刻は義之が賭けにでたその時まで遡る。
場所は由夢や他の出場選手が待機する選手控え室。
そこで異変は起きていた。
「おい!どうした」
突然背後から聞えた大きな声に由夢は首だけで振り返る。
そこには二、三人が一人の片膝を付いた男を取り囲んでいる姿が見えた。
由夢もそのままの姿勢で暫し黙視する。
どうやら片膝を付いた男も選手らしい。
男の様子がおかしいことに気付いた周りの選手が気遣っている。
そんな様子だった。
由夢が遠めに見てもその男の顔色は白く血の気が引いていた。
まるで生気を感じないかのように。
それを見た由夢の背中に悪寒が走る。
「ぐぅ……ごぉ、がぁぁ」
声を掛けられた男は遂には四肢を床に着き、嘔吐する。
誰が見ても尋常ではないその様子に一人の選手が肩を貸す。
「兎に角、直ぐに医務室に……」
連れて行こうと言葉が紡がれるとき、
「ぐがぁぁぁ!!」
肩を貸した選手の肩が潰れる嫌な音が控え室に響いた。
肩を砕かれた選手は呻き声を上げながらその場に蹲る。
直ぐ傍に他の選手が駆け寄り、肩を潰した男に怒声を挙げる。
「何してんだ! おま…え…」
しかしその言葉は最後まで発せられることは無く、途中で霧散する。
その原因は目の前の男にあった。
先程までの様子が嘘のように男は両の足で大地を踏み締めていた。
周囲に見境無く発せられる殺気。
その殺気に当てられた者は言葉を発することも出来ずただ立ち尽す。
そして何より異彩を放つは男の眼。
先程までの黒い瞳は紅に染められていた。
血の紅に。
「グゥゥゥゥガァァァァァァァァ!!!!」
咆哮と撃音が鳴り響く。
始まりの合図のように。
撃音は控え室だけに留まらず、会場全体まで届いていた。
そして撃音と共に会場全体に大きな振動が走る。
「何事だ!?」
それは王族専用のテラスも例外ではなく。
突然の振動にカロルス王が困惑の声を上げる。
「なんだあの煙は!?」
視線の先は選手控え室の出入り口。
そこからは黒煙がモクモクと立ち昇っていた。
すぐさま音夢は近くの騎士に指示を出す。
「警備の騎士を数人、現場へ!
それと会場の警備に就いている騎士に伝達! 警戒を強めよ!」
指示を聞いた騎士が急ぎテラスを後にする。
「どう思いますか、兄さん」
「さあな……。
とりあえず音夢。お前は王やティナたちの護衛に回れ。
必要となれば俺が動く」
「分かりました」
純一と音夢。共に表情は険しい。
二人の熟練の勘が告げているのだ。
何かが起こる、と。
そしてその予感は不幸にも的中することとなる。
●
「なっ、なんだ!?」
義之が声を上げる。
先程までに集中させていた魔力は先の轟音で発散し、今は魔力を纏っていなかった。
自然と試合は中断される。
観客席からも何事かと響めきが聞える。
向けられる視線は当然轟音の本となった出入り口。
義之が視線を向けたその時。
黒煙の中から跳びだして来た二つの影があった。
「由夢! マルコさん!」
由夢とマルコだ。
二人はリングの側に着地。義之はそこに駆け寄る。
多少衣服が焦げていたり小さな火傷が見えたが大きな外傷は負っていないようだった。
義之はホッと安堵すると由夢に問いかける。
「由夢、何があったんだ?」
「私にも良く分からないの。
選手の一人が呻きだして、それから突然光が発せられて……
私は出口の近くにいたから咄嗟に跳び出して来たんだけど……」
由夢も困惑の表情をし、義之の問い掛けに首を横に振る。
隣にいるマルコも同じらしく、視線を合わせても答えを返さなかった。
すると黒煙の向こうから音が聞えた。
音は徐徐にハッキリと聞こえ出す。
音は二つ、重い足音と、何かを引き摺る音。
