はじめに

本編再構成物です。

ですが、すでにレンと晶のルートは通っています。

美由希ルートの「お前は俺の〜」発言もすでにしてあります。

時間軸は本編開始と同時期です。

恭也は誰とも付き合っていません。

上記の設定が嫌な方は戻ってください。

これを見て気分を害されても一切責任持てません。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


とらいあんぐるハート3 〜神の影〜

第19章 「嵐到来! 月村邸の決戦@ 〜最終機体〜」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4月29日(土) 隆宮市月村邸 PM10:12

今日に襲撃があるとすれば、これからの時間帯である。

月村邸で夕食を御呼ばれした恭也。

この時間まで忍やノエルと談笑していたのだが、時間的にそろそろ忍の家に居ることが難しくなってきた。

かといって、恭也が忍の家に泊まるとなれば騒ぎは必至。

深夜に高町家に帰ることは偶にあるのでそちらは大丈夫だが、忍の家に留まる理由が無い。

それでも時間が時間なだけに、恭也は深夜のこの辺に潜伏しようかと覚悟を決めようとしたとき、

 

「っ!?」

 

ソファーでくつろいでいた忍は、弾かれたように家の門のある方向へと顔を向けた。

 

「・・・・・・どうした?」

 

忍のただならぬ様子に理由を推測できたのだが、恭也の一応の問いかけに忍は小さく首を振って答えた。

 

「・・・アイツだ」

「アイツ?」

「安次郎・・・この気配、間違いない」

 

恭也は、ギュッと拳を握ると持ってきていたバッグを持つ。

一方、忍は首筋に淡く感じられる違和感がだんだん大きくなっていくのを感じ取って、真剣な表情で立ち上がる。

 

「油断した・・・さくらが来たばっかだから、暫くはないと思ってたのに。 ノエル、ケースにブレードがあるはずだから。 念のために準備して」

「はい」

 

そう言われたノエルが、スーツケースを持ったことを確認すると、忍は恭也のほうに視線を向ける。

それを受けた恭也は、安心させるように微笑んだ。

 

「問題ない。 いつでもいける」

 

忍は心持ちほっとしたような顔になり、ノエルに合図をして駆け足で月村邸の門を目指す。

ノエルがそのすぐ後に続き、少々遅れて恭也がついていく。

三人が門の前に着くのと時を同じくして、一台の大きな幌付きトラックが角を曲がって月村邸に向かってくる。

三人は引き締めた視線で近づいてくるトラックを見る。

トラックの運転台には三人。

一人は取り立てて印象のない細面の男。

中年の四角い印象の横柄そうな男。

そして二人の間に無表情に座る、金色の髪の美少女。

 

「・・・あの太っているのが安次郎。 私の親戚で、とにかく金に汚い男」

「ふむ」

 

外見で人を判断するのはどうかと思うが、そんな恭也でもなんとなくそんな印象を受けた。

趣味の悪い組み合わせのスーツといい、どんな表情を作っても信用できない嫌な目つき。

知り合いには絶対居て欲しくないタイプの男だった。

ただ恭也は、安次郎よりもその隣にいる少女のことのほうが気になった。

こういっては何だが、明らかに傍に居る二人に似つかわしくないというか―――

 

「・・・・・・美女と野獣」

(・・・ぷっ)

(・・・・・・同意します)

 

ポツリと呟かれた恭也の言葉に、忍は心の中で笑いが漏れ、ノエルは思わず同意してしまった。

そうこうしているうちに、トラックは月村邸の門の前で停まった。

忍は話が始まらないうちに緩んだ気分をシリアスに戻す。

 

「よう、忍・・・元気やったか」

「安次郎・・・!」

「おおう、相変わらず挨拶ってモンを知らんヤツやな」

 

ニタニタ笑いつつトラックから降りてくる安次郎を睨み付ける忍。

そして運転席から降りた安次郎の後につき従うように、少女がトラックから降りてきて、隣に並ぶ。

 

「何度きても同じよ。 これ以上譲歩してあげる義理、ないからね」

「ガハハハハ」

 

睨み付けたまま機先を制す忍の一言に、安次郎は動じることなく笑い飛ばす。

 

「しかし、ええねんか?」

「・・・なにがよ」

 

ニタニタ笑いをやめずに、安次郎は右手の指先で左腕の辺りを指す。

 

