ったクロスミラージュを落し、更に左膝から崩れていった。が、ティアナは辛うじて右足だけで前に跳躍し、そして確認する時間も惜しんだ為大凡の感覚で速人が居るだろう位置に右手に握ったクロスミラージュで弾幕を張るのを最優先し、速人をその場に縫い付けつつ何とか距離を離した。
だが、弾幕を張っている最中―――
「減点1だ。
引鉄を引くだけで体勢に関係無く一定値の攻撃が可能である以上、一定以上の迎撃及び回避能力を有した相手には対して拳銃は接近戦で使用すべき代物だ」
―――と、云う言葉を速人は紡ぎ、ティアナがある程度距離を離して息を吐き出している最中、先程手放した後に何時の間にか回収していた撥を速人はティアナ目掛けて投擲し、更にそれに追随する速度でティアナへと疾走していた。
息を吐いても吸う暇までは無かった為ティアナは幾分混乱していたが、それでも今までの観察や体験から足を止めていては速人の攻撃を捌けないと判断し、速人が投擲動作を見せ始めた辺りから左腕を前に突き出して盾代わりにし、左腕を犠牲にしながらでも接近しての超至近距離から乱射して速人を仕留めると決めた。
そして超至近距離から威力を犠牲にしてでも弾速と連射を極限まで高めた乱射を行なう為、ティアナはクロスミラージュが自動防御を展開することで乱射の邪魔になることを恐れ、自動防御を発動させぬように念話で指示しようとしたがそんな時間は無いと即座に理解し、クロスミラージュの判断に賭けることにした。
だが、クロスミラージュがティアナの思考を推測して自動防御を展開せず、ティアナは思惑通り腕一本を捨てて勝とうとしたが、撥が銃弾のように回転し且つ推進力を99%以上対象に伝播させる(対象が投擲物より重く且つ対象の速度が投擲速度の半分未満の場合限定)鉄甲作用を付加されて投擲された為、宛ら大砲の砲弾が直撃したかの如くティアナを弾き飛ばされた。
更に推進力を殆ど失って地面に落ちていく撥を、速人は疾走しながら左手に握った撥でティアナ目掛けて打ち放ちつつ追走してきた。
対して弾き飛ばされているティアナは、人間が投擲した物を受けて弾き飛ばされるとは思っていなかった為驚愕と混乱が入り混じっており、更にそれが原因で集中を切ってしまった為発動準備をしていた魔法が初期化されてしまった。
その上再び撥がティアナ目掛けて飛来しており、当然その後ろには追走する速人もおり、自身が宙を舞っている事以外は先程の焼き直しの状態だとティアナは気付いた。
そしてティアナは打ち放たれた撥に先程と同じ様な特殊効果が有るかどうかを考えたが(単純な威力で弾き飛ばされていれば自分は死んでいると判断した)、瞬時に予測不可能と答えを出したが、それ以上を考える前に打ち放たれた撥が重心から下の位置の腹部に命中し、先程と違い特殊効果は無かったとはいえ速度と重量の関係で運動活力が高い為、踏ん張りが効かない空中にいるティアナはそのまま縦に回転してしまい、着地寸前にそのようなことになったティアナは当然頭から地面に着くことになった。
更にティアナに追いついた速人はティアナの右腕を自分の右手で捻りながら掴み上げ、強引に半回転させて足から着地させるようにしながらもクロスミラージュを手放させた(着地させられたティアナの右腕は後ろに回された状態で間接を極められている)。
「減点2だ。
思考が迎撃に間に合わぬならば、経験や直感と呼ばれるモノで即座に判断及び対処せよ」
「……っっぅぅっっっ…………」
そう言って速人は呻き声を上げるティアナを前に5メートル程蹴り飛ばし、その後足元のクロスミラージュをティアナの10m程後ろに大きく弧を描く様に蹴り飛ばした。
「減点3だ。
カートリッジシステムを搭載しているならば、先程は遠隔自爆に因る攻撃を行なうべきだ」
辛うじて地面を滑りながらも着地し、ティアナは即座に蹴り飛ばされたクロスミラージュに向かって疾走する。が、その瞬間背後からティアナの頭頂部の髪を掴んだ速人が、ティアナの髪を握った拳を屈みながら地面に向かって振り下ろした。
結果、ティアナは首を痛めながら後頭部を地面に叩き付けられた。
「減点4だ。
視認せずに背後の対応が出来ず且つ相手よりも速度に劣るならば、背を曝して疾走するべきではない」
「…………………」
脳が揺さぶられた為声も出せないティアナだったが、速人は構わずにティアナの身体をクロスミラージュの位置まで掬う様に蹴り飛ばした。
眼前にクロスミラージュが在る位置まで蹴り飛ばされたティアナは、どうすれば良いかも分からない儘にクロスミラージュを素早く握りつつ飛び起きた。
そして朦朧とする思考ながらも今までの戦い方で戦えば確実に負けると結論を出したティアナは、これ以上身体を壊し且つ体力が減る前に、碌にやったことが無い接近戦を挑むことにした。
ティアナは心身共に追い詰められている現状に耐え切れず選択した行動ではなく、玉砕覚悟や破れかぶれという気持ちも少なからず混じってはいるものの、現状で自身が勝てる可能性が他に思い当たらなかった為選択したのであり、ティアナは自棄にもならず且つ諦めてもいなかったが、諦める間も無い程の速さと苛烈さで攻め立てられている為に諦める暇が無いということも一つの要因であり、1〜3回落ち着いて呼吸をすればそれだけで自分の心が折れるのをティアナは自覚していた為、呼吸も整えず、クロスミラージュを両手で構えて乱射しながら速人へと疾走した。
疾走しながら乱射しているので銃身と射撃間隔が安定せず、結果的に弾道予測が困難になっていたので普通ならば自分まで動けば迎撃は更に困難になるので足を止めてその場で迎撃しつつカウンターを狙うのが定石であるが、速人は敢えてティアナに疾走しながら迎撃し続けた。
速人は又もやティアナが気付かない内に回収した撥も用い、並外れた達人であろうとも大きく回避するか盾に類する物で防御するような攻撃を迎撃若しくは最小限の動きで回避しつつティアナへと疾走し、ティアナも速人へと疾走しているので、1秒未満で1歩半踏み込めば頭突きが可能な距離になった。
そしてその間合になった時、ティアナはクロスミラージュを右手で握り潰す気概で握りつつ、左から右に弧を描く様にしながら銃把を速人へと振るった。
だが、そんな予測し易い大降りの一撃は呆気無く弾かれ、更にがら空きの胴には自動防御を展開させる為の一撃が繰り出され、最後にティアナが盾代わりに構えた左腕ごと頭部に気絶する一撃が繰り出される。筈だった。
しかしティアナは大降りの一撃を弾かれる瞬間に自身と速人を分断するシールドを展開し、更に展開されたシールドに右腕を叩き付ける反動で強引に方向転換し、しかも強引に方向転換する直前にクロスミラージュを手放しつつもシールドを消し、予定通り籠めていた魔力の制御を放棄して意図的に暴発させた。
非殺傷設定を使う為に籠めていた魔力と謂えども制御を放棄されて暴発し、その上暴発した際にクロスミラージュの構造材が爆散した為、至近距離にいたティアナと速人は少なからず傷を負い、更に右腕で自分の進行方向を強引に変更した為地面を確り踏み締めていなかったティアナは暴発した魔力に吹き飛ばされた。が、その方向はもう一つのクラスミラージュの方向であり、吹き飛ばされた勢いを殺さずに何とかもう一つのクラスミラージュへと疾走した。
対して速人は暴発する寸前に両腕を眼前で縦に並べて喉と眼球を防御し(心臓は暴発の規模の予測と衣服の耐久性から不要と判断した)、手の甲と耳と側頭部に浅くはない傷を負ったが、重要血管が損傷したわけではなかったので致命傷にはならず、暴発が終わるのとほぼ同時に即座に右手に握った撥をティアナに投擲した。
だが、投擲された撥はティアナの背中に当たって転倒はさせたものの、ティアナは転倒しつつも辛うじて前に身を投げ出しながらクロスミラージュを手中に収めた。
そして突進してくる速人に向かってティアナは再度突進しようとしたが、背中を痛めた為最早満足に動けないと悟ってその場で速人を待ち構えつつ、クロスミラージュに装填されているカートリッジを2発使用し、速人が後4歩で撥の間合にティアナを捉えられる程近づいた時、更に1発カートリッジを使用した。
ティアナはカートリッジで増幅した魔力を広範囲に術式無しの無制御で撒き散らす、若しくはそれすらも出来ぬならば更にカートリッジを使用してクロスミラージュ諸共自爆して最低でも相打ちする事を狙っており、対して速人は敢えてティアナの作戦に付き合う為に距離を取って自滅を待つ事をせず、ティアナが無制御で魔力を広範囲に放出する若しくは自爆する前にクロスミラージュを破壊する若しくはティアナを叩き飛ばして被害を最小限に抑える選択を採った。
そして、速人が後2歩でティアナを間合に捉えられる程近づいた時、速人はほぼ真上から高速で接近してくる物体に気付き、右腕の軌道を筋と関節を痛めながらも強引に真上に撥を投擲するように変更し、それとほぼ同時に突如転移して現れたリインフォースが―――
「そこまで!」
―――と、告げる。が、そう言われたからといって直ぐに止まれる訳は無く、しかも告げ終わる前に両者は攻撃を始めており、速人は上空に撥を投擲しており、ティアナは暴走若しくは自爆させる為に自身の制御能力を超えた魔力をカートリッジから引き出していたので、気付いても止めることが出来ずに暴走させてしまっていた。
だが、リインフォースは投擲された撥は上空から接近してきていたフェイトと傍に居るシグナムに対応を任せた為対処しなかったが、ティアナの魔力暴走は瞬時に持続時間を無視した超高濃度AMFを展開することで周囲への被害をほぼゼロに抑え、突進していた速人自身に関しては下手にその場を動かず、速人が回避することに任せ、そして速人はリインフォースの考え通り、リインフォースの肩に撥を手放した左手を添える様に乗せ、そして其処を軸にしてリインフォーとティアナを空中で前転するように飛び越えた。
速人が着地し、ティアナが全力の一撃を霧散させられた為覚束ない足でリインフォースを見た時、リインフォースは口を開いた。
「部隊長代行権限で此れより模擬戦を強制終了する。
