この話はSS【八神の家】の幕間ではなく、もしも(IF)の話です。
ですのでSS本編がもしStSまで進めば、必ず相違点が出る代物です。
ですから二次創作のIFを了承できる剛の者以外の方は読まれない方が賢明です。
注1)リインフォースが空に還らず闇の書の闇はどうにかなっています。
注2)階級に関しては自衛隊で使用されているものを流用していますが、将官の階級は原作通り第二次世界大戦時の日本軍の階級名に倣っています。また作中階級が明記されていない面々の階級については作者の捏造設定です。
注3)速人の外見年齢はリインフォースと同じかちょっと幼いぐらいです。(髪の長さはリインフォースとフェイトの中間程度で、ストレートです)
注4)ミッドチルダ語等は日本語等に翻訳されて話を進めています。
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魔法少女リリカルなのはA‘S二次創作
【八神の家】
とある可能性編 三つめ:とある休日 其の貮
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――― Side:とある純喫茶店 ―――
態態純喫茶と謡っている割には全く堅くなく、学生を対象にしたオープンカフェのような開放感が漂う店内にスバルの声が響いた。
「とにかくティアが無事でよかったよ〜」
「直撃なら内臓爆砕級の突撃をしたヤツの台詞じゃないわね」
満席ではないが空席を探すの難しい程店内に人が居る為、スバルの普通の会話を明らかに超えた濁声の大声量が原因でスバルの話し相手のティアナも注目を浴びていた。が、ティアナは旅の恥は掻き捨てと思って気にしないことにしつつ、ギンガに話を振った。
「ギンガさん。先に言っておきますけど、代金は個別に支払いですから」
「ですです。
最低でもツヴァイとティアナ、そしてギンガとスバルに分けるです」
最近はカロリー摂取の為、蜂蜜やマヨネーズを飲む程に嗜好を投げ捨てているティアナだが、流石に疲れてもいない時にその様な行動をするワケも無く、邪道と知りつつも蜂蜜と檸檬果汁を一滴垂らした紅茶を一口飲んだ後にティアナは釘を刺した。
そして非濃縮還元の果汁100%ホットオレンジジュース(品書きに無い特注)という、矢鱈と酸味が強い飲み物を少しずつ飲んでいたツヴァイもティアナの台詞に追随した。
「流石に私もスバルもそこまで図々しくありませんよ」
一月で一石程消費する自分の食費が一般と離れすぎているのを自覚しているギンガは、単一電池程の大きさの御結びを、落花生を食べる速度で食べている合間に返答した(前菜代わりに10注文している)。
だが、言いたいことを言い終えてから僅か十数秒の間に12切れ食べ終え、更に3切れ纏めて口に捻じ込もうとしていたスバルが不満げな声を上げる。
「え〜〜〜〜?
上司なんだからツヴァイ曹長がおごってくださいよ〜」
「ツヴァイはスバルの上官であって上司じゃないです。
と言うかですね、以前フォワード陣と親睦を深める為一緒にお昼を食べようって時、ツヴァイ達とはやてちゃんの分を食べたですよね?
アレ、一人前に幾ら程掛かってるか知ってるですか?」
「えーーーと………………………っはぁ、普通お弁当が500位だけど自分で作ると安いらしいから…………………………っくん、300くらいですか?」
同じ大食家でも最低限の礼節(テーブルマナー含む)ならばギンガは食事の量以外は問題無いが、スバルは色色とその辺りを相当投げ捨てており、上司なので奢れと言いつつも食べながら返答するという、相手を馬鹿にしている態度や認識をツヴァイの眼前で曝しながら答えた。
そして答えが見当外れ過ぎなのも相まり、ツヴァイの頬が引き攣ったが、直ぐにツヴァイはいつもの笑顔に戻って駄目出しを始める。
「3桁間違ってるです」
「ええぇっ!?
じゃ……じゃあ………0.3……です…か?
で……でも、ゴミでも使わなきゃそんな値だぅぁっ?!?!」
スバルが凄まじく失礼な言葉を吐きそうだった為、急いでギンガが口を塞ぎ、ティアナが紅茶を掻き混ぜたスプーンでスバルの喉を突いて黙らせた。
そして席を立って対面のスバルの頭を叩くと殴るの中間の勢いで拳を打ち付け続けつつ、ティアナがツヴァイに詫び始めた。
「すみませんごめんなさい申し訳ありません。
品の欠片も無い食べ方を見れば分かる通り味覚と頭がとっても可哀想なヤツなだけで悪気は無いんです」
「本当に本当に本当にすみません。
遠慮という因子を成長過程で削り落としているだけじゃなくて図々しい因子が普通より矢鱈と多いし短絡的だから後先考えない発言が多いですけど悪気は無いんです」
スバルの口と後頭部を其其の手で押さえ付けて黙らせつつ、更に力強く押さえる事でスバルの頭を固定してティアナが拳を打ち付けやすくしながらギンガも詫びた。
だがツヴァイからの返事は―――
「それよりも息が出来なくて暴れていて危ないですから、少なくても虐待するならツヴァイの眼の届かない私的時間にして下さいです。
此れ以上スバル達関連で面倒事を被るのは御免です」
―――という、ティアナとギンガの斜め上を行くものだった。
・
・
・
「えーと、今更な感じはしますが、どうもはじめまして、ティアナ・ランスターです。
色色あって元って言葉が付いてしまいますけど、スバルとコンビでした」
向かって左前のギンガに挨拶するティアナ。
「こちらこそはじめまして。スバルの姉のギンガ・ナカジマです。
仕事で話すことはあっても落ち着いて話すのは初めてよね?」
「そうですね……。
口を開けば出るのは仕事の話か愚痴で、纏まった休憩時間中はそもそも喘鳴で喋れなかったですから…………」
時間感覚が定かではない最近のことを苦笑いしながら語るティアナ。
そしてそれにギンガは苦笑いしながら言葉を返す。
「あー………、ジン君の教育は虐待や拷問という名の実験だから………」
「? ………ギンガさんって……あたしの訓練内容って知ってるんですか?」
「あ、呼び捨てでいいし、普通の話し方で良いから。
……仕事の時の話し方が印象深いから、畏まられると調子が狂うし」
「あ〜………すみません、スバルと話してる時からさん付けなんで、さん付けで通させてください。
あと、ギンガさんも気を使わずにタメ口で話してくれて良いですよ?」
互いに勤務時は遠慮無く話しているだけあって気を使った話し方は落ち着かず、互いに今迄通りに接しようと告げる。
「うーん……じゃあ私もさん付けティアナさんと呼んだ方がいいのかな?」
「年上に対する最低限の敬称ですから、気にしないで良いですよ」
言葉遣いは然して変わっていないが、何と無く遠慮や気遣いが消えた代わりに距離が近いことを窺わせる雰囲気になったギンガとティアナ。
そしてそれを見ていたツヴァイが丁度良いとばかりに、フルーツ入りポテトサラダ(品書きに無い特注)を食べる手を休めて会話に入る。
「それならツヴァイのこともオフの時はツヴァイ曹長と言うのは止めてほしいです。
あ、ですけどリインフォースで呼んだら悲惨な末路は覚悟して下さいです。
今迄注意を受けたのにファミリーネームで呼んだ殆どの方達は、不思議と直ぐに社会的に死んでるですから。
後、肉体的にその後どうなったか迄は知らないですけど、多分自決か精神崩壊したと思うです」
「…………あれ?
…………ツヴァイさんって、ファミリーネームが在ったんですか?」
「あたしも………ヴィータ副隊長達みたいにファーストネームだけだと思ってました」
不思議そうな顔で言葉を返すギンガとティアナに、ツヴァイは少し不機嫌さを表情と雰囲気に滲ませながら言葉を返す。
「ツヴァイだけじゃなくてヴィータちゃん達にもファーストネームはきちんと在るです。
徒、ツヴァイもヴィータちゃん達も、事情は違っても名乗る気が無いですから、管理局に登録されたデータ上はファーストネームだけなだけです」
言い終わると不機嫌さを隠すようにフルーツ入りポテトサラダを口へ掻き込むツヴァイ。
そしてその姿を見たティアナとギンガは苦笑いをしながら返答をする。
「無闇に死ぬ可能性を増やしたくないんで、理由とファミリーネームは聞かないことにします」
「私もティアナと同じです。
それに、無闇に喋ってもらってスバルの死亡フラグを建ててもらいたくないですし」
「あ、そういえば六課に入って直ぐの頃、直接本人から注意を受けてたのにリインフォース一尉を愛称で呼ぶとかいうアホなことして、殺気を浴びて発狂しかけたっけ………」
「殺気じゃなくて怒気ですけどね。
それと、大抵なら一度目は怒気で、二度目は殺気で、三度目は不思議と不幸な事故が起きるです。
後、四度言ったことの在るチャレンジャーは今のところ居ないです。勿論はやてちゃん達は別ですけど」
ホットオレンジジュースを味わいつつも口の中を洗い流して告げたツヴァイの言葉を聞き、ティアナとギンガは三度も懲りずに呼んだ者の顔が脳裏に浮かんだが、態態確認する程の事でもないので敢えて訊ねなかった。
だが、ティアナは代わりに気になったことを訊ねた。
「あのー………あんまり関係無いんですけど、天神先輩って…………リインフォース一尉を愛称どころか名前ですら呼びませんよね?」
「仕事上どうしても呼ばなきゃいけない時はファーストネームの後に階級を付けて言うですけど、その事がどうかしたですか?」
「いえ、………………もしも愛称を飛び越えて眼で語り合ってて、しかもそれに特別な思い入れが在るなら、………………万が一あたし達が目で語ろうとしたら首というか頭が宙を舞うのかな〜、と……」
それを聞いたツヴァイとギンガだけでなく、言ったティアナ自身も気にし過ぎな気はしていたが、ティアナとしては下手すればリインフォースだけでなくツヴァイと速人の地雷も踏みかねない危険性は気を遣う程度で排除出来るのであれば是非とも排除しておきたいので訊ねた。
「はぁぁ。…………幾ら何でも気にし過ぎです。
余程巫山戯きったと言うか舐め腐り過ぎた理由で目配せしない限り、精精鬱陶しいて言われる程度だと思うです」
「で、ですよね」
「そうです。
あ、ですけど、別に目配せしなくても、舐め腐り過ぎた考えが読み取られればその場で殲滅判定を食らうですから注意するです」
「あ、それって両手両足無くなった上に目や鼻が顔ごと潰れて判決後死亡した人のことですよね?」
「ですです。
…………杭打ちなんて生易しいことせず、溶けた鉛を流し込んで圧死と焼死と溺死のトリプルコンボをお見舞いすればよかったと今でも悔やむです」
「でも私は遥か下から杭打ちの音に負けない絶叫が段々と弱くなるのも胸がスッとしましたよ?」
「杭打ちの音や回収した時の臭いが凄かったですから、静かで回収が楽な方が良かったです。
………思い返せば腹が立ってきたです。
大体管理局に籍を置いていなかったツヴァイ達が現地の戸籍を持ってない連続殺人者を奇妙なオブジェに変えた程度で、どうして容疑者として連行されなくちゃいけないですか?
態態関係者以外立入禁止区域に来て、救命処置が延命措置限界級の怪我を勝手に負っただけだというのに、質量兵器がどうとかこうとか………馬鹿ですか?
どうして不法に入国及び侵入して、お兄さまを殺害してその原因を反管理局の仕業に見せかけてツヴァイ達に敵討ちとか同じ犠牲者を出さない為に管理局に入るようにさせようとかしてた人型のゴミに生温すぎる非殺傷設定で攻撃して恩赦確定の裁判を管理局で受けさせなきゃならないんですか?」
未だに不満が溜まっていたらしく、途中からツヴァイの肺活量と声量は大きくなっていき、周囲の者の耳に入ることになるが一切気にせず更に不満を語り続ける。
「そもそもツヴァイ達が高ランク魔導師で管理世界に住んでいないからって理由で初めから有罪にしようとした挙句、それを無償奉仕させることでチャラにしようとしてたとか………舐めてるですか!?
司法と行政と立法の分離もしてないですから高高80年弱で領土管理どころか組織維持すら困難になるです!
大体魔法がクリーンとか質量兵器が野蛮とか頭疑うと言うか、歩んできた人生そのものをどうしようもないゴミだと断言されても仕方ない程の理念がそもそもの原因です!」
「でも、ツヴァイさんの故郷の世界は未だに戦争してますよね?」
「戦争じゃなくて紛争です!
後、少なくてもツヴァイの故郷は多数の国家が纏まった連盟に武力行使する馬鹿は存在しないです!しても直ぐに国土が変形する程の攻撃で鎮圧されます!
反管理局組織とかが堂堂と知られてる管理局なんかと一緒にしないで下さいです!」
「そういえば魔法が無くても管理局膝元のクラナガン以上に平和でしたね」
「当然です!
個人の資質で効果が左右されて威嚇効果が低い魔法とは違って、誰が使っても一定以上の効果が在る質量兵器は威嚇効果が高いですから、魔法より遥かに抑止力が在るです!
第一、当たっても気絶するだけとか、衣食住や医療以外に空調もまで完備されている個室付刑務所とか、刑期終了後も魔力さえ在れば簡単に就職してそれなりの地位に就けるとか、そんな巫山戯た生易しさなんて無いのも抑止力になってるです」
「あー………、たしかに前科者にとっては厳しい世間でしたよね。
就職出来ずに浮浪者になった挙句に警察に追われ、行政の指導で仮の住処を追われて町を彷徨って残飯漁っては通報されて町から逃げ出し、今度は新たな町では先住の人達から排斥され、そのうち戸籍を売ってお金をえても戸籍無しの浮浪者を狩る集団に暴行された挙句お金を盗られ、戸籍が無いから法の庇護が受けられずに泣き寝入りして、後はそのまま野良猫とかを食べつつ中年になって体が弱れば冬の寒さで死ぬんでしたっけ?」
「………一応申請すれば生活保護は受けられるですよ?
まぁ、前科者はなかなか認可が下りずに大変ですけど」
在り得なくは無いが微妙に飛躍しているギンガの話を聞いたことでツヴァイは興奮が治まり、普段通りの肺活量と声量で訂正を入れる。
だが、今度はギンガが興奮してきたのか声を僅かばかり大きくしながら語り出す。
「まぁ、比率等は詳しく知りませんが、汚職や殺人があっても市街戦なんてまず無い程平和で、就職難と言っても最低限の生活保障は真っ当な人間なら受けられる世界が質量兵器だけで構築されて維持されているんですから、遅れているとか野蛮とか決め付けないで素直にその世界の出身者に意見を仰げば良いと思うのに、どうしてそれをしていなんでしょうかね?
それにあの世界で驚いたのは、どれだけ才能が在ろうと義務教育が終わっていない子供を働かせるなんて事が無いということです!」
「一応言っておくですけど、芸能関係は例外的に認められているですし、家庭の経済的事情があれば保護者と学校の許可の上で短時間のアルバイトも認められているですよ?
後、飛び級制度も在るです」
「でもそれは飛び級しなくちゃ働けないってことですよね?
魔力さえ在れば学齢や筆記試験以前に、精神鑑定すら受けずに就職出来るミッド世界に比べれば遥かに正常だと思います!
…………正直、ミッドの文化……と言うか、ミッドの風潮は異常を通り越して危険です!」
拳を握って力強く主張するギンガ。
対してツヴァイは、話の内容的にリインフォースと速人に殆ど関係無いので至って冷静であり、ティアナは―――
(情報収集と割り切った途端、好奇の視線が全然気にならなくなったけど……………色々人間として大切なモノを無くしたのをひしひしと実感するわね)
―――と内心思いつつ、ツヴァイとギンガの話に耳を傾け続けた。
「次世代を担う筈の子供を、魔力が在るってだけで碌に戦闘教育させずに前線に送り込んでるですからねぇ。
しかも大の大人が安全な所から妬みや僻みや嫉みや派閥争いで子供を事故死させようとすることなんかザラですしねぇ。
子供を大事にしないでどんな未来を作るつもりですかね?」
「そうです!子供を大切にしなければ人の世は滅びるっていうのに、局のお偉いさんはそんなコトも分かってないんです!!
少なくても死ぬ可能性が在る危険な場所に送り出すんですから、最低限の戦闘訓練は必須だというのに、[質量兵器は禁止している。そして魔法はクリーンで人死になど出はしない。無駄な考えはせずに任務に忠実でいたまえ]、とか言ってるんですよ!?
……危うく床を剥がして顔に投げ付けそうになる程頭にキましたよ!!」
「禁止して誰もがソレを遵守するなら戦争は起きないですけど、ソレも解らない思考の持ち主ならしょうがないです」
呆れているというより、心底相手がどうでもいいと、万人に伝わる態度と声で話すツヴァイ。
そしてそのツヴァイの言葉に―――
(そういえば天神先輩やリインフォース一尉も、客観的に言うから悪口じゃなくて辛辣な評価って感じしかしないわよね)
―――と、ティアナは少少関係無い事を思いつつ聞いていた。
「一人二人ならしょうがないで済ませられますけど、幹部の人たち全員がそんな感じなんですよ!!?
………いえ、レジアス中将やその側近の方達は居なかったですけど、新規加入隊員の訓練の変更案を出したからって、態態父さんの三佐じゃなくて陸曹を召喚して延々と嫌味を半日言い続けるって……………どんだけ暇なんですか!!?」
「まぁまぁ落ち着くです。
幹部……特に将官は仕事を任せるタイプと仕事を独占するタイプの二極化が激しいですから、暇なお偉いさんは兎に角暇だったりするです。……部下が失敗した時はの責任を大きいですけど。
で、部下に丸投げして仕事が無い暇人の生贄になってしまったのは災難と言えば災難ですけど、幹部は動くだけでも護衛や移動手段の確保に相手先の受け入れ準備として飲食の準備や警護体制や部屋の確保に各員のスケジュール調整とか、やることが沢山在るです。
漫画の様にこっそり視察しようとするなら、最低でも護衛を振り切れるだけの能力は要るですし、他には軽率な行動を採ったという叱責や罰、若しくは風評被害等で現在の地位から引き摺り下ろされる可能性も受け入れなきゃいけないです。
………まぁ、陸曹を呼び付けて半日も幹部達がぐちぐちと言うのは職務怠慢としか言いようが無いですけど」
「ですよねですよね!!?
それに途中から部下や孫との見合話に脱線するとか、さらに酷い職務怠慢もあるんですよ!?
ですけど職務怠慢はまだ良いんですよ!
問題なのは毎回毎回と海や空から一時協力で派遣されて来た相手に初めから嫌味炸裂させて連携不可能にして、事件が起こった時に現場封鎖や情報封鎖という壮絶な足の引っ張り合いをして、酷い時は人死にが出る事態になるんですから堪ったもんじゃないんですよ!!?」
「……まぁ、現場の者から見れば一方的に陸の高官が事態を悪化させているようにしか見えないかもしれないですけど、実際は派遣する海や空が事前に嫌味を目一杯言うのが大抵大概大体大略大凡通例慣例因習常規旧套ですから、陸のお偉いさんも嫌味の100や200は言いたくなると思うですよ?
他にも今迄に海や空から派遣されて来た凡そ全ての面面は、魔法を許可無く悪びれもせずに使用しまくっているですから、警戒や嫌悪される土壌が出来上がっているのも理由だと思うです。
実際、何処かの隊長達は非常事態なら許可無く飛行魔法どころか砲撃魔法すら都市部で使用しても構わない、とか思ってるみたいですし。
…………精神鑑定テストの結果に唖然としたのは初めてです」
減点式ではなく加点式の試験にも拘らず、一つしかない丸が0点の丸だったことを思い出し、初めて見た時は名前の記入漏れが原因かと思い、丹念に名前の細部に至るまで確認した時の事を疲れ顔で話すツヴァイ。
そしてその話を聞き、以前の事を思い出したギンガは多少落ち着きを取り戻しつつ返事をする。
「あ、その話は陸では有名ですよ。
たしか極限下での魔法行使が、〔リンカーコアを引き摺り出されている最中、街中に張られた封鎖結界を集束砲で破壊しようとした〕、って記入して、後の面接で何を思ってそんなことをしたかと訪ねられた時、〔失敗してデバイスだけでなく自分も壊れるかもしれないけど、やる前に諦めたくなかった〕、って言う奴ですよね?
不発で終わればまだ良いですけど、狙いが来るって結界を破壊した後に砲撃が都市部を直撃したり、他にも通常空間に戻った時に自分以外の攻撃に関する問題とか………。
一番大切な民間人のことを全然考えていないってのは、さすが個人プレイ特化型の海や空のエースだと思いましたね」
「相手が重犯罪者で、しかも大規模扇動や大量殺害が可能且つ実行する可能性が高いならば、最悪一部の民間人を切り捨てるという選択は妥当といえば妥当です。
けど、絶対とは言えなくても絶対という言葉に迫れる程の万全な状態で挑むか、時間経過で民間人の危険度が急速上昇する以外では禁じ手です」
「ですよねー。
あと、空港火災の時だって、熱波や爆炎が渦を巻いてたり、瓦礫で生き埋めになってる可能性が高かったり、高濃度魔力が満ちていたりしたのに、どうやって正確に生存者の有無と位置を把握しきれているって自信が在ったのか不思議です。
それに、いったい何時何処で誰が殺傷設定での魔法使用許可を出してて、しかも中に人が残されているかもしれない状態で壁や床や天上や外壁の破壊の許可が下りたのか、………本当に謎です……」
「あ、それはですね、最初から一定以下の生体反応は認識しないようにする代わり、あの状況下でも可能な限り誤認無しで生存者を識別出来るように精度を上げてるんですよ。
で、表示されたポイントを全て確認したら徐徐にサーチャーの精度を落としていくんですよ。
ですから、データ上は生存者0名状態になってることは珍しくないんですよ」
一息入れる為、温くはないが暖かい程度のオレンジジュースを飲んで小休止するツヴァイに、ギンガは不信というより困惑の表情で問う。
「でも、当時の現場指揮官達はそんな割り切った考えは出来ないと思うんですけど?
どう見ても義理人情に厚そうですし………」
問い掛けられたギンガの言葉にツヴァイは溜息を吐き、その後、黙って聞いているティアナに少しだけ眼で確り聞いているようにと促してから答える。
「あのですね、幹部の中でも尉官と佐官の壁は凄〜く厚いんですよ?
一尉迄ならコネや単独戦闘力で就けますけど、佐官に就く為には一定範囲の治安を維持する能力が不可欠なんです。
仮に壮絶なコネや単独戦闘能力で艦隊を相手取れる力量が有るとしても、佐官や将官の待遇若しくは名誉職になるだけで、相当権限や直接権限は有せないんです。
これは人を扱う能力の無い者に、無駄に人を使い潰されない為の防護策なんです。
ですから、佐官やその相当権限を持つ者はそれだけで人を使うだけの価値を認められた者ということなんです。例外は在るかもしれないですけど。
兎に角、そんな訳で佐官に就いているんですから命の選択は出来て当たり前です。
て、言うかですね、命の選択が出来なくてもマニュアル通りに行動すれば自動的に命の選択が出来るようになってるですから、何も考えずにマニュアル通りに行動すれば最低限のことは出来るですから、別に命の選択が佐官なら誰でも出来るというわけじゃないですけど。」
少し喋り疲れたツヴァイは温かいと温いの中間の温度のオレンジジュースを全部飲み、もう一つ同じのを注文した。
そしてツヴァイが追加注文を終えたのを見計らい、ギンガは不思議に思っていたことを訊ねた。
「あのー、でもツヴァイさん達は全員佐官じゃないですよね?