「ここんとこ、何かと物騒やろ? この前は、何とか繋がる程度で済んだらしいってことやけどな」

「・・・・・・っ・・・!」

「・・・・・・・・・」

 

それを聞いた恭也は目を細めて、安次郎を見据える。

安次郎自身が直接ではないにしろ起こした事件を、いけしゃあしゃあと関係ない第三者から見たような言い分に怒りを禁じえない。

 

「まあ、そいつはわしがとっ捕まえてやったんやけどな。 かわいい忍のためや」

「・・・・・・フン」

 

にんまりと笑いながらそう付け足す安次郎を鼻で笑い飛ばした後、

 

「なんのこと?」

 

あの事件は当事者以外には知らされていない。

病院にいったわけではないので、知るためには被害者の忍から聞くか、起こした犯人と関わりがあるもの以外にはありえない。

忍は逃げた犯人から聞いたのだと思っているが、実際に安次郎がそのことを知ることが出来たのは、釘を刺しに来たさくらの話からである。

何せ実行犯は、ここに居ない桜花の手によって捕らえられて『不知火』に引き渡されたのだから。

 

「・・・・・・・・・ま、ええ」

 

とぼける忍に、安次郎は話を切らざるを得ない。

下手な発言をして、墓穴を掘るわけにはいかないし、その事件をカードとして利用することが出来ない以上は時間の無駄だ。

 

「しかし、狙われとるんやろ? いくらノエルが強いっちゅうても、護ってもらうには限度があるやろ。 コネもないお前じゃ、この先ずっと家に引きこもるしかないで?」

「そうね。 でも、とあるヤツがさっさと諦めてくれれば、そんな心配は必要ないから」

 

暗に「いい加減諦めて二度と来るな」と言い放つ忍に、ニタニタした笑いを消して安次郎は目を細める。

 

「そうか・・・・・・しゃあない」

 

懐から携帯電話を取り出した安次郎は、ピポパポと操作して電話をかける。

いきなり電話を掛け始めた安次郎を訝しげに睨む忍に、再びニタニタした笑いを浮かべて、安次郎は口を開く。

 

「さっきも言うたが、ここんとこ、何かと物騒やろ?」

「・・・・・・・・・何が言いたいのよ」

「せやな、最近物騒やから・・・・・・民家に強盗が押し入ってしまうこともあるかも分からへんな?」

「・・・なっ!?」

 

安次郎の言いたいことを察した忍の顔が、サッと青褪めていく。

その反応を見た安次郎は、ニタニタ笑いをさらに深くする。

 

「そう・・・例えば、そこの小僧の家なんかに、な」

「安次郎! あんたってヤツは!!」

 

瞳を赤く染めながら激昂する忍。

折角出来た親友―――いや想い人の家族が、あの温かい人たちがよりにもよって自分の家の問題で危害を加えられるなんて。

赤熱する怒りを瞳に込めて、忍は射殺さんばかりに安次郎を睨む。

同じく激昂するかと思われた恭也は、安次郎の予想とは違う表情をしていた。

表情の変化が大きくないので分かりづらいが、それでも安次郎は呆れたような表情を読み取ることが出来た。

微塵も動揺せず落ち着き払っている恭也の様子に、激昂していた忍も怒りの感情を削がれてしまう。

 

「ちょ、ちょっと・・・・・・恭也? なんでそんなに落ち着いてるのよ!?」

「何でと言われても・・・・・・この展開は予想できたからな」

 

余裕すら持っている恭也の言葉に、安次郎は唖然となるが強がっているのかとすぐにニタニタ笑いを浮かべる。

 

「はっ・・・余裕やな。 それがどこまで持つのやら」

「・・・・・・・・・・・・」

 

落ち着いた様子のまま、恭也は黙して語らず。

余裕綽々なその態度に、安次郎は苛立ちを感じる。

とその時、電話が繋がる。

 

「わしや。 どや、調子は?」

 

あくまでも直接的な発言を避けて、電話の相手に襲撃の結果を訊ねる安次郎。

勝利を確信しているその顔は、直後に崩れることになる。

 

