はじめに
本編再構成物です。
ですが、すでにレンと晶のルートは通っています。
美由希ルートの「お前は俺の〜」発言もすでにしてあります。
時間軸は本編開始と同時期です。
恭也は誰とも付き合っていません。
上記の設定が嫌な方は戻ってください。
これを見て気分を害されても一切責任持てません。
とらいあんぐるハート3 〜神の影〜
第17章 「戦闘準備」
4月27日(木) 国守山 三合目付近 一般開放地区 AM6:17
「それでっ! 恭也さんはっ! どう思いますかっ!!」
横薙ぎに振るわれた恭也の右の木刀をしゃがみながら左の木刀で受け流して、右の木刀で刺突を繰り出す桜花。
半身ずらしてそれをかわすと、恭也はカウンターで左膝を叩き込もうとする。
刺突の体勢でいながらも強引に左足で地を蹴ることで、桜花は繰り出された恭也の膝蹴りをかわそうとする。
しかしそこから恭也の蹴りが膝蹴りからミドルキックに変化する。
「ぐっ・・・・・・」
一瞬にせよ地面から離れていた桜花にそれを回避する術はあらず、それでも右腕で蹴りを防ぐ。
『徹』の込められた蹴りは桜花を大して吹き飛ばさなかったが、右腕にかなりのダメージを受けて思わず木刀を落としそうになる。
そのまま蹴りの勢いに押されるかのように桜花は、右の木刀を右側の腰に納刀しながら後退。
それを許すまじと恭也は間をおかずに追撃する。
「・・・っ! 恐らく、早ければ週末かと!」
恭也が間合いに入る前に、正面からではなく左側に回りこむように動いて左の木刀を振るう桜花。
その横薙ぎの太刀と恭也の唐竹割りが激しく火花を散らす(木刀なので実際には散っていないが)。
桜花は二刀で攻め込まれないように後ろや横に移動しながら一刀のみで打ち合う。
その意図を理解している恭也だが、何分速度は桜花のほうが上なのである。
加えて剣の技量は互角、攻撃力こそ勝っているが『徹』の錬度の差でそこまでの大きな差はない。
そのため恭也は、防戦に回った桜花をなかなか攻めきることができない。
「はぁっ! 私も、同意見です!」
そうしている間に、防御に徹していた桜花が踏み込んできて左の木刀を袈裟斬りに振る。
それを受けようとして恭也は桜花の右腕が丁度死角に入っていることに気づく。
(・・・『迅雷』か!?)
桜花の最も得意とする『雷徹』を二連続同じ箇所に打ち込む『迅雷』。
受けたら確実に木刀は折れるし、腕にダメージも残る。
故に恭也は、自身も『雷徹』を使って一撃目を相殺―――しようと考えたところでふと疑問に思う。
一応隠しているが、連撃ではなく初撃から『迅雷』を打とうとしても知っている人間には読まれやすい。
現に、この状況で打ってきても、自分は対応できる。
ほんの一瞬、その疑問に意識が向いた瞬間、
(・・・・・・っ!? しまっ――)
高速で恭也目掛けて桜花の右足が迫ってきていた。
『迅雷』に意識を向けさせて、その一瞬の隙に回し蹴りを恭也に叩き込む。
『雷徹』の動作に入っていなかったので辛うじて防御することに成功する恭也。
しかしその衝撃は恭也を貫き、一瞬動きを硬直させる。
そこへ桜花は追撃をかける。
「っ!?」
「やあぁぁぁっ!」
御神流 奥義之六 『薙旋』
木刀なので本来の速度と威力は出ないものの、高速の四連撃が恭也を襲う。
一撃目と二撃目は何とか防いだが、三撃目を肩に受けて恭也は片膝をつく。
そして四撃目を喉元に突きつけられる。
「今日か明日にはフィリス先生のマッサージ―――もとい、人体破壊を受けに行くべきですね」
「言い回しが逆ですよ、桜花さん。 となると瑛は?」
「高町家に泊まりに行かせます。 護衛も兼ねて、ね」
「・・・助かります」
桜花は木刀を突きつけたまま、恭也は突きつけられたままで会話を再開する。
一通り会話が終わると桜花は木刀を下ろし、恭也は立ち上がる。
「・・・・・・話なら、鍛錬が終わってからでもいいと思うんだけど」
「まあ、その辺は姉上と恭也さんですから・・・・・・」
「そうだね・・・・・・結局恭ちゃんも桜花さんと同類ってこ―――ぷぇぷ!?」
瑛の言葉に正直な感想を漏らした美由希へ突如“なにか”が飛来して顔面に直撃する。
間髪入れずにまるで後ろから蹴り飛ばされたかのように美由希は吹き飛ぶ。
うつ伏せで地面に倒れこむ美由希に“誰か”の足が置かれて、容赦なく踏み潰される。
