『ミルクティー -Triangle Heart 3 second brew-』




 昼休み。高町恭也は親友の赤星勇吾と共に学食に来ていた。
 正確には、赤星の所属する剣道部の面子と合流し、彼らとも一緒である。

 殆んどが既に顔見知りなのだが、新学期が始まったばかりで知らない者もいるようだ。
 その知らない者の中にいる一人の一年生から、少しだけ訝しげな視線を向けられているようだが、恭也は気付かないフリをする。



「…で、高町君はまた今年もウチに入らないの?」

 毎度おなじみの挨拶となっている、剣道部への勧誘をする藤代。

「その予定は…悪いけど」

「そう?」

 俺はいつものように断るが、藤代も赤星も普段どおりだ。
 当然のように、彼らにとってはただの挨拶代わり。むしろ了承される方が驚いてしまうだろう。

「入れば赤星さんと男子部二枚看板で全国も夢じゃないでしょうに」

 とは、藤代の隣の二年生。

「両手では久しく遣っていないから、そうでもないさ。
 …それに『剣道』はちょっと方向が合わない」

 そう、恭也が振るう御神の剣は二刀。
 それに、御神の剣と剣道とでは、目指す所、そこにある精神そのものが違う。
 スポーツであり『道』を修めるための剣道。それに対し御神流は、いかに相手を『殺す』かの剣術。

 恭也の無愛想な答えにも周りは慣れっこだった。



 ――いや、一人の一年生……先ほどから恭也に訝しげな視線を向けていた娘の目が、更に鋭くなった。
 とりあえず今は昼食優先、と恭也は気付かないフリをしておく事にする。


「まぁ、性に合わないってのを無理に、ってのもないか。
 高町には高町のやり方があるんだし。
 …でも俺も結構惜しいと思ってるんだけどな」

 赤星の言葉に何も答えない。これもいつもの事だ。

 だが、一年生だけは視線に更なる怒気を含んでいる。
 最早睨みつけているといってもいい。


「ごちそうさま」

「相変わらず早いなぁ」

 そう言って立ち上がる恭也と、関心したように返す勇吾。

「…食事にはあまり時間をかけない主義だ。
 気持ちよく食った方が家の連中も喜ぶしな」

「そういうことか…じゃあまた後でな」

「ああ。ありがとな、みんな」

「あ…はい、また!」

 それぞれの挨拶で恭也を見送る。
 そして食事を再開しようとした時――




「…なんなんですかあの人」




 恭也が去った後の学食。そこでようやく例の一年生が口を開いた。
 怒り心頭といった表情だ。

「は?」

「赤星先輩たちに誘われているのにあんなに無愛想に…
 どれだけ運動できるのか知りませんけど!
 剣道をやりもしないであの態度はないんじゃないですか!?」

「日野ちゃん、ちょっと…」

 一年生、もとい日野と呼ばれた少女は他の部員の静止を聞かず、更に続ける。

「なんであんな…!
 わたし、納得いきませんよ!
 なんであんな人なんか誘うんですか!?」

「まーま、抑えて抑えて」

 赤星が苦笑しながらなだめる。
 恭也の事を知らない人から見れば、そうも取れてしまうのだ。
 今でこそ顔見知りになって溶け込んではいるが、ここに居る他の部員の中にもかつては日野と同じような疑問を抱き、怒りを顕にした者だっていたのだ。

「確かにあいつは無愛想だけど・・・別に剣道をバカにしてるわけじゃないんだ」

「バカにしてましたよ!
 それに、赤星先輩程の人が声をかけてくれているのにあの言い草!!」

 赤星は剣道において、全国レベルの選手であった。
 今の彼女にとっては手の届かないほどの憧れの対象であり、尊敬すべき相手である。

 何より、長年の間彼女は剣道を心から愛し続けてきた。
 例え思うように伸びず思い悩もうとも、剣道を好きな気持ちだけは誰にだって負けていないと自負していた。

 だが――

「アイツとは友達だからなぁ。
 それに赤星先輩程って言われても…
 大体、アイツ剣持ったら俺より強いんだぜ?」

「え…」


 日野は、一気に熱が冷めたかように固まった。
 自分にとってはある意味で崇拝の対象である赤星から出てきたその言葉が、心底信じられない。


「『剣道』選手じゃないんだ。『剣術』遣いなのさ。
 だから…少しだけでいい、大目に見てやってくれ。な?」

「…」

 学食に静けさが訪れた。
 凄まじい衝撃を受けたのであろう、日野は放心したかのように虚空を見つめている。



 そして気まずい空気を何とかしようと赤星が口を開きかけた時、沈黙を破ったのは意外にも彼女だった。


「…赤星先輩。お願いがあります」

「ん? 何だ?」



 次の瞬間、世界は再び固まる事になる。



「やっぱり、どうしても納得できません。
 放課後…部活が終わってからで構いませんので、あの人の家に連れて行って下さい!
 直接この目で見るまでは、絶対に許せません!」



 それが高町恭也と少女――日野七海の、最悪ともいえる出会いの切っ掛けだった。






続く―――の?





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 珍しく後書きを。

 ども、初めての方は初めまして^^
 そうでない方は『べ、別に見て欲しいだなんて思ってないんだからねっ!』。
 神威さつきです、どうもヽ(´ω`)ノるー☆

 LSdZも連載中だというのに何を血迷ったか、昔書いたSSもどきのプロローグを引っ張り出してきて、リメイクしてしまいました。。。
 何やってんだ、自分il||li _| ̄|○ il||li

 内容としましてはとらいあんぐるハート3・・・のノベライズ版(フィアッセ・美由希編)からです。
 その中に出てくる、赤星ファンらしい日野という娘がいまして・・・
 コイツはもしや立派なツンデレ(主人公嫌悪系)なんじゃあるまいか? と思ったが運の尽き・・・気付いたらこんなもんを書いてました。

 続きそうで続かないかもしれないし、続くかもしれません(なんじゃそらw

 とりあえずは美由希ルート(妹エンド前提)を主軸にしながら、『恭也を叩き伏せる』事を目的に話が進んでいきます。
 当然、そんなうまくいくはずもなく・・・時には悔しさに涙し、時にはその圧倒的な強さ(なのだけど、恭也は攻撃を流しているだけ)に打ちひしがれて・・・。
 そんな時、CSSのチャリティコンサートが開催される。
 そして、無事に終えた(と傍目には見えている)コンサートの後、何故か学校に姿をあらわさなくなった恭也。
 恭也が重症で入院しているという事実に驚く七海。
 赤星と共に見舞いへ訪れた病室で見た無数の刀傷・・・そしてクリステラ親子、CSS一同からの見舞いの品々を目にすることで、真実の一端を目にする。

 ・・・とまぁ、こんな感じで考えてはいるものの、自分の文章力で書けるのやらどうなのやら^^;
 ちなみにタイトルは『翠屋にてミルクティを注文したとき、フィアッセ不在のため恭也が淹れたものが出てきて、それを日野がえらく気に入った』という妄想が込められてます。

 そんなこんなで、お納めくださると幸いです^^



投稿ありがと〜。
美姫 「是非とも続きが見たいわね」
うんうん。日野七海というオリジナルキャラがどう動くのか。
ちょっと見てみたいかな。
美姫 「とは言え、これはこれでありがたく頂戴しておきますね」
ではでは。



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