決定は覆さずに遂行予定だが、疑問が在るならば発言を許可するので述べよ」
そう述べて速人とティアナをリインフォースは見遣り、速人は疑問が無い為なのか発言する気がまるで無いのが見て取れたが、ティアナは納得のいかない顔をしているものの脱力感から質問する気力が無いと見て取れたので、リインフォースは敢闘賞代わりにティアナの疑問に答えることにした。
「………普段ならば世話を焼くつもりは無いが、今回は模擬戦後の疲労を考慮し、更に敢闘賞代わりに此方がある程度お前が抱いている疑問の答えを告げよう。
先ず、強制終了させた理由だが、勝敗に拘らず両者少なからず負傷して今後の職務に差し障ると判断した為だ。
そして続行させて得られるモノとその後職務に支障を来たすことの損益を比較し、続行させる不利益を回避したまでだ。
尚、天神三士のみの負傷を不利益と判断したのではなく、ランスター二士の負傷も不利益と判断したのだ。
そうでなければ非戦闘員の為腕が欠損する程の怪我を負わぬ限り天神三士は職務に然して支障を来たさぬので、模擬戦を続行させて致命傷を負おうとも職務に然して支障が無い以上続行させていた。
つまり…………、ランスター二士………、お前は良くやったということだ」
極微かに微笑んでティアナを誉めるリインフォースだったが、直ぐに普段の怜悧さと無感情さの中間と呼べる表情に戻りながら更に続けた。
「模擬戦を視聴している方方についてのことならば心配は不要だ。
引き分けでもない強制終了で決着が流れたとは云え、過程で十分意義を果たしている。
勝敗の結果でのみしか物事を図れぬ程此の模擬戦を承認したレジアス中将は愚かでも狭量でもない。
今回の模擬戦を誉れとしつつ身体を休め、後日下される辞令を心待ちにしているといい」
そう述べてリインフォースはティアナから視線を切り、そして両者に改めて告げた。
「模擬戦は現時刻を以って強制終了だ。
模擬戦参加者は既に勤務終了としているが、出向している者として恥ずかしくない振る舞いをするように。
但しランスター二士は事後処理に関わらず直ちに簡易診察を受け、後に六課にて治療を受けよ。
又、明明後日18時に部隊長室にて辞令と説明を行なう迄は心身の回復に努めよ。
尚、休暇ではなく勤務として扱われる以上買出し等は兎も角、公衆の面前での娯楽及び遊戯等は禁じられる。
その旨留意する様に」
そう告げるとリインフォースは放置しているなのはを六課に移送する為にその場を離れ、次いで速人も撥を回収した後シャワーで汚れを流して地上本部に向かう為その場を後にした。
そして一人その場に取り残される容になったティアナは、高速思考の反動で意識が朦朧とし、更にリインフォースに告げられた言葉を上手く呑み込めていなかった為思考が処理落ち状態になっていたが、リインフォースと速人がその場を後にして3秒もせずに呆然とした表情と虚ろな目をしつつも何時までも呆けているという痴態を曝さぬ為、覚束ない足取りながらも立ち止まることなく医務官の待機している場所目指して歩き出した。
尚、速人とティアナの間に割り込む筈だったフェイトとシグナムは、フェイトが速人の撥を肝臓に受けた直後に半ば気絶(朧気な状態)してしまった為、シグナムはフェイトを欠いた状態で両者の戦闘を止めようとすれば被害が拡大すると判断した為、待機していたリインフォースへ即座に念話で自分達では止められないと伝え、現在両者は回収されたスバル達の居る場所へと移動していた(フェイトはシグナムに抱えられながら)。
――― とある訓練場 ―――
―――地上本部中将執務室―――
「…………とんだ茶番………と言うべきでしょうか?」
リインフォースが模擬戦終了を告げ、特に空間モニターを点けている意味も無いと判断したレジアスが空間モニターを消した直後、オーリスは僅かに苦笑しながらそう告げ、レジアスはオーリスが苦笑している姿は珍しくも愛らしいとしみじみと思いながらも表情には出さず答える。
「茶番なのは間違いないが、模擬戦を見ていた本局の連中達にあれほど自分達が送り込んだ者の醜態を曝させた挙句、魔法至上主義者達としては非魔導師があそこまで見事に立ち回るという認められない現実を突き付け、その上それが非戦闘員の三等陸士に仕組まれたモノだと気付いた者達もいるのを考えると、これ以上無い程愉快で有意義な茶番だ」
この後なのはに下される処分と、それを不承不承ながらも認めざるを得ない本局上層部の事を思い、レジアスは厳つい顔ながらも爽やかな雰囲気を纏うという、オーリスが笑いを堪えているのを表情に出さないように尽力せねばならない笑顔と雰囲気だった。
そしてオーリスが笑いを堪える為に尽力していることに気付かずにレジアスは更に続ける。
「まあ、茶番とはいえ、見た価値は十分に在った。
本局の馬鹿達が押し付けた邪魔者が小僧と小娘を捻じ込んだと聞いて時には腹を立てたが、まさかあんな逸材とも呼べる原石が隠れているとは思わなかった。
ランスターとかいう娘、………あれは一般任務では目立たぬだろうが、過酷な任務では単独でも指揮官でも十二分に活躍出来るだろう。
……何より、これからの虐待や拷問級の訓練を耐え抜けば暗部での働きも期待出来る以上、経験を積ませれば特殊情報部や特殊諜報部の室長にも成れる事を考えれば、儂の負担も随分と減る。
そう考えると今回の茶番で折角の原石を、〔チームワークだ。助け合いだ。守るための力だ〕、等と小娘が整形して金メッキを張る事を防げたのは本当に有意義だったな」
「………教導官である高町一尉には、ランスター二士を育てる能力が無いということですか?」
「魔法偏重主義者に出来るのは魔法という宝石の原石を磨き上げることくらいだ。
金属の原石を精錬し、一振りの刀や槍に鍛え上げることなど出来るはずもない。
そして、鍛え上げられた一振りの武器は宝石など容易く破壊出来る。
更に、宝石は人を魅せるだけだが、鍛え上げられた武器は人を惹き付け、そしてそれを十全に振るう者の下には多くの者が集う」
それを聞いたオーリスは、特になのはが無能なのではなく、単に魔法偏重主義者全員に言えることなのだと理解し、管理局にどれだけ資質を鍛え上げられる人物がいるか不安になった。
だがオーリスは何故か急にレジアスが速人を宝石と武器のどちらと解釈しているのか気になったが、無駄な質問だと思って質問を止めようとしたが、気付けばオーリスの口から疑問の声が滑り出ていた。
「父さんは彼を宝石と武器のどっちと思ってるんですか?」
「む?儂か?
…………………………そうだな………………、宝石で無いのは確かだが………………武器と言うには余りにも殺伐としすぎているからな………………、強いて言うならば…………断頭刃か絞首用の縄か十字架といったところだな」
「………十字架は武器ではないのでは?」
「貼り付けにする処刑器具らしいぞ。詳しくは知らんがな。
まぁようするにだ。武器が機能美故に人を惹き付けるが、先に述べたのは殺害以外の用途が無い為、機能美を全く感じられないという事だ」
「……………組織としては使い難いことこの上ないですね」
「あくまで喩えだ。
一つのことをする為だけの機能であり、そしてその一つの為に在る。
そんな点が似ているからそう喩えただけだ」
そう言いながらレジアスは手元を動かして一つの資格を発行するように指示していた。
そしてそれをオーリスが僅かに気にした表情を見せたが、上官の仕事内容を無闇に尋ねるものではないと判断し、何時も通り気に止めず流すことにした。
とりあえず雑談が終わった事が雰囲気で理解したオーリスは、先程よりも気持ち硬めな表情でレジアスに告げた。
「50分以内に休暇中の個人として天神速人氏が到着しますが、応接室に御通しますか?」
「いや、此処に通せ。
そしてその際、盗撮及び盗聴の対策レベルを最大まで引き上げろ。
後、緊急通信も含めた全ての通信は此方のみが任意で繋げられる状態にしておけ」
レジアスがそう告げた後オーリスは了解の意を返し、その後は速人が到着したという知らせが入るまでの間二人の間に会話は無く、通信相手との遣り取りという事務的な声だけを二人は発していた。
―――地上本部中将執務室―――
―――機動六課発令所―――
《あ、コっからココまでは日付変更前までに向こうに届いてないとあかん書類で、一応機密書類で配送員は使えんから自分で運ぶか許可貰って人員の都合つけてな?
そんで今回の模擬戦の為に一時出向してもらった人達の人事を戻す作業が明日の16時までや。
これが本局から高町教導官が処理するようにって頼まれてる分の内で急ぎの用件や。
後、地上本部から本局承認済の用件もレイジングハートに転送されるらしいから、後で目を通してな。
それと、どう考えてもこの仕事と並行して六課の業務は出来んやろから、10日間の有給は既に受理されとるから、六課の業務は有給明けに処理するといいで。
っちゅうか、非常時でも無いのに六課に来ても仕事割り振れんから、六課に来るだけ時間の無駄やで?
あ、それと本局と地上本部からの用件に関する連絡先は教導隊の上司になっとるから、六課関係者に連絡せんように注意してな?
因みに、[非魔導師の天神三等陸士が10倍以上の仕事を完璧に片付けているのだから、優秀な魔導師でマルチタスクを行使出来る高町教導官ならば容易かろう]、って言うてたから、泣き言は多分時間の無駄やで。
後、本局からのは一応罰則って事になっとるみたいやから、誰かに手伝ってもらうことは出来んし、地上本部からのも内容は知らんけど多分機密保持があるやろうから手伝ってもらえんと思うで?
あ、機密を知っても大丈夫そうな私はこれから20時間程熟睡するから、私を当てにせんでな?
それに1週間で8時間も寝とらんからそろそろ気絶しそうやし、もし緊急事態以外で寝るのを邪魔されたら、怒りの儘に職権を利用してリンチする気満々やから、連絡する時は気をつけてな?
……………くれぐれも、自分の緊急事態で連絡せんようにな?
それじゃあ、もう私は上がらせてもらうで。
……それからロングアーチのみんなが起きる前に別の所に行った方がいいで?