「あぅぅ・・・・・・」
「失敬な」
「・・・そういう反応をするあたり、多少の自覚はあるんですね」
「・・・・・・・・・」
クリティカルヒット気味な瑛の一言に、恭也は沈黙するしかなかった。
「まあ、そんな今更なことは置いといて・・・・・・」
鍛錬終了後の、家に帰還する前の僅かな時間。
知人の中で、非常識の代名詞っぽい扱いになっている人物にそんなことを言われて少し凹んだ恭也を無視した桜花は、鍛錬中に話していたことの続きを話し始める。
「私たちとしては、長期戦よりも短期戦・・・しかも本人が出てきてくれれば尚ありがたいです」
「ええ」
「で、当事者たちの認識はどうですか?」
「少し前に、忍の親戚の人が黒幕の人物に接触したらしいです」
「その時点で警告をした。 これなら暫くは襲撃はない、と?」
「・・・恐らくは」
「困りましたね・・・・・・生半可な脅し程度で止まるような輩なら、もっと早くに決着がついているでしょうに」
眉に皺を寄せながら、桜花は黙り込む。
「現状では、週末を目処に警戒を強化するぐらいでしょうね」
「それ以上となると・・・・・・」
「ええ、分かってますよ。 今までのご飯代くらいは働かせますよ」
偶にただ飯を食らいにくる女性のことを思い浮かべて、桜花は黒い笑みを浮かべる。
それを見た恭也は心の中で合掌し、美由希はあはは、と苦笑して、瑛は自業自得です、と心の中で嘆息していた。
「・・・というわけで、瑛が週末に泊まりに来ることになった」
「なにが「というわけで」なのかは知らないけど、別に構わないわよ。 でも桜花ちゃんは?」
「いえ、週末は用事があって家を空けるんです。 瑛は残るので一人で家に残すくらいなら高町家に泊まらせてもらえないかと思いまして」
「なるほど・・・・・・まあ瑛ちゃんなら大歓迎よ〜♪ 久しぶりに一緒にお風呂に入ろっか?」
「・・・そうですね、たまにはいいかもしれません」
鍛錬後に高町家の朝ご飯をご相伴になった神影姉妹。
その場において、電光石火の速さで瑛のお泊りが決定した。
瑛を高町家に置いておくのは、万が一のための備えである。
一日の間、恭也と忍は可能な限り一緒に行動している。
傍から見れば恭也が忍と親しいということは火を見るよりも明らかだ。
それを知った安次郎が恭也の事を調べて、高町家を襲うかもしれない。
裏の事情はともかく、住所くらいなら調べられるだろう。
しかも忍の家と同時に襲えば、人質として捕らえられなくても十分な脅しになる。
そうなった場合、忍の性格からして相手に屈服せざるを得ない。
友人を助けるために関わったのに、足を引っ張ってしまっては本末転倒なのだ。
閑話休題
「・・・・・・まあ、今更なのは分かってますが・・・恭也兄さんも大概唐突ですよね」
「あ、あはは・・・桜花さんに覆われてあまり目立たないけど、おにーちゃんも悪戯好きだもん」
「・・・失敬な」
一応反論するものの、多少の自覚はあったのか、それ以上は何も言えない恭也であった。
「さて、そろそろ行きます?」
「そうですね、なのはたちも送らないといけませんし」
朝食を終えた学生組は、珍しく一緒に登校することになった。
高町家組は登校する時間がそう変わるわけではないのだが、神影姉妹は遅刻しない範囲で登校する時間が激しく変化する。
言うまでもなく、原因は桜花である。
無駄に早く着きすぎたときなど、瑛はどうやって時間を潰そうかとかなり悩んでいたりもする。
それでも桜花に付き合う辺り、姉を慕っているのは疑いようのない事実だろう。
ガシッ
「姉上、そう毎日何度も寄り道されては困ります」
ズルズル
「あの〜・・・瑛? 襟を持たれて引きずられると制服とかが汚れるのですが、というか首痛いっていうか苦しいんですけど・・・・・・」
「知ったことではありませんね、そんなこと」
・・・・・・た、多分(汗
学校が終わってから海鳴病院にやってきた恭也と忍+桜花。
今日ならまだ襲撃がないだろうとふんでいる恭也たちだが、万が一ということもありえる。
よって、多少無理を言って(恭也主観)忍に同行してもらったのである。
目指すは歳と外見が不相応な○学生女医、フィリス・矢沢先生の病室である。
・・・戸籍上の年齢では不相応かもしれないが、確か実年齢ではそんな「懲りませんね?」―――ゴメンナサイ、モウイイマセン!