どう考えても全員佐官程度には最低でも就けるだけの能力と実績が在る気がするんですけど……」
「あ、それは単純に動きにくくなるから昇進を蹴ってるだけです」
「あ、なるほど」
ツヴァイの言葉にあっさり納得するギンガだったが、ティアナはツヴァイ達が昇進出来るのに蹴っていたと知った為か驚きで眼を丸くしており、それを見たツヴァイは捕捉と言うより説明を始めた。
「どうせ少し調べれば分かるですから言っちゃいますけど、前にお姉さまが将官で、お兄様とツヴァイが一佐にされて海に引き抜かれかけたんですよ。
でも海で飼い殺しにされる気なんてツヴァイ達は全然無かったですから、辞令が下った後即座に陸の管轄でお兄様が態と問題行動を起こしたんですよ。
結果、お兄様は責任を取る形で管理局を辞めて、お姉さまとツヴァイは責任を取れという陸の要求に従って陸の所属に戻ったんですよ。五階級以上降格して。
あ、それと問題行動はですね、ミッド局員の給料とボーナスを空港火災の被害者支援口座に振り込んでしまったことですけど、損失分は即日個人資産から支払ってますから混乱は無かったですよ。
で、肝心の昇進を蹴る理由ですけど、現場で動ける限界は精精佐官ですけど、その場合は同部隊に自身の上司が所属してないとまともに動けないですから、ツヴァイ達は佐官になっていないんです。
そしてツヴァイが曹長でお兄様が三士なのは、お姉さまが後方で支援と指揮をし、ツヴァイが現場で支援と指揮をし、お兄様が現場担当と割り振れるからです。
それに、尉官迄なら佐官と違って気安く転属が可能なのも大きいです。
まぁ、佐官相当権限が振るえる資格を持ってるですから、佐官に昇進させたり転属させようとする動きは在るですけど、以前昇進と転属を蹴る為に問題行動を起こしたのは上層部では有名な話ですし、他にも色色思惑が絡んだ結果、昇進は現在保留になってるです」
ツヴァイはティアナがある程度納得したのを一度確認し、序とばかりに言いたい事を一つ付け足し始める。
「後、これは助言と言うより御節介ですけど、昇進するなら階級に応じた事務系も修得していた方が良いですよ?
事務系を覚えてなければ、大成する前に海や空に引き抜かれ、事務系を碌に覚える暇も無い程前線に送られ続け、大体30前後で体を壊して天下りして細細と生きてく羽目になるです。
逆に事務系を覚えて陸の機密に関われば簡単には引き抜かれないですし、引き抜かれて体を壊した後にクビになりかけても陸に戻ることも大抵は可能ですから」
話したい事を話し終えたツヴァイは、食事中に冷水を飲みたくはなかったが、喉を湿らせる為に冷水を僅かばかり口に含んで温めた後に飲み込んだ。
そしてそれを見て話が一段落したと判断したティアナはツヴァイとギンガに訊ねた。
「えーと………凄く貴重な話だったんですが………、周りに丸聞こえみたいでしたけど…………良いんですか?」
満席でないとは言えそこそこ人の声がしていた店内だったが、それでもツヴァイとギンガの会話は初めの方に大声を出していたこともあり、周りが会話の内容に興味を覚えた為か静かにして聞き耳を立てていたらしく、ツヴァイが大声を上げ始めた辺りからの会話を多くの者が聞き取ってしまっていたが、ツヴァイは気にした素振りも見せずに返事をする。
「別に話して不味い事は話してないですし、聞いた者が危険になるような事も話してないですから問題無いです」
「いえ………たしかにそうですけど……」
明らかに納得していない顔のティアナに、ツヴァイと同じく気にした素振りの無いギンガが笑顔で告げる。
「あくまで個人的不満を言い合ってただけだし、別に管理局にテロを行う為の演説でもないから問題無いと思うけど?」
「それはそうですけど………」
「今の会話を聞かれたのが原因で海や空の印象がマイナスになったとしても、普段からメディアの前で大大的に罵詈雑言を失言として繰り出してる面面に比べれば問題なんて何処に在るのか教えて欲しいくらいですよ。
別に勤務時間だったり制服を着ているわけでもないですし」
ツヴァイの言葉にティアナは理屈ではその通りだと思いつつも可能な限り巨大権力に睨まれる可能性は排除したいらしく、渋面の儘で頷くでも睨むでもなく葛藤していた。
そしてその様子を見たツヴァイは軽く溜息を吐き、更に告げる。
「あのですね、安全に長く局に勤め続けたかったなら、そんな未来は上層部に名前が出た時に超高確率で終わってると、とっくに気付いててほしかったです。
………そもそもですね、仮にティアナがどれだけ民間人に褒め称えられた上で昇進しても、ティアナを目の敵にする者は存在すると思っていた方が良いです。
何故なら、人数が増えれば認めることを認める者だけでなく、認めることを認めない者の存在も混じり出すからです。逆も又然りですけど。
そして昇進すればする程、認めない者の行動は苛烈になっていくです。
ですからその時の為、真偽問わずに自分の能力を示して牽制する必要性が目茶苦茶高いわけです。
つまり、上の顔色を窺うんじゃなくて、上と交渉や取引出来る存在……、少なくてもそれだけの度胸を持ってると知らしめる為にも、今の内にグレーゾーンへ突入した方が良いという事です。
分かったですか?」
話し終わるとほぼ同時にテーブルに置かれた追加注文のホットオレンジジュースを少し口に含み、目を瞑ってしまう程の酸味と胸が焼ける寸前の甘みを堪能しつつティアナの返事を待つツヴァイに、ティアナは自棄っぱちとも腹を括ったとも取れる表情をしながら言葉を返す。
「………気が付けば 背水の陣状態と言うか、水と言うよりも毒の溶岩な感じなのが泣けてきますけど、ここで納得しないと余計事態が悪化しそうなので素直に納得することにします」
「あ、良い勘してるですね。
さっき頷かなかったらスターズの隊長への愚痴を意訳して、挑発文章形式にした抗議文を空にティアナの名前で送っていたところです」
大した事無い様に言った後、ツヴァイは言いたいことは言い終わったとばかりにフルーツサンドを再び食べ始める。
だが、ティアナはツヴァイの発言に内心―――
(ナイス! あたしの勘!!)
―――と、強く思っていた。
そしてその思いを読み取ったらしく、残していたフルーツゼリー8人前を下品でない速さで食べ終わったギンガが苦笑混じりに話し掛ける
「ツヴァイさん達と付き合っていくなら、これくらいは普通に出勤する程度の感覚で対処出来ないと、ストレスで精神崩壊後に発狂死コース一直線だから。
特に、ジン君と付き合っていくなら、これくらいは寝起きに目覚ましのベルを止めるくらいの感覚で対応出来ないと、精神だけじゃなくて社会的にも物理的に自分が崩壊するから、今から慣れといた方が良いと思うけど?」
「……………………」
「それと自信が無ければ元気な今の内に、誰かに見られたくないモノを処分した方が、往生の際の時に安らかに逝けると思うから、割と本気で身の回りの整理はしといた方が良いと思う」
「この前新たな人生を踏み出したと思ったのに、もう往生の際!?」
「自分の思惑で死ねるなんていう事態はそうそう起こらないから、何時でも何処でも次の瞬間には馬鹿らしい理由で死んでるかもしれないって受け入れなきゃ、これから生きていくのが辛いと思うけど?」
「悟ってるのか諦めてるのか分からないんですけど!!?」
ティアナのツッコミに対し、ツヴァイは運ばれてきたデザートのチェリーパイを我関せずと言わんばかりの笑顔で食べ始め、それを見たギンガは勝手にティアナのツッコミへ答えることにした。
「多分、〔そういうもんなんだ〕、って認識してるだけで、単に認識とか理解とか痛感とか、そういうモノなだけだと思うけど?」
「あたしの新しい世界の住人は変人ばっかり!???」
「大丈夫。
嫌よ嫌よも好きの内、って言うし」
「それは言葉の使い方を間違ってると思いますけど!!?」
「じゃあ、開発されるから大丈夫」
「悪化してます!!」
「じゃあ調教?」
「最悪化してます!!」
「でも、ジン君の訓練受けてるなら、間違ってない気がするけど?」
「うっ…………」
裸身を晒しても羞恥で判断や行動に支障を来さぬように訓練させられたことを思い出し、思わず言葉に詰まるティアナ。
対してギンガは、そんなティアナの様子を見て苦笑いとも含み笑いとも判別し難い笑みを浮かべつつ話を続ける。
「羞恥心で判断を誤らない為とかの理由で全裸で戦闘訓練に移行したり、トイレの最中に襲撃をかけられたりとか、普通ならセクハラ目的としか思えないことを本当になんとも思ってないと丸分かりの表情で実行するから、文句が言い難くて言い難くて………」
「ですよね〜。
少しでも厭らしい眼や反応をしたら即座に訴えようと思ってたんですけど、服着てる時と反応が全く同じだったから、ある程度訓練内容と目的に納得はしましたけど、………飛び出る言葉が女のプライドを粉砕すること粉砕すること………」
「あ〜分かる分かる。
[客観的には魅力的だろう]、とか、[異性から劣情を抱かれたいのならば歓楽街に勤めろ]、とか、思春期にかけられるような言葉じゃない言葉が次から次に飛び出すこと飛び出すこと………」
「他にも、[どの部位に劣情を催す要素があるのか説明を受ければ、極小ながらも劣情を催す可能性は在るかもしれん]、とかいう台詞を吐きましたね。
………まぁ、リインフォース一尉に比べれば全部が全部圧倒的過ぎる格下ですけど………、それでもあたしは自分を結構可愛い女の子と思ってるのに……………書類を見るのも服を着てる姿を見るのも裸の姿を見るのも全部が全部全然同じ感じって………………」
女として以前に意思を持つ者と認識されているかも怪しいと感じているティアナは、女としてではなく人としてかなり落ち込んだ声を上げた。
だが、注文した物を全て食べ終えたツヴァイが、完食して吐いた一息とも呆れ交じりの溜息とも取れる吐息を吐き、ティアナに告げ始める。
「ギンガとティアナの裸ぐらいでお兄様が興奮するなら、今頃ツヴァイ達は純愛と肉欲と怠惰と倒錯の只中に居るです。
…………お兄様に興奮してほしければ、裸じゃなくて心臓や脳髄でも晒すくらいの意気込みが必要です」
「「死体愛好!!??」」
「なら死体になってみるですか?
今なら食肉工場の攪拌機を只で手配してやるですから、自宅にでも置いて身投げすれば体の殆どを晒せるですよ?
大丈夫です。頭から巻き込まれなければ、5秒程度は意識が残りますから、自分の中身も曝け出せる恍惚として快感を味わえると思うです」
表情や声だけではなく眼すらも笑っており、更には雰囲気も穏やかとしか感じられぬ為、ティアナとギンガは善意で薦めていると感じ取り、背中に冷たい汗が幾つか流れつツヴァイの言葉の感想を漏らした。
「穏やかな雰囲気を纏いつつ……」
「眼もしっかり笑っている笑顔で言われると………」
「意趣返しも有るには有るんでしょうけど………」
「善意も本気で有りそうなのがまた………」
何気無い会話でツヴァイ達とのズレを再認識したティアナとギンガだったが、ツヴァイは全く気にせずに携帯端末を操作しつつ話を続ける。
「サービスで予備動力源も付けて家の方に送るですから、時間に余裕が出来たら使ってみて下さいです」
「いえ…………あの…………そんなにこやか朗らか曇り無い眼で言われても困るんですけど………」
「さすがに私も命の方が女のプライドより大事なんで………」
「…………ティアナもギンガも根性無しですねぇ〜。
ツヴァイもお姉さまも、普段晒さない部分を晒せば興奮してくれると思って、何回か脚や腕以外にお腹や頭も開いたりしたですよ?」
「「……………………」」
「まあ、結局駄目でしたけど、お兄様が試しとばかりに自分も晒してくれたりしましたから、少しも無駄じゃなかったですけど。
……………あの時、血やお腹が絡み合って抱き合った日も大切な思い出です」
「「……………………………((恐っ!!!))」」
余人には理解不能な精神構造を暴露するツヴァイを、少なからず一般から乖離したと雖も殆どが一般の部類に位置する精神構造のティアナとギンガは、周りの客と同様に頬を引き攣らせていた。
だが、そんなことを気にも留めていないツヴァイは、何気無くティアに話を振る。
「で、話は戻ると言うより変わると言った方が近いですけど、関われば誰彼構わず魔改造しまくるツヴァイ達に関わった以上、ティアナの未来に平穏とか安楽とかの言葉は無いと思った方が無難ですよ?
………このままお兄様の訓練を受け続ければ、高確率でお茶の間に笑いを誘う死に方と死体を晒すですけど、低確率とはいえ見事乗り越えれば限定チート・ティアナになれるですし、極低確率で廃スペック・ティアナが誕生するですし」
「いやいやいやいやいや!!!?
高確率で死ぬなら止めて下さいよ!!?」
「? 同意書に、〔教導内容に効果が在ると客観的に証明若しくは説明可能であり且つ教導者が実践した場合、如何なる危険も承服するものとする〕、って記載してあったですけど?」
「限度が在りますって!!?
いくら何でも訓練での死亡見込みが達成見込みより高いのは在り得ないですって!!?」
力及ばず訓練の最中に力尽きること自体は受け入れているティアナだが、成功確率よりも死亡確率が高い訓練を許容する気にはなれず、慌ててツッコミながら抗議の声を上げた。
だが、ティアナの抗議に対してツヴァイは不思議な表情をしながら言葉を返す
「成功すればハイリターンですから、ソレ位のリスクは普通ですよ?
高高推定死亡確率70%弱程度で、超高確率でティアナが生涯至れなかった筈の領域に数ヶ月で至れるんですから、得過ぎるコースだと思うですよ?
無事乗り切れば、三十路迄には将官に成れるのがほぼ確定ですし。
何しろ既に一尉と三佐相当権限の試験に合格したりしてるですから」
「初耳なんですけど!?!?」
「八日前から二日前迄、もう少し扱える仕事を増やす為に試験を受けさせられたの忘れたですか?」
「あ………」
言われてティアナは訓練で衰弱した後、休憩する感覚で何かの試験を最近受けていたことを思い出した。
そして呆けたティアナの姿を見たギンガが苦笑いしながら話しかける。
「多分、前後不覚になる程疲労困憊した状態で試験を受けたから印象が薄かったんじゃない?」
「そう言えばギンガも半分気絶しながら試験受けたですよね」
「はい。
……後で執務管の試験だったと知った時は驚きましたよ」
「もっと驚いたのは、合格通知されたその日に資格返還された方だと思うですけどね」
「ですね〜。
大勢からしつこく考え直すように言われましたし」
笑い話でしかないという顔をしながら話すツヴァイとギンガに、諸諸の事情で執務管を少なからず特別視しているティアナが若干不機嫌顔で問い掛ける。
「………別に邪魔になるわけでもないのに、何で即日返還なんてしたんですか?」
少なからず声に棘が混じっているのを感じ取ったギンガは、ティアナの経歴と今迄の目的を思い出し、苦笑いしながら事情を話し始める。
「うーん………、受験申し込みは自分の意思じゃなかったけど、合格通知が届いた時は、[これで父さんをもっと補佐出来る]、って喜んだんだけど、………資格を持ってると海に引き抜かれるって直ぐに気付いたから、急いで返還したの」
「まあ、執務管資格を受ける者は全員海での勤務を希望してると思われてるですから、既に引き抜きの手配が済んでたですけどね」
「そうでしたよね〜。
で、本当ならそこで海に引き抜かれてる筈だったんだけど、初めからジン君が上の人と話を進めてて、私が陸に残ろうとしてる時は残れるように工作してくれてたの」
「〔大抵の局員の憧れとも言える執務管資格を即日返還して海に一泡吹かせられる上、そんな有能な人材が陸に残ってくれるなら〕、って、喜んで協力してくれたです」
「…と、まあ、そんな理由と経緯があったというわけなの」
「因みにギンガの階級は陸曹ですけど、陸では待遇は一尉です」
「………そうだったんですか………」
納得したらしく、ティアナの表情と態度と声から棘は消え、拍子を計っていたツヴァイは序とばかりに話す。
「まあ、ティアナは返還しなくてもレジアス中将が直直にポストを用意してくれてるですから、将官として引き抜こうとされない限りは資格返還する必要は無いですよ?」
「…………………あの………今更なんですけど、………あたしが合格したのって……何なんですか?」
ティアナは朧気に試験を受けていた記憶は在るものの、その記憶は全て休憩の片手間に何かをやっていたモノでしかなく、試験内容に関しては、[もう少し簡単なら多分寝てた]、程度の記憶しかなく、自分が受けていた試験が可也気になっていた。
そしてそんなティアナの疑問に対し、ツヴァイはティアナが創造もしていなかった答えを何気無く告げる。
「執務管と特殊監査官ですね。
あ、それとティアナのお兄さんの葬儀でアノ発言した二佐からスカウトがかかってるです。
意訳ですけど、〔無能な兄の尻拭いは妹のお前がしろ。断れば恥知らずの兄妹と言いふらすぞ〕、って感じの文章が鬱陶しく幾つも並んでたですね」
「…………………………」
ツヴァイの言葉を理解した瞬間、ティアナの顔から表情が抜け落ちた。
だがツヴァイは気にせず話しを続ける。
「他にも、〔上官とその同僚も纏めて連れて来い。可愛がってやるし出世も約束しよう〕、って感じにしか翻訳不能な言葉が並んでたですね」
「………………………………………………………………………………」
ティアナは半ば呆然としながらも雪崩が起きる寸前の様な緊張感を辺りに撒き散らしていたが、ツヴァイの次の言葉で我を取り戻す。
「少し探れば幾らでも不正が出てくるですから、気に食わなければ断る序に逮捕でもするです。
て言うかですね、ティアナの経験値稼ぎとして態態告発せずに残してるですから、サッサと証拠集めて告発しないと、お兄さまが不正の損害補填金として振り込んだのが尽きたらティアナが補填金を出世払いする羽目になるですよ?」
「今直ぐ―――」
「正式にティアナに通知される迄は補填金の心配はしなくていいですし、通知された後に調査しても問題無いと思うですよ」
「―――戻り………」
「まあ、仮にティアナが出世払いする羽目になったしても、財産没収して補填金に当てれば大丈夫と思うですから、通常業務と並行しても余裕だと思うです」
「でも、失敗したらティアナの未来は真っ暗っぽそうですけど?」
ツヴァイの訂正に安堵の息を吐いたティアナだったが、ギンガのその台詞で表情が固まった儘ツヴァイに眼を向け、それにツヴァイが何でもないと言わんばかりの口調で述べる。
「あんまり長い間何もしなかったら、ちょっとその好色に送り付けてやるだけですよ。
で、その後暫くしたらその好色を訴えて、慰み者という名の秘書に落ち着いたティアナ諸共監獄送りにするだけです」
「あ、暫く猶予時間が在る辺り、挽回の機会が在りますね」
「…………味方が欲しい………。
出来るだけ常識持ちの………」
半泣き且つ脱力しつつ呟くティアナ。
だが、そんなティアナの言葉にツヴァイはにこやかな表情で告げる。
「良い事教えてやるです。
常識持ちが常識内で行動するとは限らないですし、常識内で行動する者が常識持ちとも限らないです。
と言うかですね、大抵の場合は自分と色色違い過ぎる者は、違いが酷い程傍に居るのが苦痛ですから長い付き合いにならないです。
つまり、〔長い付き合いが出来る=相手と自分は少なからず似ている若しくは同類〕、って事です」
「…………………結婚したわけでもないのに人生の墓場に辿り着いた気分……」
テーブルに突っ伏しながら呻くティアナだったが、そこに追い討ちをかけるようにツヴァイが告げる。
「あ、ティアナが局員として働き続けるなら、多分子供は三十路を過ぎてからにしてほしいと言われる筈ですから、憶えといた方が良いですよー」
「私も最盛期が終わって後進の指導に入り始める節目の三十路辺りまでは出来るだけ家庭に入るのは控えてほしいって言われましたね」
「強制じゃないですから十代で子供産んで産休取っても文句は言われないでしょうけど、心象は悪くなるですね。
何しろ陸は有能な人材が少な過ぎて深刻的に困ってるですから。
あ、逆に結婚しても三十路辺りまで子供が出来なければ心象が良くなって昇進し易くなる筈ですし、後進の育成で成果を出せば前線から完全に退いて安全な後方勤務にしてもらえる可能性は凄く上がるですから、避妊や中絶しながら過ごすのもOKだと思うです。
まぁ、三十路辺りまで結婚しないのが一番心象が良くなるんですけどね」
「「生々し過ぎる発言は勘弁して下さい」」
戦闘中ならば兎も角、平常時ではティアナもギンガも羞恥心が少少低いながらも十分乙女と言える程度は持ち合わせている為ツヴァイの発言に拒否反応を示し、ツヴァイも別段何度も繰り返して発言することではないと判断した為、眼で了承の意を返して話を続ける。
「まあ、此の場で言いたいことは殆ど言ったですし、食後の一休みも充分取ったですから、後は肌が紫色になって震えながらもアイスを食べ続けてる、面白愉快な暴食者を回収してお店をお暇するです」
そう言ってツヴァイはカウンターで凍えながらもアイスを食べ続けるスバルを眼で示し、それを見て苦笑いしながらティアナとギンガが口を開く。
「穴を掘って食べ物を埋めない犬って、気絶するか眠るまで食べ続けるらしいけど、………今のスバルって正しくソレよね……」
「ある程度食べては化粧室に行ってたけれど、………色々と年頃の女の子としては終わってるような事をしてるとしか思えない……」
快食を通り越して見苦しい暴食としか表現出来ないスバルを見、其其感想を漏らすティアナとギンガ。
対してツヴァイは興味も無いとばかりに両者へ告げる。
「御愛想と其の他諸諸してくるですから、適当な所で待ってて下さいです」
鈍色に光る財布を取り出しつつ支払所に向かうツヴァイ。
そしてその背中に、遠慮気味とも苦笑気味とも付かない笑顔でティアナとギンガが声をかける。
「「どうも、奢らせてもらいます」」
「面白い部下とその同僚の精神管理に必要な経費と思ってるですから、気にしないで良いですよ。ティアナとギンガは」
―――
ツヴァイはティアナがスバルと近況に付いての質疑に応答すると、ほぼ確実に険悪な雰囲気を辺りに撒き散らし、下手すれば大声で怒声や罵り声を上げたりし、それが原因で店から追い出される可能性が高過ぎると判断した為、スバルを店の隅で只管好きな物を食べさせることで此の場では会話に参加させないことにした。
当然ツヴァイ達が現在居る店は本格的な菓子屋ではないので、数分でスバルは菓子の品書を制覇してしまう。
だが、金銭で解決可能且つ其れに値すると判断すれば躊躇わず金銭を使うツヴァイは、金に物を言わせてクラナガンの有名所の菓子屋から出前可能なようにした。
無論、注文する全店が出前など取り扱っていない以上、一軒に付き管理局員の生涯の平均収入の約半分を手間賃として支払い、営業妨害を受け続ける此処の店には備品と人材と土地付の店を三つ構えられる程の金銭を支払うことで一切の文句を封殺したのだった。
尚、実はツヴァイが金銭を支払った店は全て速人とリインフォースとツヴァイが立ち上げた有限会社の系列である為(事実上吸収した店が大多数)、支払った分は上手に経営指導すれば支払った以上の金額がツヴァイに利益として返ってくる為、ツヴァイとしては無駄に使ったつもりは微塵も無かった。