響めきが一層大きくなる。
会場全体に重い緊張が走る。
黒煙を掻き分け、白日の下に晒されたその姿は。
瞳孔が縦に割れた紅い瞳の男と。
その左手に頭を掴まれ、引き摺られる血塗れの人間だったモノの成れの果て。
一瞬の静寂。
間を置いて聞こえ出す会場からの悲鳴。
義之や由夢も言葉を失う。
目の前の異様な光景に。
会場の警備に就いていた数名の騎士が各々に得物を握り男を囲う。
「貴様! 何をしているの分かっているのか!」
無意味な質問。
分からずにできる行為ではない。
男は言葉を返さない。
「グゥ、オオォォォォォォォ!!!!!」
代わりに返されたのは叫びにも似た天に向けた咆哮。
大気がビリビリと振動し、会場全体に轟く。
ある者は息をする事すら忘れ。
ある者は腰を抜かし、立つ事すら出来ず。
それでも視線だけは事態から逸らす事が出来ずに、ただ成り行きを見守っていた。
その咆哮に刺激され、騎士の一人が槍を突き出す。
狙いは正確に男の胸を貫く。
いとも容易く。まるで人ではないかのように。
貫いた当の騎士も手応えの無いその感覚に疑問を感じる――――暇もなく。
男の身体に異変が起こる。
身体の各所に皮の隆起が生じ始める。
まるで皮の下で何かが蠢くかのように。
その動きは次第に激しさを増していき、遂には男の背中が弾けた。
いや、弾けたという表現も正しくはない。
正確には背中の皮が貫かれ、そこから無数の角の様なモノが生じていた。
それを皮切りとして男の身体の各所で同様のことが生じていた。
隆起を繰り返し、肥大していくその姿。
次第に人としてのカタチを失っていく。
そして具現されるは異形の姿。
魔の系譜に名を連ねる生き物。
『魔物』
誰かがそう呟いたのが聞えた。
魔物―――人を襲い、人を喰らい、人を恐怖させ、人を蹂躙する存在。
魔物の鋭い眼が周囲を囲んでいた騎士たちに向けられる。
隠すことのない、殺気を帯びた瞳を受け、それに即発された騎士たちが同時に魔物へと得物の矛先を向ける。
魔物は右手を大きく振りかぶり。
一振り。
その一振りでその場にいた騎士たちの命は搾取される。
辺りに散らばるのは一瞬前まで人であった肉塊。
誰のモノかは分からぬ悲鳴が聞えた。
その声を切欠に、今まで金縛りにでも遭ったかのように事態を見ていた観客たちも大きな悲鳴を上げる。
惨劇の大合唱。
「くそっ!」
「下がれ!!」
訳も分からず跳び出そうした義之を背後からの紅夜の声が遮る。
その声に反応し振り向いた義之の直ぐ横を紅夜の黒剣から発せられた黒い斬撃が走る。
本来届く筈の無いその一撃は魔物を頭から文字通り両断。
事態は収集される……その筈だった。
しかし、両断された魔物の肉体から天高く貫くような光の柱が現れる。
「ちっ、そういうことか」
それが何を意味するのか、その場で唯一その事に気付いた紅夜がもう一度黒剣を振るう。
そこから発せられた黒い斬撃が再び魔物を襲う。
その一撃で魔物だったモノは黒い霧となってその場から消え失せる。
本来この世界に存在しない異界の存在。その末路は、跡形も無くなっていった。
「間に合わなかったか」
魔物を倒したことに余韻を感じることも無く、紅夜の視線は光の柱へと向けられていた。
魔物が消えた後も光の柱はその輝きを失うことなく、上空へと集光する。
上空では光が集まり、そして突然そのカタチを変えた。
巨大な魔方陣へと。
「……何なんですかアレは!」
先程の台詞から紅夜が何らかを知っていると判断した義之は問い掛ける。
由夢やマルコも異状に気を張りながらも傍らで静かに耳を傾けていた。
「見れば分かるだろう、魔方陣だ。
おそらくは召喚……もしくは転移―――――― 来るぞ!」