「さて、と。 次は・・・・・・あれ、恭也君・・・それに桜花さん」
病室で次の患者のカルテを見ていたフィリスは、知った名前が続いていることに気付く。
片や自分の患者兼親友の想い人(割と自分も気になっていることには気が付いていない)、片や一回会っただけなのに宿敵兼友人になってしまった不倶戴天の天敵(主に胸のサイズで)。
前回の診察から恭也は11日、桜花は4日ぶりとなる。
「恭也君はともかく、桜花さんは早すぎるような・・・・・・」
桜花の体に何かあったのではないか、と勘ぐるフィリスだが、特にそういったことは書かれていない。
まあ、会ったら分かるだろうと呼び出しをかけて、恭也が来るのを待つ。
暫くすると人の気配と共に、コンコン、と病室のドアをノックする音がする。
「(来ましたか。 でも三人居るような・・・)はい、どうぞ」
「失礼します」
「ども〜」
「・・・えっと、失礼します」
入ってきたのは、見知った顔が二人と知らない顔が一人。
言うまでもなく恭也と桜花、それに忍である。
表面上は、たいした変化もなくニコニコと三人を見ているフィリスであるが、内面ではかなり嵐が吹き荒れていた。
恭也と桜花が一緒に来たところを見ると、二人は知り合いなのだろう。
それはいい。
世の中は割りと狭いから、知り合い同士の交友関係があったとしても問題はない。
それよりも―――
(な、ななななな・・・・・・桜花さんよりも上!? なんて凶悪な兵器を持っているんですか!!)
フィリスは出来るだけ気取られないように、忍のある部分に注目する。
忍のバストサイズを瞬時に目測、出た結果がなんと91cm!
桜花よりも3cmも大きいのだ!!
73cmしかないフィリスとしては、フィアッセより劣るとはいえ、自分より圧倒的に上な戦力(10cm以上上のサイズ)を持つ忍は、問答無用で敵と言える。
そしてこの場でフィリスの内心に気付いているのは桜花のみで、笑いを堪えるためにやや顔が引き攣っている。
恭也がそのことに気付くなんてありえないし、忍はまだフィリスのことをよく知らないので気付けないのだ。
桜花の様子に気付いたフィリスは、コホンと咳払いをして内心の葛藤を意識の外に置く。
「こんにちわ、恭也君。 今日はどうしました?」
「こんにちわ。 ちょっと体の調子を見て欲しいんです」
「わかりました、ではこちらのベッドに横になってください」
フィリスに促されて、恭也はベッドのほうへと移動する。
桜花はてい、と可愛らしい掛け声と共に忍の体の向きを自分に合わせて、恭也を忍の視界から外す。
「・・・? 桜花さん?」
「婿入り前のおに〜さんの身体を見ようなんて・・・忍さんのエッチ♪」
「・・・・・・・・・」
理由を尋ねた忍は、桜花の言葉で真意を理解して少し頬を赤く染めながら桜花から視線を逸らす。
その様子を見たフィリスは、何故だかもやもやしたものを感じたものの、気にしないよう自分に言い聞かせて恭也に向き直る。
二回目であるためか、既に恭也は服を脱いでベッドにうつ伏せになっていた。
それを見たフィリスは心持ち楽しそうに鼻歌を歌いながら、ゴキッゴキ、と指を鳴らして恭也へと近づいていく。
妙にヤる気(『ヤ』には好きな漢字を当てはめてください)満々なフィリスに、恭也の背筋に冷たいものが奔る。
(・・・生きて、帰れるのか?)