―――
ティアナとギンガが青白くなっているスバルを外へ運ぼうとしている様を見つつ、ツヴァイは付近一帯を店ごと買えるカードを店の主人と思しき者に手渡す。
プラチナカードを手渡された店の主人と思しき者は始めて見ただろうソレに一瞬驚いた表情になったが、直ぐに元の若干厳つい顔に戻って特殊な計上仕訳をレジに打ち込みつつツヴァイに話しかける。
「嬢ちゃん、………あんた局員かい?」
「そうですけど?」
特に気負った風も無く返答するツヴァイに、店の主人と思しき者は契約書に色色と書き込みつつ更に言葉を発す。
「アレほどぶっ飛んだ痛快な話を聞いたのは久しぶりだよ。
……っと、間違いが無けりゃここにサインしてくれ」
支払品目を書き込んだ支払契約書をツヴァイに差し出し、確認を促しつつサインを求めた。
そして特に支払契約書に問題が無いのを確認したツヴァイはサインをし、プラチナカードの残高から指定された金額を支払うことを受諾した。
プラチナカードから指定の金額を受け取った店の主人は契約書の写しをツヴァイに渡しつつ、ツヴァイに無骨な笑みを向けながら話す。
「名前はサインを見れば分かるんだが、俺は嬢ちゃんが気に入ったから名前が知りたいから教えてくれないか?」
右手を差し出しながら掛けられた言葉にツヴァイが言葉を返す。
「ツヴァイ。……ツヴァイです」
差し出され手を同じ右手で握り返しながら答えるツヴァイ。
「っとと、遅れたが俺はこの店の主人のクラッサ・フェーンだ。
今じゃ中将になったレジアスの坊やや、最近行方知れずのゼスト坊やとかが怒鳴り合った時以来に面白い話を聞けたよ」
「………あの二人はもっと豪快な料理やお酒の出る所に行ってたと思ってたです」
二人の現在の思考と嗜好と容貌から、ツヴァイは二人が小洒落た所で食べる可能性は、公衆便所の壁越しに熱く議論をする程在りえないと思っていた。
そして何と無くツヴァイの疑問を感じ取った店の主人フェーンは苦笑しながら告げる。
「結婚する前は訓練校の近くで賄い飯みたいなのを出す飯屋をやってたんだよ。
毎回後先考えずに景気良く食うもんだからしょっちゅう払えなくなってな、何度も皿洗いや掃除をさせたりしたよ。
まぁ、終わった後に腹が減ったとかヌかすもんだから、本当に賄い飯を食わせたり、時には新作料理の試食もさせたよ」
「どっちも目一杯動いてお腹が空いた時に好物が出ると、娘や部下の分を忘れて食べるですけど、当時は一歩間違えばお縄になる程だったんですね〜」
「おっ? 二人の知り合いかい?」
「うーん?…………知人と親友の中間ですけど、友達じゃないって感じですかね?」
「嬢ちゃんじゃなくて姐ちゃんだったか。
……いや、可愛らしい見かけによらず大した女だな」
・
・
・
「おっと、随分話し込んじまったな」
「ですね。
まあ、連れの妹の体温が漸く回復したみたいですから、丁度良い頃合です」
そう言ってツヴァイは折り畳んだ支払契約書が財布の中に入っていることを確認した後、ティアナ達の居る場所へ行こうとした。が、その前に店の主人のフェーンが声を掛ける。
「今度レジアスの坊やとオーリスの嬢ちゃんとかも誘って訓練校の近くにあった店っつうか家を訪ねてくれや。場所はレジアスの坊やが知ってる。
あと、事前に連絡でも入れて夜にでも訪ねてくれれば美味い飯と酒をたらふくご馳走してやるぜ。
内装は当時のままだし、御代は今日の分でお釣りがくるから安心していいって伝えてくれ」
無骨な笑みを湛えながら掛けられた言葉にツヴァイは不思議そうな顔で返事をする。
「構わないですけど、お金は貰える時に貰えるだけ貰っといた方が良いですよ?」
「食う物と住むと所と着る物と老後にも困ってねえから趣味に走ってるだけだ。気にしなくても大丈夫だ。
だいたい姐ちゃんも払わなくて良い時には払わん方が良いぜ?」
「お金を貯めればお金持ちに成れますけど、お金を使われなければ豊かになるのは難しいんですよ。
そして豊かになればそれだけお金も沢山入ってくるですから、資産家はお金を使って市場を回して何ぼなんです」
「…………分かった。
姐ちゃんの言ってることは理解できねえけど、とにかく姐ちゃんが金を払って良かったと思える程の飯を作ってやるから楽しみにしてな」
その言葉を聞き、ツヴァイは此れで話は終わりと言わんばかりに背を向け、振り返りながら告げる。
「分かったです。
それじゃあ、御馳走様でした。
おにぎり、美味しかったですよ」
「ありがとさん」
その言葉を受けたツヴァイは、外に居るティアナ達の近くへと止まらずに歩き去った。
そして、ティアナ達と合流する寸前、自由待機になっているツヴァイに管理局専用回線を通して連絡が入った。
――― Side out:とある純喫茶店 ―――
――― Side:クラナガンのとある街並み ―――
麗らかな平日の昼下がり、幼さの残る中性的な容姿の者と、幼さの残っていない妙齢の女性が、騒がしくない程度に活気の在る街並みを並んで歩いていた。
しかし、両者とも特に目立った行動もせず、更に一見して極普通の服装をしているにも拘らず、かなりの人目を引いていた。
だが、両者とも人目を気にした素振りも見せず、整った歩行で街並みを移動しつつ金髪の妙齢の女性が黒髪の中性的な容姿の者に話しかける。
「無目的にのんびりと歩くと……………、こんなにも世界の広さと色を実感出来るものだったんですね……」
感慨深く且つ感動しつつ、ゆっくりと、実感を噛み締める様に言葉を紡ぎ、周りの風景を穏やかな表情で眺めつつ返事を静かに心待つ金髪の妙齢の女性。
対して返事を待たれている隣の者は、動作と雰囲気の両方に一切の変化を見せぬ儘に返事を述べる。
「暇であることが自身以外を実感出来る要因とされている。
無論、実感出来ぬ以上受け売りだが」
相手の方に顔を向けず、しかし隣を歩く姿を視界の端に納めつつ発せられた言葉に金髪妙齢の女性は微笑みを向けながら言葉を返す。
「無責任な発言ですけど、実感とは得るのはでなくて気が付く類のモノですから、ある日突然前触れも無く世界を実感出来ると思います。
そして願わくばその時は速人氏が幸福であらん事を……」
「聖職者が祈らずに願うだけという発言は、聞く者よっては問題発言と受け取られると思うぞ」
行く道の先に幸を願われたにも拘らず、礼を述べるのではなく問題点を指摘する速人。
だが、それに対してカリムは悪戯に成功した子供の様な貌を浮かべながら言葉を返す。
「ふふふっ。
今の私は聖王教会の騎士ではありますが、聖王教会の教徒ではないんですよ。
政教分離という言葉に感銘を受けたり、他に色々と思う所が在りましたので脱会し………つい先程内示とはいえ許可が下りたんですよ」
「聖王教会に騎士及び幹部として所属している以上は政教分離と言い難いが、時空管理局での逆風は1年もすれば弱まるだろう」
「はい。
ですから1年程は信を得るのに奔走し、それからベルカ自治区の自治権を政教分離した組織に移行するよう調整しようと思っています」
大通りで話すには重大過ぎる内容だが、既に細部に至る迄熟知している尾行者達意外に盗聴される要素が無いと判断しているカリムと速人は気にせず会話を続ける。
「ですから、もう神婦でも修道女でもありませんので、結婚も出来るんですよ?」
悪戯心と好奇心と期待が混ざった眼差しと言葉だったが、速人は―――
「派閥の基盤を固める迄は控えた方が得策だろう」
―――と、素っ気無い言葉を返すだけだった。
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〜〜 視点変更:速人 & カリム → 尾行者 〜〜
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「………シャッハ、…………義弟の僕としては姉さんの恋路を邪魔したくないんだけど?」
「邪魔ではありません、援護です。
それと恋路ではなく小路です。破滅への袋小路です。
故に私達は騎士カリムがそこから脱することが出来る様に陰ながら援護をするのです。
ロッサ、あなたも義弟ならば義姉が破滅の道を歩まぬ為に尽力しなさい」
速人とカリムから50m以上離れた所から、10m程離れた所で追跡させているサーチャーから送られてくる様子を見ながら尾行していた二人だったが、うんざりとした様子で告げたヴェロッサにシャッハは呪い殺さんばかりの憎悪が渦巻く眼を向けながら持論を展開した。
だが、ヴェロッサは辟易した貌で反論する。
「この場で義姉さんに僕達が何か出来るわけでもないのに、後で黒いオーラを展開した義姉さんに嫌味混じりの説教を受ける羽目になるなんて無駄を通り越して面倒事………いや、ただの苦行でしかないと思うんだけど?」
「苦行で結構。
自らを苦しめることで俗世の穢れを洗い流すことが出来るんですから」
「穢れって……………宗教家はその俗世の人達の寄付で成り立ってると思うんだけどな……」
「逆です。
教徒に成り損なった者達が俗世を作り、俗世に生きる罪の意識を少しでも減らそうと寄付という容で救いを求めるのです。
断じて宗教が俗世の下にあるのではありません」
「(教徒には懐が広いんだけどなぁ)
……………うわぁっ。
…………殆ど告白なのに、何で平然と会話が普通に続くかな?」
カリムの目線と表情と台詞と雰囲気的に、意図的に無視しない限りは自分に恋慕の念を寄せていると分かる状況下の速人だったが、恐らく無視するわけでも理解していないわけでもないであろうにも拘らず、好意に答えることよりも会話を続ける方の優先順位が高いと言わんばかりに平然と話を続けていたことにヴェロッサは呆れていた。
「義弟の僕から見ても綺麗………って言うか可愛いと思えるのに………………、やっぱり異性と付き合うには少なからず性欲は要るってことなんだね、うん」
「そうです。
人間は欲を捨て去るのではなく、欲を持ちて尚律することで他者と通じることが出来、そして高みを目指すことが出来るのです。
故に欲の無い物は他者と通じることが出来ず、又決して高みを目指すことが出来ない堕落の極地に居る物なのです。
よって、あのような悪徳や不義や醜行や非道で構成された大罪人は、全く騎士カリムに相応しくありません。
ですから我が祈りにより起こる不慮の事故で大地の肥やしとなるべきなのです」
尾行している自覚が在るのかと疑わずにいられない程熱く語るシャッハの声を聞きつつ、ヴェロッサは―――
(デート擬きの約束を取り付けて直ぐにそれとは別にデーと擬きが実現するくらい見えない糸で結ばれてるんだから、いい加減認めればいいのに。
………妾になりそうなのは僕も嫌だけど)
―――と、シャッハが聞けば憤慨しそうなことを思っていた。
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〜〜 視点変更:シャッハ & ヴェロッサ → 速人 & カリム 〜〜
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「あの………速人氏?」
「…」
無言ながらも視線を以って先を促す速人。
そしてその視線を受けたカリムは、どう切り出したものかと悩んだようだったが、悩んでも仕方ないと思ったらしく、苦笑いしながら話し始める。
「後ろの二名は御気になさらないで下さい。
悪気が在る訳じゃないと思いますので。………少なくともロッサは」
「精神干渉系の能力を有す者が、害意が有ると思しき近接攻撃特化型の者に率いられていると判断している以上、気には留める」
「まあ…………そうですよね」
精神干渉系は殆どの場合が物理的強度等を無視して対象に干渉が可能な能力であるので、警戒されてしまうのは仕方ないと納得したカリムは溜息混じりに言葉を返した。
そして隣を歩く速人の顔を軽く見遣った後、カリムは苦笑いを強くしながら更に話す。
「まあ、AAAランクの教会騎士が非魔導師の局員を襲撃したならば、最低でも襲撃した側は色んなのが終わりますし、当然私と教会も多大な不利益を被りますので、まず大丈夫だと思いますけど……」
「内示の段階でカリムの護衛を解かれていると推測される以上、暴走しても自身と聖王教会に不利益を齎すがカリムには然して不利益を齎さない、若しくは俺を排斥することがカリムの益と判断しているであろう以上、襲撃若しくは蓋然性の高い事故が起きる可能性が高いだろう」
「ですよね………」
短気で激情家だが、決して短慮ではないシャッハのことを如何したものかと頭を悩ませるカリム。
だがそれに対して速人は何でも無い事の様に答える。
「仮に襲撃を行ったならば、シャッハ・ヌエラは仮内示の際に強硬に反対して業務を放棄した為、正式な内示の際にカリムの護衛を解かれた際に聖王教会とは無縁になっていたという書類を時空管理局に提出し、書類上は一民間人が暴走して時空管理局員に襲撃した容とするだろう。
因って其の際カリムは、〔聖王教会の教徒の多くが狂信者の為、政権を宗教から分離する為の調整役と成るべく教徒を辞して時空管理局の役職に力を注ぐことにした〕、と言う発言の効果が増すので、以前俺に語った概略された計画への影響は軽微だろう」
「いえ、そうではなく速人氏の身に危険が……………」
「四肢及び器官が欠損する可能性は約0.000000907002151%だ。
死亡する可能性は約0.000000000000001%だ。
此の確率の可能性を危険視する必要はないだろう」
相手が陸戦AAAランクと十分承知していて尚その様に告げた速人を見遣る前に、カリムは僅かな間だけ自分では背格好もよく判らない程遠くに居るシャッハを少少引き攣った表情で見、それから直ぐに表情を元に戻してから速人を見遣ってから問い掛けた。
「あの…………AAAランクの相手を圧倒出来る程の力を御持ちなのですか?」
今迄出鼻を挫く様な対応を速人が行ってきたことを何度も見たことがあったカリムだったが、そこまで速人とシャッハの力が離れているように思っていなかった為、驚きと訝しさが混じった問い掛けを発した。
だが、それに対して速人はカリムの予想の外に在る答えを返す。
「時空管理局の武装局員到着迄時間を稼ぐだけならば俺が圧倒する必要は無い。
私的時間の最中に襲撃を受けたのならば、時空管理局員としての権力を行使出来ぬ代わりに時空管理局員としての義務を負わぬ以上、緊急避難として他者を盾にすることが可能だ。
そして其れはシャッハ・ヌエラに対して効果が高く、時間を稼ぐ事が極めて容易になる」
「……………シャッハが襲撃しなければ問題無いですし、仮にシャッハが襲撃する場合はほぼ確実にシャッハに問題が在る以上、此処でシャッハを攻めずに速人氏を攻めるのは筋違いでしょうから攻めたりはしませんが、…………………もう少し穏便に済ませられませんか?」
「俺がシャッハ・ヌエラを生死問わずに無力化すれば一次被害は抑えられるが、其の場合二次以降の被害規模が一次被害を上回る可能性が極めて高い」
「…………色々言いたい事は在るのですけど、どのような計算式で被害予測シミュレートしたのか非常に興味が在るのですが………」
視線に、[計算式を聞いてみたいのですが、御聞かせ願えますか?]、と込めながら速人の顔を覗き込むカリム。
対して速人は少少カリムに接近され過ぎた為、警戒されない範囲で歩調と方向を調整してカリムから離れつつ答えを返す。
「先ずXを最大出力のエネルギー計算を行った後に減衰無しで地表に直撃した場合に於ける衝撃の最大加速度若しくは最大速度を算出した数値とする。
次にCiを管種及び管径及び地盤条件及び液状化程度等の補正係数をi=1−nとする。
次にR(x)を標準被害率の数値とする。
次に―――」
「―――お、御話の最中大変申し訳在りませんが………間違い無く私の理解が追いつきませんので、私から尋ねておいて本当に申し訳在りませんが、御説明を辞退させて頂きたいのですが………」
恐らく相当に簡略化されたているであろう害算出方法の触りの触りの触りの部分を触り程度聞いただけでカリムは自身の理解力を超えていると判断し、理解も記憶も出来ない説明を続けてもらっても心苦しければ速人にとっては無駄でしかないだろうと思い、カリムは速人が話している途中で話題の終了を申し出た。
そしてそのカリムの申し出に速人は―――
「分かった」
―――とだけ告げて話題をあっさりと打ち切った。
▲
●
▼
〜〜 視点変更:速人 & カリム → シャッハ & ヴェロッサ 〜〜
▲
●
▼
「……………………私がロッサを連れているから警戒しているとしか聞こえませんね………」
「い、いや…………シャッハだと接近して攻撃しなきゃいけない分だけ証拠が残るから、それだけシャッハの襲撃はありえないって思ってるんじゃないかな?」
短時間で胃潰瘍になれる程の雰囲気の中、ヴェロッサは少しでも雰囲気を和らげて胃の負担を軽減しようと必死にフォローする。
だが、ヴェロッサのフォローが水泡に帰す様な発言が次次と速人から飛び出す。
「…………万に一つも無いのならば事故として十分扱われるということですね」
「いやいやいや。法廷でソレを客観的に証明出来なきゃ事故じゃなくて暴行だから?」
「身の程も弁えずに騎士を侮辱した以上、死を以って償うのは当然のことです」
「そんな当然は存在しないからね?
と言うか、騎士なら生き様で見返すくらいの不言実行であるべきと思うんだけど?」
「1対1で戦うという最低限の誇りも持ち合わせていない輩には、背骨を粉砕してでも誇りの何たるかを教えるのも騎士の役目です」
何かしらの事故が発生した際、カリムを護るドサクサで速人を屠れるようにと、デバイスを何時でもセットアップ可能な様にしながら独り言に近い感じでヴェロッサに告げるシャッハ。
対してヴェロッサは神でもない過去の偉人に祈ったところで無駄だと身に染みて分かっている為、漠然としたナニかに強く祈りだした。
(この際巻き込まれても構わないから、………………後で宛ら加害者の如く扱われないで済みますように…………)
神や運命と呼ばれる様なナニかに対して強く祈ったヴェロッサだったが、側に居るシャッハを見た瞬間に祈りが気休めにしかならないと現実が其処に在ると改めて実感し、脈絡無く気絶してことをやり過ごしたいと強くい思いながらも耳に届くシャッハの声に意識を割く。
「面白い事を言いますね面白いことを言いますね面白いことをいいますねおもしろいことをいいますねオモシロイコトヲイイマスネOモシロイコトヲEマスネ」
「……………………」
「まるで私を超えているみたいですね★♪(笑)」
「………あ、はやて?説明の時間が無いから繋げっぱなしにしといて。あとばれたくないから声掛けないでね。じゃ。
はあぁ……………………義姉さんも僕達がストーキングしてることくらい知ってるのに、………何で態々危険な発言を連発するかな?
…………やっぱり友情より恋なのかな?
それとも……………夢の実現に向けて教会の縁故者を遠ざける気なのかな?」
ヴェロッサは少し前に、〔聖王教会関係者、特に聖王教会教徒とは距離を置く〕、と伝えられ、更に、〔これから暫くは1対1で合う時は少なくともベルカ関係以外の地にしてほしい〕、と言われていた事を思い出し、シャッハが自らの行ないに因って離れざるを得ないように誘導しているのかと思ったが、カリムの表情を見、単純に軽い興奮若しくは昂揚状態の為に周囲への配慮が欠けているだけだと判断し直した。
「恋すると美しくなったり強くなったりするのは本当みたいだけど、周りが見えなくなるのも本当みたいだね」
「誰が誰に恋していると?」
「や、別に誰が誰を好きになって当事者が茨の道を歩むことになろうと、それはそれで良いと思うんだけど?
ストーキングしたり相手を殺したりしなければ」
可也解り易くストーキングを止めようという意味が込められたヴェロッサの言葉だったが、シャッハはヴェロッサの言葉を意図してか意図せせずにか全く深読みせずに言葉を返す。
「そうはいきません。
由緒ある高貴な血筋の者は相応しい相手を娶って子を生し、そして次世代の教育と平行して下々の者を繁栄させなければなりません。
それが下賎な下々の上に立つ貴き者の義務です」
血筋と高貴さは別物と思っているヴェロッサだが、上に立つ者が下の者に対して負う責任に関しては尤もだと思っているので、態態話が更に荒れそうなツッコミは控えることにした。
だが、義理とは言え、姉であるカリムの幸せを願っているヴェロッサは、少しだけとはいえカリムの恋を手伝うことにした。
「それって……………王族とか領地経営とかしてる貴族とかの話だと思うんだけど?」
「騎士カリムは聖王不在の現在に置いてはベルカ自治領、…………何れ聖王が御帰還される約束の地を納め守護する一角です。
たとえ領地経営を行っておらずとも騎士カリムは聖王に仕えた家の者として、何時の日か御帰還なされる聖王を御迎え上がり、同時に聖王が御帰還なされる血を守り且つ発展させる義務が在るのです。
そしてそれは規模こそ小さいものの、貴族の在り方そのものなのです。
故に、遥か昔より今に至るまで、…………聖王が崩御なされた混乱期においてすら絶える事無く血を存続させた者こそ騎士カリムには相応しいのです」
「……………それだと人格者だけど好色で特殊性癖持ちの老人が見合い相手になる可能性があるんだけど?」
「月日を積むことによって人間は高みに至れるのです。
ならばその様な方が騎士カリムの伴侶になられれば、騎士カリムは素晴らしき導き手を得られるでしょう。
第一、特殊な性癖を御持ちでも、伴侶との私生活でならば何一つ問題在りません。
寧ろ溢れんばかりの思いと愛を一身に受けられ、更に早くに御子を身篭ることすら出来るのですから、素晴らしいことではないですか」
「…………月日で人が成長するなら、人間誰でも勝手に大人どころか聖人に成れると思うんだけど?」
可也物事を都合良く解釈していると感じたヴェロッサは、シャッハに感じた儘の疑問を投げかけた。が、疑問に対するシャッハの答えは―――
「止ん事無き血と由緒ある家柄で育たなければ、人間は高みに至れません。
ですから選ばれた高貴な者は血と家を存続させ続け、下々を導く偉人や聖人を輩出し続けるのです。
そして下々の者は恩恵を与えて下さる高貴なる者に尽くすという理の下、身命から末期に至るまでの人生全てを捧げ尽くすのです。
……人は由緒有る伝統や環境や血無くして高みには至れません」
―――ヴェロッサに更なる頭痛を齎すモノだった。
▲
●
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〜〜 視点変更:シャッハ & ヴェロッサ → 速人 & カリム 〜〜
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▼
後方から聞こえるシャッハの力強い主張を耳にしたカリムは、頬を引き攣らせながら内心で―――
(好きな男性の特殊性癖なら兎も角、それ以外の特殊性癖は………特に自分に向けられるのは断固お断りに決まってるでしょ!!?)