多分、ある程度寝て回復したら、文句と怨嗟の中間を声か視線を浴びせられまくるで?》
静かな室内の空間モニターに再生される、若干目元が窪んで少少痩せた感じのするはやてから次次と齎される、虐めなのか報いなのか分からない要件を告げられ、暫しなのはは呆然としていた。
―――
既に此の場に居るロングアーチの殆どはなのはが来た瞬間に机に突っ伏しながら気絶と睡眠の中間状態に移行し、氷水か熱湯でも浴びせなければ起きそうにもなかった。
そしてその例から漏れたグリフィスはなのはを見た瞬間立ち上がって決めポーズをしつつ、[激務は終わりだ!!!]、と叫んだ直後、机の縁に頭をぶつけながら崩れ落ち、ツヴァイはリインフォースを発見すると作業を中断して蛇行飛行しつつも何とかリインフォースの胸に殆ど墜落気味に飛び込み、[残りはホテルでお兄さまを待ちながらしますので、着いたら起こしてくださいですぅ………]、と、呟いた直後、熟睡と昏睡の中間の様な眠りへと気絶気味に移行した。
尚、はやては報告等で既に六課を後にしており、リインフォースが六課に来る前から既に居らず、要件は記録してあるので再生してくれとだけリインフォースははやてから連絡を受けていた。
又、その際に目元の窪み等を覚束ない手で何とか隠しているのから察するに(化粧ではなく特殊メイク用の絵の具で隠している)、自身より上の階級の者達へ報告しに行ったのだとリインフォースは推測しており、はやてが休めるのは3時間は先になりそうだと思い、ツヴァイが寝ている間にツヴァイの分と一緒にはやての分の残務も処理するよう予定を立て、掌で静か過ぎる寝息を立てるツヴァイをはやてがツヴァイの移動用寝所にしている鞄の中に移し、それから鞄を肩から掛けてその場を離れていった。
因みに夜番の者達は面倒事に巻き込まれない為(寝ているのを起こすのも酷だという思いも少なからず在るが)、かなり前に現れて引継ぎ内容の確認を済ませ、現在は予備の発令所で時間になれば電流が流れる目覚ましをセットしつつ全員熟睡していた(感電目覚ましは速人作)。
―――
そして自分以外の他の者達が行動不能になっている中、なのはは自分の事務能力では本日中の分だけでも最短でも2週間は終わらないと思い、〔明らかに無茶だと分かる以上、上も期限までに提出可能と思っていないのだから、特に遅れる旨の連絡も入れずに急いで取り組めば問題無し〕、と、判断し、文句を言われたら無茶な命令に対して逆に文句を言うつもりで肩を怒らせながら近場の空いている机に向かった。
後日、本局上層部は形式上責任を取らせるという事で事後処理の書類を無茶な猶予時間でなのはに処理するよう命令していたので、猶予時間を過ぎていたので一応軽度の叱責をする事で体裁をとっていたが、叱責と苦情と文句の区別がつかないなのはは文句と受け取ってしまったので見当違いの文句を大量に吐きまくり、更にその一部始終を特殊監査官資格保持者として速人が直接上に報告し、後日レジアスに交渉材料として利用されることとなった。
そして当然密告に近い事をした速人になのはは見当外れな文句を述べたが、正統な権限の許の行動で在る以上なのはの主張は全く相手にされず、業を煮やしたなのはは何時ぞやかのティアナに対して行なった粛清を速人に行なおうと速人を拘束して訓練室へ拉致しようとしたが、速人は特殊監査官保持者として反撃し、更になのはがBJを纏っていなかった為一撃で沈黙させてしまい、内外に波乱の種をばら撒く結果となってしまった。
―――機動六課発令所―――
――― 地上本部最寄りの最高級ホテルの玄関口 ―――
「あぁうぅ〜〜〜…………」
悲哀感を声と全身に滲ませ、更には俯いて肩を落しつつもツヴァイはチェックアウトの手続きをする速人を眺めていた。
「あ〜〜うぅぅぅ〜〜〜〜〜……………」
後悔が声と全身から溢れかえって場の雰囲気を暗くしているツヴァイに、リインフォースが苦笑気味に声を掛ける。
「寝過ごしたとはいえ未だ時間は在るのだ。
そろそろ立ち直ってくれ」
「あうぅぅ………、でもでも、寝過ごしてツヴァイの分の仕事を殆どやってもらってしまったですぅ…………」
速人とホテルとで合流しても目を覚まさずに寝ていた自分を責めて落ち込み続けるツヴァイ(リインフォースがツヴァイに気を使って起きないと思われるレベルで何度か声を掛け、当然起きなかった為速人と二人でツヴァイの分を勝手に処理したので、ツヴァイに落ち度は無い)。
そして落ち込んだ儘爆弾発言を垂れ流し始める。
「ぁうぅ〜〜〜〜……………、せっかくお兄さまとお姉様と一緒にマッタリ残業して楽しい時間を堪能して、その後一緒にお風呂に入った後適当な理由でしばらく部屋から出ている間にお風呂上りで色気むんむんのお姉様とお兄さまが遂に身体も結ばれて、その後戻ったツヴァイが現場を見てツヴァイも混ぜてもらって幸せな家庭を築く計画がぁ〜〜〜……………」
就業年齢規制が事実上無い為、成人と子供の線引きが極めて曖昧で、更に多くの世界との交流があるミッドチルダだが、流石に見た目16前後の男(女性寄りの中性さだが服装から男と推測)と見た目16前後と10前後の姉妹のカップルは珍しいのか、様様な視線がリインフォース達に集中していた。
しかし、当然速人はそんな視線は気にも留めない為何も対処しないが、リインフォースはそうではない為、急いで対処し始めた。
「頼むから在らぬ誤解を振り撒く発言は止めてくれ。
私達の関係はそんなモノじゃないと何度も話しただろ?」
「いえ、いくらお姉さまの言うことでも納得しないです。
ツヴァイが一緒だからといって一緒にお風呂に入ったり一緒に寝たりするなんて、恋人や夫婦でないと出来ないです。
それにお姉さまはザフィーラと一緒に入るのは嫌がりますし、お兄さまははやてちゃん達と入るのを嫌がりますから、きちんと男女の距離感を認識してるです。
なら、お互い全然平気なお兄さまとお姉さまは気付かない間に恋仲ってことになるです」
「あ…………う……………」
窘めるつもりが理路整然と反論され、逃げ道を封鎖されて焦るリインフォース。
そして話しているうちに熱を取り戻してきたツヴァイは力強く更に主張しだす。
「そうです。お姉さまとお兄さまは既に恋仲………いえ、事実婚です!
以前旅行先で雨に降られてびしょ濡れになった時、ホテルのつもりで入ったラブホテルで服が乾くまでお風呂に入って裸で一緒に寝ました!
そしてその時、お兄さまもお姉さまも全然恥ずかしがっていなかったことを考えると、すでに長年連れ添った夫婦も同然です!
だけど………、お姉さまもお兄さまも恋も知らずにお互い愛し合ってるから落ち着きすぎです!
少しは自分だけじゃなく、相手も焦がす恋の炎を灯すです!!
枯れた愛じゃ相手に自分を伝えられないですし、自分を高められないです!!!
自分を高めて相手も高まれば、お互いもっと相手が好きになるです!
そうすれば更にお互い高まって、もっともっと相手が好きになるです!!
そしてそれを繰り返せばずっと相手を好きになり続けられますし、ずっと幸せです!!!」
熱く語るツヴァイの台詞に感動したのか、周囲の客や従業員から拍手が巻き起こる。
そしてそれに押される様にツヴァイは更に爆弾発言を続ける。
「ですから!今から何処かのラブホテルに行くです!
そしてお互い相手以外視界に入らないほど激しく且つ優しく交わるです!!
大丈夫です!お姉さまは管理局じゃ一尉ですし、お兄さまは三佐相当権限持ちですから、社会的に問題は微塵も無いです!
それに倫理や法律も多数の文化と交流するミッドチルダでは一夫多妻や幼年結婚は全然問題無いですから、ツヴァイが加わっても大丈夫です!!
あ!キチンとお兄さまとお姉さまのの初めての時は気を利かせて外にいるですから、恥ずかしがらなくても大丈夫です!
でもでも!ツヴァイは出来たら―――」
「先に外で待っている!」
「―――初めう゛っ!?」
ツヴァイの口を手で塞ぎ、お姫様抱っこをしながらリインフォースを外へと駆けていった。
その後1分もせず、此れからの事を考えて長期契約をしていた速人が、従業員達と客達の視線を集めながら脱力しているリインフォースと燃え上がっているツヴァイの許に着き、遠くから見たら微笑ましいとも妬ましいとも取れる会話をしつつ、歩いてホテルの敷地内から去っていった。
使用に際して非常識な金額を要求するホテルであるので、客の情報は強制捜査されぬ限り従業員全員が秘匿する事を徹底されており、更に客にも同様の事が不文律として存在しているので、この話が外部に洩れることは無かった。
尤も、ツヴァイが自発的に洩らすので、然して意味は無かったのだった。
――― 地上本部最寄りの最高級ホテルの玄関口 ―――
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とある可能性編 二つめ:とある騒動 其の陸――――了
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【後書】
……………えー………………脈絡無くぶっちゃけますが、主人公無双はそんなに好きではありません。
寧ろ主人公は甚振られて弄ばれて掌返された挙句に人も物も残らなくて何ぼと思っています(←嗜虐趣味ではなく、主人公は逆境でこそ輝くと思っているだけです)。
尤も、厳密には無双ではなく、単に速人は基本的に敗北する戦闘は行なわないだけなので、速人が戦う以上は殆どの場合は勝利が前提になってしまうだけですけどね。
……まぁ、勝敗基準が戦闘結果ではないということが、辛うじて面白みを残す要因ですけど、それでも出来レースっぽくて作者は速人の戦闘は然して好きじゃなかったりします。
………って、オリジナル主人公の戦闘描写が然して好きじゃないって、SS作家失格ですね。
実は作者、初期構想において速人は某ブギーポップの逆ヴァージョン、つまり、〔物語のクライマックスまでは活躍しても、クライマックスでは登場しない〕、って扱いにする筈だったんですが、本編もIF編も何処をどう間違ったのか、そんな初期構想は完全に瓦解してしまいました。
………守護騎士顕現や蒐集拒否の時に速人が居ないのがその名残です。
毎度ながら更新速度は不定期の上に遅く、話の展開も遅い上に捏造設定やオリジナル展開が多い為に暴走しているSSです、掲載して感想を頂ける管理人様と御読み下さった方に沢山の感謝を申し上げます。
それと毎回のことながら、作中補足はかなり鬱陶しい内容なので、作中で特に疑問に思ったことが無い方は読まれない方が宜しいかと。
特に、原作の世界観や人物達を好まれている方方は御覧になられないことを推奨します。
● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○
【作中補足】
● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○
【部隊長補佐達と副部隊長の役割】
以前在る程度補足した上に今回の話でも描写がありましたが、要約すると文字通り部隊長の補佐です。
速人が就いている第三部隊長補佐は、厳格なまでの中立性を示して部隊内のあらゆる派閥への抑止力であり、オリジナル設定の内部監査機関の特殊監査官の資格を保有しているので、部隊長の命を受けずとも独自の権限の下に拘束若しくは捕縛及びその為の人員の一時挑発が可能なので、最悪の場合は速人が勝手にやったという言い分が十分に成り立ち、速人に非難が集中することで部隊長の人望の低下を最小限に抑える事を可能としています。
しかも三等陸士という最下位階級なので、有事の際に除隊若しくは更迭することも容易であるので、機動六課に所属している間は速人の意思とは無関係に昇進はありません。
要するに部隊内に大規模な不和が満ちた時及び大規模な不祥事を起こした時、若しくは押し付けられた際の生贄が役割です。
そしていざという時に生贄として憎悪され且つ責任を擦り付け易くする為、速人は極力六課隊員と個人的交流を避け、〔何を考えているか分からない〕、や、〔融通の効かない厄介者〕、と、印象付けています。
ですので、部隊長室という隔離空間でもない限りはほぼ公人としてのみ振舞っており、休暇中は当然六課隊員との接触は可能な限り回避しています(弁当イベントはヴィータの気力回復等が理由で、例外的なものです)。
ぶっちゃけ、機動六課で一番碌でもない役割です。
ツヴァイが就いている第二部隊長補佐は、大多数に好感を抱かれる容姿と性格を以って部隊長とそれ以外の存在を繋ぐ為の架け橋であり、本来は部隊長の耳に入らない意見を部隊長に届け、更に現場に部隊長の思惑を十分に浸透させることが役割です。
故にはやての傍に居る頻度は少なく、実は速人と大して変わらない程部隊長室には居ません。
尚、ツヴァイ本人は自身の職に課せられた役割を自覚はしており、いざという時に速人を切り捨てることも実行には移せますが、それでも普段から速人を悪く言われることは我慢出来ず、幾度も速人の弁護をしており、ある意味第三部隊長補佐への妨害行為と成っていますが、無責任な陰口を許さないその態度がツヴァイの人気を底上げしているので、結果的に≒±0なので部隊長陣から苦情はありません(進言は在りますが)。
何気に機動六課で一番社交性が強い役割です。
因みに原作と違い陸曹長です。
リインフォースが就いている第一部隊長補佐は、部隊長陣(部隊長と副部隊長と第一及び第二及び第三部隊長補佐)の維持という単純明快なモノで、普段は部隊長の傍で補佐をしていますが、部隊長陣の維持に支障を来たす可能性が在る場合は速やかに事態の解決に当たります。
そしてその一環として矢鱈と不満の矢面に立つ第三部隊長補佐を、規律と客観性を示しつつ庇っています。尚、第三部隊長補佐の職務をある意味妨害していますが、無闇に第三部隊長補佐を失う事を防ぐ為に必要な措置なので部隊長陣から苦情はありません。
第三部隊長補佐と並んで職務の範囲が不明瞭ですが、基本的に部隊長の傍に居る若しくは代理として出張することが多く、他の者の職務に割り込む際には大抵の場合は事前(間に合わなければ事後)に部隊長から連絡が入った上で修羅場に成り掛けている事態を沈静化するので、第三部隊長補佐と違って内部の不満の矢面に立つ事は基本的に在り得ません。
一見楽な仕事に思われますが、出張先でのセクシャルハラスメントとパワーハラスメントが原因で、機動六課で一番精神的疲労を伴っています。
特になのはの暴走による被害や苦情による精神的疲労は、人間ならば胃に孔が多数発生して内蔵の大半を溶かし且つ完全な禿頭になっている程です(時空管理局入局前からなのはは速人に突っかかっては問題を起こし、その度に速人とリインフォースが事後処理をしていますので、高町家−1名の方達は速人とリインフォースに頭が上がりません)。
尚、部隊長陣は全員陸所属で、緊急時に海や空の者が実験を握る事を防いでいます。
グリフィスが就いている副部隊長は、部隊長からの命令を自身の裁量で他の六課人員に割り振り(指揮系統が違うので部隊長補佐達には部隊長の代行権限を有さない限り越権行為ですが)、更に部隊長に報告する情報選別が役割です。
一番普通の職務で、役職上部隊長と部隊長補佐達以外には命令可能ではありますが、階級が全員上な隊長陣4名及び医務官は派遣されている為扱いが難しかったりします。
更に命令や局規を犯す存在を発見した場合は速やかに叱責し、場合に因っては拘束若しくは一時更迭した後に部隊長に報告を行わなければなりませんが、六課隊員の職務意識の低さが原因で報告のみになってしまうことが多いです(グリフィスにアリサの万人向けや速人の特定者向け級の求心力があればソコは解決しますが、その場合部隊長が軽んじられる可能性が極めて高いので、この場合問題点は大多数の六課隊員の職務意識の低さが原因となっています)。
原作とは違い、予言そのものが大幅に異なっている為、グリフィスにも予言と六課設立の目的と意義は最低限伝えられており、事態を理解して関わっている者の一名です。
尤も、明らさまに職務意識の低いフォワード陣と両隊長が原因で六課の職務意識もそれに引き摺られるように低くなっており、その煽りを速人と共に最も食った為に職務を果たせず、グリフィスははやて達にかなり引け目を感じていますが、[能力に問題が無いにも拘らず問題が発生するのは管理側の責任ですので、気に病んで能力を低下させぬよう励むべきでしょう]、と、速人が述べた為、無闇に負い目を感じずに職務をこなせるだけこなしつつ日日を送っています(グリフィスと速人に個人的交流は在りませんが公人としてならば多く、そして公人のグリフィスとしては公人の速人に全幅の信頼を置いています)。
機動六課の局員模範の筆頭であり、本来ならば文句無しのエリートなのですが、三等陸士なのに三佐相当権限持ちの上にある意味局員の究極系の容である速人が居る為非常に影が薄く、エリートとしての壁を殆ど感じさせない為、殆どの者から気軽に親しまれており、更に仕事に四苦八苦する苦労性の姿が食堂の調理師や給仕の面面に非常に気に入られており、職務は処理越えに苛まれていますが職場に愛着を持っているので、日日生気に溢れている優秀な副部隊長です。
まぁ、第一部隊長補佐は部隊長陣の維持、第二部隊長補佐は隊員と部隊長の関係向上、第三部隊長補佐は部隊長の身代わり、副部隊長は部隊長と隊員の仕事の調整、と思って頂ければ分かりやすいかと。
…………普通は此の4名が所属していれば何一つ問題無く部隊を運営及び維持出来そうですが、如何せん隊長陣(特に両隊長)とその知り合いが、対外勢力抑止力及び治安維持関係の組織に所属しているとは思えないレベルでの問題行動を起こすので、辛うじて運営及び維持できている感じです。
ぶっちゃけた話、原作では他所の管轄に強権的に出向しているにも拘らず態度はでかいし礼節はなっていないし管轄の最高責任者を堂堂と非難するわと、自分で自分の首を鋸で切り落とそうとするかのような愚行のオンパレードです。
しかも地上と本局の仲が悪いと知っているにも拘らず、強権で出向した教導官風情が陸の魔導師を粛清した挙句謝罪せずに部隊内で揉み消す。
……査察に来たオーリスがこの事を知ったら、粛清したなのはと殴ったシグナムと戦闘待機中に洗脳したシャリオの三名は即刻更迭された挙句はやても当然責任追及され、更に本局連中の無能さを喧伝可能な証拠を押さえたことにより、地上と本局の仲が更に悪化するでしょう。
個人的にシャリオが陸所属になったのは、本局が潜り込ませたスパイではなかろうかと思っています。………そうでもないと本局魔導師を崇拝している信者が陸に所属出来るとは思えません。
六課隊長フェイトの元補佐官で、しかもなのはと合わせて崇拝している元本局所属の一等陸士なんて、普通に考えればレジアスやオーリスが真っ先に陸から追放しそうな人物ですし(しかも執務官の補佐が一士とは思えませんから、陸士になる際に降格されたと考えるのが普通で、そう考えると更に胡散臭いです)。
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【機動六課の戦闘力速見表】(←半分ネタ)
周囲や体調並びに装備品(携行品に限定)の不具合も計算して最低と最高、そして状況の発生確率や持久力と耐久力と闘争技術と闘争技能等、更に老衰や寿命も考慮して平均のランクを出しています。
尚、表の見方は型月と同一ですが、神秘関係は含みません。
はやて・・・・:E 〜 A++。平均D−。
リインフォース:C 〜 A+++。平均B。
ツヴァイ・・・:D 〜 B。平均C。
速人・・・・・:E− 〜 A+。平均C+。
なのは・・・・:E− 〜 A+。平均E−
フェイト・・・:E− 〜 A+。平均E−。
ヴィータ・・・:D 〜 A。平均D+。
シグナム・・・:D 〜 A。平均D+。
スバル・・・・:E− 〜 C。平均E−。
ティアナ・・・:E− 〜 C+。平均D−。
エリオ・・・・:E− 〜 C。平均E−。
キャロ・・・・:E− 〜 A+。平均E−
シャマル・・・:D 〜 B。平均D+。
ザフィーラ・・:D 〜 B。平均D+。
平均ランク序列。
一位:Bランク・・・(リインフォース)
二位:C+ランク・・(速人)
三位:Cランク・・・(ツヴァイ)
四位:D+ランク・・(ヴィータ&シグナム&シャマル&ザフィーラ)
八位:D−ランク・・(はやて&ティアナ)
十位・E−ランク・・(其の他)
蛇足
三位一体・・・:A 〜 EX。平均EX。(←速人+リインフォース+ツヴァイのユニゾン時)
三位一体−速人:A− 〜 EX。平均A++。
ゼスト・・・・:E− 〜 A。平均D+。
レジアス・・・:E− 〜 D。平均E。
アリサ・・・・:E− 〜 D。平均E+。
すずか・・・・:E− 〜 ?。平均?。
鮫島・・・・・:E− 〜 C。平均D
デビット・・・:E− 〜 C+。平均D−。
恭也・・・・・:E− 〜 C−。平均D。
士郎・・・・・:E− 〜 C。平均D。
時空管理局戦艦:B 〜 Aの後に+が百程。平均A++++。(←極めて優秀な乗組員搭乗時)
地球の特殊部隊:C 〜 A+。平均A。(←部隊員ではなく部隊)