そして病室に暫くの間、押し殺した男性の悲鳴が木霊していくのだった。
「ふぅ・・・こんなところですかね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アリガトウゴザイマシタ」
妙にすっきりした顔で、終了を宣言したフィリス。
反対に、気疲れしたようにテンションの低い恭也。
二人並んで桜花たちの居るところに戻ってきたので、二人の様は対照的過ぎた。
フィリスはそのまま自分の椅子に腰掛けると次のカルテ・・・桜花のカルテを手に取る。
「さて、と・・・・・・次は桜花さんですね。 今日はどうしました?」
「先生、肩が凝るんです!」
にやにやとフィリスの姉を連想させるような悪戯っ子の笑顔で、桜花はフィリスにそう告げた。
遠まわしな胸が大きくて困っている発言に、ビキッ、という音が病室に響き空気が固まっていく。
無論、そんな音は鳴っていない。
だが、部屋の雰囲気が桜花の一言で一気に変化して、病室に居る恭也と忍に幻聴を聞かせたのだった。
雰囲気の変化を察知し、顔を引き攣らせた恭也の背中に冷や汗が流れる。
生来の気質からこういうことは楽しめるはずの忍も、フィリスとは親しい以前に初対面であるため、雰囲気の変化に戸惑っている。
当然、元凶の桜花がそれに気付かないはずはない。
しかし彼女は、まるで気付いていないといった様子で、フィリスに話し続ける。
「コツコツと凝りが蓄積されていくんです」
「・・・・・・・・・そ、そうですか」
「女性としては誇れるのでしょうけど、動くときに割と邪魔になりますし・・・・・・」
「・・・ぅ・・・・・・ぐ・・・」
「まあ、妹に解してもらっているのですけど―――」
「だったらそれでいいじゃないですかー!!」
フィリス、爆発。
「や、そうなんですけどね。 整体お願いします」
「さっきの話の関係なしですか!?」
「はい、欠片ほども関連性はありません。 あ、関係といえば、郵政民営化と欧米人女性の豊満なバストサイズの相互関係についてなんですが・・・」
「なってません! 相互関係になってませんから!?」
「しかしフィアッセさんと「フィ」の字が同じなのに、どうしてこうサイズが違うんでしょうか」
「それこそ関係ないです!! だいたい「フィ」のどこに胸が大きいという要素が入り込むんですか!?」
「だって、「F」じゃないですか。 あれ、そうなると私は・・・・・・・・・Oカップ?」
「どんなバランスの悪さをしてるんですか!? その世の女性の理想の体型をしているような人が、胸だけOカップだったりしたらある意味ギネス級ですよ!?」
桜花の理不尽な物言いに、ヒートアップしていくフィリス。
完全にペースに飲まれたフィリスは、無視すればいいのに、桜花の言葉へ突っ込みを入れていく。
最初の言葉で冷静さを欠いたため過敏に反応し、それが桜花をさらに楽しませていることにフィリスは気付かない。
傍で会話を聞いていた忍は、会話内容からフィリスの悩みを理解し、自分のに視線を落とした後、それとなく視線で好みを尋ねるべく恭也を見る。
一方、直接的でない限り女性の悩みに気付くどころか、あからさまな好意にすら気付かない恭也には、フィリスの悩みも忍の視線の意味も読み取ることは出来るはずもない。
結局、暫くして騒ぎを聞きつけた婦長さんが介入したことで、この混沌は終了する。
徹底的にからかわれた恨みを晴らすべく、フィリスは通常の二倍強の痛みを伴う整体を施していたとか。
今回ばかりは軽口を叩けなかった桜花は、暫く動くことすらままならなかったという(恭也・忍談)。
桜花がかなり掻き回したので、忍とフィリスが自己紹介をしたのは帰る直前であったことを記しておく。
