Side:ネロ


誇大妄想を掲げた、イカレタ爺さんの野望を食い止めてから半年経ったある日――何の前触れもなくキリエの命の炎は消えた。
前の日まで元気に、何時ものようにフォルトゥナの復興と、孤児院の手伝いをしていたのに、朝起きたらキリエは冷たくなってた。

考えてみれば、当然だったのかもしれない。
爺さんが俺を誘き出すためにキリエを捕らえていた『神』の体内は異常な瘴気に満ちてたからな――多分魔界ってのはあんな感じなんだろうな。
1/4だけとは言え悪魔の血を引いている俺や、『帰天』とやらで悪魔化してた爺さんは兎も角、生身のキリエにはその瘴気は毒だったんだろう。

その毒は、少しずつ、苦しみすら与えないでキリエを蝕み……そしてその命を喰らった。

キリエが死んだとき、俺は心底狂いそうだった。『また』護る事が出来なかったと。
助ける事が出来たのに護れなかったと!如何して、キリエが神の体内の瘴気に蝕まれてる事に気付けなかったのかと!

間抜けな自分を呪い、無慈悲な世界を呪い、クソッタレな『カミサマ』を呪い、俺は全てを壊そうとまで考えた。


だが、そんな俺を止めてくれたのはアイツ――半年前に、共に闘ったデビルハンター『ダンテ』だった。
何処で聞いたかは知らないが、キリエが死んだ事を聞きつけて俺が『ヤバイ』状態になってると思ったんだろうな……実際なりかけてたしな。

暴走しかけてた俺を見るなり、ダンテはいきなり俺をブッ飛ばしてきたっけ…


――確りしろ坊や!あのお嬢ちゃんが、お前にそんな事をしてほしいとでも思ってるのか!?あの優しいお嬢ちゃんが!!
   冷静になれ!俺も母親を悪魔に殺されてるから、お前さんの気持ちは分からんでもない……だが、お前がすべき事はこんな事じゃないだろ!
   よく考えるんだ、あのお嬢ちゃんなら自分が死ぬ間際であっても恨み言は言わないんじゃないのか?…そして坊やに何を願うと思う!?


2、3発打ん殴られて、そして言われた言葉で俺の頭は急速に冷えて行ったのを覚えている――マッタク『坊や』って呼ばれる訳だ。
キリエなら……誰よりも優しいキリエなら俺が世界を壊す事なんて望んでない……寧ろ、自分が好きだった世界を護ってくれって言うだろうな。

其れに気付いた事で、ダンテが気付かせてくれた事で、俺は寸でで馬鹿な真似をしないで済んだ。
だから俺は、キリエが望むであろう事を成すために、何処にも属さない便利屋を始める事にした……『Devil May Cry』を。

と言ってもやる事はキリエが生きてた頃と大差はない。
街の復興と、時折現れる悪魔共を駆逐するくらいだ――ただ、前よりも街の復興に力を入れてるかもしれないけどな。

だが、だからか?Devil May Cryを開業して暫くして、誰が言い始めたでもなく俺にはある二つ名が付くようになっていた――『黒騎士』と。
俺にその二つ名が付いた頃、フォルトゥナ全土を揺るがした爺さんの事件、通称『救済』からは、1年が経っていた…












リリカルなのは×Devil May Cry  黒き騎士と白き魔導師 Mission1
『始まり〜It's begining〜』











「で、あれから1年が経った訳だが……アンタ等、揃いも揃って人の事務所で何してんだよ!?」

「ハッハ〜〜!つれない事言うなよ坊や、フォルトゥナで大活躍の『黒騎士様』に会いに来ただけじゃないか?」


絶対嘘だ……アンタの相方と仕事仲間まで一緒に来てる時点で、只俺に会いに来た訳じゃないって事くらいはバレバレだぜおっさん。
まぁ、1割くらいは俺に会いに来たってのも嘘じゃないかもしれないが、残りの9割は絶対別の理由だろ?そうに決まってる。

「つーか、デスクから足下ろせよ!曲がりなりにも其処は俺の席だぞ!」

「ん?おぉっと、こりゃ失礼!つい何時もの癖が出ちまった。坊やの店の名前が『Devil May Cry』だったから余計にな。」

「アンタ、絶対悪いと思ってないだろ…」

はぁ……まぁ良いや、このおっさんと真面目に話してると無駄に疲れちまうからな――で、本当の用件てのは何なんだ?あるんだろ?