某日本ゴジラ・:B 〜 A++。平均A+。(←ネタ其の壱)
某千の呪文の男:C 〜 A+。平均B。(←ネタ其の弐)
某腹ペコ騎士王:D− 〜 A++。平均C。(←ネタ其の参(神秘云云補正は在るが、お荷物付だとこの評価))
某覚醒初号機・:A+++ 〜 EX。平均EX。(←ネタ其の肆(新劇場版破の最後辺り))
某OOガンダム:B 〜 A+++++。平均A+++。(←ネタ其の伍)
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【小ネタ】
01.ツヴァイは基本的に六課では妖精サイズですが、速人やリインフォースと私的に時間を使う時は基本的に普通の人間程まで体型を変更します。
02.速人クラッキングで当然最高評議会が脳髄だけなのを突き止めています(迂闊に排除すれば後釜にされる可能性が在るので、極一部の地上関係者に報告して放置中)。
03.速人は本編の21話後に一度蘇生した、デッドエンド寄りのバッドエンドを迎えています。
04.速人とリインフォースとツヴァイは其其巨大複合企業の株を限界比率迄保有しているので、地球在住時と変わらない程の総資産が在ります。
05.上記(04)の通り大株主ではあっても経営者ではない為、副業禁止に抵触していません。
06.IF編の主な勢力図は、最高評議会 & 本局上層部 & 機動六課初期構想参加者+スカリエッティ & 聖王教会 & 其の他、となっています。
07.速人の演算力を100とした場合はやては1未満ですが、それでも一日の基礎代謝の25%前後を脳が占める程で(普通は18〜20%)、アリサとすずかとスカリエッティは40%以上です(太らない代わりに確り食べないと、容易く脳に障害が発生します)。
08.速人の戦闘傾向は、【事前に勝利条件を満たす】、という、戦闘になる前に決着をつけている場合が殆どです。
09.上記(08)が困難な場合は、【相手の予測を超える(奇襲)】、若しくは、【予測されて尚効果を発揮する】、という、詰め将棋的なモノになります。
10.アリサの戦闘力はとらいあんぐるハート3の晶にアリサが憑依した程です。
11.リインフォースは昔の王侯貴族の様に寝る時は全裸が多く、それに感化されてツヴァイも同様になり、それに付き合う容で速人もリインフォース達と寝る時は全裸が基本([清潔なシルク製の布団カバーの感触が心地良くて癖になる]、とはリインフォースとツヴァイの弁)。
12.ツヴァイはすずかの影響を多分に受けている為、凄まじい妄想と暴走のスキル持ちです。
13.ツヴァイは日本に比べて法規制が質量兵器関係以外緩いミッドチルダに住んだ後に暴走しだしたのではなく、初期の頃から暴走しています。
14.ツヴァイの騎士甲冑の外観は、ツヴァイの要望を基に、速人が主に設計しています。
15.ツヴァイの騎士甲冑の構成術式は、ツヴァイの、【感度と動き易さ】、という要望に沿ってリインフォースと速人が設計しています。
16.リインフォースの姓名は、【リインフォース・アインス】で、ツヴァイの姓名は、【リインフォース・ツヴァイ】で、リインフォースは苗字になるのですがツヴァイが生まれるまではそれが名でしたので、アインスは通常リインフォースと呼ばれています(ツヴァイ的には【リインフォース・アインス(若しくはツヴァイ)・天神】です)。
17.リインフォースはユニゾン機能を失くしていますが、ツヴァイがリインフォースと速人に溶け込むようにユニゾンした場合、魔力光が無色になり、更に各間合いで並ぶ者が無い程の技術と瞬間的な魔法の発動が可能となるので、管理局と殲滅戦になった場合の勝率が10%を超える非常識な存在になります。
18.アリサとすずかとはやてはなのはを友達だと思っていませんが、なのはは自分の言う事を分かってくれる友達だと思っています。
19.リインフォースとツヴァイとアリサとすずかは、なのはに対して深すぎる上に広すぎる溝が在りますが、はやて達に対しても少なからず溝が在ります。
20.ツヴァイの型月風スキルですが、【愛:EX(何処かの世界では流出段階に届く程)】・【ボケ&ツッコミ(愛の片鱗):EX】【暴走(愛の片鱗):EX】・【戦闘力:C++】、を最低でも保有しています。因みに速人とリインフォースも前の3つは保有しています。
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【ガジェットへのツッコミ】(鬱陶しい内容が長く続きますので、読まれる場合は流し読み、若しくは最後の結論だけを読まれるのを御勧めします)
唐突ですが、あれほどの低速で飛行可能なのは驚愕すべき技術でしょうが、地球の軍関係科学者からは失笑されるでしょう。アレは。
そも、発射された弾の遅さといったら呆れ果てる程です。
初期の火縄銃でも初速が約330m/s(不発率の高さは無視しますが)だと推測されていると云うのに、20〜40m/s前後と推測される弾速はギャグとしか思えません。火縄銃が約1200km/hで、ガジェットの弾速が約70〜140km/hです。
と言いますか、質量保存の法則とエネルギー保存の法則を無視しているとしか思えない点以外、ガジェットは受け狙いの為に作られたとしか思えません。
意図的に速度を抑えられているRPG−7の弾速でも約110m/sですが、ガジェットの放つ弾の遅さは重ねて述べますが意図不明です(RPG−7は弾速が速過ぎると、戦車の装甲に命中した瞬間弾頭が外れて不発を起こす可能性が高まる等の理由で、弾速は意図的に抑えられています)。
特にガジェットのミサイルの弾速は桁外れに遅く、地球のミサイルは単体でもマッハ0.7を超えますが、戦闘機に搭載されるミサイルはそれ自体で約マッハ2な上に慣性が付加されるのでマッハ4程度は軽く超えますし、大陸間弾道弾(長距離弾道弾)は約マッハ20(ほぼ第一宇宙速度)ですので、形状(体積)と速度から発生する衝撃波は通常のミサイルが至近を通過するだけでも一般人ならば巻き上げられて墜落死しますし、大陸間弾道弾ならば衝撃波で木造家屋は半壊から全壊です。
因みに、
●:拳銃弾は約マッハ1(約1200km/h)。射程は約50m。(←一般的拳銃の平均値です)
●:巡航ミサイルは約マッハ0.7(約850km/h)。射程は約500〜1500km。
●:短距離弾道弾は約マッハ5(約6100km/h)。射程は約700〜1000km未満。
●:中距離弾道弾は約マッハ10(約12200km/h)。射程は1000〜5500km未満。
●:長距離弾道弾は約マッハ20(約24500km/h)。射程は5500km〜1万km以上。
上記を見て下されば御分かりいただけるでしょうが、速度よりも搭載数と射程距離を優先した巡航ミサイルですら亜音速だというのに、ガジェットのミサイルはバットで打ち返したボールより遅いのは本当にギャグとしか思えません。
そしてそれを見て危機感を抱く魔導師達が、質量兵器の恐ろしさが失伝しつつある現状を語っていて、余計に笑えます。
因みにマッハ20は水平線の向こう側から1秒程で眼前に来るほどの速さです(目が海抜160cmに在る場合)。
はっきり言ってガジェットをアレだけ湯水の如く使い潰すならば、目標に近づいた瞬間に急加速して体当たりする特攻兵器として使った方が遥かに役に立つでしょう。
そうでなくとも、あの低速で飛行可能ならば熱圏と中圏の間までは上昇可能と思いますので、其処からある程度の数が落下して特攻すれば、最小限の方向変換が出来るので、迎撃困難なミサイル群に速変わりすると思います。
ぶっちゃけAMF発生装置を搭載するよりも普通の質量兵器としての機能だけで管理局転覆が容易になる程の物にも拘らず、何故アレ程の雑魚扱いなのか理解に苦しみます。
………………殆どのISはガジェットの劣化機能と呼べる代物ですから、ISで役に立っているのはドゥーエとクアットロとセインだけ(偽装は原作のガジェットでも最後は再現されてましたけど)でしょう。それとIS以外で役に立っているのは補佐官的立場のウーノだけでしょう。
…………あと、ガジェットと関係はありませんが、アルカンシェルの移動速度を算出しようとしたのですが、肝心の原作での描写(効果範囲と炸裂までの時間)を考える限り、矛盾が生じてしまい、算出出来ませんでした。
効果範囲が半径100km以上ならば弾速を考慮するに戦艦は反応消滅していますし、画面外で瞬間的に加速したと仮定すれば加速度は300km/s前後になりますので発生するGは約3万600です。…………質量が僅かでもあれば断熱圧縮で燃え尽きますね。
そも、宇宙空間にも拘らずあそこまで初速が遅いのは謎ですし(電磁投射砲を使えと言いたいです)、仮に転移させているならば船外に弾頭を存在させる意味が謎ですし(使用宣伝をしているので迎撃される可能性が無闇に高まりますし)、第一、効果範囲が瞬間的に最大効果範囲限界まで広がった挙句に効果範囲が一定範囲内で変形するのが一番の謎です(空間反応消滅をさせているならば、反応時間は限り無くゼロに近いはずですので、長時間炸裂させる意味は盾にする以外には無い筈です)。
…………どう考えても何らかの機構を暴走させた際の現象を兵器転用しているだけで、兵器として制御できていない故に半径100km以上という、無駄に広範囲な効果範囲になっているだけで、時空管理局は軍事開発を放棄しているのでは無いだろうかと邪推してしまいます。
結論ですが、【時空管理局は対外勢力の抑止力を不安定な個人技能に依存し、安定した抑止力の保有及び開発を放棄している。又、選民思想を広める為、徒に質量兵器を忌避して応用及び対策以前に知識に触れることすらも放棄している】、だと思います。
大日本帝国よりも酷い国策ですね(首都に類する地域の治安が悪いことが全てを物語っていると思います)。
………自転車操業国家ですよ(国じゃないでしょうけど)。
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【作中補足終了】
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【おまけ・其の壱】その後のティアナ
「………失礼ですが、二等陸士の私には過ぎた役職だと思うのですが?」
「それ言うたら速人はんは三等陸士やで?
あ、それと仮辞令は終わったから楽に話して構わんで。
無理に堅苦しい話し方しとったら、話し方に気をとられて大事な事を考え付かんようになるかもしれんからな。
そやから一般常識の範囲内やったら、砕けた感じで喋っても構わんで?