《皆さん余程疲れているようですね。 ぐっすりとオヤスミですよ》

「なっ!? 誰やお前!?」

《はぁ・・・そちらこそ誰でしょうか? いきなり「わしや」と言われても皆目見当が―――ひょっとして「わしわし」詐欺ですか?》

「んなわけあるかい! 人の携帯でなにしくさってんじゃ、小娘!!」

《そちらこそ、いきなり人の家に不法侵入するとは何事ですか。 凶器まで持っていた犯罪者の仲間にそんなことを言われる筋合いはありませんよまったく》

ブツッ

 

それっきり電話は切れて、プープーと音が鳴るだけであった。

しん、と静まり返る空間。

それと同時に

 

ピリリリリリ♪ ピリリリリリ♪ 

 

シンプルな着信音が鳴り響く。

恭也の携帯かららしく、恭也はバッグの中から携帯を取り出して電話に出る。

 

「はい、高町です」

《恭也さん、桜花です》

「どうでした?」

《ふふん♪ 現れたゴキブリの退治を完了しました。 まさか道端で襲ってくるなんてビックリですよ♪》

「で、家のほうは?」

《さっき確認したら、既に駆除は完了しているそうです》

「そうですか。―――ところで、」

 

話を切って恭也は、わざわざ見せ付けるかのように安二郎を見た後、

 

のほうも潰した方がいいですよね?」

 

明らかに意識した物言いで、桜花に訊ねた。

 

《当然です。 害虫は元から絶たないと》

「了解です。 後、保険の意味も予ねて、此方に来れますか?」

《ええ、分かりました。 玲さんに押し付けて、そっちに向かいます》

ブツッ

 

後ろからなにか抗議のような声が聞こえた気がするが、恭也は何事もなかったかのように携帯をバッグにしまう。

誰も彼もが状況を見守る中で、恭也が口を開く。

 

「家の連中は押し込み強盗程度なら楽に返り討ちにできるんでな、貴方が気にかける必要は全くない。―――さて、貴方は何を言いたかったんだ?」

「ぐぅ・・・! こ、この糞餓鬼! こ、こうなったら・・・・・・イレイン!!」

 

馬鹿にするような恭也の物言いに怒鳴り返すと、安次郎は傍らの少女の名前を呼ぶ。

呼ばれた少女は、無言のまま一歩進み出る。

そして少女は忍を見ると、しゅるん、と右手から鞭のようなものを取り出した。

 

「夜の一族・戦闘分類・意念系・・・・・・脅威度B。 マスターに危害が及ぶ場合、実力行使による脅威力の排除を行います」

「・・・・・・?」

 

まるで人形のように感情を出さず淡々と喋る少女に、呆然としていた忍は我に返ると同時に違和感を感じる。

普通の人間とは違う、夜の一族ともまた違うように感じる少女。

 

たしかこれは、ノエルを最初に起動したときのような―――

 

忍の反応をよそに、安次郎は未だにトラックの運転席に座っていた男に目配せする。

それを受けた男は、運転席を降りて荷台から大きな布包みを取り出して、少女に投げる。

少女は見もせずに右手の鞭で布を絡め取り、布を引き裂く。

布の中身は野太刀並の大物の、ブレードと呼ぶような剣であった。

 

「なっ!? まさか、自動人形!?」

「せや」

 

忍に、そしてノエルに馴染みのある形状のそれに、忍は驚きを隠せない。

現在稼動可能な自動人形はとても少ない。

ノエルだって忍が独学でリファインしてようやく動くようになったのだ。

まして―――

 

「アレは―――鞭? いや、違う・・・・・・まさか、『静かなる蛇』!? それじゃ彼女は――」

「流石やな。 エーディリヒ式最終試作型自動人形、通称『最終機体』イレイン。 コイツにお前の自慢のノエルがぶっ壊されるんと、大人しく渡すんと・・・どっちがええ?」

 

忍の驚きぶりに余裕を取り戻したのか、再びニタニタ笑いを顔に浮かべながら言う安次郎。

そうしている間にも、迷いのない手つきでイレインと呼ばれた少女は、ブレードを装備すると安次郎の前に立った。

 

「安次郎・・・・・・」

「ん?」

 

先ほど以上に真剣な顔で話しかけてくる忍に耳を傾ける安次郎。

 

「馬鹿なことはやめなさい。 戦闘させるってことは、『アドバンスド・モード』を使うってことなのよ?」

「・・・・・・何を言うとるんや」

 

本当に知らないといった表情で答える安次郎に、忍は驚きを隠せない。

 