―――と、考えていた。
だが、速人と連れ立って街並みを歩くという貴重な体験を不機嫌に過ごすのは勿体無さ過ぎると思ったカリムは軽く頭を振って思考を切り替え、それから速人に声を掛けた。
「しかし…………私に少なからず隔意を抱いているレジアス中将が私と急に話がしたいなんて…………一体どういう要件なんでしょうね?」
カリムは好き嫌いで言えば間違い無く相手も自分を嫌っているであろうレジアスが、態態事前連絡無しで急遽会談を求めるという隙を晒したことを不思議に思いながら速人に尋ねた。
―――
先程速人と別れたカリムは、急遽レジアスから近場のホテルで会談を行いたいと申し入れられた(陸と本局の一高官の間に機密回線を設ける事は流石に出来なかった為、普通の将官専用回線を使用した連絡)。
更に念の入った事に時空管理局理事官のカリムを招いているので、教会の護衛を付けず且つ時空管理局員の制服を着用して来てくれという条件まで付けて。
〔聖王教会の者ではなく時空管理局の者同士が会談をし、更に所属と階級は異なるが対等な関係と示す為、どちらかの執務室ではなく民間施設で会談をする〕、という理由が在るだろうことはカリムにも推測出来たが、流石に護衛も付けずに現地に向かう危険性を受け入れることは承諾しかねた。
又、少しでも時空管理局内の情報に明るければ、カリムが実際は殆ど教会の者だということは明白である為、どれだけ対等な関係と周囲に映るよう尽力しようと、レジアスとカリムが一対一で会えば大多数に悪印象を抱かれるだけだという理由も存在した。
だが、レジアスもその程度のことは重重承知している為、カリムの護衛全般は運良く近くに居たカリムの補佐官でもある速人に任せ、レジアスは運良く先程まで報告に来ていたリインフォースに護衛全般を任せることにした。
此れに拠り、カリムは自分の補佐官であり且つ騎士道精神に唾吐く行為や発言で可也の教会関係者から毛嫌いされている速人が同伴することで聖王教会菅家者と見られ難く、更に非魔導師な為に直接的な護衛力を疑問視する声も速人の顕現で適当に人材及び其れに類するものを徴発可能な為に大きな問題は無かった。
対してレジアスは教会で上級騎士の称号を得ているリインフォースを護衛に付けているが、レジアスの教会嫌いは可也有名である為、リインフォースが教会関係者としてレジアスを護衛していると看做すのは非常に難しくなっていた。
更に、一応は時空管理局関係者2名と聖王教会関係者2名で会談を行おうとしているとも捉えられるので、多人数でカリムを丸め込もうとしていると聖王教会が文句を言うわけにもいかなかった。
その上、護衛の人選に関してはレジアスとカリムに関係深い機動六課に所属している為、機動六課の今後について会談するという名目が在るならば不自然ではなかった。
尚、部隊長のはやてが来ていない点に関しては、〔暴走する危険性の高いなのはを最も抑えられるだろう(表向きの)存在が機動六課から一時的に離れるのは問題が在る為〕、と言えば、つい先日の模擬戦の様子を知っている陸海空の高官達は納得せざるを得ない為に問題無かった。
そして説明を受けたカリムは特に問題点が在る様には感じられず、又、速人とリインフォースが居れば危険は無いと判断したのでレジアスの話を受けることにした。
尚、速人が護衛と案内の役割が在るにも拘らず私事を語っていたのは勤務記録を残さない為に未だ勤務時間終了の儘であり、更に護衛対象のカリムが私人としての関係を強く望んだ為、速人は時空管理局員の制服を着用しているのである程度の線引きをした上でなら構わない旨を告げ、そしてそれを即座にカリムは了承して現在に至っている。
―――
レジアスの要件が緊急性の高い事であるだろう程度は予想が付いているカリムだったが、肝心の要件自体については聖王教会にも関係が在る碌でも無いこととしか予想が付いていなかった。
なので、恐らくレジアスから知らされてはいないだろうが予想が付いていると思える速人にカリムは場を繋ぐ感じで尋ねたが、直ぐにデート(とカリムは思っている)の最中の話題としては不適切だったと悔やんだ。
そして、カリムが内心で自らの失言を悔いている最中、速人は何時も通り淡淡と言葉を返す。
「大別して7種類、派生が87032通り在ると判断しているが、詳細は必要か?」
てっきり先程尋ねた時の様に理解不能な程に詳しく説明されるとカリムは思って身構えていたが、先程の遣り取りで学習したのか、速人は詳しく説明する前に一度カリムに尋ねた。
そして尋ねられたカリムは驚きこそしたものの、速人の話を理解しきることも記憶しきることも出来ないだろうと即座に結論を下して答えを返す。
「二度も此方から話を振ったにも拘らず話を取り下げるのは心苦しいですが、今回も理解と記憶が追い付かないと思いますので、謹んでご遠慮させていただきます」
「分かった」
速人のその返事を聞いたカリムは、速人がカリムを侮蔑したり嘲笑したりするでもなく、何一つ含む事無く知性や知能の評価が下方修正されたと厭な程分かってしまい、少なからず落ち込んでしまった。
しかも落ち込んだ直後に、以前見た速人とアリサの通信を真似、〔結論と概略だけを聞き、詳細は後で纏めて送らせる〕、という選択をすれば良かったと気付き、カリムは更に落ち込んだ。
だが、即座にアリサと違って理解や記憶以前に、理解や記憶しようという気が湧かない事に気が付き、余計に落ち込んでしまった。
しかし、護衛としてカリムの傍に居る速人は、カリムの判断能力や認識能力が一時的にとはいえ低下するのは回避すべき事態の為、速人にしては珍しく励ましの言葉を口にしようとした。が、速人は相手を激昂や昂揚させるなら兎も角、慰撫するには全く不向きだと思い至り、止むを得ず話を変えるという次善案を実行することにした。
「盗聴や監視の可能性を抜きにしても敷地外での話題は公務が絡まないことが望ましいと判断するので話題を変えるが、異論は?」
「……あ…………特に在りませんが…………何でしょうか?」
「俺が知る騎士とは主君に忠誠を誓い、其の上で武勲や善行を積むことを名誉としているそうだ。尤も、真の名誉とは忠誠を尽くすことであり、其れ以外の名誉は全て付随するモノに過ぎないらしいが。
で、其れ等を前提にした場合、聖王教会の騎士は何者を主と仰ぎ、そして主の意思若しくは遺志をどの様に解釈して行動しているか判断が仕兼ねる。
又、俺が知る修道女とは贅沢をせず清貧に暮らし、生涯未婚且つ童貞女として貞潔に生き、上位者に対して服従するという三つの誓願を立てており、更には嘗て存在した神の使いを現人神として奉り、其の現人神若しくは神の浄配として生涯を捧げるらしい。
だが、最後の聖王は記録では女性であるが、最後の聖王は女性を娶る性癖を大大的に開示していたのか?
それとも、俺が無知なだけで修道士が存在しており、其方が浄配となっているのか?
若しくは浄配の概念自体が無く、小間使いの統括役に近い存在なのか?」
「………………………」
―――
高確率で暇な権力者達の欲を都合良く叶える為に設立されたのが聖王教会だと速人は判断していた。
だが、動機とは対象の記憶情報を閲覧でもしない限りは推測の域を出ない為、速人は話題変換の序に聖王教会の重要人物の一人であるカリムの見解を尋ねることにした。
―――
答え難く且つ迂闊な答えや無回答では聖王教会の教義に泥を塗ってしまう問いを掛けられたカリムは、自分がシスターでないことは告げたが自分の家が司祭等を輩出するのではないと告げていないことに思い至り、恋愛や婚姻の自由が在るという事を告げるべく口を開いた。
そして、日頃の婚期に関する不安や鬱憤等が原因でカリムは熱く語り続けてしまい、結果として速人の問いに答える前に目的地へと到着してしまい、更に、丁度相手も到着した為、カリムが速人の問いに答える前に話は流れてしまった。
―――Side out:クラナガンのとある街並み ―――
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とある可能性編 三つめ 其の貮:とある休日――――了
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【後書】
11月中旬、PC電源故障に伴いマザーボードへ過剰漏電。
結果、周辺機器の殆どが使用不能。
幸い、一部とは言えデータ復旧可能及び使用可能なHDDが4台中に2台。
後、中古のVistaのPCを購入し、データ復旧をしたHDDを増設。
しかしXPと比べて無駄な機能が多い割に必要な機能が多多欠けていて戸惑う(OSの使用メモリーが1GB越えは驚きました)。
その後以前使用していたスピーカーを使用する為に後付したサウンドボードの相性関係でエラーが走りまくる(WMP使用不可→音声再生不可→ウィンドウズV.UP不可→マイクロソフト関係にエラー多発、等等、謎の破滅の連鎖が発生)。
気合を入れて現行の高水準部品を使用したPCを自作。
だが、やはり7もXPと比べて使い難い為に悪戦苦闘する。
止めとばかりに10年近く使っていたモニターが爆発しかける(溶けた外装が肌に張り付きエライことに)。
ブラウン管好きなのでブラウン管を探し求めるが何処にも見当たらず、止むを得ず同インチの液晶モニターを購入する。
不自然に鮮明過ぎる為、画面を見続けると加速度的に酩酊気分が増す。
対策として部屋を模様替えして距離を取り、且つ遮光シート等を間に挟む。
総計、約30万円使用、及び約3ヶ月間の手間。
――― 教訓 ―――
消耗品はケチらず、高品質の物を購入する。
そして消耗品は故障時に備え、事前に金銭を積み立てておく。
何より細細したデータ等はフラッシュメモリ等にバックアップを取っておく。
以上、近況報告でした。
話し変わってSSに付いてですが、22話のバックアップ版が残っていたとはいえ300KB近く消滅しているので、気分転換がてらにIF3―2を執筆しました。
消えた22話の文章がシリアス及び戦闘の二色のみだった為、IF編は益体の無いユルイ文章となりました。
尤も、どちらも一応主人公ということになっている速人の出番は滅茶苦茶少ないですが。………居ない方が問題無く話が進むものですから、登場させる必要性が薄いIF編は本当に出番少なくなっています。
特に幕間と呼んでも差し支えないおまけでは速人は殆ど登場しておらず、本当に主人公なのか疑わしくなる程の登場頻度です。
………寧ろアリサが本編の主人公で、ツヴァイがIF編の主人公でも構わない気がします。
因みに、本編22話(仮)ですが、冒頭のなのはの回想に追加があったり、はやてのイントルード後(〔そしてその瞬間あたしの意識は途絶えた。〕の後)にこっそり続きを足していたりします。
後、掲示板での感想が本っっっ当に嬉しいです。
批評や批判でもMPが確り回復します。
それと、初めて此処の掲示板以外で御褒めと言うか御勧めの文を見た時、凄く驚きました。………拙い作品ですが、貴方の作品の一助となれたなら幸いです。
で、毎回恒例の作中補足です。
● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○
【作中補足(原作考察も混じる上に長く、読まれずとも問題無い内容しか在りません)】
● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○
【ツヴァイが軽食屋で頼んだ特別注文】
● ホットオレンジジュース
搾りたてのオレンジジュースに解して粒状にしたオレンジを入れ、砂糖とレモン果汁を足した上で焦がさずに加熱した物。
可也の手間が掛かっているので、特別注文ということもあり、値段は約1万円。
熱した上にレモン果汁を加えているので凄まじく酸味が利いているが、胸焼けになる寸前迄砂糖を入れて甘酸っぱさの限界に挑戦したかの如き一品で、ツヴァイのお気に入りの飲み物の一つ。
因みに面倒ならば濃縮還元果汁100%オレンジジュースを電子レンジで沸騰寸前迄加熱すれば似たような物が出来ます。
● フルーツ入りポテトサラダ
紅玉とシロップに漬け込んだ蜜柑若しくは代用でオレンジを混ぜ込んだポテトサラダ。
可也マヨネーズの量を減らさせた上で果物を入れただけで、余り手が掛かっていないので安く、特別注文ということを考慮しても、値段は約3千円
紅玉の酸味とシャキシャキ感に、シロップに漬け込んだ蜜柑の甘味のおかげで、可也アッサリした感じになっているツヴァイの好物の一つ。
因みに、ツヴァイの苦手なサラダはコーンサラダですが、嫌いではありません。(当然独自設定です)
● スバルが食べていたアイス
殆どがツヴァイ達の居た軽食店へ直接有名店から取り寄せた物。
軽食の屋の面子を潰す上に有名店は出前自体を扱っていないことも重なり、最終的な総計は約60億円(軽食店の取り分は約20億円)。
仮にスバルが有名店で普通に食べれば約300万円ですが、一名に付き各種一つが原則なので実際はそこまで支払う事態になることは無いです。
● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○
【ツヴァイ達が経営する有限会社】(裏設定なので、読まれなくとも一切問題は在りません)
クラナガンに渡った直後、速人が短期間で物件等を転がし続け、その際に得た金銭を基に設立された速人自身の研究所の下部組織として速人とリインフォースとツヴァイが共同出資して設立した会社です。
企業家を虚仮にする勢いで金銭得る速人達が湯水の如く出資して設立しただけあり、設立当初から在り得ない程の資金と人材と設備を有しており、クラナガンで成長と言うよりも汚染侵食と呼べる速さで多数の店や企業を吸収し、僅か三年で国家として運営可能な域に成長しています。
管理局員として副業の問題等が在りますが、現在は三等陸士で訓練生扱いの為に厳密には正式な管理局員でない速人が運営しており、リインフォースとツヴァイは休職になっています。
尚、理屈は通っていても屁理屈の域な為、管理局と会社が文句を言ったりしますが、煩ければ全社員を解雇して会社を物理破壊する嫌がらせを平然と実行出来る者が会社の頂点に居り、更にその際に天文学的な経済被害と未曾有の治安と生活環境の悪化が起こりますので、会社だけでなく管理局も手出しが出来なかったりします。
当然、社会に不利益が発生しようとも法で保障された最低限の権利を行使しようとしているだけなので、脅迫罪に問えぬ上に実行しても刑罰を問えない以前に穴がある法整備を敷いた側に非難が殺到するので強気な態度も取れず、急いで法整備をしようとすれども後から整備された法が現行の企業に適用されるような内容であれば、面倒はお断りとばかりに全てを破棄しようとするので、事実上管理局は手が出せない治外法権組織と化しています。
因みに、急成長及び吸収出来た最大の理由は、悪事を軒並み暴いて経営者や幹部不在若しくは業務停止若しくはその両方による経営麻痺に陥れ、その隙に企業を丸ごと吸収若しくは人材だけを吸収するなどして急成長しています。
管理局と他企業には蛇蝎の如く嫌悪されていますが付け入る隙が無いばかりか従業員及び消費者には好感を抱かれている為、立国が十分可能な会社(企業)だったりします。
尚、有限会社の形体はドイツに近く、更には速人の研究所の下部組織として設立しているので、仮に乗っ取られても上位組織が在るので直ぐに元の鞘に戻ります。例えるならば、新劇場版の某ネルフと某ゼーレの関係です。
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【ツヴァイの財布の中】
上限無しのカードが二枚(地球とミッド関係用)、札20枚(日本とミッドの最高札を各10枚)、純金コイン10枚(日本円で約25万円)、土地と家具付の家が建てられる程価値が在る宝石が20、身分証明書が三枚(地球と管理局発行とベルカ発行)が常備されています。
金銭関係は速人とリインフォースと共同で稼いだものですが、少なくともツヴァイが好き勝手使う分は速人とリインフォースと共同せずに単独でも稼げる範囲です。
因みに財布は速人が小型の盾として使用出来るよう異常な頑丈さになっており、速人の撥はツヴァイに送った財布に使用した技術を流用して作られた物です。
当然ツヴァイの宝物の一つであり、そのため財布を盗もうとした者には凄まじい報復が待っています。具体的には盗んだ者を目撃した者諸共に色色起きる程の。尤も、金銭をばら撒いて事態を揉み消しますが。
尚、ツヴァイの初代財布はかなり大きい市販品のガマ口財布で、中には十万円金貨と現行の札と硬貨を10ずつ入れた状態で速人が渡していました。
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【ツヴァイの知名度】
一般には殆ど知られていませんが、高い社会的地位(管理局で言えば将官クラス)を持った者達の間では高いです。
但し例外として、ベルカ自治区の聖王教会教徒は殆どが知っています。
尚、ツヴァイは管理局内では、やや陸寄りの無党派で、常にレジアスの顔色を窺っているわけではなく、又、はやての顔色を窺っているわけではありません。
当然速人とリインフォースと一緒であり、管理局に登録されている全デバイスすらもクラッキング可能な速人と、単独で艦隊と戦闘が可能なリインフォースと、ユニゾンして超高レベルの補佐が可能なツヴァイがいるので、管理局が戦力を集中させる前に管理局を落とせるチート派閥だったりします。……但しその後は、高確率で隠居出来なくなるのでするつもりは基本的に全員無いですが。
因みに六課では一番知名度と認知度が高いです。
そしてツヴァイの下着を覗けば内臓損傷級の事故が起きるという噂も同じくらい広まっており、身内であるはずの八神家ですら下着を覗く若しくはセクハラ行為を実行したならば、書類を渡される時に何故か掌が切れるという地味な事故が暫くの間頻発するので、噂の信憑性は高いとされています。
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【ツヴァイの精神構造】
速人とリインフォースと同程度に一般から乖離しており、病んでいると言うよりも逝っていると表現した方が近いです。
速人やリインフォースの力になれると断定したならば、微塵も躊躇わずに自分だけでなく速人やリインフォースの首すら斬り裂きます。場合によっては歓喜しつつ。
他にも、自分が一秒でも長く在り続ける為ならば、自分以外を鏖殺することを即断即決可能であったり、常人ならば発狂しかねない凄惨な現場でも速人やリインフォースと桃色空間を形成可能であったりと(悲鳴が邪魔で互いの声が聞こえ難い等の場合は流石に気にしますが)、深刻的に一般とは乖離しています。
因みにツヴァイとしては情事でなくとも互いに互いを強く感じられるのであれば、腸を絡ませ合ったりするのも全く問題無かったりします(リインフォースが居なければ今頃速人とツヴァイは逝っていた可能性が高いです)。
【浮気はOK,本気はNG、愛の最期は心中で】、が、ツヴァイの掲げる恋愛三カ条です(既に速人とリインフォースは逃れられません)。
【ツヴァイ → リインフォース → 速人 → ツヴァイ】、と、【ツヴァイ → アリサ → すずか → ツヴァイ】、と、【自分達 → >>> ← はやて達 → < ← すずか達 → ≒ ← 自分達】、が主なツヴァイの世界です。
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【作中補足終了】
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最早暴走し過ぎて原作の原型が欠片程しか見受けられなくなってしまったSSを毎回掲載して感想を下さる管理人様と御読み下さった方に沢山の感謝を。
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【おまけ・其乃壹】連続ラジオドラマ・違法少女☆トビカルなのは 〜 第一話:違法少女なのに英雄なの? 〜 (楽屋裏ネタ)
すずか「今晩は」
アリサ「御晩です」
「作者初の試み、メタコーナー進行司会役の月村すずか13歳です」
「同じくアリサ・バニングス13歳です。
……って、………何で本編ともIF編とも違う年齢なのよ?」
「それはね、作者が小学生か中学生、若しくは中学生か高校生か社会人か、更に高校生か社会人か大学生か判らない曖昧な年齢が好きだって事が理由らしいよ」
「そう言えば、【契約は精確に!対人関係は曖昧に!】、が自論だったわよね」
「他にも、【相手のことは勝手に知る!自分の事は話さない!】、とかあるけどね」
「脱線しかかってるから話を元に戻しなさい」
「あ、うん。
で、昔なら元服してたから子作りしても作者的にOKな年齢で登場させて―――」
「―――作者的に、まともで名誉な発言してんじゃないわよ。
作者は自分の周りに無関係なら、胎児に人工授精させても無関心でいられる典型的な一般人なんだから」
「平穏を望むくせに普通であることに落胆する辺りがどうしようもなく普通だよね〜」
「あんまり作者の精神を抉ることを言ってると交代させられるわよ?」
「私は本編でもIF編でも重要キャラだから、別に無理して此処に出なくても出番はあるから構わないんだけどね」
「そういえば私もすずかも重要キャラなのよね」
「あ、今アリサちゃんが【私】って言いましたけど、13歳や16歳は卒業や入学のイベントが在るから、一人称というか精神に変化が起こり易くて作者は好きらしいです。同じ理由で嫌いでもあるらしいけど」
「急に話を戻すんじゃないわよ………全く」
「因みに作者は葛藤や煩悶とかが好きだから、ツンデレや苦悩が似合うアリサちゃんが好きらしいよ?」
「そう言えば恥じらいが好きなんじゃなくて葛藤が好きなんだって言ってたわね」
「まあ、作者は自分の一番がどういうことか理解出来ない存在のことはどうでもいいらしいけどね」
「解らなくもないけどね。
…………しかし全然話が進まないから誰かに来てもらいましょ」
「そうだね。
えっと……此処に呼べるのは本編とIFの双方若しくは片方で重要キャラであることで、出番の数じゃないらしいから………」
「本編じゃ、私、すずか、???????、はやて、なのは。
IF編じゃ、私、すずか、リインフォース、ツヴァイ、フィリス先生、ジェイル。
………現段階じゃこんなところね」
「………重要キャラじゃなくて最重要キャラクターだけど、多過ぎると絞るのが面倒だからこの中から誰かに来てもらおうか?」
「いや、この選択肢だとフィリス先生の一択じゃない」
「じゃあ、選択肢に出なかったモブキャラを生贄にしてフィリス先生を召〜喚〜♪」
フィリス「初めまして、フィリス・矢沢18歳です」
「あ、フィリス先生はこのままIF編が進めば通信という容で六課に関わって、なのは達の戦闘という意識に一石を投じる上で必須な最重要キャラだから此処に居る条件を満たしてます」
「もっと言うとはやてちゃん達に、【誰かを傷つけることで得られる可能性と、誰かを治すことで失う可能性】、を垣間見せる役目もあります」
「説明ありがとう、アリサさん、すずかさん」
「ではいきなりですけど、私達じゃ全然話が進まないんで、フィリス先生に進行役をやってもらいたいんですけど、いいですか?」
「はい、分かりました。
では早速今回の議題である、【問題行動を起こすなのはがどうして客寄せパンダなの?】、に関して説明していこうと思います。が、その前にアリサさんとすずかさんの考えを聞かせてもらえませんか?」
「う〜ん…………やっぱり見た目は可愛い子供だからって理由で客寄せに採用したけど、思った以上に人気が出たから外せなくなってるうちに昇進して次第に増長していった、………とか?」
「………最初から問題行動を起こしてたけど、態と問題行動を起こさせて償いっていう鎖を付けようとしたけど失敗した成れの果て?」
「二人とも深く考え過ぎです。
正解は、【高ランク魔導師の不始末は非魔導師、即ち陸に押し付ければ構わないと思っていたから】、でした」
「「………………」」
「現実どころか理想や夢すら見えていない小児を扱い易い駒に洗脳しようしたのですが、いざ実働の時に湧き上がる妄想に突き動かされて現場では碌に制御出来ず、されど高ランク魔導師を倒している為利用出来ると判断して利用している間に有名になってしまい、気付けば解雇や免職どころか左遷すら難しくなっていた訳です。
ですが、本局所属の者が犯罪者を打倒したならば、その際の被害はマスコミを利用して陸に押し付けることが出来るるので、自分達に不利益が殆ど無い為に問題点を放置していたら余計にに問題点が悪化し、現在に至るという訳です」
「………能力値でしか誰かを測れないなら機械を使えばいいのに、………きっと偉い人はサイコロ転がして組織運営してるんだろうね」
「それでももうちょっとマシな組織運営してると思うわよ」
「高ランク魔導師は罪を犯さない限り解雇や左遷や免職はしないそうですので、問題行動が問題行動にならないらしく、お二人が述べた通りサイコロで行動指針を決めた方が良い結果になっていた可能性が圧倒的に高かったりします。
尤も、責任者が責任を取ればの話ですが」
「いや、責任者が責任をきっちり取ってれば、大幅に色色改善されてるからサイコロ振る必要も無いと思いますけど?」
「だよね。
だけど、基本的に傲慢と色欲と怠惰の寄せ集めのような感じが管理局の上層部だと思うから、間違っても責任なんて取らないと思うよ? 特に本局は」
「管理局に限らず、リリカル世界で責任を取った存在は極めて少ないと作者と私は思っています。
具体的にはオーリスさん以外は矜持を優先した、若しくは責任を取ったのではなく責任を取らされたかのどちらかだと思っています。
そもそも高町なのはさん側からして、自分達が責任を取る以前に責任が在ると思っていない方方の集まりですから」
「善意で動けば責任なんて言葉は発生しないって思ってる集団だしねぇ………」
「原作のSts編じゃ頭痛がするくらい無責任な発言や行動や決断をしてくれてたからね〜………」
「傲慢さは意志の強さと言い換えても良いでしょうが、癇癪と言うかヒステリーは憤怒と言い換えれば何処と無く格好良く思えて大らかに対応出来る気がすると思いますが……」
「憤怒のなのは。色欲のフェイト」
「暴食のスバルちゃん。嫉妬のティアナちゃん」
「あと、強欲のリンディに……」
「怠惰の一般職員」
「そしてティアナさん以外の全員が傲慢を標準装備ですね」
「………小物が傲慢だと見るに耐えないわよね………」
「かといって速人さんみたいに傲慢さが無くても謙虚さが全く無いと、不思議と傲慢に感じるよね」
「そう言えば速人って、七つの大罪が無い存在をイメージして書かれてるんだったわよね?」
「正確には七つの大罪だけじゃなくて、七つの美徳も持ち合わせていない存在をイメージされています」
「七つの美徳?」
「七つの大罪の対になるもので、
1.色欲に対する純潔
2.暴食に対する節制
3.強欲に対する救恤
4.怠惰に対する勤勉
5.憤怒に対する慈悲
6.嫉妬に対する忍耐
7.傲慢に対する謙譲
というものです。
まあ、七元徳や基督教神学で若干変わりますけど、理想の人間像から抽出された要素、若しくは七つの大罪の対極に在るという要素と解釈して構いません」
「何処かの漫画で七つの罪を全て切り捨てれば完全な存在に成れるとか思ってたのが居たけど……」
「七つの徳も切り捨てなきゃ駄目っぽいのがこうして見れば分かるね」
「私としては傲慢が全く切り離せていなかった気がしますけどね。
あと、七つの大罪と七つの美徳はアクセルとブレーキの様な存在ですから、片方だけ外せば碌なことにならないと思ってます。
例えば、色欲が過ぎれば腎虚で死に至り、逆に純潔が過ぎれば他者との繋がりを全て絶つ、…って感じですね」
「で、全部無いのが速人ってわけね」
「機械超人みたいだよね」
「速人さんが、【超人に限り無く近い精神異常者の極致】、で、アリサさんが、【人間の理想を誰よりも体現しようとしている道化】、と作者は感じているらしいです」
「道化じゃ可愛くないからピエロって言えばいいのに」
「道化の方が数段マシだから!」
「因みに高町なのはさんは、【成長出来ない人間という群体の縮図】、らしいです。
尤も、原作の方ではなく此のSSではというだけで、原作でも同じ様に感じているとは限らないそうですが」
「私のイメージは?」
「【人間の幸せを願ってはいても期待はしていない、仙人の様な観察者】、らしいです」
「納得」
「………なら仙人が持ってる視姦能力が欲しかったな」
「視姦じゃなくて千里眼でしょうが!」
「尚、IF編のすずかさんはアリサさんを障り気無く視姦したりしていますが、同性愛者ではなく両性愛者です」
「IF編の私の夢は、速人さんにハーレムを築かせて速人さんだけじゃなく、アリサちゃんやリインフォースさんやツヴァイちゃんとも爛れて蕩け合う関係に成る事です(……実行に移す気はあんまり無いけど)」
「そして其れはすずかさんが本気を出せば超高確率で実現するので、速人さんのハーレムフラグを圧し折れるだろうアリサさんが速人さんと一対一で恋仲に成らない限り超高確率で実現します」
「私だけなの!?