紅夜の言葉に義之と由夢の視線は再び空へ。
其処で眼にした物は魔方陣から空間を隔てて現れる無数の黒い影―――魔物だった。
魔物の群れが会場全体に降り注ぐように落ちてくる。
其れに気付いた会場内から響き渡る悲鳴。
数刻前までは歓喜に満ち溢れていた会場は其れを悲鳴へと変えていた。
逃げ惑う観客たち。
見境無く襲い来る魔物の群れ。
其れを警備に就いていたダ・カーポ聖騎士団の騎士達が迎え撃つ。
会場内は阿鼻叫喚の巷と化していた。
其れは義之たちも例外ではなく、リング上にも無数の魔物達が降り注ぐ。
義之と由夢は背中合わせに自身の武器を持ち応戦する。
初めての実戦。初めて戦う魔物という畏怖すべき異質な存在に恐怖する暇も与えられず、剣を振りその命を刈り取る。
黒い霧となって消え逝くその姿に対し思考することも出来ずに剣を振り続ける。
先程の試合の疲れも有る義之は握る大剣に何時も以上の重量を感じながらも大剣を魔物目掛けて振り続ける。
また一匹の魔物が絶命し消え失せた。
背後では由夢も同じように戦っていることが分かった。
「大丈夫か由夢!」
「私より、兄さん!お姉ちゃんたちが!」
由夢が心配しているのは、会場の何処かにいるであろう音姫たちのこと。
至る所で戦いが繰り広げられ混乱している会場内で皆の姿を見失っていた。
義之も気にならないといえば嘘になるが今の状態では探しに行くことすら儘ならない。
下唇を噛み締める。
「由夢、お前は皆を探して合流するんだ」
「兄さんは?」
「俺は此処に残る」
「どうして!? 兄さんも一緒に……!」
由夢が戸惑うのも無理は無い。
しかし義之はそれを否定する。
「ダメだ。魔物が最も多いのは此処だ。魔方陣の真下に位置してるからな。
俺まで抜ければ手に負えなくなる」
それは慢心ではなく事実。
リングが設置されている闘技場内は最も魔物が多く、義之やマルコ、騎士団の騎士達が応戦しているが其れでも優位とは言い切れなかった。
これ以上人手を割くのは得策ではなかった。
由夢は表情を曇らせる。
音姫達のことも気掛かりだが、かといって義之を残して行くのも心残りとなる。
ここに義之を残して行くこと。何故だかソレが不安で仕方なかった。
「行け、由夢!」
義之が叱咤する。
何時までも考えていられる時間は無い。
由夢は後ろ髪を引かれる想いでその場から駆け出す。
「お姉ちゃん達を見つけたら直ぐに戻ってくるから!
それまで無事でいて、兄さん!」
義之はそれに首肯で応える。由夢の角度からでは見えないと分かっていても。
しかし直ぐに気を張り尚も襲いくる魔物に向き合う。
そこで一つの異変に気付いた。
既にこの場に平常なモノなど一つも無かったがその中にいて尚異常と言える事態に。
上空で高まる魔力を感知したのである。
上空の魔方陣から先程まで出現していた魔物の群れは消えていた。
漸く打ち止めかと思った矢先、先程の魔力が更に高まり、巨大な物体が出現。
其れはリング中央、即ち義之たち目掛けて落ちて来た。
「義之君っ! 避けろ!!」
「くぅっ!」
義之とマルコ、それに紅夜はリングから飛び去り、着地する。
その直後、大地を揺らす振動と共に巨大な魔物がリングを砕き、出現した。
その大きさは楽に十数メートルを超えていた。
「これは……少々厄介だねぇ」
マルコは冗談でも言うかのような口調だったが、顔は決して笑っていなかった。
それだけ目の前の巨大な魔物が此れまでの魔物とは一線を引く存在であることが分かった。
「ボクもこんな巨大なのと対峙するのは初めてだ。
……正直、勝てる気がしないね」
「それでもっ!」
巨大な魔物目掛けて義之は駆け出す。