ちなみに、この騒ぎで一番迷惑したのは恭也たちの次に診察を受ける患者たちであった。
某国際空港で、一人の中年の男が、チャーター機から大儀そうに降り立つ。
「・・・・・・ん・・・日本は相変わらず、せせっこましくてあかんなあ」
周囲をひっきりになしに走る航空機の離着陸を眺めて、嘆息。
だが、フイッと顔を上げると葉巻の灰を滑走路にポン、と落とし、そしてにたりと笑う。
「ま、ぜーんぶ終わったら・・・アメリカかどっかにでも高飛びすればええこっちゃな」
そして背後に立つ少女を一瞥する。
「なあ、イレイン」
「・・・・・・・・・」
返事は期待していない。
彼にとって彼女は、目的は果たすための単なる『武器』なのだから。
(しかしアレやな・・・・・・コイツがホンマに噂どおりのごっつい性能があるなら、忍んとこのノエルも、どないでもできるな。 無傷は無理でも、うまいこと戦闘不能にして適当に売り飛ばすだけでもえらう儲けになる)
ノエルを売ったときの目論見の値段と、忍の家の財産を思い浮かべて安次郎はにやけ笑いを抑えられずにくっくっく、と含んだ笑いを漏らす。
暫くイレインと共に歩くと、彼の部下である黒服の男が小走りで駆け寄ってきた。
その男を従えながら、イレインと一緒に買い付けたものを積んだトラックの場所にやってくる。
「月村先生・・・・・・本当にそのお値段で?」
「おうよ。 貴族崩れが交渉の真似事をやったところで、ワシの舌先でイチコロやったわ」
「それにしても・・・あまりに。 “これら”を含めても中古完動のエーディリヒ式の三分の一ですか・・・・・・騙されたのはこちらでは?」
トラックを指差しながら、男は不安げな様子で安次郎に尋ねる。
無理もない、最高級の性能といわれている『最終機体』が、破格の安さで手に入ったのだから。
「しょせんモノの価値も分からんヘタレ貴族や。 あっちこっちにケチつけ回したら、よう確かめんもせんとホイホイ値を下げよったわ。 チョロい、チョロい」
しかし安次郎は大して気にもせず、上機嫌のままだ。
その様子を見て、ならばと納得した男だったが、別の懸念を持ち出す。
「しかし、土曜日に行動とは性急すぎませんか? 綺堂の娘からも釘刺しがあったばかりですし・・・・・・」
「だから、や。 あの小娘は忠告した直後なら、すぐには動かんと思うとる。 そこを逆手に利用するんや。 それに忍も懇意にしてる奴の家に何かあったら、すぐに落ちるで。 それに―――」
安次郎の言葉に、部下の男は納得したような表情を見せる。
そして、続いて告げられた言葉に、欲望に満ちた笑みを浮かべる。
実際にさくらは、これで暫くはちょっかいがないだろうと、少し楽観的になっている。
そして、それを聞いた忍も同様である。
現状で近日に強襲してくる、と疑っているのは、恭也と桜花だけである。
「くくく・・・週末が楽しみや」
成功することを疑っていない安次郎は、心底愉快そうに笑い声を上げる。
そんな彼は知るよしもない。
『最終機体』は彼の思っているようなものではないということを。
そして、利用できると考えている忍と親しい『人間』こそが、彼の最大の障害であるということを。
あとがき
七彩です。
さて、そろそろ忍編の終局です。
一つ日常を挟んで、ラストに繋げたいと思います。
拙いでしょうが、精一杯書きます、ええ。
ではでは。
いよいよ動き出すのか!
美姫 「さてさて、一体どうなるかしらね」
まさか襲撃を予想している人物がいるとは思ってないか。
美姫 「うーん、どうなるのか楽しみ!」
次回も楽しみにしてます。
美姫 「待ってますね〜」
ではでは。