はやては!?ギンガは!?ティアナは!?」
「八神さんはロウランさんやアコースさん。
ランスターさんはグランセニックさんか速人さんのハーレム要員。
ギンガさんは速人さんのハーレム要員かゲンヤさん。
と、なってます。
あと、すずかさんと私はハーレム無しで速人さんと恋仲に成れる可能性が在りますが、私は出番の関係上可能性が低過ぎますし、すずかさんは一対一の恋仲になるくらいならばハーレムを築く気満満です。
尚、現段階ではアリサさんとすずかさんと私以外にハーレムの可能性を潰せる者はいないという設定になっています(……リインフォースさんとツヴァイさんの固定ハーレムはありますけど)」
「あ、フィリス先生も非ハーレムでの成就可能性があるんですね」
「そうです。
ただ…………………塵取で回収出来る程上半身が弾けた死体を見ても嫌悪感だけで済んだ作者が、私の18禁シーンを見て初めてヒいたという半トラウマエピソードが在るので、私と速人さんが恋仲に成った場合はキスシーンすら出さない可能性が非常に高いらしく、そんなラブラブ要素の無い展開は誰も望んでないという理由で成就可能性は極めて低いらしいです。
…………………………………誰が幼女ですか。せめて少女と言いなさい。悶絶させますよ」
「「………………………………」」
「失礼しました。
作者の、[生殖可能でも見た目が生殖不可能年齢の性行為は感情的にアウトだな。うん。俺ってホント普通だな]、の発言を思い出して怒りで若干暴走してました」
「変態でもペドじゃないのが救いね」
「でもこの発言だと理性では納得してるみたいだけど?」
「そうらしいです。
まあ、作者の性癖はどうでもいいので此の話は終了しましょう。
で、話は今回の議題の派生になりますが、【何故知性及び知能が低い者の暴走を許し易い魔法絶対主義の姿勢を管理局が貫いているのか?】、ですが、此れは陸の約半分と最高評議会以外は極極一部の海と空の者以外の意識の根底に、魔導師たる選民思想と質量兵器を貶めて廃絶した優越感が在るからです」
「魔法絶対主義に異を唱えて排斥されるっていう恐怖心も在りそうね」
「それに、洗脳教育されたせいで、魔法絶対主義以外の発想が浮かばないってのも在りそうだね」
「アリサさんとすずかさんの補足は正しいです。
実際、大規模な組織の風潮に異を唱えるのは普通の方ならば挫折してしまいますし、その様な大規模組織の風潮に所属時より触れていれば否定するという考え自体が消えてしまうのも普通です。
話を戻しますが、何故その様な風潮が出来上がってしまったかについてですが、それは最高評議会の三名が個の資質に左右される魔法以外の武力を禁止したからです。
で、此処からは此のSS完全独自設定になりますが、最高評議会の三名はベルカとの全面戦争を経験し、個の武力を科学……つまり質量兵器は容易く凌駕し、更に個個の武力の進歩に比して質量兵器の発達は速過ぎ、何れ大規模な争いが起きた時に人間という種族は滅亡してしまうと結論を下しました。
ですが、ならば例え争いが起きようとも人間全体が滅ばない程度の力しか持ち合わせていなければ最悪の事態は回避されるという考えに至ります。
結果、個の武力に因らない物を病的に排しだした、と言うわけです」
「でもそれだけじゃ相手が大規模化学兵器を持ち出したら個の武力じゃ碌に対応できないから、個の武力の源の魔力なら兵器転用しても構わないっていう妥協案を出したわけね」
「その通りです。
深く突っ込んだ説明はザックリ省きますが、魔法文明は科学文明に比べ、威力・範囲・速度・補給、この四点で大きく遅れており、更に魔法文明に染まっている者は優秀な戦闘者や戦争者に成り難く、そして戦闘や戦争の際は殆どの者が碌に力を発揮出来ずに死に至ります。
ですが、力を発揮出来ずに死に至るということは、争いが起きた際に激化し難いということです」
「つまり、自滅を防ぐ為に態と構造的欠陥を抱えたって事なんですね」
「その通りです。
人間という種が争いにより自滅するという可能性を、精神的に進化するという極小の可能性と一緒に封じ込める、………進化の可能性を極限迄閉ざす代わりに争いによる自滅の可能性も極限迄閉ざす選択をしたというわけです。
つまり最高評議会の三名はアリサさんとは逆の道を選んだというわけです。
まぁ、完全独自設定ですが」
「………どっちが正しいかを議論する気は無いけど、…………どう考えてもそいつ等は初志を見失ってる気がするわね」
「だよね。
少なくても初志は受け入れられるかどうかは別として、純粋に人間全体の未来を憂いていたと思うけど、今じゃどう見ても支配欲に溺れた選民思想な権力者だもんね」
「上に立つ者は下の者を数字で知る意外は難しく、更には下の者を数字で管理しなければならないのですずかさんが言った様に成り易いです。
尤も、そうなる前に止めるなり正すなり辞めさせるなりしなかった周りにも原因は在ると思いますけど」
「そうよねぇ、…………アドルフ総統も周りを確り自立させられるだけの教育をしてたら、って何度も思ったしね……………」
「そう言えばアリサちゃんはヒトラーさんを尊敬してるんだよね?」
「そうよ。
例えどれだけ世界中から非難されようと、第一次世界大戦後のどん底もどん底だったドイツを立て直せたのはアドルフ総統の手腕だし、民衆心理を的確に掴んだ政治活動とかの基礎を作ったりもしたし、明確な記録が残る近代で信じ難い程のカリスマを世に示した方なんだもの。
勿論、人種差別や下の意見を抑え切れなかったということも重重認めてる。けど、それでも私にとっては尊敬する偉人よ。……話したことも無いから人間性についてはノータッチだけど」
「尚、作者が感心した存在は、[記憶に御座いません]、[何とか還元水]、〔世界一になる理由は何が在るんでしょうか?〕、等の人物が挙げられます」
「…………確かに感心したけど………」
「厚顔無恥さに感心しただけよね。ソレ」
「その通りです。
話を戻しますが、………今回の議題は大体此れで消化出来たと思いますので、そろそろ終了しようと思いますが、何か言いたことは在りますか?」
「私と速人さんとリインフォースさんとツヴァイちゃんでアリサちゃんを焦らし狂わせたいです」
「精神汚染されずに育ったすずかの未来を見たくて見たくて見たくて仕方がないわ」
「そんなお二人のご希望に対してお答えしますが、すずかさんはIF編で本気且つ全力で動けばロトくじで1等に当たらない確率で実現します、
そしてアリサさんの希望ですが、仮に番外で叶ったとしても、其の場合すずかさんは世界すら敵に廻せる程の実力を兼ね備えたヤンデレになっているか、速人さんと恋仲に成ったアリサさんを見て自害するか、アリさんだけでなく速人さんも想っていることに苦しみながら失楽園に一直線かのどれかになります」
「……………此のSS最強って………すずかじゃない?(泣)」
「最強よりもラスボスがいいな。
こう…アリサちゃん達を返り討ちにして、その後は―――年齢制限モノの発言な為に削除―――な展開に………」
「因みに作者的には、すずかさん主導時のみハーレム要員を増やせると思っています」
「…………それは何か分かる気がするわね……」
「???」
「自身の魅力を自身で気付くのは難しいですし、実感するなんて更に難しいですから、分からなくても普通ですので、別段すずかさんが鈍いというわけではありません。
………さて、それでは長くなりましたが此の辺りで今回は終わりにしましょう」
「次が在るかは謎だけどね」
「在っても今回の三名はレギュラーで固定っぽそうだけどね」
「ボケとツッコミと進行役の構成はバランスが良いですからね。
因みに私は作者から外見は性的描写アウト判定ですが、中身はとらハとリリカル世界での数少ない大人の一名と認識されています」
「アリサちゃんやリインフォースさんだけじゃなくて、レジアスさんやカリムさんも大人と認識していないらしいから、本当に稀少で貴重な存在だよね」
「まあ、分からないでもないけどね。
頭のネジが外れかかってるか手の中で頭のネジを弄くってるか、若しくは頭のネジが全部砕け散ってるか初めから頭のネジが存在しない様な面子ばかりだしね」
「此のSSの殆どの登場人物は精神異常者か凡人かだからね〜」
「そう言えば作者は、【大人≠凡人、凡人≒普通、普通=非才】、っていう持論持ちだったわね」
「だからアリサちゃんと速人さんは普通って認識らしいよ。
先天的特異性を持っていないし、カリスマや精神強度は環境や自分の意思次第で得られると思ってるみたいだからね」
「尚、私が大人と見られている理由は、【自分の発言と行動の結果を考慮し、自分と世間の理の摺り合わを行っていると見受けられるから】、です」
「で、自分と世間の理の摺り合わせの際、世間の理に屈してしまったら凡人で、自分の理だけを優先させたら異常者で、自分と世間の差異に気付いていなければ子供、って区分けらしいよ」
「………そうやって此のSSの登場人物を考えると……………本気で大人って少ないわよね」
「あ、それとシャマルさん達ははやてちゃんを一番上に置いて世間との摺り合わせをしようとしていないから異常者になってるけど、凡人に近い異常者って事になってるみたいだよ」
「……では今度こそ終わりにしましょうか」
「ですね。
それではボケ役のすずかと」
「ツッコミ役のアリサと」
「進行役のフィリスが御送りしました」
「「「それでは機会が在れば又!」」」
【終わり】
● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○
【おまけ・其乃貮】とある部隊長の部隊長心得帳
●○●小冊子の表紙↓○●○
軍乃至武力保持組織之官職乃至責任者心得
著
天神 速人
Reinforce・Eins
Reinforce・Zwei
Alisa・Bannings
月村 すずか
●○● 一枚目(心構え編) ↓ ○●○
1. 所属組織の目的と部隊の目的と自らの目的を把握する。
2. 所属する者は全て部隊を回す為の部品と捕らえる。
3.所属する者の単体能力だけでなく相互作用力も把握する。
4.平等に接するのではなく納得させられるように行動する。
5.粗探しと妥協点の模索を徹底する。
6.上記を悟られずに実行する。
7.此の心得を当てにしない。
○●○ 二枚目(心構え編) ↓ ●○●
1.状況を正確に認識し理解する。
2.目的を明確に認識し理解する。
3.決断は常に妥協点を用意する。
4.予測は最悪と最善も想定する。
5.行動は常に流されず実行する。
6.結果の損益は精確に把握する。
7.思考の範囲と精度を研磨する。
●○● 三枚目(心構え編) ↓ ○●○
1.部下は駒。
2.自分は安全地帯。
3.成功は自分の手柄。
4.失敗は笑って流す。
5.人望を持つ。
6.ヤルからには徹底的にヤル。
7.考える。
○●○ 四枚目(心構え編) ↓ ●○●
1.自身が上に立つ者としての自覚を持つ
2.部下に自身が上だと自覚させる。
3.上記を踏まえた上で理解を深め合う。
4.上記を踏まえた上で部下の意思を汲み取る。
5.上記を踏まえた上で部下の意思を踏み躙る。
6.自他の限界を想定する。
7.考えることを止めない。
●○● 五冊目(心構え編) ↓ ○●○
1.部下は自分の為に動かし、自分は自分の為に動く。
2.部下の失敗は部下の失敗だけど、部下の失敗の責任は自分の責任。
3.自分の失敗は部隊の失敗であり、部隊の失敗の責任は皆が取ることになる。
4.多数決ではなく自分の意思で物事を決める。
5.上に立った瞬間から汚れていると自覚する。
6.どんな事にも泰然と構える。
7.兎に角只管考える。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「………これ書いた皆の方が、絶対私より上手く部隊長を勤められると思うわ……」
「……どれか一枚でも実行できたら将官は確実ですね」
「……実際これ書いた全員が自然に実行できそうやから凹むんよ……」
「ま、まぁまぁ。
最初から上手く出来る存在なんて―――」
「ソレ書いた全員は出来るやろけどな」
「―――居やし………………………………たとしても部隊長は部隊長ですから、誰かと同じ歩み方が出来なくても嘆くことはありませんよ」
「取り繕った慰め、どうもありがとさん。
……いいんよ。
…………………自分でもどれだけ経験積んでも、精々一流の指揮官が限界やって分かっとるし、才能や資質は二流か一流の間ぐらいなのも痛いほど分かっとるし」
「贅沢な悩みは止めてくださいよ。
二流の才能でも佐官でやってくには十分なんですから……」
「はあぁっ…………そらぁ…才能に振り回されでもせん限りは才能持っとっても困るもんやないけど、…………自分より上が居ると分かるとやっぱり欲が際限なく沸くんよ……」
「精神衛生上諦めが肝心です。
度を越した不屈さは精神崩壊の引き金ですから」
「そのことは凄ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーく良お分かっとる。
………実際これ書いた誰も彼もがどっか壊れとる精神構造やし、私が同じくらい我を徹そうとすれば自分が廃人になるのは痛いほど分かりきっとるし」
「ならいじけるのは止めて下さい。
限界を知っていじければ、そのうち立ち上がれないほど腐ってしまいますよ?」
「そうなんやけどな〜………………………化け物と言われる魔法の才能持っとるって分かった時、これでようやく少しでも力になれるし恩も返せる思うたのに………佐官になるまでお荷物状態やったし、ようやく佐官になって部隊も何とか作って今度こそようやく恩を返したり力になれると思うたんやけど…………………このコンピューター全盛の時代に誰もが持っとる自分の演算力だけで、背中すら見えんほど先に行ってしもうたかと思うと…………」
「たしかに…………誰もが持ってる当たり前でなんて事がないモノを悪夢と思える域まで鍛え上げ、成熟した天賦の才を踏み躙れる存在になられるといじけたくなるのも分かりますけど……」
「やろぉ?
特に私みたいな高ランク魔導師は普通の人が出来ないことが少なからず出来るっていう自負が在るんやけど、正真正銘何処にでも在る普通の能力で大差つけられて負けたらマジ凹むで?
〔普通で出来たことが特別で出来ない〕、とか、〔特別の中の特別が普通に負けるなら、その特別ってマイナス要素なんじゃ?〕、とか、〔自分の頑張りが相手より足りんだけならもっと頑張れば良いんやろけど、相手以上に頑張れる気が全然せん〕、とか、とにかくマイナス思考が溢れ出す溢れ出す……」
「どれだけ相手が普通じゃないって主張しても、魔法が使えずレアスキルも無い時点で今の社会じゃ問答無用で普通ですからね。
魔法至上主義の風潮の只中で高ランク魔導師が普通に負けるのは、色色と精神衛生上良くないでしょうね………」
「おまけに勝てる魔法持ちは、相手が自分と同等って言い張るもんやから、余計魔法の特別さが薄くなってプライドが崩れる崩れる……」
「残るのは普通に打ちのめされた魔法と、同じ土俵故に絶望的な開きが嫌でも分かる自分の演算力………」
「………っちゅう訳でいじけたくもなるんよ………」
「いじけるのは勘弁してほしいですけど、折角の機会ですから徹底的に苦悩して答えを出した方が良いと思います」
「………何気に厳しいな……グリフィス君」
「部隊長の強さを信じているからこそだと思って下さい」
「……………凄〜く投げ遣りに聞こえるのは気のせいやろか?」
「気のせいです。
少なくても、6年分の給料を賭けても構わない、と思うくらいには信じています」
「…………また微妙な例えやな………」
「現実的で解りやすいと評判ですが?」
「いや………現実的過ぎて意気込みが全然伝わらんのが分かり難いんよ……」
「………なら………貴女の為なら僕は……」
「……………」(←少し期待した眼をグリフィスに向けるはやて)
「……………」(←考え込むグリフィス)
「……………………」(←先程より更に期待した眼を向けるはやて)
「……………………」(←更に考え込むグリフィス)
「………………………………」(←お預けを食らった犬の様な眼でグリフィスを見るはやて)
「………………リインフォース一尉の前で、〔ツヴァイ & 速人 × リインフォース〕、の同人本を朗読してみせます!」
「勇者や!!??」
「おまけで部隊長が合成したリインフォース一尉の画像データを見せます!!」
「視線と雰囲気だけで1ヶ月はまともにご飯が食べれんごとなりそうやから勘弁してや!?!?!?」
「………とまあ、馬鹿話はこれくらいにして話を元に戻しますが、助言集……とでも呼べばいいんでしょうか? ………ともかくその助言集を綴った方達が部隊長よりも遥かに高位官職の適正が在ったとしても、今現在部隊長なのは八神はやてという存在なんですから、落ち込むのも程々にしてください。
第一、部隊長の強みは人脈の広さや誰からも好かれ易いと言う部分なんですから、その二点は助言集を綴った方達に勝っていると思っています
無論、知らない方も混じっているので断言は出来ませんが、文面から察するに全員我が強そうですから敵を相当数作る性格でしょう。
ですから、そういう点では一般受けし易くて敵が発生し難い部隊長は優れていると思います」
「……………その分味方も作り難い気がするんやけど?
なんて言うか………………こう…………………広い代わりに浅〜〜〜い好意と言うか……」
「いえ、広くて深過ぎる好意とか普通にヤンデレ………と言うかヤンドラ製造者だと思うんですが、…………そうなりたかったんですか?」
「うん広く浅く好かれるって素敵やなー人間普通に程々に好かれるんが一番やなー」
「ですよね。
で、話を戻しますけど、確かに部隊長の持ち味じゃ軍の指揮官とかには成れないでしょう。
ですが部隊の指揮官には十分成れると思いますよ」
「……………遠回しに将官無理って言われたようなもんやね」
「いえ、上の方々の采配一つでアッサリ成れると思いますよ?
特に本局なら守護騎士たちと一緒に所属すれば中将ぐらいならほぼ確実に上り詰められると思いますよ?
逆に官職に魔力じゃなくて指揮や事務の能力を優先する陸なら、准将ならいけるかもしれない程度だと思いますけど」
「………若い美空で自分の限界を知るってキツイわ〜」
「身の程を弁えやすくて良いと思いますけど?
まあ、身の程を弁えて生きるのが良いかは別ですけど」
「何かグリフィス君て冷めとるな〜」
「冷めてると言うよりも折り合いをつけてると言ってほしいですね。
第一、副官なんて折り合いつけるスキルが低ければやっていられません」
「…………………六課発足時は柔らかい雰囲気だけやったけど、今は乾燥した冷たい目や口調やな………。
いや、普段は柔らかいんやけど、割と真面目な話になると柔らかい雰囲気に冷たい目や口調がプラスされて、人生に疲れた老人みたいな感じになるな」
「………人生に疲れてはいませんが…………半年も経っていないのに15年分以上の仕事をしたおかげで普通に疲れただけです」
「納得や」
「寧ろロングアーチの殆どが僕と変わらない感じだと思います。
あと、事務仕事にマルチタスクを活かせない魔導師は戦闘適正が低い可能性が高いと学んだ気がしますね」
「あ、家の子達は速人はんに似たようなことを言われたことがあってな、全員が全員最低でも2分割状態の時に偏差値50の筆記と口頭の別々の試験を同時に解かせられとったで。
そしてその甲斐あって戦闘中の戦術や戦略の構想レベルが劇的に上昇したんや。
……………因みに私はマルチタスクが苦手やから、高偏差値になるよう勉強漬けされたんや………」
「後方指揮官にマルチタスクは別に必須じゃないですし、落ち着いて高いレベルで考えられる方が良いでしょうから、高偏差値になるような特訓は正解だと思いますよ?」
「そうなんやけどな………私に教える速人はんにアリサちゃんにすずかちゃんはな…………500万に1人出るかどうかの偏差値100越えの異常者やで?