狙うは巨体を支える足元。
大剣を肩に掲げ、大振りの一撃を繰り出す。
―――――筈だった。
「なっ!?」
その魔物は光の一撃で両断された。
それは閃刃。
突然の出来事に戸惑いを隠すことが出来ない義之。
その傍らに上空から一つの影が舞い降りた。
「じゅ、純一さん?」
「おう、俺だ、っと」
着地の直後、純一は横薙ぎに剣を振るう。
そこから放たれたのは白い大きな斬撃。
残っていた魔物の半数近くを殲滅する。
「―――――……すげぇ」
義之の口からは驚きと感嘆の入り混じった声が漏れる。
師弟関係であっても今まで純一が剣を振るう姿を間近で見ることは無かった。
あっても精々が稽古の乱取り程度である。
それゆえ純一の実力を眼にした義之は驚かずにはいられなかった。
周りのマルコや騎士達も同じく驚きを隠せずにいたが、自らの騎士団の総隊長である純一の登場。
それに伴った凄まじい一撃による魔物の殲滅は否応なしに騎士達の士気を高める結果となった。
「ん、まだ六・七分ってとこか。歳は取りたくないもんだな」
純一は独り言を漏らす。
狙ってやったことなのか、そうでないかは分からないが純一が現れた効果は十二分以上にあった。
流石は前大戦の英雄といったところか。
「よう、久しぶりだな。紅夜」
純一は振り返らずに背後に位置する紅夜に向かって声を掛ける。
声を掛けられた側である紅夜はそれに無言で返す。
元々声が返ってくるとは思っていない純一はお構い無しに口を開く。
「色々聞きたいこともあるが、とりあえず後回しだ。
―――――この現状……どう見る?」
純一の声が鋭さを増した。
魔物の出現からこれまで沈黙に徹していた紅夜が初めて口を開く。
「人間の肉体を乗っ取た、或いは擬態した魔物を送り込み、殺されることをキーとして本命である召喚陣を起動させる……
この陰険な手口―――十中八九、奴等だろうな」
紅夜はまるでこの一連の騒乱を引き起こした犯人を知っているかのような口ぶりだった。
事実知っていた。
これと同じような事を以前にも経験したことがあったから。
これだけ大規模な魔方陣を発動させるための魔力を持った者達が他にいるとは考えられなかったから。
そしてそれは純一も同じであった。
「だな……出て来いよ――――――『十二魔円卓』!」
「十二……魔円卓……!?」
義之が聞き覚えのない単語に首を傾ける暇も無く、頭上に今まで感じたことの無い高い魔力を感じた。
反射的に頭上を見上げた瞬間、視線の先の空間が裂け、暗い闇の中から五つの影が此方を見下ろしていた。
●
「ふん、流石に奴等は気付いていたか」
一人は白いマントで身を包んだ男――――マーグリス。
「ふふ、それはそうでしょう」
一人は長い黒髪をした少女――――ミコト。
「ヒャッハ! オイオイ、憎たらしいヤツラが雁首揃えてやがるぜぇ」
一人は大鎌を担いだ青年――――オルクス。
「紅夜……裏切り者が……!」
一人はその身を鱗で覆われ、竜の顔を持つ半竜人――――ナーガ。
「…………………」
一人は全身を黄金の鎧で覆い隠す騎士。
宙に浮かぶ十二魔円卓と呼ばれし五人。
顔の見えない黄金の騎士を除いた四人全員がその眼を紅く燃え滾っていた。
眼下を見下ろしながらその中の一人、ミコトが口を開く。
「ふふ、さてどうしましょうかね、マーグリス?
当初の予定とは少しズレが生じているけれど?」
「ふん、然して問題は無い。
私は朝倉純一の相手をする。お前達も各々の役目をこなせ」
そう言ってマーグリスの視線は純一へ。
「ならば……我はあの憎き黒紅妖瞳の男を!」
ナーガの憎悪の視線は紅夜へ。
「オイオイ、つーことは俺は残りの雑魚共かよ?