「察しが良いし、ダンテと比べれば遥かに真面目ね貴方は。
 少し、気になる事があってね――ちょっと此れを見てくれる?」


アンタは確かレディだったか?……此れはフォルトゥナの地図……?
此れが如何かしたか?……其れとこの地図上の赤い印は?


「その赤い印は、此処1ヶ月の間にフォルトゥナに現れた悪魔の出現場所を示したモノよ……何か気付かない?」


グロリア……あ、いやトリッシュか。こうして見ると別人だな……アレは変装ってレベルじゃないよな…
何かって―――ん?別に気にも留めてなかったけど、こうして見ると出現場所が集中してるな?…街の中心部に。


「そうだ。でもって其処は、1年前に『カミサマ』と最終決戦を行った場所――真の地獄門が有った場所さ。」


!!!
おい、其れはまさか!!


「俺が閻魔刀で封印した筈の地獄門が活性化してる……その影響で悪魔共が其処から溢れだしてきてるのかもな。」

「マジかよ……」


――ヒィィィィン……


!!右腕が……反応してる。……ちぃ、出やがったか。


――バァァァァァァァン!!


「ネロ、街に悪魔が!物凄い数だ!!」

「あぁ…分かってる!!」

話してた矢先に行き成りかよ……本当にこっちの都合やら何やらはお構いなしの連中だな相変わらず!


「ヘイ坊や!俺も参加させてもらうぜ?コイツは『合言葉』の客が来たのと同じ状況だからなぁ?」

「好きにしろよ……けど、只働きだぜ?」

「ハッハ〜〜!美味いピザとストロベリーサンデーを食わしてくれりゃ文句は言わねぇよ。」


……ハナっから今日はただ飯たかる心算だったくせによく言うぜ。
それ以前に、大の大人が二十歳前のガキに飯たかるなよ情けねぇな……少しは借金塗れの生活を改善しろよ。

「飯の量は、働き次第だ!」

俺より悪魔の撃破数が少なかったら奢らねえからな!



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・


ちぃ……マジでトンでもねぇ数だな?下級の雑魚だけじゃなくて、アサルトにフロスト……中級レベルまで出て来てやがる。
市民の避難は…


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


まだ完了してないか!……させるか、エリャァァァァァアッァ……Be gone!(失せろ!!)
おい、大丈夫か!


「く、黒騎士様…!」

「港に向かって逃げろ!城塞騎士が居る所を通って行けば、少なくとも居ない所を通ってくよりは万倍安全だ、行け!」

城塞騎士ってのは、事件後に教団騎士を再構成した、フォルトゥナの自衛騎士団の事だ……あくまで教団の裏を知らなかった奴だけを集めたな。


「は、はい!黒騎士様も、どうかご無事で…!」


ハッ!この程度の奴等に簡単にやられてたまるかよ。
さてと………来いよクソ共、纏めて地獄に送り返してやるぜ!Blast off!Go down!!(吹っ飛べ!そして落ちろ!!)


「Hoo!やるじゃないか坊や、流石は黒騎士様ってところか?」

「無駄口叩いてる暇あるなら倒せよな?俺より1体でも少なかったらピザとストロベリーサンデーはお預けだぜ?」

「そいつぁ勘弁だな?まぁ、コイツ等を倒さにゃ飯どころじゃないな?Hoo…Drive!!One!two!!」


ったく、適当にふざけてても強いんだから性質が悪いぜ、このおっさんは……と、逃がすかよ!ウリァァ…Catch this!!(喰らいやがれ!!)
けどまぁ、1人よりも遥かに楽ってのは間違いないな……悔しいが、俺はまだダンテには到底及ばないだろうからな……ん?


――バチィ!!


この電撃は………ブリッツか!
限りなく上級に近い中級まで出て来るって……マジで何がどうなってやがる?

雷を纏った難敵…1年前の俺なら苦戦してたろうが――甘いんだよ!幻影刀!!


――シャキィィン!!


あれから俺は、ずっと自分の力を磨いて来た……その甲斐あって、幻影刀も只飛ばすだけじゃなく、空中に設置する事も出来るようになった。
コイツをアトランダムに設置すれば、其れは『幻影刀の結界』だ、移動するだけでも大ダメージを受けるぜ?


『がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

「ハッ!幾ら強くても所詮は中級止まり、おつむの中身は大差ないみたいだな!」

雷が剥がれれば大した事は無い……オラオラオラオラ……ぶっ飛べ!!
そして此れで終わりだ…You're going down(跪け)……ハァァァァァァァァァァァァァァァァァ!Dusts to dusts…!(塵は塵に…!)