そしてそんな異常者級に頭良い三人が指揮官に必要と思う知識を私に教えるもんやから、気付けば有名大学の教授に余裕でなれる程になってもうたんよ。……………1ヶ月で12万キロカロリー使う程に頭使わされて」
「考えるだけで1日4000キロカロリーって、………女性にとっては夢みたいですね」
「頭に電極刺されて視覚と聴覚以外封じられた代わりに演算力を一時的に底上げされ、おまけに麻薬に近い劇薬を投与されて脳を一時的に活性化させられたりとかしたけどな。
尤も、そこまでしても三人の誰にも演算速度が敵わんかったけど。
あ、あと、目が霞んできたら後頭部を叩かれて飛び出した眼球を目薬に浸されたりとかもしたな」
「……………だから可笑しな性格……じゃなく可笑しな嗜好になったんですね」
「いや全然フォローになっとらんから。
態々言い直した意味ないから」
「では可笑しな性癖…………失礼、恐らく元からでしょうね。
えーと………では……………色々と可笑しくなったんですね」
「間違い無く馬鹿にしとるやろ?」
「上司を元気付ける為に敢えて暴言を吐いた所存です」
「………………………………………嘘臭〜」
「嘘か真かは措いておくとして、今更助言集を見て落ち込む暇が在るのでしたら今日の分の仕事を片付けてください。
いい加減気分も持ち直したでしょう?」
「はいはい、持ち直しました持ち直しました。
………んじゃまあ、仕事を再開するとしますか」
【唐突に終る】
● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○
【おまけ・其乃參】広過ぎる温泉は温水プールと勘違いし易い(IF編のアリサ達が小学生の時)
「時に速人」
「…」(←視線で先を促す速人)
「あんたのトコの組織だか国だかだけど、……よくもまぁ大量に優秀な奴が集まってるわよね」
「あ、それは私も思いました。
5万人足らずで国連を相手取っているって知った時、正直言って常識を疑いました」
「職業比率と人口の調整を行えば然して困難ではない」
「それって……職業選択と出産の自由が無いってことよね?」
「でも逆に職業斡旋と避妊や中絶のサービスって言うか義務がありそうだよね」
「アリサと月村すずかの言う通りだ。
尤も、能力や遺伝でそれらに融通は効くが」
「………研鑽を積むか運次第じゃ自由を獲得可能ってわけね」
「自由を謳うアメリカとかが激怒しそうだよね」
「実際に批判意見は多い。
尤も、間諜が要職に就いて機密情報を奪取出来ぬからだろうが」
「あ、そっか。
職業を斡旋しなきゃいけないってことは、つまり国民の数や年齢や就業状態を正確に把握してるってことだし、そこまで把握してるなら顔や声紋指紋耳紋にDNA情報とかも記録してる筈だから、生半可なことじゃスパイが要職に就けないわよね」
「今更だが、EINSへの出入国は厳重に管理されていて、不法入国者は基本的に問答無用で殺処分される。
そして基本的に土地や機材や人命よりもEINSの情報の優先度が高い為、人質どころか周辺の者や建築物を巻き込んですら逃さない。
無論このことはEINSに属する者は乳幼児を除き全員に知らしめている」
「…………迂闊に雇用した時の竹箆返しは恐いってわけね」
「普通なら暴動ものの国策が罷り通ってるってことは、余程魅力的な環境なんですね」
「主知主義を機軸とし、軍事力を主体にした上に資本主義と共産主義と社会主義を一定の比率で混合して運営している」
「……何だかガチガチな人達の集まりに聞こえます」
「でも、たしか音楽とか漫画とか演劇とかゲームとか、文化的な要素も多数産出してたわよ?」
「そうだけど………なんだか漫画とかドラマとかは全部リアル系のやつばっかりで………」
「あー………たしかに軽いノリのやつは全然無いわね」
「宗教思想が日本以上に薄い為だ」
「なるほど………。
神様って超常現象の権化ですから、ソレを全然信じてないと超常現象とかは否定的になりますよね」
「でもそれって、代わりに祭りとかのイベントが無いって事よね?」
「そうだ。
そしてアリサの指摘通り交流の機会が少ないことに起因し、起伏に欠けた惰性の日日を送り易い環境が存在している」
「………色んな所に散逸して存在してるから、特定の宗教だけに肩入れするのは難しいわよね……」
「かといって日本並に無節操な宗教混合しても日本以外じゃ受け入れられなさそうだよね」
「アリサと月村すずかに質問だが、アカシックレコードなどといった形而概念は宗教の代用に成ると思うか?」
「「成らない」と思います」
「ならば人間の理想とされる者を創り上げ、そして死去した後に奉るという案は?」
「悪くない案だと思うけど………」
「この科学全盛の時代に宗教として奉られる程の偉業は成し得ないと思います」
「って言うか、人類未踏の偉業を成した上、世界全土に名が轟き渡って宗教として認知されるのにどれだけ時間が必要なのよ」
「だよね。
あ、あと、話を少し戻しますけど、アリサちゃんがさっき優秀な人が集まっていると言っていましたけど、さっきの速人さんの答えだけじゃ発足当初は運営出来ませんよね?」
「そうだ。
発足当初は不正を行おうとも最終的には益を出せ、更に不正を制御下に置ける者を雇用することで運用していた」
「………その人達はどうしました?」
「制御下から外れて不正を行おうとした者は解体処分したが、制御下に在る者は放置している」
「…………速人さんなら急場を凌いだ後、見せしめに不正を暴いて晒してから粛正すると思っていました」
「日本の文化で横領や賄賂を指す不正は許されざる行為という認識が根強いが、日本以外では其れ等を考慮して組織を運営する国も多く、日本文化が根底に根付いている者以外の存在を考慮した場合有益な運営方法と判断したので採用しているだけだ」
「…………そう言えばチップって………冷静に考えれば徒の賄賂で、要するに不当請求ですよね」
「身も蓋もない言い方だけど、言われてみればたしかにそうよね」
「そう考えると日本人って潔癖だよね。
少なくても表向きは」
「裏じゃ横領や賄賂どころか売国すらしてるけどね」
「国がお金を巻き上げる以外にに何もしていないように思われてるから仕方ないと思うけどね」
「まぁ、売国奴達の事は一先ず措いとくとして、………速人なら不正を働いた奴なんて自滅に追い込みそうなものなのに、制御出来るってだけで見逃すのが微妙に納得いかないんだけど?」
「EINSの不文律に、【切り捨てる事を前提とした雇用はせず】、というのが存在する。
此れは発足以前より所属する者の精神的衰退を予測していた為、明文化されていないモノを遵守することで不確かな存在を確かなモノと錯覚させることで、組織への執着乃至忠誠及び精神的磨耗の予防を図る目的で創った。
無論、EINSに属していない者は例外だが」
「………なるほどね。
アメリカがアメリカ以外の国でアメリカ人を人質に取られたら、何があろうと絶対見捨てないみたいな感じってワケね」
「尤も、内部告発や切り捨て前提雇用を是とする組織に求心力は望むべくもく、更には疑心暗鬼が蔓延った末に内部より瓦解する可能性が徒に上昇するという理由も在るが」
「………………思いっっっきり腹黒い話になったわね」
「でも、これで内部告発が少ない理由が何と無く分かったよ」
「まあね。
…………内部告発が頻発すれば互いを警戒して作業効率は落ちるし、少しでも不穏な動きを見せた奴に対してはは今迄の行動の全部を悪意的に解釈するだろうし、他にもそんな風潮に嫌気が差して辞めてく人が出始めるだろうし、止めに人員不足やレベルの低い奴を雇用したのが原因で仕事が上手く回らなくなったら責任の擦り付け合いが始まるってワケね」
「そして現場での不満が臨界に達した時、不満は上に向かう」
「その時にまともな判断が出来なくなったヒステリー集団を強権で処分すれば人的損害と組織の求心力の低下」
「逆に強権を発動させなければ暴走が止まらず組織に深刻な被害が出る、若しくは組織が崩壊する」
「俺も其の様な認識だ」
「なるほどね。
………これで少し賢くなったわ」
「これでまた一歩、当座の目標に近づけたねアリサちゃん」
「ええ、そうね。
……………………ところで………」
「うん? なに?」
「いえ…………………此れって言うか…………此処って……………プールなの?
何か…………温水プールにしては何か違う気が………」
「あれ?
私、水着を用意してって言ったけど、此処がプールとは一言も言ってないよ?」
「………………………………OK。つまり此処は温水が流れるる用水路か貯水槽ってワケね」
「いやだなぁアリサちゃん。
温水の用水路や貯水槽なんて、温泉街の生活排水路ぐらいしかないよ。
工業用だと温水じゃなくて熱湯が流れてるし、人体に対して深刻的な悪影響を及ぼすような物が溶けてるから、温くても防護服無しじゃ危なくて近づけないよ〜」
「……………………………………………………じゃあ…………………………もしかしなくても此処って…………………………」
「そう、お風呂だよ」
「………………………………………………………………………………すずか……………ナンデ黙ッテタノカ訊カセテモラエルカシラ?」
「えーとね、将来アリサちゃんをからかう為のネタを今の内に仕込んでおこうと思ったんだ。
今なら混浴もぎりぎり犯罪じゃないと思うから」
「…………………………………………………………………………………………………………速人…………………………あんたは知ってたの?」
「知らされてはいないが水温から推測はしていた」
「…………………………黙ってた理由は?」
「月村すずかに、[此処がどういう所なのかアリサちゃんに訊かれるまで黙っいてくれませんか? そしたら多分ですけど、珍しいアリサちゃんが見れると思いますから]、との発言を受け、示唆されたアリサを見たいと思ったからだ」
「………………………………………つまり……………風呂と知っててあたしたちと一緒に居たってワケ?」
「概ね其の通りだ」
「…………………………………………………………………きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?!?!?!?♀×♂!?∀┗T∫@√!?→凸凹←!?♀×♂×♀??!??!??!」
「混乱状態にも拘らず、平時以上に肉体操作能力が高いな」
「すごい!!!
飛翔白麗を繰り出せそうなくらい綺麗にお湯から飛んで抜け出すなんて!!!」
「アリサの体重と筋力ではあの高度と体勢からは人体を切り裂けないだろう。
無論、アリサが音速を超える速度で手刀を放てる等が可能ならばその限りではないが」
「………生身で音速突破って可能なんですか?」
「限定的になら既に確認している。
一例だが、熟練者が抜刀した際に刀の先端は音速を超えている。
そしてその熟練者が抜刀速度を更に高める為に鞘を腰帯等で強固に固定し、抜刀する右腕の一の腕の中程を左手で押し出しながら抜刀した際に音速を突破した」
「手が凄い事になってそうですね………」
「握り手付近の皮膚が剥がれ飛び、右手首と左肩の関節外れただけだ」
「あれ?………………それって………若しかして恭也さんですか?」
「そうだ。
抜刀速度を上昇させる刀剣や技術を訊ねられた際、先の方法を提示した」
「…………音速突破して手がボロボロになるって分かっていて黙っていましたよね?」
「そうだ。
一般常識的危険を告げる関係ではないことを考慮する限り、極普通の対応だと判断したが、月村すずかの判断は異なるのか?」
「う……う〜〜〜ん
……………………普通なら生身が音速突破なんてありえないですから注意しないのは普通ですけど、音速突破するかもしれない人には一声掛けるのが普通な気がしますし、………ですけど普通は生身が音速突破するなんて考えませんし………………」
「要するに、どの点を普通と定めるかによって解が異なるということか?」
「そうです。
ただ…………普通かどうかは兎も角として、倫理的には怪我をする可能性が在る場合は一言注意するべきというのが模範解答だと思います」
「責任が取れるとされる大人に対し、自己責任に類する一般常識的危険事項も注意するのが倫理的な模範解答ならば、日常生活の些事に至る迄注意せよということになるが、線引きはどのような基準で行われているのだ?」
「えーと……………………………………………………………………………………………うん、………私は小さな子供に言って聞かせる類の注意は大人に言わないのが普通だと思っています」
「参考意見感謝する」
「いえ、お役に立てて何よりです。
あ、話は変わりますけど、速人さんて混浴とか気にしない派ですか?」
「混浴自体に抵抗は無いが、無防備に裸体を不特定多数に晒すことに抵抗はある」
「あぁ………だから先に来て周囲を調べたりバッグを近くに置いたりしていたんですね」
「そうだ。
睡眠・排泄・交合・入浴の何れの場合も迎撃能力が低下し易い為、襲撃可能性は通常に比べて高い」
「……………襲撃された前例が在るから文句は言えませんけど、…………少しは楽しめましたか?」
「楽しむ云云は理解不能だが、有益な時間だとは思っている」
「そう思ってくれているなら嬉しいです。
あ、それとアリサちゃんと一緒にお風呂に入った感想を聞かせてもらえますか?」
「先程述べたが、有益な時間だと思っている」
「いえ……………そうじゃなくて、アリサちゃんの可愛い水着や身体を見てどう思ったとかを知りたいんですが………」
「飾り布の部分が水着としての機能を損ねているようだったが、材質や製法を推測する限りは優れた水着だと判断した。
身体に関しては新しい感想は抱かなかった」
「………………速人さん………………まだ私たちは小さいからその回答でも構わないと思いますけど、中学生くらいになったらもう少し気を遣った発言をしないと女の人は怒るって覚えていて下さい」
「つまり、頬を赤らめながら顔を背けつつ、適当な世辞を述べろという事か?」
「面白可笑しく愉快なことになりそうなので是非ともしてほしいですけど、誤解を振り撒き過ぎて後が面倒極まりなさ過ぎることになると思いますますから止めて下さい。
少なくても演技では」
「留意する」
「…………演技でやる時は目配せでもして下さい。
その隙に離脱可能なところまで移動しますんで」
「留意する」
「……………それじゃあそろそろ上がりませんか?
何時までも入っているとアリサちゃんの機嫌が斜めを通り越して垂直になっちゃいますから」
「俺としてはアリサが何に対して憤るのかを知る事が出来る数少ない機会だと思うので、暫くは月村すずかと此処で時間を消費していたい」
「…………………………相手が怒ったり悲しんでる時も相手を知ろうとするのは速人さんの良い所だと思いますけど、相手の為にならないのに怒らせたり悲しませたりして相手を知ろうとするのは褒められるようなことじゃないと思います。
と言いますか、あんまり相手の神経を逆撫でたりすると、相手から拒絶されて傍に居れなくなりますよ?」
「…分かった。
ならば適当な者でその加減を学ぶので暇する」(←湯から出て脱衣所へ歩き出す)
「え?あ、あの」
「有益な時間だった。
感謝する」(←脱衣所の扉の前で振り返りながら言い、その後脱衣所の中に入ってすずかから見えなくなる)
「…………若しかして……………旅立ちフラグとか………建てちゃったのかな?」
其の後、速人は直ぐに身繕いを整えて多数の文化圏を放浪した。
無論、EINSの運営及び維持は携帯端末を通して行っていたが、アリサ達が速人を捕らえることは速人が放浪を止める迄一度たりとも無かった。
尚、速人が約半年で放浪を止めた理由は、半年近くの放浪で速人はそれなりに人情の機微を学んでいたが、アリサ達並に普通から外れた者の機微を知るには然して役に立たないという結論が出た為であった。
【手抜きの上投げっ放しで終わる】
● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○
【おまけ・其乃肆】機密でなくとも秘匿のファイルは見るものじゃないわね
(役職名が原作とは微妙に異なる者が数名おりますが、捏造設定です)
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部外秘
機動六課部隊長職関連以外の者の閲覧及び持出を禁ず
機動六課最高責任者 八神 はやて 二等陸佐
機動六課現有戦力評価書
作成者:天神 速人 第三部隊長補佐
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「…………………」
何とか本日分の職務を終わらせたティアナが仕事を終えようとしていた時、机の上に誰が置いたのか知らぬが気になる書類の束を見つけた。
「……………………………見ても………大丈夫よね?」
自分が部隊長職関連の末席とはいえ、一応関係者である以上閲覧する権利を有していると判断したティアナは、おずおずと書類の束を手に取った。
「うわ………この紙……何で出来てるのかしら?
…………すごくやさしい手触りね……」
ティアナが手に取った紙束は、機械では再現不可能の域に在る最高級の和紙であり、高頻度で閲覧する場合手を切らぬ様にと、重要度が高い書類限定にだが速人が漉いた物だった(表面に僅かな凹凸が在る為印刷機を通す場合は細かい印刷が困難な為、大抵は速人が毛筆で認める)。
(ま、それはそれとして…………、自分と周りの人の戦力がどんな風に認識されているか知りたいし、…………せっかくの地位は有効活用しなきゃね)
自分の地位の権力を活用して認識したい思いもあり、ティアナは精神的ダメージを受けそうな書類と思いつつも書類を捲った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
氏名:八神 はやて
階級:二等陸佐
所属:時空管理局本局 古代遺失管理部 機動六課
役職:機動六課部隊長 (ロングアーチ・主席)
戦力:古代ベルカ式・総合SS+ / 古代ベルカ式・空戦AAA+ / 古代ベルカ式・陸戦AA
資格:連隊指揮官 / 戦力統御 / 大型自動車第二種免許
備考:ツヴァイ陸曹長とユニゾンすることで、古代ベルカ式・総合推定SSS / 古代ベルカ式・空戦推定S+ / 古代ベルカ式・陸戦推定AAA+ 、へと一時強化可能。
評価:十全な後方支援を受けることで火力を振るえる専守防衛型。
特筆:最高責任者及び最高指揮官の為、代理責任者と代理指揮官を用意せぬ限りの戦闘行為は、緊急非常事態以外は査問が開かれる可能性が極めて高い。
● 詳細 ●
指揮能力は中の上。
判断能力は上の下。
決断能力は上の下
単独戦闘能力は重要度と比した場合可也低く、役職の関係上戦闘要員として運用することは極めて不向き。
暗殺系統に対する能力が低い為に絶えず近くに護衛者を配置する必要が有り、戦闘行為をさせる場合は更に護衛者を増やす必要が有る。
超長距離広範囲大規模破壊が可能な為、高高度より一定未満の戦闘要員を一方的に殲滅可能な為、焦土戦や殲滅戦といった大規模且つ注目度の高い作戦等に出撃させるのが妥当。
健康管理に特筆すべく問題点は無く、月経の周期も安定している為計画の立案も容易く、更に性行為を行った際に妊娠する可能性とその際業務に与える影響を把握出来且つ避妊の知識を有しているので、妊娠による長期任務の長期離脱の可能性は低い。
しかし、脚から下の運動性が低い為、魔力で補佐が可能とはいえ身体に関しては問題が残る。
尚、人の生き死にを割り切れぬが其の場合は指導書通りの対応に切り替える為、最低限の対応能力は維持される。
又、ユニゾンすることで戦闘能力が上昇するが、完全上位互換の適正者が他に居る為、ユニゾンする価値は低い。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「…………部隊長からして辛口の評価ね………。
………総合とはいえSS+にココまで言えるのって他に居ないわね……。
それに何気に大型の2種持ってるのが凄いわね。
あと…………よくもまぁ部隊長に容赦無くセクハラ出来るわね……」
ティアナの中で影の薄いはやてだが、辛口とはいえ客観的な評価書を見たことによって上方修正され、〔セクハラをする凄い部隊長〕、になった。
そして速人が何故はやての月経の周期等を知っているのかは、[天神先輩だからしょうがない]、と、最近慣れ親しんだ精神衛生上必須の帰結で納得することにしつつ、書類を捲った。
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氏名:Reinforce
階級:一等陸尉
所属:時空管理局本局 古代遺失管理部 機動六課
役職:機動六課部隊長第一補佐官 (ロングアーチ・主席補佐第一位(三席))
戦力:古代ベルカ式・空戦A(推定SSS) / 古代ベルカ式・陸戦A(推定SSS−)
資格:旅団指揮官 / 戦力統御 / 自動車免許全種 / 操船操舵(XX級)/ 事務系全種
備考:ツヴァイ陸曹長とユニゾンすることで、総合・空戦・陸戦、其其が規格外へと成ることが可能。
評価:史上稀な極めて高いレベルで全能力が纏まっており、ほぼ全ての状況下で運用可能な万能型。
特筆:本局及び空から注視されている為、記録が残る場でのAランクを超える能力が行使された場合は相応の対処が必要な為、事前に対処しておくことが望ましい。
● 詳細 ●
指揮能力は上の上。
判断能力は最上位。
決断能力は規格外
単独戦闘能力は重要度と比した場合低く、本局等の利権問題の関係上戦闘要員として運用するには不向き。
暗殺系統に対する能力が極めて高く、他者を護衛して尚自衛に余力を避ける為、部隊長の護衛としても問題が無く、護衛としても極めて優秀。
諜報や間諜の技能も高い為、本局等の利権問題を考慮するならば記録に残らない行動をさせるのが妥当。
平時は常に万全の状態の為特筆すべき問題点は無し。
精神面は部下が困惑する程に切り替えや判断が的確且つ迅速で、決断は迷いを置き去りにして瞬時に下すことすら可能。
又、ユニゾンすることで戦闘能力が規格外に成るが、自身だけでなくツヴァイ陸曹長も問題に巻き込む為、機会は極めて限られる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……………ツッコミ所満載ね。
……………ていうか、部隊長涙目よね……」
はやての完全上位互換とも言えるリインフォースの評価を目の当たりにしたティアナは、[戦闘力でも指揮能力でもカリスマでも負ける部下が居たら、上司なんてやってられないわよね……]、と思い、自分なら御免被る状況に居続けるはやてを純粋に凄いと思いつつ書類を捲った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
氏名:Zwei
階級:陸曹長
所属:時空管理局本局 古代遺失管理部 機動六課
役職:機動六課部隊長第二補佐官 (ロングアーチ・主席補佐第二位(四席))
戦力:古代ベルカ式・空戦A(推定AA) / 古代ベルカ式・陸戦A(推定AAA)
資格:連隊指揮官 / 戦力統御 /デバイスマスター関連全種 / 主任医務官C-V種
備考:特定の者とユニゾンすることで対象の能力を大幅に上昇させる事が可能だが、費用対効果を考慮したならばリインフォース一等陸尉が妥当で、時点が八神二等陸佐及び天神三等陸士となる。
評価:単独の能力も低くはないが、ユニゾンすることで自他の能力を最大限発揮可能な特殊支援型。
特筆:本局及び空から注視されている為、記録が残る場でのAランクを超える能力が行使された場合は相応の対処が必要な為、事前に対処しておくことが望ましい。
● 詳細 ●
指揮能力は最上位。
判断能力は上の上。
決断能力は規格外。
単独戦闘能力は重要度と比した場合可也低く、本局等の利権問題の関係上戦闘要員として運用することは不向き。
暗殺系統に対する能力が非常に高く、他者を護衛して尚自衛に余力を割ける為部隊長の護衛としも問題は無いが、強襲に類する暗殺の場合は撤退を前提した護衛が多くなる。
性格や容姿的に反感を抱かれ難い為、前線での指揮伝達が妥当。
平時は常に万全の状態の為特筆すべき問題点は無し。
精神面は部下が付いて行けぬ程に切り替えや判断が的確且つ迅速で、決断は迷いを呑み込んで瞬時に下すことすら可能。
又、対象が限られるものの、ユニゾンすることで対象の能力を大幅に強化する等が可能だが、リインフォース一尉と天神三等陸士とユニゾンした場合は一時的に分離不能になる可能性が高い為、ユニゾンする際は後の事を考慮する必要があり、更にユニゾンした場合は自身だけでなく相手も本局等の利権問題に巻き込む為、機会は極めて限られる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(………………ユニゾンした後分離できないって………呪いの装備品みたいね……。
あと…………やる気無さ気なのに廃スペックなのがちょっと腹立たしいわね。
…………役職に執着が無い者ほどその役職に適正が有って、逆に役職に執着を持つ者ほど適性が無いっていう言葉、………当たってそうよね……)
目的が少少様変わりしたとはいえ未だ懸命に上を目指しているティアナは、自分が滑稽過ぎる道化を演じている気がしたが、頭を振ってその考えを散らしてから書類を捲った。
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氏名:天神 速人
階級:三等陸士
所属:時空管理局本局 古代遺失管理部 機動六課
役職:機動六課部隊長第三補佐官 (ロングアーチ・主席補佐第三位(五席))
戦力:純粋肉弾陸戦・推定AA(限定時推定SS−) / 限定純粋空戦・推定A(限定時推定S+)
資格:旅団指揮に関するほぼ全て / 特殊監査資格 / 外交官
備考:デバイスの代わりに合金製の撥を所持しており、質量兵器ではないが周囲から非難される可能性が高い。又、ツヴァイ陸曹長とユニゾンした場合、ツヴァイ陸曹長が表に出る半暴走状態となり、其の場合ツヴァイ陸曹長は、古代ベルカ式・空戦推定SS(限定推定規格外) / 古代ベルカ式・陸戦SSS−(限定推定規格外)、となる。
評価:一定ランク以上の戦闘は自傷行為と同義の為、一撃離脱型。
特筆:本局及び空から注視されている為、記録が残る場での魔法を行使しない戦闘は相応の対処が必要な為、事前に対処しておくことが望ましい。
● 詳細 ●
指揮能力は規格外(部下の練度が低い場合は部隊が瓦解するが、基本的に規格外の高さ)。
判断能力は規格外。
決断能力は規格外
単独戦闘能力は重要度と比した場合可也低く、本局等の利権問題の関係上戦闘要員として運用するには不向き。
暗殺系統に対する能力が病的に高い為事実上毒殺等の間接的な暗殺は通用せず、直接的な暗殺も超長距離からの広域破壊に類する暗殺以外は通用せず、逃亡を前提とした護衛ならば人海戦術と超長距離からの広域破壊以外ならば護衛として十分に機能する。
性格と能力と役職的に、他者の反感を買いやすい幇助要員が妥当。
平時より過密業務で軽度の衰弱状態だが、約12000秒で全快とはいかずとも快復する。
精神面は場合によっては部下が反乱を起こす程に人倫や人情を無視した精確且つ迅速な判断力と切り替えで、決断に至っては判断と同時進行で行われる為、場合によっては逡巡の無さから反感を買う。
又、身体制御能力の一つとして、情報伝達の動力を確保している場合に限り、接触したものを媒介に記録等を改竄可能な特殊技術を有する。
更にツヴァイ陸曹長にユニゾンされることで、ツヴァイ陸曹長に規格外の域へ至った特殊技術を保有させ、情報戦に特化させた存在へと成らせることが可能だが、一定時間分離不能に陥る為、ユニゾンする際は後の事を考慮する必要がある。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……………………………………………………うん…………………………………人間止めてるわね。
………多分水の代わりに龍の生き血を飲んで成長したとか、ロストロギアが人間の容になってるとか、多重人格で役割分担してるとか、体に演算装置とレリックとかを埋め込んでるとか、そんな感じじゃないと説明つかないし」
壁の向こうの風景を幻視するかの如く遠い眼をしつつ呟くティアナ。
「……リインフォース一尉と部隊長に、天神先輩がなのはさんと戦った時の記録を見せてもらった時も思ったけど……………、やっぱり人間止めてるわよね。うん。
………胴体千切れて心臓が破裂したのに今も生きてるなんて………………ドラゴン級の体力とゴキブリ級のしぶとさが有っても説明つかないし」
内心、クローンか何かかと思ったティアナだったが、それでもなのはと戦っていた速人のスペックが説明出来ない為、速人はそういう単独種であると納得しながら書類を捲った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
氏名:Teana・Lanster
階級:二等陸士 → 一等陸士(教育終了後一等陸尉への昇進確定)
所属:時空管理局本局 古代遺失管理部 機動六課
役職:スターズ分隊 センターガード → 機動六課部隊長第二補佐官副官 (ロングアーチ・主席補佐第二位副官(六席))
戦力:ミッドチルダ式陸戦・B → A(推定AAA−)/ ミッドチルダ指揮空戦推定・A
資格:災害担当シューター / 大型自動二輪及び大型普通自動車 / 特殊監査官資格 / 執務管資格
備考:自身の実力を否定する行動を拒絶し且つ暴走する可能性が高い → 戦闘者及び指揮者として最低限の域に達する。 → 戦闘者として平均の域に達する。
評価:単独ならば狙撃、集団ならば幻覚による攪乱が戦闘の主軸である為、単独及び集団を問わずに遊撃型。
特筆:特に無し → 陸の最高責任者より次代を担う一角としての教育を命令されている為、将来要職に就く際に不利になる任務は負わせることが出来ない。
● 詳細 ●
指揮能力は無し
判断能力は下の下
決断能力は最下位
身内の汚名を晴らすために奮励しているが、汚名を晴らす為に手段と視野を自ら狭めて成長を阻害しており、更に周囲の者との格差に劣等感を抱いているので現行の教導では三度出撃する間に極めて高い確率で暴走し、実行部隊内に軋轢を生み出すと予測される。
――――――――――――――――――――
↓
指揮能力は最下位 → 下の上
判断能力は下の中 → 中の下
決断能力は下の上 → 中の中
機動六課の陸に所属する者では唯一の戦闘要員(ギンガ陸曹は出向者の為除外)。
暗殺系に対する能力を最低限保有している為単独での行動も可能であり、カートリッジの過剰連続使用による、地対地及び地対空の大出力半暴発攻撃という決め手を有す為、常時高硬度全方位防御型魔導師に対しても一定確率で打倒可能。
価値観と性格的に遊撃要員が妥当だが、小隊を率いて包囲殲滅戦の適正も有り。
平時も天神第三補佐官に少なからず心身に負担の掛かる教育を受けている為、衰弱にこそ至ってはいないが疲労は蓄積されており、更に疲労の蓄積によりホルモンバランスが若干崩れ、肉体の成長速度が約37%に低下しており、月経の周期も乱れが生じ始めている為、平時は一日6時間の睡眠、戦闘を行った際は最低24時間の休息を取らせる必要が有る。
尚、異性との性行為及び性行為を行うであろう相手の形跡は見当たらず、更に性行為に及ぶ際は避妊処置を施すと思われる為、妊娠による戦線離脱の可能性は低い。が、妊娠した場合中絶する可能性は極めて低い為、性行為をする相手が現れた場合は避妊若しくは避妊効果のある性行為を促す必要性が高い。
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「………………………………シタかどうかの形跡ってナニ!? って言うかどうやって調べてるの!?!? あと中絶とか上司から聞きたくないわよ!!!」
ティアナは衝動的に書類を机に叩き付けたくなったが、虚空に向かって大声のツッコミを放つことで何とか抑えた。
だが、未だ胸に渦巻く衝動を吐き出す様に虚空に向けてツッコミを放ち続ける。
「なに!? なんなの!!?