尤も、命令やないから、堅苦しく話すのを貫きたかったら今のままでも構わんけどな」
「あ……はい。分かりました。
………それじゃあある程度砕けた喋り方をさせて頂きます」
「うん、了解や。
んで、役職と階級の話しで、まず役職のことやけど、これは単純に消去法でこうなっただけや。
知っての通りライトニングは解体されて、エリオとキャロは緊急時の避難誘導者の護衛程度が実働任務になったから、すでに非戦闘員扱いやね。
因みに訓練と事務仕事はそのままや。
んで、こっからがややこしいんやけど、この前の模擬戦結果から派遣された隊長陣の実力に疑問を持つ声が陸から凄い勢いで上がってるんよ。
とりあえず陸の者を混ぜずに派遣された者を一纏めにして、いざという時は失敗を陸が被らないで済むようにしようって話が決まったらしくてな、とりあえず陸関係者は混ぜられんようになっとるんよ。
そやから、実はリインの補佐をするはずやったシグナムも一纏めにされとるんよ。
尤も、リインの補佐予定者が消えてもうたから、他所からの出向と、その出向することになっとるギンガが代わりになる話はすんなり通ったんやけどな。
……ココまで話せば薄々気付いとるやろけど、部隊長陣………、つまり部隊長と副部隊長と部隊長補佐という部隊の指揮権若しくはそれを緊急時に継承可能な者達はみんな陸に所属しとるんよ。
そして部隊長補佐の副官も一応継承権を持つから、陸以外の者が就くことは認められんて上から直々に言われたんや。
…………ここまでは分かるか?」
「はい。
ようするに、陸とそれ以外を明確に分け、責任の所在を明確にしようって事ですよね?」
「そうや。
尤も、事務系の方はそれほど分けとらんけど、それでもトップはしっかり分けとるけどな。
で、実働部隊を陸とそれ以外に分けたら、ライトニングだけやのうてスターズも解体されてもうて、当然フォワードメンバーが残ったわけや。
尤も、エリオとキャロは魔導師ランク持ちの非戦闘員になったし、それに関してはフェイトちゃんの説得で渋渋とはいえ納得したからそこまで問題ないんやけど、あんたとスバルはそうもいかん。
先にスバルの話をするけどな、兎に角徹底的にゴネまくったんよ。
ぶっちゃけ、命令不服従もあそこまでいけば笑い話になるって思えるくらいにゴネたで。
しかもなのはちゃんも一緒にゴネるから、リインが証拠と罪状纏めて、それを速人はんが特殊監査部に報告する寸前やったから、止めるのが2秒遅かったら、少なくともスバルはクビで、なのはちゃんは教導免許剥奪されて教導隊クビになった挙句二階級降格されて無所属になった上、最悪二人とも暴行罪で魔力封印された挙句デバイス没収若しくは封印処置されるところやったんやで。
で、妥協策としてスバルをなのはちゃんの預かりにさせる代わりに、スバルが問題を起こした際には全てなのはちゃんだけの責任とする事で納得させたんや。
ただし、それは六課解散までで、しかもその間スバルは陸所属扱いやなくなるとか、色々リスクがあるけどな。
因みにフェイトちゃんもエリオとキャロに同様のことやってくれよったから、明日からエリオとキャロもスバルと同じ扱いや。
……………ここまでは分かったか?」
「はい。
…………あの………、スバルが迷惑かけてすみません」
「気にせんでいいって。
そこら辺はティアナの責任や無いんやから。
…………第一、一番状況を引っ掻き回して混乱させて余計な仕事増やして睡眠不足と胃痛の原因をまた増やしてくれやがったんは……………なのはちゃんやからな……………。
……んで、最後に残ったティアナやけどな、非戦闘員にするには勿体無さ過ぎるって意見が部隊長陣で一致したんや。
そやけど実働部隊の隊長陣達の下には組み込めんし、かといって単独で行動させるんは危険過ぎるし、何より失うのは惜し過ぎる。
そして組み込めるんは部隊長補佐達だけ。
なら選択肢は他に無い。
………という経緯で部隊長補佐副官になったわけや。
あ、それに合わせて昇進するから士長になるけど、本日付で一士に昇進して、明日の辞令と同時に士長に昇進てなってるから、縁起の悪い二階級特進じゃないで?
それと、一応やけどツヴァイと速人はんのどっちかを選択する権利はあるで。
ま、お勧めはぶっちぎりでツヴァイやけどな。
…………理解出来たか?」
「はい……、一応。
ただ、最初に言いましたけど、訓練校を卒業したばかりの二等陸士の私が官職に就く為、そこまでしても良いんですか?
自分で言うのもなんですけど、魔導師ランクBの小娘程度が受ける待遇とはとても思えないんですが?」
「ははは。
自分の評価は正しく知っとった方が良いで?」
「?
………卑下したいわけじゃないですけど、実際あたしの言った通りだと思うんですが?」
「たしかに、海や空だとその評価なのは間違いやあらへん。
やけどな? 陸のお偉いさん、特に防衛隊の方達の評価は凄く高いで?
何しろ、〔今すぐ防衛隊で研修積ませて副隊長か隊長補佐に就けたい〕、って人が結構いるんやで?」
「………………うそ………」
「ホンマやホンマ。
部下を捨て駒にする作戦を思いついただけやなく、自棄にならんで作戦として自爆特攻したり、その為に一時的にとはいえデバイスを手放す決断が出来たり、咄嗟の判断が凄い高レベルとか、そんな点が凄く評価されとる。
そしてなにより、模擬戦中に化けたのが最大の理由やね。
言い方悪いけど、化けた直後やから赤ん坊並みに真っ白で未熟な状態やし、ティアナは年齢から見ても肉体や魔力は十分成長する可能性があるからな。
そやから、今から仕込めば急成長するのはほぼ決まっとるんや。
つまり、今のままでも十分な価値やけど、上手に育てれば一流の魔導師やなくて一流の戦闘者になるとみんな期待しとるんよ。
尤も、レジアス中将が六課解散後、本人が望めば情報部か諜報部に招きたいって言うてたから、表立ってスカウトは誰もしとらんけどな」
「……………………………」
「あ、ただしな、[第三部隊長補佐に扱かれろ。通信カウンセリングの手配はしといてやる]、って言うてたで。
そやから、ツヴァイと速人はんのどっちの下に就いたとしても、速人はんに扱かれるのは確定や。
因みにレジアス中将直々の辞令やから、私でも撤回不可能や」
「……………………………」
「ま、何はともあれ、おめでとう、ティアナ。
間違い無く出世コースに乗ったで。
知らんやろうけど、レジアス中将が直々に誘う様な情報部や諜報部は間違い無く特殊情報部や特殊諜報部やから、特殊監査部に並ぶ内勤系の超エリート部署やで?上級管理官なんてメじゃないで?
どの部署も機密を普通に取り扱う部署やから、所属するのは例外無く三佐以上の相当権限持ちやし、階級持ちは全員二佐以上や。
特に特殊諜報部は他の世界に派遣されることが特に多いから、派遣先で情報を機密指定にして執務官に渡さんようにしたり、機密任務遂行要員として執務官からの隊員挑発を拒否したりも凄く簡単や。
…………尤も、どれもあんまり表に顔が出んような仕事やけど、多分防衛隊との掛け持ちとかさせるつもりやと思うから、表に顔が出る機会もあると思うで」
「……………………………」
「…………おーい、ティアナー、そろそろ戻って来てやー」(←使用済みのメモ用紙を紙飛行機にしてティアナに当てる)
「……あっ!!? す、すみません!少し呆けてました!!」
「そんなに気にせんでいいで。
ただ、私がさっき言うたことは聞いとったか?」
「はい。
……………俄かには信じられませんけど………」
「それでもそれが今のティアナの評価や。
それとな、これから先は社交辞令や上司に対する礼節としての謙遜以外は厳禁になるから、そこんとこは注意しとき。
さっき言うた三つの特殊部署はな、兎に角隙を見せないことが第一なんや。
せんでいい謙遜して下せる命令を遠慮したり余計な仕事を請け負ったりした前例を作れば、確実にそこから突き崩されるからな。
隙を作った部署は即時解体されて新しい部署を作るほど徹底しとるから、本当に気をつけや。
………ま、その分公私のけじめは厳格やから、私人の時に公私混同しない限りは、プライベートじゃ何処よりも緩いけどな」
「……………はいっ」
「うし!
それじゃあ話はこれで終了…………って………、そうそう、結局ツヴァイと速人はんのどっちの下に就くか訊いとらんかったな。
……ま、速人はんの下に就いたら嫌われるし嫉まれるし疎まれるし憎まれるしで、胃に孔が開いて内臓が胃酸で溶けまくった挙句髪が白髪になって全部抜け落ちると思うから、ツヴァイを激しくお勧めするで」
「…………それではツヴァイ陸曹長の下に就く事を希望します」
「分かりました。
それでは明日一二零零時付で第二部隊長補佐ツヴァイ陸曹長の副官となる旨の辞令が正式に下りますので、明日一一五零迄に部隊長室に来るよう」
「了解しました」
「………うん。
それじゃあお疲れさん。
これから気絶出来たら幸せやと思う毎日が待っとるから、しっかり休んで英気を養っときや」
「…………………すみません……………どんな反応したら良いか分からないんですが?」
「泣き叫べば良いと思うで?
まぁ、あんまり励ましになっとらんのは十分理解しとるけど、非公式に軽い訓練を速人はんに受けたギンガがグロッキー寸前になったんや。
……………公式に訓練を受けるティアナの訓練の激烈さは…………はっきり言って想像がつかん領域や。
しかもレジアス中将の後押しっちゅう援護がある以上、どんだけ倫理観が欠落しとるか……………、マジで想像出来ん。
知っとるか?軍隊の教育は虐待と同じでな、自己を徹底意的に壊した後に上官に絶対服従するように作り直した後に兵士にするんやで?
ぶっちゃけなのはちゃんのしごきがママゴトに思えるくらい厳しいで?
上官に犬の糞を舐めろと言われれば即座に舐めるのが普通やし、味方を撃てと言われたら即座に撃つのも普通や。
そしてその過程を免除される者は、それと同等以上の劣悪な環境下でも全く精神が揺るがないと判断される者だけや。
………ぶっちゃけた話、部隊長補佐以外の全員が例外無く訓練受ける必要があるで」
「……………………………」
「ま、それでも役に立たんことを速人はんはせんし、間違い無く大幅レベルアップするから、そこんとこは安心しいや」
「……………あんまり安心する要素は無いですけど………………、しっかりと気合を入れて望みます」
「そうした方がいいで。
あ、それと最後の忠告やけどな、覚悟なんてせん方がいいで?
覚悟なんて覚悟した事以外の事が起きたら意味無いからな。
精々言葉の綾として使うくらいにしとき」
「…………分かりました。
貴重な忠告ありがとうございました。
それじゃあ………」
「うん、また明日な」
【終わる】
● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○
【おまけ・其の弐】とある日の歓談
「時空管理局 陸上警備隊 第108部隊所属捜査官 ギンガ・ナカジマ陸曹です。
こちらがIDです。
着任許可を願います」
「………ID確認を終了しました。
問題無くデータと一致しています」
「うん、それじゃあ着任を許可します。
ようこそ、機動六課へ。
……………と、まぁ、堅苦しい挨拶も終わったことやし、こっからは気楽にして構わんで?」
「あっ、……はい。
それじゃあ気持ちを切り替えて……………お久しぶりです、はやてさん、リインフォースさん」
「うん、久しぶりやな。
………前と同じで一層揉みごたえのあるおっぱいになったな?揉ませるか分けるかしてくれんか?」
「全力でお断りします。
後………前みたいにも揉まれてる最中に上着のボタンが外れて、下着もずれて殆ど丸見えの姿をジン君に見られたら、……………今度は裁判沙汰にしますから覚悟していてください」
「あー…………あれは流石に悪いことしたと思うとる。
…………眉一つ動かさんで平然と報告だけして去って行った速人はん見て、本気で同情したで………」
「ええ…………あの時は後で本気で泣きましたよ…………。
赤の他人じゃなくて友達で、しかも厭らしい目で人を見ないジン君だからまだ良かった………と、最初は思っていましたけど、風景の一部の様にスルーされるのは流石に女としてのプライドを完全粉砕されました。
………その上後日会った時、本当に前の事を気にしてないで接してくれたんで、又泣きましたよ…………」
「ま、まあ、今は面白暗い話より、まだ挨拶しとらんリインの挨拶を受け取ってや」
「あ!?す、すみませんリインフォースさん!」
「気にしなくても構わない。
それでは……ようこそ、機動六課へ。
久しぶりだな、ギンガ」
「はい…………直接会うのは……1年振りでしょうか?」
「…そうだな。
1年程前から機動六課設立に向けて動き出したからな……」
「そうだったんですか…………。
仕事の通信以外では会えなくなってましたから、忙しいだろうとは思ってましたけど、まさか1年足らずで新しい部署設立させる程の仕事だったんですね………」
「発足させる準備はさして忙しいものではなかったんだがな………」
「?」
「あはは………、魔法と質量兵器の利便性と危険性や犯罪の系統別増加傾向やその対策、他に潜在魔導師の人口と平均魔導師ランクに非魔導師の平均肉体限界に教育プログラムの有用性にその他諸諸は殆ど速人はんが担当しとるから、私達は挨拶回りとコネ作りが殆どで、移動に時間は食うけど、そこまで忙しくはなかったんよ」
「……………なんだかジン君が過労死しそうな程仕事してる気がするんですが………」
「あー………そこまで忙しかったのは六課設立後に知ったんよ。
…………六課設立に関する資料の裏付とかからな………」
「半月以上連絡が着かない上に何処に居るのかも掴めないなど頻繁だった上に、漸く姿を見せたと思えば白衣の者と黒服の者を引き連れて要件だけ告げて又去ったりということが殆どだったからな…………」
「あ、それ分かります。
ジン君、秘密主義もあるんでしょうけど、それよりも面倒臭がって自分の事話したりしませんし、それで相手が心配するなんて思いもしないんですよ」
「全くや。
そのくせ漸く落ち着いた頃に逢ったら、[息災そうで何よりだ]、やで!?