興が乗らねぇが……まあ精々殺しを楽しむとするかよ!」
興が乗らないと言いつつも口の端を吊り上げたオルクスの視線は義之とマルコへ。
それぞれに己が戦う相手へと向けられる。
「あらあら、なんだかんだ言っても皆ヤル気十分ね」
残ったミコトは黄金鎧の騎士へと視線を移し、ある一点を指差す。
そこは王族専用テラス。
「そうねぇそれじゃあ、貴方はあそこに向かいなさい。
おそらく『舞姫』がいる筈だから貴方はそのお相手をして差し上げなさい」
「……………」
ミコトの指示に従い、黄金の騎士は何も語らずに指し示された場所へと飛翔する。
「そう、イイコね。
さて私は相手もいない事だし。適当に辺りを探ってみましょうかね」
ミコトの口元が笑みをつくる。
それを見届けていたマーグリスが吼える。
「では、行くぞ!!」
災厄を呼ぶ五つの影が動き出した
●
頭上に浮いている五つの影から黄金の鎧を纏った騎士が飛び去るのを義之は見逃さなかった。
そしてその向かう先が大事な幼馴染たちがいる場所であることも。
「!……あそこにはティナ達が!!」
真っ先に駆け出そうとしたが、その行く手を純一が遮る。
当然、何故止められたかも分からない義之は憤る。
たとえ相手が純一であったとしても。
「落ち着け。あそこには音夢や王族親衛隊がいる。
あの黄金の鎧は初見だが、負けることはまず無い筈だ」
「それでも!」
尚も憤りを感じる義之は声を荒らげる。
だが純一はそんなことは相手にしない。
「それよりも自分の事を考えろ。
アイツ等を相手にするのに他に気を取られてる様だと、死ぬぞ」
純一の言葉が言い終わったと同時。
空から義之たちと相対するように三つの影が舞い降りた。
●
一つは純一へと。
「よお、久しぶりだなマーグリス。
やっぱり生きてたか」
親しいようで、けれど親しみなど込めずに純一が口を開く。
「ふん、当然だ。
貴様等に味わわされた屈辱、今度こそ返してくれる」
憎悪の感情剥き出しにマーグリスが剣を抜く。
「そうはいかねぇよ。
なんで今頃ノコノコと現れたのかは知らないが、俺の前に現れたのが運の尽きだ」
刹那、二人は閃光と化した。
●
一つは紅夜へと。
「紅夜……裏切り者がぁ!」
怒りの感情を露にしたナーガが殺意の篭った鋭い視線で紅夜を睨みつける。
普通の人間が相手ならばその視線で最悪、死に至らしめる。
「ふん、相変わらず図体に似合わず小さなヤツだ」
紅夜はそんな視線を全く気にもせずに呆れたように冷たい視線を返す。
それがまたナーガの逆鱗に触れる。
「きさまは、キサマは、貴様はぁぁぁ!!!」
ナーガの鋭い爪が紅夜に迫る。
それを紅夜の黒剣が迎え撃つ。
「貴様はぁ、殺すっ!!」
「ふん、お前には出来ねぇよ」
●
そして最後の一つは義之とマルコへ。
「ケッ、なんだよガキ共じゃねぇか。
これなら他のヤツに譲るんじゃなかったぜ」
身の丈よりも大きな大鎌を肩に担いでオルクスは失敗したとばかりに溜息を吐く。
「こいつ……!」
「義之君、気を付けろ。
……この男只者じゃない」
あからさまなオルクスの態度に義之は怒りを覚えるも、マルコがそれを制す。
「ハンッ、一丁前の口聞くじゃねぇか。
まあ、いいぜぇ……」
オルクスは大鎌を両手に握り背中に回す様に大降りに構える。
「俺様は十二魔円卓・第十位『審判』のオルクス。
折角だ……。
精々足掻いて足掻いて足掻きまくってから、死ねやぁ!!」
あとがき。
事態は急展開を迎えた第14話です。
今回で漸く敵らしい敵が登場させることができました。
「十二魔円卓」という名が示すように全部で十二人いますが、今回はその中の五人の出番です。
詳しいことは言えませんが前大戦から純一たちとは因縁の深い相手です。
次回は各所でそれぞれの戦いが繰り広げられます。
ではでは次回のあとがきで。
突如現れた敵らしき奴ら。
美姫 「いやー、一体どうなってるのかしらね」
そして、どうなる!?
美姫 「これまたすぐさま次でお会いしましょう」
勝負の行方は!?