もしかして調査する段階のセクハラが目的だったりするの!!!? いや、寧ろ私達のデータを気合の入った変人共に売ってコネでも作ってるんじゃないでしょうね!!!?ていうか天神先輩の神技無駄スキルに服の織り目から覗く光景を脳内で保管して服の下の光景を精確に知れるってのが―――」
・
・
・
「―――だし、淡々と女子トイレに入って壊れた所を直したり備品の生理用品の点検をした時は―――」
・
・
・
「―――だし、行方不明になりたくないからとりあえず我慢しよ」
10分程不満を吐き続けた為溜飲が下がったティアナは、不満が再燃しない為にも、気を紛らわそうと書類を捲って次の書類に眼を通し始めた。
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氏名:Ginga・Nakajima
階級:陸曹
所属:時空管理局 陸上警備隊第108部隊 → 時空管理局本局 古代遺失管理部 機動六課 に出向。
役職:捜査官 → 機動六課部隊長第一補佐官副官 (ロングアーチ・主席第二補佐官副官(七席(出向者の為、常に部隊継承権の末席)))
戦力:近代ベルカ式陸戦・AA(推定S−(限定空戦時・推定AAA))
資格:内部捜査官 / 1級通信士 / 執務管(即日返還した為現在無し) / 準メカニックマイスター
備考:妹に当たるスバル・ナカジマ二等陸士が同隊に在籍しており、同行時は軋轢が発生すると予測される。
評価:限定的ながら空戦が可能であり、優れた近接格闘能力と突破力を兼ね備えている為、先陣を切る単騎突撃型。
特筆:出向元の機密に抵触する可能性が有る為記載せず。
● 詳細 ●
指揮能力は中の下。
判断能力は中の上。
決断能力は上の下。
単騎突撃が最も有用な運用法だが、小隊を率いて包囲網を展開しての突入も高水準の技量。
其の他は出向元の機密に抵触する可能性が有る為記載せず。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「…………ものすごく普通ね……。
いや、凄いのは間違いないんだけど………」
出向元の機密を考慮して詳細を大幅に制限されている為、極普通な評価書に肩透かしを食らったティアナ。
(…………天神先輩がギンガさんのアレ的関係をどう思ってるか見たかったんだけどな)
他人の恋路の可否は年頃のティアナとしては興味深かったが、記載されていないものは仕方が無いと割り切って書類を捲った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
氏名:八神・Zafila
階級:時空管理局に所属していない為存在せず。
所属:同上。
役職:同上。
戦力:古代ベルカ式空戦・推定AAA+
資格:要人警護 / 広域防御S+ / 大型自動車第二種免許 / 1級船舶免許 / 事業用操縦士(飛行機及び回転翼航空機共にB級ライセンス)
備考:八神部隊長の使い魔として登録されているので運用時の制限は少ないが、部隊長の代行等は極僅かな例外を除き一切行えない。
評価:思考と技術体系が迎撃に適しており、陣地等の拠点専守防衛型。
特筆:戸籍は存在しているが使い魔として所有物扱いの為、機動六課の職務に関与して死亡した場合は器物損壊としか見做されない為死亡者数には数えられないが、使い魔の認定を解かぬ限りは傷害罪等の適応が極めて困難な為に後ろ盾に欠ける。
● 詳細 ●
指揮能力は下の下。
判断能力は中の上。
決断能力は上の下。
使い魔として登録されているので局員に対する命令権を一切持たず、逆に八神二等陸佐の私物扱いなので機動六課の殆どの者は命令する権限を有さない。
尚、物品扱いの為傷害罪等が適応極めて困難であり、更に不祥事は八神二等陸佐の責任に直結し、其れは機動六課の責任に繋がるので権謀に巻き込まれ易い為、常時現在位置を把握する必要性が非常に高い。
但し、物品扱いを一度主張した場合、以後殺傷された場合は殺害や傷害としての立件が困難になる可能性が高く、使い魔の認定を解かぬ限りは此れ迄の足跡を考慮する限り高確率で殺害されると判断される。
性格と魔法及び体術の体系的に市街地での防衛線に向いており、特に要塞内での護衛が恐らく最も効果的な運用方法。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……………ただの犬じゃなかったんだ……」
ザフィーラがその言葉を聞いたならば即座に獣人形態になり、[俺は狼だ! 盾の守護獣! 蒼き狼! それが俺の二つ名だ!!!]、と力強く叫んだだろうが、此の場にザフィーラは居ない為ティアナの認識を正すことは出来ず、ザフィーラが犬という認識の儘ティアナは書類を捲った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
氏名:Griffith・Lowran
階級:准陸尉。
所属:時空管理局本局 古代遺失管理部 機動六課。
役職:機動六課副部隊長(ロングアーチ・次席)
戦力:純粋肉弾陸戦・推定E
資格:会計管理士(T-A) / 交通通信主任 / 1級通信士 / 中隊指揮官 / 戦力統御 / 外交官
備考:直接戦闘能力は全く運用域に達していないが、戦闘者として最低限の精神構造は持ち得ている。
評価:非戦闘員の為評価は存在しない。
特筆:本局所属のレティ・ロウラン提督の実子であり、母子共に公私混同はせぬものの意思送受信は可能。
● 詳細 ●
指揮能力は中の中。
判断能力は中の上。
決断能力は中の上。
非戦闘員ながら精神的構造は戦闘者としての最低水準を保持しているので緊急時に応戦指示等が可能であり、役職・階級・人望・立場・能力・人格・性格・価値観を考慮した結果最も機動六課の次席に相応しく、部隊長が少なからず戦場に立つ可能性が在る以上予備として可能な限り戦場から遠ざける必要性が有る。
だが、部隊長の継承若しくは長期代行の事態に至った全責任を天神第三補佐官(若しくは他の補佐官)に負わせることで部隊を存続させることが可能な為、部隊長補佐官を最低一名は残さなければならない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(…………たしかに。
…………………副部隊長以外が部隊長の後を継いだら………十中八九割れるわね。
リインフォース一尉とツヴァイ曹長は天神先輩と夫婦と言える程の仲だから本局思考の人達とその信奉者達と相性は良くないし、天神先輩は機動六課の殆どの人から疎まれてるから問題外だし、私は私で部隊指揮能力が最低限の維持すら覚束ない程度だから同じく問題外だし、ギンガさんは出向者だからギリギリまで対象外。
うん…………、副部隊長が次席なのはファインプレイね。
……………能力だけで役職を決めるものじゃないっていうヴィータ副隊長の言葉、…………こういう意味だったわけね)
ティアナ的にグリフィスは部隊長陣の中では無能ではないが目立った所も無い、無難で堅実で律儀で優秀だが平凡な印象で、居なければ仕事量が増える存在程度の認識だったが、廃人と準廃人集団の部隊長陣と他の一般人に対しても一定以上の人望を持たれている副部隊長は、部隊運営に欠かせない存在だと認識を新たにしつつ書類を捲った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
氏名:J・S
階級:記載不可(時空管理局陸上情報最高機密)
所属:同上
役職:同上
戦力:同上
資格:同上
備考:レジアス中将より便宜を図り且つ援助を受けろとの通達有り。少将待遇者。
評価:大規模騒乱を誘発する組織的遊撃型。
特筆:時空管理局陸上に於ける生命工学と機械工学の最高顧問。
● 詳細 ●
指揮能力は最下位。
判断能力は上の中。
決断能力は最上位。
司法取引を行っており、新暦78年以前のことに関しては発覚及び未発覚を問わずに全て合法。
司法取引後の行動は全て監視下に置かれており、全ての行動は合法若しくは超司法措置と保障されている。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「よし! これ以上見るの止め!!」
本名なのか通称なのかは不明だがJ・Sという名で、陸に於ける生命工学と機械工学の最高顧問を任され、更に司法取引を行うだけの前科と超司法措置が必要な行動をする者など、ティアナはフェイトが眼の敵にしている大犯罪者のジェイル・スカリエッティしか心当たりは無く、そしてそれがほぼ確実に的中していると判断したティアナは、自分が知るには過ぎた情報だと思い、即座に閲覧を止めて書類を机に放り置いた。
(自白剤でも打たれて喋ろうとした日には、ほぼ確実に首が飛ぶ以前に頭が弾けるわね。
…………しかも万が一喋った日には、聞いた者とその関係者も全員同じメに遭うでしょうね)
重要な書類が部隊長室とはいえ、何故何気無く机に置かれていたのか疑問に思いつつも、ティアナは念の為にと書類の指紋を丁寧且つ素早く拭いて痕跡の抹消を計り始めた。
(置いていた位置はミリ単位までの再現は出来ないけど、上に適当な書類の束でも載せた際に動いた風を装えば大丈夫。うん大丈夫。
幾ら室内が監視されてるといってもリアルタイムで誰かに監視されてるんじゃなくて記録されてるだけだから、特に問題が無ければ態々今日の映像なんて誰も見ないって。うん)
実際は速人が日に1回以上は未確認の機動六課監視記録を全て同時に360倍速で確認しているのだが、ティアナは唯でさえ忙しい速人が律儀に毎日確認しているわけは無いと思い込んで精神の安定を図った。
だが、その行為は―――
「重要書類を綺麗にしておくのは感心です」
―――窓の外からかけられた声で無駄に終わったとティアナは痛感した。
其の後、部外秘情報を知ったティアナは更に機動六課の核心とも闇とも言えるモノに関わることとなった。
尚、機動六課内全ての監視記録は速人が最低24時間に一度は未確認記録を確認していると知ったティアナは、機動六課敷地内に居る限り迂闊な発言と行動は出来ないと悟り、プライバシーを守る為に辞職するかどうか約1時間の間真剣に悩んでいた。
【終わる】
● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○
【おまけ:其乃伍】速人がFateのキャスターのマスターだったら?
(キャスターが外来マスターに召還された時期が本来と異なりますが御勘弁願います)
「速人様、先程冬樹市長より冬樹市開発草案と資金援助の件での報礼の品が届きましたが、どのようになされますか?」
「中を確認し、目録を作成。
後の対処は一任する」
「分かりました。
それでは別室にて中を検めた後、死蔵されつつある贈答品を寺の方方に振舞ってまいりますので、御用件が在れば後程……」
「解った」
・
・
・
「速人様、先程民間の発掘隊との交渉が終わり、今月末迄柳洞寺周辺を昼夜問わず大大的な調査を行います。
警備体制は厳重に敷くよう計画しておりますので、聖杯戦争期間中に神秘を隠匿して他のマスター及びサーヴァントが攻勢を仕掛けることはほぼ不可能な状態になると思われます」
「マスター候補の現在位置把握は?」
「30分程前に把握致しました。
此方がその人物……衛宮士郎の容姿と居住と通学しているであろう家宅と学園の住所です」
「魔術関係知識の有無は?」
「………観察時間が短い為断言は出来ませんが、恐らく魔術という存在と行使方法を最低限のみ知り得ていると思われますが、心構えは一般人と全く変わらないと思われます」
「マスター候補の衛宮士郎がサーヴァント召還を行うであろう場所の候補は?」
「ほぼ確実に自宅の物置………蔵と思しき場所の中のみです。
他の場所ならば知識や力量的に召還はほぼ不可能と思われます」
「結界の有無は?」
「敵性侵入者感知以外の効果は確認できませんでしたが、神代の魔術師の誇りに懸けて他は無いと断定させていただきます」
「分かった。
此れからの行動だが、魔術ではなく化粧で変装後マスター候補の衛宮士郎に接触し、行動束縛及び精神操作の術式を仕込んだ後に柳洞寺へ強制召還可能な術式を更に仕込む。
サーヴァントを召還後即座に絵宮士郎を前後不覚状態で柳洞寺へ召還して令呪を強制剥離。
令呪移植対象は絵宮士郎が召還したサーヴァントとの相対距離及び推測される能力次第で緊急性が変動し、更に他サーヴァント及びマスター並びに外部勢力の要素も考慮し、状況に多角的に判断する為に現場での判断に任せるので指定はしない。
行動束縛の術式を仕込めない場合は強制召還の術式を仕込まず、直径1m・重量1tが送還可能な陣を衛宮家に配置場所を問わず12陣仕込み、風と火に特化した円柱状の結界で衛宮家の結界を覆え。
尚、衛宮士郎に関する術式は四日後の午前5時迄機能すれば構わない。
質問は在るか?」
「…………………………………………召還されるであろうセイバーの運用法を御聞かせ願えますか?」
「バーサーカー・ヘラクレスに対する特攻だ」
「しかしバーサーカーならば、マスターを郊外の森を城ごと蒸発させることで容易に殺害可能ですし、その後暴走したバーサーカーは消滅するまでの間視認すら不可能な高度で此方が待機すれば問題は在りませんから、態態危険を犯してセイバーを使役する必要はないかと……」
「耐魔力Aランク以上を保有する可能性の在るセイバーと敵対した場合、此方側の魔術関係の干渉は殆どセイバーにより無効化される。
ならば令呪を以って主替えを強い、現在判明している中で最も殲滅に際して損害を被る可能性が高い者へ特攻させるのが妥当だと判断した」
「しかし…………」
「戦略見地は措くとして魔術的見地では俺を遥かにしのいでいるのだ、問題と思った箇所は指摘してくれ」
「いえ、…………………魔術師と見ても行動指針や作戦に問題は見当たりませんが、………………サーヴァントとしてはマスターを危険に晒す事には異を唱えざるを得ません」
「俺が死のうと適当な者をマスターとする程度造作も無い筈だが?」
「そうではなく速人様の御命の事を申しているのですっ」
「それは役割分担上当然のことと割り切るしかないだろう」
「ですが…………っっぅぅっ」
「策略を巡らせる事に特化していると言われるキャスターのサーヴァントと俺の相性は高く、俺個人に少なからず思い入れがある身としてはどちらにも危険度が低い策を望むのだろうが、現在の俺の演算力では先程提案した策が限界だ」
「いえ、サーヴァントとしてマスター………いえ、私が速人様の今より多くの手段を提供できないのがそもそもの原因です。
速人様に不足や不備は御座いません」
「ならば準備が整い次第行動に移してくれ」
・
・
・
「どうした? 随分と見た目相応な憂い顔をしているようだが、相変わらず思い届かずといったところか?」
「うるさいわね。
肋を中から開かれたくなければ黙ってなさい」
「いやはや、やはり恋することで女は美しくなるとは真であったか。
怒り顔一つに瑞瑞しさを感じるとは」
「黙らないと口から中身をぶち撒けさせるわよ」
「ふむ。
……苦行に勤しむ趣味は無いので黙ろうと思うが、日に日に見た目に違わぬ乙女へと変わりつつあるマスターへ一つ助言を呈そう」
「…………つまらない事だったら眼孔から中身を全部押し出させるわよ」
「なに、マスターの恋への助言だが、……三歩下がって付き添い歩く姿勢は奥床しく女性らしいが、速人殿は自分に従順な者には然して価値は見出さぬだろうよ」
「…………付き合いの短いあんたが言うじゃない……」
「なぁに、これでもマスターよりは人と接してきたのだ。
細かい所は解らぬが、速人殿が自分を肯定も否定も出来る人物に興味を覚えるのは容易に見て取れる」
「……………………」
「それに、自身を高めたり見極めようとする求道者にとって、感情を?み込んで賛成と反対のどちらの異見も述べられる者は好ましいものなのだ。
それが自身の気付かぬ箇所の指摘であったら尚のことだ」
「………………………………………」
「別に粗捜しをしろといっているわけではないぞ?