『ギャァァァァァァァァァァァァァ!!』


――バガァァァン!!



閻魔刀を使っての最強技『ショウダウン』……滅多にお目に掛かれるもんじゃないんだ、拝めた事を幸運に思いな。


『『『『『『…………』』』』』』


……ハン、まだ来るってのか?懲りない奴等だ――コイツは初めて見る奴だが、手加減はしない…Eat this!!(喰らえ!!)


「!!待て、そいつに攻撃するな坊や!!」

「はぁ!?つーかもう遅い!攻撃しちまっt――キィィィン…バガァァァァァァァァァァァァァン!!がは!!」

ば、爆発!?…まさか、コイツは攻撃されると自爆するのかよ……ヤバイ…他の奴等も…!!


――ドガバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!


うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!








――――――








Side:ダンテ


くそ…予想以上に坊やが強くなってた事に油断したか――アレは魔界の爆弾生物…ちょっとの刺激で爆発する危険物だ。
坊やは其れを知らなくて、反射的に攻撃しちまったのか……その爆発に反応しての複数体連鎖爆発……坊やは無事なのか!?

「おい坊や、返事をしろ坊や!……ネロ!!!」

粉塵が晴れて……嘘だろ、坊やは何処に行った!?……如何して何処にも居ない?―――ん?

「此れはまさか……坊やが使ってた腕時計………!!」

爆発の衝撃で壊れちまってるが間違いない、此れは坊やの腕時計だ……だが、時計だけあって坊やは居ない……ハッハ…コイツは参ったね。
坊やは1/4だから、半分の俺よりも身体の耐久力低い…精々『打たれ強い人間』に毛が生えた程度だったなそう言えば…吹き飛んじまったか…

「これで、本当に俺は一切の血縁者を失っちまったな……」

なぁ、バージル……アンタの忘れ形見を護ってやれなかったよ――俺が死んだらその時は、地獄で打ん殴ってくれて構わないぜ?
尤も、アンタが自分に息子が居た事を知ってるかどうかは謎だけどな。







其れから3日後、フォルトゥナでは盛大に『黒騎士』の葬儀が行われた。
あの後――坊やが大爆発に巻き込まれた直後、街を覆い尽くさんばかりだった悪魔は潮が引くように消えちまった。
それどころか、活性化してた筈の地獄門は嘘のように静かになり、それどころか一切の魔力を感じなくなってた……分からん事だらけだな。


だが、俺は不思議と坊やが『本当に』死んだとは思ってない。
普通に考えりゃ、頑丈な人間に毛が生えたほどの耐久力の坊やが、あの連鎖爆発に耐えられる筈がないが――だが坊やも親父の血を引いてる。
其れを考えると、どうしても死んじまったとは思えなかった、思いたくなかったのさ。

或は坊やは、爆発と同時に何処か別の世界に?―――ハッ、オカルトが過ぎるな。
だが、もし万が一にもそうだとしたら……坊やはその世界で何をしてるんだろうな……ま、生きてたら元気に頑張ってみな…ネロ。








――――――








Side:ネロ


ぐ……幾ら何でも此れはきついぜ……とっさに幻影刀を展開してなかったら吹き飛んでたな……それでも大ダメージだったが。

「はぁ、はぁ……其れよりも、此処は何処だ?フォルトゥナとは違う……何で行き成りこんな所に…」

いや、其れを考えるのは後か………まだまだ悪魔は居るみたいだからな…


『ギャハハハハハハハハハ!!』
『イヒャハハハハハハハハハハハ!!』
『あ〜〜〜ハハハハハハハハハハハ!』
『ギャギャギャギャギャギャギャ!!』



ち……耳障りな嗤い声だな……手負いなら簡単に殺せると、そう思ってるのか?……我ながら舐められたもんだ。
悪いが手負いでも、お前等なんぞにはやられないぜ……お前等みたいなクソッタレの悪魔共にはな!!覇あぁぁぁぁぁあぁ!!

「「Do it!!!」」


――バキィィィン!!


「「Come on Babes!Time to die…!(来いよマヌケ共!そろそろ死んでもらうぞ…!)」」

『引き金』を引いて、内なる悪魔を覚醒する。
お前等みたいな精々中級如きには勿体ない『切り札』だが、勿体付けてられる場合でもないからな……魔力が尽きる前に叩きのめしてやる!








――――――








Side:なのは


ミッドの郊外で行き成り発生した中規模次元震、そしてその直後に観測された巨大な魔力――普通じゃない事が起きてるのは間違いない。
生憎、今出れるのは私だけだから1人で現場に……見えた、あそこだ!