他人の心配が出来るんやったら自分が心配されてるって気付けって思うたで!!?」
「分かります分かります。
前に助けてもらった時、全身血だらけになるほど傷だらけだったのに、[即座に離脱する。呼吸を整えろ]、が第一声ですよ!!?
心配させてもらえないって酷くないですか!!?」
「ああ、全くや!
それやのにツヴァイの心配は簡単に受け取るんやで!?
あと、ツヴァイよりは控え目やけどリインとアリサちゃんとすずかちゃんの心配も受け取るんやで!!?
………髪か?ロングやと速人はんの好感度上がるんか!?そういえばカリムにも心配させとったみたいやし………。
!!?? ハーレムか!? もしかしてハーレムを目指しとるんか!!??」
「お、落ち着いてください。
そもそも前にジン君にロングが好いか訊いたんですけど、[相手の獲物を髪で絡め取れるが、ギンガが使用しているデバイスだと頭髪が巻き込まれる可能性が高いので禿頭を勧める]、って言う程に女の命を軽視してるんですよ!?
あ………………思い出したら腹が立ってきました………」
「? ………ツヴァイの髪を洗う際に綺麗だと言っていたので、軽視はしていないとは思うが?」
「………相変わらずツヴァイには甘いなぁ〜」
「ですね。
多分私が私の髪が綺麗かどうかと訊いてみても、[初見時と比べて髪質が向上したようだな]、とかしか言わないと思いますよ?」
「やな。
……っちゅうか、速人はんが誰かの身体の美的特徴を誉めるなんてレア中のレアやと思うしな」
「そうですよね。………って…………?」
「ん?
どうしたん? ギンガ?」
「いえ…………………………あの…………リインフォースさん、………ソレって何時頃の話ですか?」
「六課設立の次の日だ」
「……………………」
「? ほんまにどうしたんや?」
「いえ……………………〔聞いた〕、でなく、[言っていた]、と言われたので、何時頃ジン君と一緒にお風呂に入ったのか気になって…………」
「「あ」」
「えーと…………式は何時頃の予定ですか?」
「いや………その……………」
「デバイスとの結婚は認められていなかったはずですから、やっぱりジン君の故郷の地球で結婚して式をするんですか?」
「だ……だから…」
「あー、ちょい待ったギンガ」
「…なんです?」
「あ〜〜〜〜…………………、大方いつもの距離感無くした付き合いの一つやと思うから、そこまで考えんでいいと思うで?」
「………………………………………え゛?」
「知っとるやろ?
速人はんとリインは互いに関しては幼児並に貞操関係の距離感が無いて」
「ちょ……ちょっと待ってください!!
もし単純に距離感を掴み損なっているだけなら、二人は見た目も頭脳チートで精神は子供になるんですけど!!!」
「困ったことに全く以ってその通りなんよ。
二人ともそこら辺を何べん言うても全然成長せんのや」
「………………それじゃあ二人とも精神が子供で止まってるか、事実婚かのどっちかって事ですか!?」
「そこは半々やろう…………。
それにそこいらをリインに訊けば。私が半々言うた意味が分かると思うで?」
「はぁ………、で……、どういうコトなんですか?」
「…(何故か無駄に迫力があるな)…どんな答えを望んでいるかは知らぬが、私達の関係は付かず離れずの今の距離が最適だと思っている。
特に、相手に意識せず近づけ、そして特に意識せず離れられる。
しかも互いに気の置けぬ存在でありながらも、互いが行動を監視するように見張っている。
………知人よりも執着が無く、だが友人よりも濃密に過ごせる。
そんな今の関係が私は気に入っている。
そしてそれを恋仲と言われるのは心外だ」
「……………………………惚気話にしか聞こえないんですが?」
「奇遇やな。
私も惚気話にしか聞こえん。
………………あー……やめやめ。
これ以上この話を膨らませたら全員不機嫌になるやろし、しかも全く問題が解決しそうにあらへんから、やめや、やめ」
「そうですね。
本人の自主性に任せて放置するのが一番でしょうからね」
「そやね……………………放置しとったら永遠に変わらなさそうやけど。
で、話は変わるんやけど、たしか六課に出向したら速人はんと模擬戦したいって言うてやろ?」
「あ、はい。
仮に名誉返上することになったとしても、今の私がアレからどれ程力を付けたかを知ってもらいたいですから。
なにより、ジン君と模擬戦すると、ジン君以外何も考えられなくなる程集中するあの感覚がとても好きなんです」
「…(何気にギンガも天然やな)…まぁ、接近戦とは無縁な私には理解出来ん感覚やから感想は控えるわ。
で、模擬戦のことやけど、ぶっちゃけた話……………許可出来んわ。
ほぼ確実にスバルがキレるし、更にほぼ確実にフェイトちゃんが不和の種をばら撒くし、その上ほぼ確実になのはちゃんが暴走するから、とても許可なんて出来んわ」
「あー…………たしか少し前にジン君とスバル達で模擬戦したんでしたよね?」
「そうや」(ちらりとリインフォースに目配せするはやて)
「純粋な体術で下され、その後拷問や虐待の触りの部分とも判断出来る試験の結果、痛みで気絶したのだ。
目が覚めた時は怒りと逆恨みと憎しみと怯えが混ざってた様で、相当挙動不振だった。
その上、模擬戦終了後実力不足でランスター以外は全員実働部隊から外され、しかもランスターはツヴァイの副官に成ったので、実力を付けても同じ役職には就けぬ為、逆恨みの度合いが増している」
「…………………」(←額に手を当てて俯いている)
「しかもランスターが日に日に憔悴していっているにも拘らず、訓練の見学及び情報開示すら拒否されているので不信感は爆発寸前だ。
尚、一応公式にレジアス中将からの命令で訓練しており、その際訓練情報の秘匿度も一任されているので、六課の誰もが文句を言えないことは理解しているらしいが、ならばとばかりに何処かのトリガーハッピーの如く砲撃を乱射する者を真似し、お話と称して強襲した為現在謹慎中だ。
それと、現状で一切反省の色が無い以上、最悪地上本部に乗り込んでレジアス中将に強襲を仕掛ける可能性が無いとも言い切れない為、デバイス押収後封印処置を施すか検討中だ」
「す……すみません」
「お前が謝る必要は無い。
ただ………そろそろ器物破損や暴行で起訴されかねないという事を覚えておいてくれ。
仮に土壇場で被告が控訴を取り下げようとも、それが事実ならばほぼ確実に碌でもない処分が下されるので、一応身内からも注意を促しておいてくれ。
…………そろそろ部隊内の不祥事を外部に大大的に知られてでも処分するべきだと、上と部隊内からの意見を抑え切れそうにないのでな」
「本っ………当にスバルが迷惑掛けて申し訳ありません。
あの、今すぐ父さんに連絡してどうするか決めたいんで、席外しても構いませんか?」
「構わんで。
あ、それとな、……ちょちょいのちょい………っと……、今ギンガのデバイスに六課の見取り図にギンガの部屋の位置を送っといたから、自分の部屋で通信するといいで」
「ありがとう御座います。
それでは又………」
「またな〜」
「又今度」
・
・
・
「なんでやろ、…………厄介ごとを減らす為に来てもろたのに、…………厄介ごとが余計に増える気しかせんのは…………」
「公私の区別と自身の職務領域と越権という概念すら持たない者が複数居るからでしょう」
「……………速人はん謹製の原価が1本15万円以上の栄養ドリンクを毎日飲んどらんかったら、私もグリフィス君もとっくに緊急入院しとたったやろな………」
「後、シャマルが頻繁に治癒魔法を掛けているのも要因の一つでしょう。
他にも食堂の調理師達が気を利かせ、消化の負担が少なく且つ栄養価が高く、更に腹持ちが良い上に味も妥協せずに作られた食事も要因の一つでしょうし、他にも清掃員が高い清潔さを維持したり、精神安定効果の香りを放つ花を挿したりと、多くの者が力を貸してくれています」
「………ホンマ、みんなの好意がありがたすぎて涙が出そうになるわ…………。
あと…………最近肌荒れが酷くなりだした自分の顔を見ても涙が出そうになるわ…………」
「あ、それに関しては化粧品を六課隊員用に膨大な量が寄贈されましましたので、宜しければ御使い下さい。
尚、[女性の化粧は半ば礼節の一つであり、寝食を削る者に負担を強いるのは問題が在る]、という建前です」
「……………値段聞くのが怖いから訊かんけど……………マジでありがたく使わせてもらうわ」
「一応寄贈者は匿名となっておりますので、訊ねられた際に明言するのは控えて下さい」
「了解や。
後で希望する隊員にツヴァイと一緒に配布しとってや。
それと余りそうやったら男性職員にも配布してや」
「了解しました。
それと寄贈された量は通常の5倍の速度で六課隊員全員が使用しても余りますので、六課敷地内からの持ち出し及び譲渡若しくは転売の禁止を条件に、隊員が自由に選択及び補給可能なようにするのが宜しいかと思います」
「それで構わんけど、一応ツヴァイと一緒に全種類を見本に持っていってや。
丸投げすると印象悪うなるやろから」
「了解しました」
「うん。
……………それじゃあ仕事を再開しますか」
・
・
・
「時にリイン?」
「はい。何でしょう?」
「リインが化粧してるのなんて見たこと無いんやけど、何でこの前のホテルの警護の時、私に指南出来るほど上手やったんや?」
「主…………、化粧は女性の最低限の嗜みですよ?
局に就く前、アリサやすずかに一通り教授して頂き、職業として生計を立てられる程まで仕込まれました。
後、ツヴァイも私と腕前は然して変わらないですよ?」
「……………何気にツヴァイも化粧出来るって……………女として負けた感じがするわ………」
【終わる】
● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○
【おまけ・其の参】とある日の訓練
「ちょっと待ってください!