「知らないで『最終機体』を使ってるの!? あんた、ノエルを壊す代わりに自分も死ぬわよ!?」

「・・・?」

 

忍の慌てぶりに怪訝な表情を浮かべる安次郎だが、脅しだと思ったのかすぐに鼻で笑う。

 

「わからんことを言うたら、ワシが素直に怯えてくれるとでも思うたんか」

「・・・安次郎!」

「ワシはな・・・!!」

 

さらに静止の声を上げる忍の言葉を遮って、真面目な顔をすると心の中をぶちまけるように叫び始める。

 

「ワシには、何もないんや! お前や征二みたいな、機械なり経営なりの才能もなければ、親兄弟からもろた財産も、見た目もな! 金がなけりゃ、ワシはホンマにスッカラカンや!!」

「・・・・・・・・・」

「たかだか余裕がある暮らしがしたいとか、車欲しいとか、そないな軽いモンで『長』の直系とやったろなんて思えるかい!! ワシは本気や!! ぐだぐだ言うたところで凹んでくれるなんて思うんやないで!!」

 

安次郎は自分の弱さを見せ付けることで引かないことを断言し背水の陣を敷く。

その血を吐くような叫びに忍は反論を封じ込められる。

いくら説いたところで安次郎は止まらないのだと理解させられてしまった。

 

「イレイン!!」

「はい」

「やったれ! あそこにおる自動人形をぶち壊したれ!!」

 

そう言い放つと安次郎は背後の男に腕を振って合図をする。

それを受けて男は、荷台から小包のように梱包された荷物を降ろす。

その中からは次々とイレインそっくりの少女が現れる。

 

「オプションも揃っとる。 やれ!」

「戦闘にはセーフティ・モードの解除が必要です。 解除しますか?」

「――っ・・・やめなさい! ここにいる全員、死ぬわよ!?」

 

人形めいた表情や喋り方は変わらず、イレインは安次郎に背を向けたまま、問う。

安次郎の叫びに黙らされた忍は、はっと我に返り無駄と知りつつ制止させようとする。

 

「やかましい! ええで、解除や!!」

 

やはりというか静止の言葉は通じず、安次郎はイレインのセーフティ・モードの解除を許可してしまう。

それを受けて、イレインの目が一旦白目を剥いて、元に戻る。

無表情だったその顔に浮かんだのは―――歓喜。

 

「自由時間・・・・・・あは、あははははは!」

 

突然笑い出したイレインに周りの面々は困惑するばかりだ。

一頻り笑うと、イレインは安次郎に向き直る。

 

「・・・あんたが、アタシの起動者?」

「な・・・なんや・・・・・・」

「ありがとう、起こしてくれて」

「がっ・・・」

 

そして制止をする間もなく、装着したブレードで安次郎を引き裂いた。

腹から血を流しながら安次郎は、地に倒れ付す。

 

「バーカ、あれだけ言われたじゃん。 なのに動かしちゃうなんて、ホント間抜けね」

「イ・・・レイ、ン?」

「屑の分際で、アタシの名前を気安く呼ぶんじゃない」

 

顔を上げて疑問の意を含めながらイレインの名を呼ぶ安次郎をイレインは容赦なく踏みつける。

 

「アタシの噂、知らなかったみたいね、コイツ」

「噂?」

 

イレインの呟いた言葉を聞いた恭也が、忍のほうへ視線を向けて問う。

それを受けた忍は、顔を青くしながら恭也に説明するかのように喋り始める。

 

「イレインは、自動人形に『自我』を持たせる研究の成果の粋を集めた機種」

「ふふ、お嬢ちゃん。 アタシのこと、ちょっとは知ってるみたいね」

「・・・束縛されず、従属せず、人間として生きるために作られた自動人形・・・・・・“起動者殺し”の『最終機体』。 だから、言ったのに・・・」

「アハハ、正解。 さて、そういうわけで、アンタたち、目撃者ね?」

 

にっこりと笑いながら、イレインはバシンと鞭を手で引っ張る。

何をやる気かは、その動作で一目瞭然であった。

 

「アタシは自由に、やりたいようにやる。 アタシのことを知っているあんたらを生かしておいたらアシがつくわよね、常識として♪」

 

イレインが動く前に、ノエルが二人を庇うように前に出る。

トランクからブレードを取り出して装着、戦意をイレインに向ける。

 