「「Go down!!」」


「へ?」

な、なに此れ!?
次元震を観測した場所で、男の人が不気味なモンスター相手に大剣片手に大立ち回り!?
しかも、あの男の人からは凄い魔力を感じる……もしかして観測された巨大な魔力の発生源は彼なの?


『Maybe.(恐らく)』

「やっぱりそうだよね…」

不思議な蒼いオーラを纏った銀髪の男の人……圧倒的な数のモンスターがまるで敵になってない。


『ぎゃしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』


!!後ろからモンスターが…!!…させない、ディバインバスター!!!!!

『Divine Buster.』


――ドォォォォン!!!



「大丈夫ですか!?」

「「……まぁな……後ろから来てたのは分かってたが……其れでも助かったよ、ありがとな…」」


き、気付いてたんですか?……あの、貴方は…


「「そう言うのは後回しにしようぜ?……今はコイツ等をぶっ倒す方が先決だ。そうだろ?」」

「其れは……そうですね。」

エコーが掛かったような不思議な声だけど、確かにこの人の言う事の方が正しいね……如何見ても此方を攻撃する気満々だもんこのモンスター。
それにしても、近くで見ると気味が悪いなぁ……夢に出てきそうなの…此れは速攻で全滅した方が良さそう。


「え〜っと…貴方はクロスレンジ――近距離戦の方が得意なんですか?」

「「まぁ、どっちかって言うとな…」」


なら、遠くのモンスターは私が倒しますから、貴方は近くのをお願いします!


「「オーソドックスな前衛後衛の布陣か……悪くないが……アイツ等はモンスターじゃなくて『悪魔』だ!!」」

「その違いは何なんですか!?」

同じような感じがするんですけど!?……まぁ、後で詳しく聞く事にしようか……レイジングハート、エクセリオンモード!


『All right.Excellion Mode Drive ignition.(了解。エクセリオンモードを起動します。)』

アクセルシューターバニシングシフト!

『Rock on.』

シューーーート!!!!


――ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!


全弾命中!此れで数は結構減らした筈……!


「「ハハ……スゲェな…見た事もない技だ――だが、お蔭で的を絞るのが楽になった!」」

「へ?何時の間にか大剣から刀に持ち替えてる!?」

一体何時?それ以前に、あの刀は何処に持ってたの!?……それに、魔力が物凄く強大に膨れ上がってる…!!


「「Scum bags…Kill best!(クズが…くたばれ!)」」


――ヒュン!……キンッ!!


「「Show down.(此れで詰みだ。)」」


――バキィィィン!!


!!!モンスターが…悪魔が、空間ごと斬れた!……斬れた空間は直ぐに元に戻ったけど、斬れた空間の筋は8本…一回の抜刀で8回も斬った?
だとしたらどれだけ素早い攻撃だったんだろう?今の攻撃で、残っていた悪魔って言うのが纏めて居なくなった…


――シュゥゥゥン…


「く……魔力切れか……流石に次元斬は消耗がでかいな………」

「ちょ、大丈夫ですか!?」

「大丈夫……と言いたい所だが……少しばかり、無理しちまったみたいだ……」


――グラリ…


!!危ない!!………ふぅ、何とか支えられた。
でも、如何したんだろう、行き成り倒れて……魔力切れだって言ってたけど、無理したって……


――ぬるり…


「……え?」

此れは…血!?まさか、この人の!!
良く見たら、この人服がボロボロ……何かに吹き飛ばされたみたいに……其れにこの血の量は只事じゃない…こんな状態で戦ってたの!?
レイジングハート、直ぐに連絡を入れて!次元震観測地点にて、次元漂流者と思しき人物を保護!重傷に付き医療班を寄越してって!


『All right.』


この人は一体何なんだろう?
此れだけの怪我をしながら、アレだけ動いて――そして、今まで気付かなかったけどこの異様な『右腕』は一体?
全ては、この人が目を覚ましてからだね…






こうして、私と彼は出会った。
そしてこの出会いが色んな意味で『運命の出会い』であった事を、この時の私は知る由もなかった――













 To Be Continued… 



吉良飛鳥さんから初投稿です。
美姫 「なのはとデビルメイクライのクロス作品ね」
みたいだな。
美姫 「ちなみに、デビルメイクライの方は」
やった事ないからよく分からないかな。
美姫 「それでも楽しめそうね」
うん。どんな話になるのか楽しみです。
美姫 「そんな気になる続きは……」
この後すぐ!



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