何で棒に縛り付けられてるんですか!?」
「今から顔を円柱状に丸めた新聞紙で乱打するので目を瞑るな」
「何で裸にならなきゃいけないんですかぁっ!?」
「戦闘中に羞恥心で判断を誤らぬ為だ」
「トイレ中に強襲するって変態ですか!!?」
「変態だろうがそれに敗北するようでは話にならん」
「いーーーーーーーやーーーーーーーーーーーーーー!!!
イナゴとかハチとかもいやだけど、カエルとかヘビとかの生は死んでもいやーーーーーーー!!!」
「単独任務中では貴重な蛋白源だ。不衛生極まるゴキブリを出さないだけ甘いと思え」
「何で石や熱湯や電撃浴びせられながら事務をしなきゃならないんですか!!?」
「周囲を警戒し続け且つ思考を瞬間的に切り替える訓練だ」
「媚薬飲ませて事務させるって変態ですか!!??変態ですね!!!???」
「自制しつつ思考する訓練だ」
「専門書等は分かりますけど、何で漫画や絵本も読まなきゃいけないんですか?(ラクだからいいけど………)」
「他者の価値観に触れるには手早いからだ」
「ななななななななななななんでH関係のも在るんですか?!?!?!」
「閨房の技術が不必要とは限らない。風俗に叩き込まれて実践させられないだけ甘いと思え」
「毎日………気絶……する…まで……走ら……せる……なんて………」
「短期で身体改造を行なうならば効果的だ。それと止まると電流が流れる機器を装備させぬだけ甘いと思え」
・
・・
・・・
「中将………どうなされたのですか?」
「うむ…………、例のランスター二士の訓練の報告を観ていたのだが……………、序の口の段階で見ていて気分が悪くなってな…………」
「………………効果は有りそうなのですか?」
「その点は大丈夫だろうが……………、間違い無く魔導師としてではなく戦士…………、いや、スパイやアサシン寄りの存在になるな。
まぁ、完全に単独任務専門の方向性だが、座学の報告を見る限り、軍団指揮は難しいそうだが大隊までならば辛うじて指揮可能には出来るそうだ」
「………私見ですが、恐らく錬度や精度の基準が凄まじく高いと思いますので、中隊指揮可能と評されたならば、艦隊指揮が可能な程だと思われます」
「儂もそう思う。
だから今からランスターには期待しておる」
「しかし………それほどの存在に成って尚地上に所属したがるでしょうか?」
「其の点は問題無い。
ランスターは兄の汚名を晴らし、そして兄に汚名を着せた者達に自分と兄の力を知らしめる事が一つの目的らしい」
「ならば………此方がそれに助力するということですか?」
「助力ではない。褒賞としてそれの助けとなるモノを選択するだけだ。
覚えておけ。大抵の者は金と地位と名誉の何れかを欲し、欲しているモノを与えている限りは易々と裏切られん」
「肝に銘じておきます」
「さて………、雑談したおかげで気分も良くなったので仕事を再開するか。
それとオーリス、何らかの施設使用の申請書が提出されたら最大限の便宜を図れ。
それが無理ならば一先ず儂に報告しろ」
「了解しました」
【終わる】
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【おまけ・其の肆】私が原因で争わないで!胃が痛むから!!(ティアナの心の叫び)
「ティアナを返してくれないかな?
あなたなんかに任せたらティアナが駄目になっちゃうから」
「指揮系統が違うとはいえ、上官に対する言葉遣いではないな」
「どうして私が三等陸士なんかに言葉遣いで注意されないといけないのかな?
身の程、弁えてる?」
「私が上官だからだ。
理解していないようだが、私はグリフィス・ロウラン副部隊長と同格だ。
緊急時における部隊指揮権の継承権こそ劣るがな。
それと階級は役職に就く為の目安であり、役職よりも重んじられるモノではない。
第一、その理屈ならば私は三佐相当権限持ちであり、一尉には礼節を払われる立場だがな」
「そんな屁理屈なんてどうでもいいよ。
私が問題にしてるのは、なんで魔法も使えない一般人のあなたがティアナの訓練をしてるかってことなんだから」
「命令を受けている為だ。
そして此れ以上の情報を此方が提示する義務も無ければ、其方が情報を取得する義務も無い」
「私が聞く権利はあると思うけどな」
「無い。
機密指定にしている以上、当事者以外の三佐以下の者は無条件に情報取得及び情報閲覧の禁止だ」
「あなたが機密指定にした筈だから、あなたが機密指定を解けば済む話だと思うけど?」
「その通りだが、理由が無い」
「だから私が知りたいから解いてほしいんだけどな?
………ねぇ、私の話…………聞いてる?」
「聞いている。
遇っているがな」
「………………ふーん………………すこし……………おはなししようか…………」(そう言ってバリアジャケットを纏ってレイジングハートを構える)
「脅迫以外の解釈が思い当たらぬ行動だが、弁明が在るならば言ってみろ」
「脅迫?そんなわけないよ。
私はあなたが私に適わないって知ってもらって、ティアナを育てる資格が無いって気付かせたいだけなんだから」
「お前に敗北することと教導資格の有無は微塵も関係無い」(そう言って空間に現れたコンソールを押す)
「っっっあ”ぁっっ!?!?!?」(突如上下左右から展開された隔壁に挟まれる)
「自身が勤めている部隊内の隔壁位置すら覚えていないとは、隊長職に就く者としては恥以前の問題だな」(全身の6%以上の骨が複雑骨折している為、通常ならば構造上不可能な体勢になって気絶しているなのはからレイジングハートを奪う)
「どうした!?
突如隔壁が……………」
「シャマル医務官が到着した後に報告を行いますので、業務に戻られて結構です」
「分かった。
但し、先に部隊長室で其処に居るランスター二士から事のあらましを第三者視点で聞いておくので、連れていくが問題は?」
「本日の予定は全て中止しましたので私としては在りません。
但し、ツヴァイ第二部隊長補佐が予定を前倒しする可能性は在りますので、私の許可だけでは足りぬと思いますが」
「部隊長室に居るので直接訊く。
では後程報告の時……」
「はい。後程」
・・・・
・・
・
「……というのが事のあらましです」
「「「「…………………」」」」(←はやて&リインフォース&ツヴァイ&グリフィス)
「更迭し、出向中のギンガに担当させるべきでは?」
「いや、それやとリインの副官にして色んな業務を肩代わりさせたりあちこち連れ回したりして経験積ませるっていう出向の名目が無くってまうし、あの問題児の集団を掛け持ちして纏められるとは思えんで………。
それでもしたくなるのは分かるけど………」
「………実害が出るまで………じゃなくて、限界まで今まで通りというのは?」
「何言ってるですか!?
次は殺傷設定で砲撃されるかもしれないんですよ!!?」
「……………」(←ティアナ)
「ティアナも黙ってないで何か意見を言っていいですよ?
ツヴァイの副官なんですから、十分意見出来る立場ですよ?」
「……(あぁ、私もギンガさんみたいに使い走りで六課から頻繁に外に出回って、少しは平穏に過ごしたかった)……、意見以前に質問なんですが、良いですか?」
「構わんで」
「えと………天神先輩はそもそも教導免許を持っているんですか?
そして天神先輩がやろうとしていることは、なのはさんじゃ出来ないんですか?」
「良い質問や。
査定プラス1や。
んで、ティアナの疑問に答えるけどな、最近知ったんやけど、実は速人はん、魔導師ランク以外の資格は大抵保有しとるから、ばっちり教導資格はあるで。まぁ、なのはちゃんが実戦派で速人はんが指導派って違いはあるんやけどな。
もっと言えば、師団指揮資格も保有しとるから規模にも因るけど艦隊すら指揮可能やし、一佐相当権限やで。
そやからなのはちゃんが指揮官として育てようとしとったらしいけど、速人はんは指揮官資格持ちの教導官やから、なのはちゃんより遥かに適任や」
「と言うか、指揮官資格どころか指揮官適正も無いのに指揮官として育てようとしてたのを聞いた時、正直呆れるより頭痛がしましたよ………」
「全くです。
今までチームプレイなんか考えもせずに一人で砲撃撃ちまくってたくせに、指揮官として育てようなんてちゃんちゃらおかしいです。へそで茶沸かすです」
「私も同意見だな。
そも、碌に連携をしたことも無ければ部下を持ったことがないにも拘らず、連携を前提にした教導をした挙句指揮官を育てようとしていたなど、正気が残っているか疑うな。
更に、そんな者達を部下として纏める隊長に就くなど、部下と役職を舐めているとしか思えん」
「……(うわぁ、散々な評価ね。全部納得だけど)……、なら、先ずは素直に全部話してみるというのはどうでしょうか?」
「魔導師を鍛えられるのは魔導師だけで、そして戦力になるのも魔導師だけだと考えているみたいだから、今まで何度も話したけど効果が無いんだ……」
「むしろ悪化しとるな」
「ムキになってるです」
「勘違いした敵愾心を抱いた上に、余計な手間を増やしてくれた………」
「……(あれ?なんだか心労で吐血した挙句髪が抜け落ちる未来が幻視出来るんだけど?)……、あとは………私がなのはさんを倒す……って無しです。取り消しです。気の迷いです。増長してました。
ですからそのしてやったりの顔は止めて下さい。
というかもしかして誘導尋問だったんですか?犯罪ですよ?証拠になりませんよ!?」
「いややな〜、尋問なんて全然しとらんやん」
「ですです。まさかティアナが自分を危険に曝してまで解決しようとするなんて………ツヴァイは上司として誇りに思うです!」
「有り難う御座います。僕達の睡眠時間の為に戦ってくれる選択を自爆的……じゃなくて、自発的にして下さって!
これを希望にあと半月は持ち堪えられそうです!」
「………まぁ、三名の話は冗談として流してくれ。
ただ………、ランスターの案が一番早期に最小限の危険度と被害で片が付く、一番妥当な案だというのは確かだろう。
此れで暴走して1対1の模擬戦などを申請していて受理された日には…………」
「想像するだけで疲労して気絶しそうなんで勘弁して下さい」
「真面目な話、そろそろ不満が憎悪か殺意に変質して犯罪に走りそうやから、勘弁願うわ」
「そろそろ地球の呪い屋で始末を頼もうと思うです」
「……(ごめんなさい兄さん。多分あたしは六課解散の頃にはそっちに逝ってるか療養中か汚れてしまっています)……」
【終わる】
ティアナ、中々に厳しい選択肢だな。
美姫 「とは言え、ある意味認められればこそよね」
まあ、その辺りも気付きつつも選ばざるをえないと。
美姫 「レジアスも興味を引いていたみたいだし」
今後の成長に期待だな。
美姫 「次回も楽しみに待っていますね」
ではでは。