「あ、同系機のお姉さんか。 あんなヤツの命令なんて聞かないから大丈夫よ。 この場で殺すのは人間だけ」

「・・・・・・・・・」

「ん? 喋れないの? 随分と旧型ね。 なら、壊してもいっか」

「・・・・・・忍お嬢様たちは、やらせ「下がってくれないか、ノエル」恭也様?」

 

ノエルの言葉を遮る形で、恭也がノエルの前に出る。

そして、バッグから二本の布の巻かれた棒を取り出すとバッグを後方に投げる。

 

「恭也様! 人では、この子にかなわない。 お下がりください!」

「恭也、下がって! 人形同士の戦いに、人間はからめないよ!!」

 

ノエルと忍が前に出た二人を下げようと声を荒らげるが、恭也は聞く耳持たずに下がろうとしない。

 

「・・・何? たかが人間風情が、アタシに勝てるとでも?」

「ふむ、ただ勝つだけならそんなに難しくはないだろうな」

「へぇ・・・言ってくれるじゃない。 そんな大口叩くと、後で恥を掻くわよ?」

「口数が多いな。 恫喝しか出来ないのか?」

「この・・・っ!」

 

挑発的な恭也の物言いに苛立ったイレインは、オプションを起動する。

 

「ぐがあああ!!」

 

イレインの命令で起動したオプションたちは、近くに居た彼女たちを降ろした男をズタズタに引き裂いた。

そして止めを刺そうとしたブレードを振り上げたオプションに飛来した“何か”が的確に肘を撃ち抜く。

制止の声を上げようとした忍と、オプションを止めようとしたノエルには何が起きたか分からなかった。

そして、恭也の正面に居たイレインでさえ、詳細を理解しきることは出来なかった。

目の前に居る恭也の手がぶれたかと思った次の瞬間には、オプションの肘を何かが撃ち抜いていたのだから。

 

「あんた・・・」

「そちらの相手より、先にこちらの相手をしてもらおうか」

 

そう言うと、恭也は棒に巻かれた布を取り払う。

現れたのは、刀より短く脇差より長い刀―――小太刀。

それらを腰に差すと、恭也は振り返らずに忍に問いかける。

 

「忍、彼女の武装について解説できるか?」

「え、あ、うん」

「では頼む」

「って、何やってるのよ!? 下がってって言ったじゃない!!」

 

恭也に話しかけられたことで、我に返った忍は早く下がれと叫ぶ。

日常と雰囲気の変わらない恭也と焦った忍の会話は、さっきまであった戦闘前の緊張感を奪っていく。

 

「ああ、確かに聞いたな。 俺も無理なら下がるが、そうでないならお前を護るために戦う。 その為にここに居るんだしな。 それより、彼女の武装を教えてくれ、知ってるんだよな」

「――ああもうっ! イレインの武装はそのブレードと鞭。 特にその鞭は『静かなる蛇』って言って、高圧電流が流れるようになってる」

「ふむ、了解した」

「・・・・・・いい加減にしなさいよ」

 

憤りを含んだイレインの低い声が、雰囲気を再び緊迫したものに戻す。

 

「さっきからごちゃごちゃと。 たかが人間風情が、舐めた口ばかり!」

「ノエル、オプションとやらの相手を頼む。 足止めだけでもいい―――俺が彼女を制するまでは」

「っ・・・! へぇ、余裕じゃない。 たった一人でアタシを倒そうなんて。―――そのムカつく考え、真っ向から叩き潰してやるわ!!」

 

恭也の言い様に激怒したイレインはオプションに指示を出す。

命令を受けた五機のイレインオプションは、一斉にノエルに襲い掛かる。

 

「アンタは望みどおり、アタシが直々に殺して、あの女の前に首を突きつけてあげるわ!」

「・・・・・・・・・」

 

憤りを隠さずに、イレインは恭也に襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

七彩です。

月村邸は隆宮市ってとこにあったんですね、書くときに調べて初めて知りましたよ(ぇ

危うく海鳴市にするところでしたw





いよいよイレインとの対決が始まる!
美姫 「ああー、血湧き肉踊る展開ね」
もう次回が気になる所!
美姫 「ああー、早く続きが読みたい、読みたい〜」
だぁ、暴れるな!
美姫 「そんな訳で、次回も楽しみに待ってますね」
待ってます!



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