徒、相手を深く見、そして深く想い、その上で在りの儘の言葉を相手に届けろというだけのことだ」
「……………随分とハードルの高いことを簡単に言ってくれるわね」
「いやいや、これは資質の問題だ。
努力等でどうこうなる問題ではなく、自身が相手と合うか?、と言う、徒それだけのことだ」
「………………………………………………………」
「此処からは拙者の戯言と聞き流して構わぬが,……欲すモノが在るならば、自身がソレと比肩する存在へと成らね限り、手に入れたモノは嘗ての輝きを有してはおらぬ。
獅子が鷹に懸想して地に引き摺り下ろして共に在ろうとしても、その時鷹は嘗ての雄姿など見る影も無く、逆も然りと言うことだ」
「……………分不相応と言いたいのかしら?」
「拙者の目には現状はそう映る。
だが、ならば分相応になればよいというだけのことだ。
そしてそれは自らを高めることであって、相手に媚びることではないというだけのことだ。
まあ、所詮は拙者の戯言だが」
「…………………そこから離れられるようになったら他のサーヴァントに特攻させてやるから、覚悟してなさい」
「ははは、楽しみに待たせてもらうとしよう」
・
・
・
「…………………失礼ですが…………何処から此の宝具を入手なされたのですが?」
「日本国政府に金銭的価値に換算して400兆円に値する技術を売却した対価に入手した」
「……凄い神秘……………。
どれもランクEX……………」
「この国に伝わる三種の神器だ。
草薙剣。天叢雲剣の別称であり、燃える草原を一振りで道を切り開いたとされ、更に諸説は在るが神産みや竜殺しや不死殺しの逸話も在る。
八咫鏡。天岩戸に隠れた天照大神の出御を願って作られた神体とされる。
八尺瓊勾玉。天岩戸に天照大神が隠れた際、神神が立てた真榊に飾られたとされる」
「……………鏡と勾玉を用いれば神霊の召還も可能そうですし、剣の方は恐らく火と龍に対して特効の上に最上級の呪いの触媒としても使えそうです」
「この国で此れを上回る現存するだろう神秘があるとするならば、天体を司る神として祭られていた、国津神・天香香背男の化身とされる宿魂石等だろう」
「…………………いえ、十分過ぎる品品です。
サーヴァントが1〜2体消滅して起動した此の地の聖杯を動力源として召還を試みたならば、此れだけ強力な縁の在る触媒宝具である以上、確実に神霊を召還出来ます。
そうすれば此方はサーヴァント2体に神霊1体。対して残存兵力はサーヴァント3〜4体。
……相手が全員結託しても蹴散らすの容易でしょう。
更に万が一の時は地脈を傷つける覚悟で強引にマナを吸い上げれば、今直ぐにで召喚可能です。
………徒、この世に存在しないサーヴァントの身で実在したとされる神霊の召喚を試みても、小次郎という前例を考慮する限り半端な存在が召喚されるでしょう。
ですので、召喚する際は速人様を楔として召喚することになりますが宜しいですか?」
「想定される危険度と利得は?」
「召喚時に速人様が吸い取られるであろう魔力は迂回路を作ることで枯渇を防ぎますが、神霊が速人様との縁を強く望んでいた場合は強引にパスを繋がれて根こそぎ魔力を吸収される恐れがあります。
ですがその時はパスを断ち切る備えがありますし、その作業が間に合わずとも準備していた魔力が速人様に流れ込むように備えておきます。
ですので、速人様のリスクは、
1.パスを強引に繋がれた際、速人様に貯蔵魔力が流し込まれる一瞬の間に肉すら残らず溶解吸収する程に魔力と生命力を吸われ尽くされてしまう可能性が在る。
2.パスを強引に繋がれた際、速人様に貯蔵魔力が流し込まれても私がパスを断ち切る前に貯蔵魔力が尽きて速人様の魔力と生命力が据われ尽くされてしまう可能性が在る。
3.パスを断ち切っても相手が強引に再度パスを繋げる可能性が在る。
4.召喚当初から敵意を持たれている可能性が在る。
以上の4点に絞られます。
尤も、詳しく伝承は存じませんが、人人に害を齎す邪神の類ではないとされている以上、3と4の危険は除外可能でしょう。少なくともこの国に住まう者を滅ぼせなどと此方が望まぬ限りは。
又、1と2に関しては私が小次郎用に保有している令呪を1画速人様に移植しますので、万が一の時は令呪を用いて私の行動強化をして下されば問題無いと思われます。
そしてメリットですが、推測になりますが、知識にある伝承を考慮する限り、ほぼ確実に聖杯戦争で勝利を収めることが可能となります」
「召喚された存在が此方の要求を拒否する可能性は?」
「この国を守護すると崇め謳われる神ならば、聖杯戦争の早期終結は民間人の被害を減らすということから断ることは無いと思われます。
更に元凶の一員として私達を殺害するとしても、今迄の経過と聖杯を望んでいない旨を伝えれば危険は無いと思われます。
………神とは個個の人間に興味は無いでしょうが、人間の真摯な言葉や願いを無碍にもしませんから」
「神霊の能力値の予測を俺が出来ぬ以上、神代の時代を知る者が妥当と判断を下したのならば反対は無い。
必要な物品及び許可及び作業は何だ?」
「此の地の聖杯と同深度に半径3kmと6kmと18kmの同心円状に等間隔で5・7・12箇所に直径31m未満の魔法陣や祭壇を設置しますので、その空間の確保をお願いします。後程詳細な図面をお渡しします。
そして召喚の際には、予め地脈から汲み上げた魔力と龍脈の上に存在する者から零れ落ちた魔力と此の地の聖杯を動力源としますが、サーヴァントの打倒が間に合わない場合に備える為、可能な限り流脈上……つまり冬木市に人が居ることが望ましいです。
最後に、召喚を行う場に必要なモノとして奉神の儀に必要な物を一式願います。尚、その場合は可能な限り召喚対象と縁の在る古い物をお願いします。
以上です」
「…此の地に聖杯の在る空洞の存在を匿名で指摘され、簡易調査の結果其の存在を仄めかせる結果が出たので大規模な調査団を柳洞寺周辺に配置し、魔術師達の干渉を防ぐ防波堤とする。
次に冬木市街に四月一日に開店予定の大型量販店を、予算調整と品揃えを知って貰う為と銘打ち、試験開店として完成済の3階迄を使用して原価割れで販売し、且つ3日に渡り1人の購入限度数を設けて販売する。
同様に四月一日に開店予定の和洋折衷の旅館も原価割れの価格で大型量販店試験開店6日前から
10日間試験開店する。
更に俺が無差別に蒐集した書籍から、アニメ・ゲーム・ライトノベルを中心とした同人誌を、市民会館を市場調査と銘打って借りて1日限り販売。
最後に不思議の国のアリスの零版を目玉とした、絶版や焚書処分された書籍の競りを1日限り行う。
15万人は一時的に呼び込めると判断しているが、これらは日中に召還が行われることを前提としているが、前提に問題は無いか?」
「十分で御座います。
しかも熱狂していれば零れ落ちる魔力の量は増しますので、恐らく50万人以上と同義です。
召喚の日時に関しては後程計算し、1時間以内に実行日を割り出し、6時間以内に実行時刻と魔法陣の位置を割り出します」
「分かった。
関係各所への草案伝達及び調整は俺が行う」
そして、運命が崩壊する。
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Fate/CalamityDeadEnd
〜 その日、世界は終わる 〜
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というのを約10秒で思い付いたので投稿させていただきました。
無論完全一発ネタですので、続きは期待されるだけ無駄です。
因みに別の一発ネタに、速人じゃないオリジナル主人公(女)が、大火災の際にギルガメッシュに救われ、ギルガメッシュを絶対視しつつ相応しい従僕足らんと屍山血河を駆け抜け、初代ロア級の存在に至った後に第五次聖杯戦争でギルガメッシュの命で英雄の選定を行うというのも考えたのですが、5万文字越えた辺りで一発ネタのレベルでないと気付き、完成させるのも面倒なので死蔵と相成りました(某サイト様の、Fate/黄金の従者、という素晴らしいSSを、性質の悪いダークシリアスにした感じにしかならないと気付いたのが最大の要因ですが)。
又、他にもリクエストに在ったISやゼロの使い魔も書いてみたのですが、アンチやヘイトを通り越し、原作完全粉砕か世界観借用のどちらかしか出来ませんでした。………特にゼロの使い魔は、【強制召喚される →接触拒否 → 逃亡 → ルイズが自然死する → 単独で彷徨 or ゲルマニア辺りで領地を得て東へ遠征】、という、原作キャラとの絡みが殆ど無い仕様に……。
逆に主人公勢も含めて人死にを当然と思っているワンピースは良い線だったのですが、モブキャラも含めた登場人物の90%強が死ぬという、バスターコールがギア2並の頻度で発動するという、人類衰退期に直走る話になりました。………赤犬すら焼き殺せる可能性の在る、エレクトロン焼夷弾とか、割とお手軽で割と運搬しやすく割と被害範囲の狭い兵器とかを割と簡単に大量生産しそうなのが恐ろしいです。
一発ネタを作っていて解ったのですが、速人はチートキャラが居なければ原作完全粉砕するか穴熊を決め込むかKY放浪者のどれかだと悟りました。
つまりアリサ達はリリカル世界の救世主という事ですね。
まぁ、アリサ達の行動と命運次第で被害規模の桁が跳ね上がりますが(速人は復讐を行わなくとも報復は確りと実行しますので)。
以下は速人が召喚した者の設定です。
【真名】
● 玉藻の前(天照大神)
【クラス】
● 聖杯戦争システムを解さずに神霊として召喚(厳密には降臨)されている為存在せず。
【ステータス】
● 筋力:A7+・魔力:EX
● 耐久:A5+・幸運:EX
● 敏捷:A9+・宝具:EX
…………ぶっちゃけ、〔うしお●とら〕の白面の者並。
【スキル】
● 伝承の再現:EX
太陽を操るという伝承を再現し、地球上から太陽という事象と概念を消失させることさえ可能とし、逆に太陽の熱や重力を顕現させることすら可能。
但し天照大神の一部である為、範囲と出力と維持の面で弱体化しており、事象と概念消失は最大72時間であり、熱と重力の顕現は本物の約半分の約800万度・約14Gの最大1時間となっている。
又、太陽に支配されているとされる地球を限定的に操作可能な為、最低でもA+++ランクの空想具現化が可能であり、更に固有結界のペナルティを約70%抑え且つ精霊等へのバックアップを約20%奪うことが可能。
● 神性:EX
分体と雖も神霊そのものである為、当然ランクはEX。
又、高過ぎる神秘を纏っている為、常にA++以下の干渉を遮断する。
尚、天の鎖で拘束された場合は純粋な筋力での脱出は困難だが、固有スキルを使えば即座に破壊可能だが、天の鎖自体が玉藻の前の神秘に耐え切れない為、30秒以上の拘束は実質不可能となっている。
● 陣地作成:EX
神霊として自らに有利な拝殿を作り上げる能力。
本来ならば手順を踏んで陣地(拝殿)を作成する必要が在るのだが、日本では最高の知名度を誇る為、日本ならば何処でも陣地として行動可能。
尚、本来ならば陣地の広さは知名度にも依るが、神殿や聖域や固有結界以外ならば手抜きで作成しても最低半径4km以上。
恒常的に受けられる陣地補正は、
1.陣地内の把握。
2.陣地内を攻撃範囲に収められる(命中するかは別)。
3.全能力の強化。
4.世界修正無しで陣地内全てをて固有結界と化す事が可能。
5.EXランクの空想具現化が使用可能。
と、なっているだけでなく、信仰補正と陣地の範囲次第で恩恵の度合いは更に上昇する。
又、陣地は太陽を司るとされる天照大神として、太陽に支配されているとされる地球を一部とはいえ支配し、陣地に限り精霊等への星からの供給権及び空想具現化の使用権の最低60%を奪う事が可能であり、陣地に居る限りガイアが玉藻の前を殺害することはほぼ不可能となる。
● 神産み:EX
触媒に十拳剣(天叢雲剣)を使用して神霊を産むという規格外スキル。
尤も、神秘が薄れた現代で神霊を産むメリットは非常に薄く、寧ろ応用して自己再誕(本体召喚)を行い、完全な天照大神に成る方が遥かに有益。
● 神霊魔術(神霊魔法):EX
人間の扱う魔術とは一線を隠した技術体系であり、大抵の事象を触媒を用いずに成し遂げられる。
又、ランクEXでは魔法に匹敵若しくは超える神秘が行使可能である。
だが、玉藻の前は日常生活に活かせる便利な技能としか認識しておらず、余程の事が無い限りは戦闘に使うという発想すら芽生えない。
● 呪術:EX
ダキニ天法。
地位や財産を得る(男性用)、権力者の寵愛を得る法(女性用)等。
しかし過去散散懲りたのか、余り使いたがらない。
尚、天叢雲剣(草薙剣)を触媒に呪殺を試みれば神代から現存する龍種すら呪殺可能となる。
● 変化:EX
借体成形とも。
玉藻の前と同一視される中国の千年狐狸精の使用した法。
異臭革命(封神演義)期の妲己に憑依・変身した術だが、過去のトラウマからか、余り使いたがらない。
尚、妖怪変化としてではなく神霊として召喚されている為、厳密には神霊魔術の応用であって変化ではない。
●空想具現化:A+++(EX)
最低でもA+++だが(世界の活力で変動する)、陣地内ならばEXランクで使用可能(信仰により発生した神ではなく、精霊や聖霊と言える天津神から生まれた為空想具現化が使用可能)。
尤も、日本全てが無条件で陣地と化しているので、日本に存在する限りはEXランクと同義であり、更に固有結界に取り込まれても結界解除後に日本外に飛ばされる可能性が無い限り空想具現化をEXランクで行使可能。
【宝具】
● 八咫鏡・・・・・・・:EX
現存する宝具であり、玉藻の前が持つ水天日光天照八野鎮石が現代迄伝えきられた物であり、オリジナルの宝具。
死者蘇生や光臨した聖杯に匹敵する魔力の無尽蔵供給等が可能であり、第三魔法の機能をも兼ね備えている。
●水天日光天照八野鎮石:EX
本物と呼称可能な八咫鏡が有る為、殆ど無用の長物状態になったEX宝具。
● 八尺瓊勾玉・・・・・:EX
現存する宝具であり、【思い描いた事象を現実にする】、という、強力な世界改竄力を秘めた宝具。
定められた未来だけでなく、連なる過去すら改竄して目的を達成させることを可能としている。
だが、効果と範囲は使用者の意思の強固さと注ぎ込まれる魔力とに比例している。
意志が強固であっても魔力が足りなければ発動せず、魔力が足りていても意志が強固でなければ効果範囲内の全てが世界修正で消去される。
更に常時発動型の宝具である為、思いに対して適正な魔力が存在すれば勝手に起動するので、制御装置が一切存在しない以上、使用者が自らの消滅を願えば即座に実行されてしまう。
世界の外側から無尽蔵とも言える魔力をほぼ無制限に供給可能な八咫鏡を持ち、更に普段は封印しておくことが可能な玉藻の前にとっては理想的過ぎる宝具。
尚、玉藻の前の使い道は、【星が滅びようがイチャイチャし続けられる環境の創造】、という、速人と共に老いや飢えや病や死という概念が無い世界で暮らすことである。
● 天叢雲剣(草薙剣)・:EX
現存する宝具であり、建速須佐之男命が八俣遠呂智を退治した時に使用した十拳剣が変化した物、若しくは八俣遠呂智の尾の中に在った物ともされており、更に日本武尊が燃え盛る草原を剣の一振りで道を開いたされる。
十拳剣が柄の長い剣の総称とされ、伊邪那岐命や他の者達が使用していた十拳剣は全て違う十拳剣ではないかとされている説があるが、此の天叢雲剣は、【伊邪那岐が帯剣していた十拳剣(天之尾羽張剣) = 建御雷神が帯剣していた十拳剣(天之尾羽張剣) = 天照が神産みをした及び須佐之男が帯剣していた十拳剣(天羽羽斬剣) = 阿治志貴高日子根が帯剣していた十拳剣(神度剣) = 日本武尊が帯剣していた天叢雲剣(十拳剣=草薙剣)】、という経歴を辿ったと信仰されている。
その為此の剣には、神殺し・不死殺し・水操作・神産み・龍殺し(蛇殺し)・真贋看破・斬火・斬風・呪い、という、多種多様な特性を備えており、その全てが宝具自体のランクと同格のEX。
宝具の格としてはギルガメッシュのエアに若干劣るが、地獄を再現するエアに対し、黄泉という地獄を潜り抜け且つ地獄(火炎野原)を切り裂いたとされる天叢雲剣は天敵となっている。
【詳細】
● 流石に神と謳われる存在を丸ごと召喚することは不可能であったのか、天照大神の一人格である玉藻の前を核として召還された存在。
人格こそ一人格だが、召還の触媒に天照大神と縁が極めて強い品と莫大な魔力を用いた為能力は天照大神に極めて近く、更にサーヴァントしてではなく神霊(精霊若しくは星霊が信仰により神霊属性を得た感じ?)として召還されたので能力を十全に発揮可能になっている為、アルティミット・ワンでもなければ太刀打ち不可能な程の戦闘能力となっている。
尚、触媒は兎も角、魔力や召喚のスキルランクが圧倒的に足りなかった為、本来ならば召喚失敗になるところだったが、玉藻の前が自らの意思で降臨したので辛うじて召喚に成功している。(召喚1に対して降臨99が成功した要因)
本来ならば用意された魔力では体を構成するには全く足りないのだが、速人が用意した八咫鏡により魔力関係の問題が全て解消される(大聖杯の在る空洞の殆どを魔方陣で埋め尽くし且つ大聖杯の魔力をも盗用し、その上冬貴台聖杯から一定距離離れた同心円状の地下に多数魔法陣を配置する等の用意をしていたが、召喚には全く足りなかった)。
尤も、召喚寸前に玉藻の前から強力なパスを強引に繋がれた為、八咫鏡から魔力を供給する前に速人の生命力を残らず吸い尽くして殺しているのだが、速人の死体にバックアップの魔力が大量に流れ込む又は強大過ぎる玉藻の前の魂に取り込まれるように死亡した為、死という事象と合わさって容易に「 」に触れることが出来た速人は、玉藻の前の魂の中で奇跡の域の神秘を行使して速人という個を確立した為、それに気付いた玉藻の前は速人の肉体を修復することで速人の蘇生の後押しをし、結果、速人は肉体という器を得ることが出来た為丸く治まる。
だが、吸収されて直ぐに分離するかの如く独立したとはいえ、短い間だが確実に魂が一つとなっており、その際に魂(自我・精神・意思等)が完全に溶け合っていた為、玉藻の前は完全に速人を半身と見ており、速人もそれに対して否定的な意見は一切述べていない。
玉藻の前と溶け合った後に以前と同等量分の魂で独立した速人だが、その際に魂がヒトから玉藻の前と同質且つ同格の存在へと昇華した為、解放された魂が肉に戻った後直ぐに肉体も魔力に置き換わり、完全な人外、天照大神の分体の玉藻の前の半身となってしまい、天照大神の一人格となる。
尚、半身である速人の知名度補正も玉藻の前(天照大神)に影響すると知った速人が、今迄の功績を大大的に表に出した為(偽善行為含む)、聖杯戦争の終盤からは世界全土に名が知れ渡りその約半年後には史上屈指の偉人として名が広まる為、後に世界全土で強力な知名度及び信仰補正を得られることが確定しているので、【天照大神、玉藻の前(金毛白面九尾)、天神 速人】、の三方面から信仰補正が得られる玉藻の前は十字教や仏教の象徴と同等域の補正が得られます。
戦闘能力格付けは、ORT ≧ 天照大神(三種の神器持ち)> 朱い月 ≒ 上記の玉藻の前 ≧ 10割アルクェイド ≒ 天照大神 > 玉藻の前 ≒ アルトルージュ >>> ギルガメッシュ > 上記の速人 > ヘラクレス > アルトリア > メディア > シエル >> バゼット、としています。
百の英雄を返り討ちに出来、EXTRAで七回戦まで勝ち抜いたサーヴァントを指先一つで圧倒可能な強さが、更に強化された状態を目指して設定した捏造一発ネタです。
【玉藻の前の一言】
● 「おはようからおやすみまで、常に御傍でサポートし続ける、あなたの良妻賢母が常世の外から婚姻届と共に召喚に応じました!」(←ほぼ同時に魔力どころか魂をも吸い尽くされた速人に急いで魔力を大量に流し込むが、流し込み過ぎて爆発四散する)
● 「はいはい。エルフ耳はアキバでコスプレしてオタクを囲ってて下さい。
今なら〔裏切り者●ララバイ〕のカセットテープをくれてやりますからお得ですよ?」
● 「はうあっ!?!?!?
まさか平然と同衾を許可してくれるとは……………なんて素晴らしい天然!!!」
● 「私の愛の重さはブラックホール並ですから、どれだけ逃げようとも特異点に引き摺り込みますよ?」
● 「私は旦那様に召喚されし聖杯戦争とは関係無い世界一の良妻賢母!
そして真名は、旧名・天照大神、若しくは玉藻の前。現在は、天神 玉藻、です♪
あ、コッチニいるのは、コルキスの王女だったというメディアで、家の駄家政婦です。
因みに趣味は美少女か美幼女にゴスロリ服を着せて監禁陵辱するという、気合の入った隠れ犯罪者だから気をつけてください」
● 「どうですかセイバー!
そんなマスターに見切りをつけてうちのペットになれば、料理スキルA++のマスターの料理が鱈腹食べられますよ!?
しかもです。私もマスターも貴女の、アルファルファ・ペドドラゴン、と言う恥ずかしい真名は気にしませんよ?」
● 「失礼。
西洋人の名は覚え難いもので。
そうですか、…………大丈夫です、確り記憶しました。
性別を偽って臣民を謀り、馬にも乗れない程衰弱していた漁夫王に一騎打ちで負け、重要局面で公私混同して湖の騎士に離反され、しかも遠征中に起こされた反乱を鎮圧すれども力尽きると言う無責任且つ国力を削いだだけに終わったという、かの有名な聖剣【X仮売】を振るったという伝説のヒーホー王ですね」
● 「ぷっ。
貧乏・うっかり・見栄っ張り、の三拍子が揃ってるなんて、一体何処の没落貴族様ですか?」
● 「裏のコネだけせこせこコスコスシコシコ作っているから、国際指名手配を解除できないんです。
あ、家の方は地下がレベル4の病原菌が異常繁殖しているとされてますんで、エレクトロン焼夷弾の3000℃の炎で熱消毒されますけど、下手に燃え残って神秘がばれないように魔術関係は全て破壊しておきますから安心してください」
● 「笑止!
X仮売如きが私達の愛の巣を壊せると思いましたか?
メル友のアルクからも、戦闘中なら壊しきれないと言われる程の出来ですよ?」
● 「ふっ!
其方が原初の地獄を再現するというなら、私は天に輝く陽を地で再現してみせます!!」
● 「甘い甘い甘い!!!
この世全ての悪程度でマスターがどうこうなったりするなら、とっくに私と褥で淫欲と怠惰で―――作者により規制―――な一時を過ごしています!!!
マスターを染めたければ黒い銃身に感情を植えつける術式でも刻んで持ってくるんですね!!!」
【天照大神の分体の玉藻の前の半身・天神速人の簡易詳細】
● 筋力:E70+・魔力:EX
● 耐久:E60+・幸運:EX
● 敏捷:E95+・宝具:EX
● 神性・・・・:EX
● 演算・・・・:EX
● 死への欲動・:EX
● 生への欲動・:EX
● 黄金率・・・:A++++(EX)
● 陣地作成・・:A+(EX)
● 神霊魔術・・:A+(EX)
● 伝承の再現・:B+(EX)
● 空想具現化・:D++++(EX)
● 神産み・・・:E−(EX)
● 固有結界・・:???(--- 〜 EX)
● 八咫鏡・・・:EX
● 天叢雲剣・・:EX
● 八尺瓊勾玉・:EX
【打ち切り】
● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○
ほのぼのとお茶とはいかなかったか。
美姫 「思ったよりも熱く語ってたわね」
まあ、あまり大声で言うのもどうかという感じだがな。
美姫 「でも、共感する人も居るみたいよね」
そりゃあな。で、後半は速人の方だったんだけれど。
美姫 「こっちは尾行がある上に」
最後にはカリムの方が熱く語る結果になったみたいだな。
美姫 「ちょっと意外かもね」
でも、それだけ鬱憤が溜まっていたと。
美姫 「そして、今回もおまけ付き」
こちらも楽しませてもらいました。
美姫 「次回も楽しみにしてます」
ではでは。