Side:はやて


相変わらず市街地戦は継続中で、寧ろ激しさがましてる言う所なんやけど……今、目の前で起きた事をありのままに話すで?
乱戦の最中、バージルさんやレディさんて言った、地上で戦う部隊の支援に向かったシュテルが、なのはちゃんに負けず劣らずのトンでも砲撃で見事に悪魔共を撃滅し
まくってんやけど、その最中に突如背後からシャドウが出現!

バージルさんがエアトリックを使ったとしても、シャドウがシュテルに襲い掛かる方が早い!危ない!!……って、そう思ったんやけど……



『ニ゛ャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン♪』(ゴロゴロ)

「おや?」

「……何事だ、此れは?」



襲われるどころか、メッチャ懐かれてんですけど、此れ如何言う事!?バージルさんかて、表情は変わらずとも、頭の上に大量のはてなマーク漂わせてんで此れ!?
ネロ君やバージルさんみたいに、悪魔の血を引く人間が、人間に好意を持つんやったら兎も角、純血種の悪魔がこんなに人に懐く事なんて有るんか〜〜い!!!



「あ、そっか〜〜!シュテルンは猫に好かれるから、きっとネコ型のシャドウにも懐かれたんだよ〜〜!」

「ねこぉ!?」

「いや、シャドウは確かに実体有る影を纏い、その姿はネコ科の大型肉食動物を模してはいるのだが…………」

「……流石に、猫ではないだろう此れは………」



まず大きさからして有り得んからなぁ……えっと、其れでシュテルは大丈夫なん?懐かれとるようで、実は魔力を吸い取られたりとかしてへん?



「無問題です夜天の主。如何やらこの子は、本当に私に懐いてくれている様ですので。
 ――ですが、そうであるのならば、此れを此方の戦力として利用しない手は無いでしょう?ですので、このシャドウは、私の使い魔にしてしまおうかと思いました。
 如何やら言う事は聞いてくれそうですし、コアを私のシールドで覆ってあげれば、影が剥がされても死ぬ事も無いでしょうから………さて、行きますよタマ。」

『ニャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン♪』

「あ、待ってよシュテルン!!
 え〜〜っと、其れじゃあまた後でね小鴉ちん!僕、シュテルンと一緒に敵倒してくるから〜〜〜〜〜〜!!!」



――バビュン!!



「……悪魔に懐かれ、あまつさえ己の使い魔にしてしまうとは、あの少女は何者なのだ、はやて司令?」

「なのはに似ている以上、只者ではないのだろうが………」



闇の書の構成素体マテリアル――やった子やけど、今は一個体の『シュテル』言う存在になっとるから、もう私の知ってるあの子とは全然別人の筈や。だから知らん。
そもそも、悪魔を使い魔に、其れも懐かれた上でするってドンだけやねんシュテル!!まぁ、シャドウ限定かも知れへんけど!!!

何や10年越しで、あの子達はやっぱり普通やないって、魂に刻み込まれた感じやで此れ!!!



「「……言わんとしてる事は、何となく理解出来たな……」」

「理解して貰えたんやったら僥倖やで…」














リリカルなのは×Devil May Cry  黒き騎士と白き魔導師 Mission105
『奪還〜Yamato&Raising Heart〜』












ま、シュテル達の事は取り敢えず横に置いておくとして、相変わらず悪魔共が次から次へと、休む間もなく現れてくる言うんは、一体如何言う事や?
地獄門のエミューレーターは3本とも破壊したんやで?――本命の一本が残ってるとは言え、少しはこう……出現スピードが遅なったり、出現モンスターが弱体化した
りするもんやないの普通は!!



「普通ではないのだろうな……まぁ、地獄門が普通であると言うのもおかしな話だが。
 だが、貴様は如何言ったカラクリが隠されているか知っているのだろうクレド?………何故、本命の一本から現れる、悪魔の量と質が変わらないのだ?」

「……3本のエミュレーターを壊すだけでは、真の地獄門を弱体化する事は出来ない――が、エミュレーターを破壊しなければ、真の地獄門を止める事もまた不可能。
 今の真の地獄門は、閻魔刀によって起動し、疑似的にレイジングハートで制御しているのだろうが、3本のエミュレーターが健在の状態では、鍵であるその二つに対
 して、強固なプロテクトが成され、回収する事が出来ないのだ。
 あくまでも、フォルトゥナの時と同じならばと言う前提条件が付くが、今の状況を見る限り、大きく外れていると言う事は無いだろう。」



………だとしたら、ホンマに面倒な事してくれやっがったなぁスカリエッティのマッド野郎は〜〜!!
エミュレーターを破壊しても真の地獄門の出力は落せんのに、エミュレーター無視してショートカットしても門を止める事が出来ないって、ガチガチ本気設定のRPGやって
其処まで面倒なルートは、なかなかお目に掛かれへんでホンマに!!

ちゅー事は何か?真の地獄門が止まるまで、この状態は続くっちゅう事かい?



「クレドの話からすればそうなるだろうが……しかし、其れも直に終わるだろう。ダンテが閻魔刀とレイジングハートの奪還に向かった以上、あの二つの奪還は絶対だ。
 アイツの悪い癖で、多少遊ぶ事はあるかも知れんが、連中の作り出した天使や、帰天した人間如きではダンテに勝つ事は出来ん。」

「……ま、ダンテさんやったら確かに大丈夫やろな。あの人は、ちゃらけてふざけた態度取ってても、やる事はビシッとやって、最後にはスタイリッシュに決めるやろし。
 やったら、もうひと踏ん張りと行こうやないの?フレキ!!ゲリ!!」

『『ワオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!』』



「……スパーダに封じられた、邪神ボルヴェルグの使い魔の白狼も、今は夜天の主の使い魔か――お前も、つくづく面白い奴だなはやて。」



フッフッフッ、人呼んで『歩くロストロギア』を舐めたらアカンでバージルさん?
この身は10年前にロストロギアと融合した事で、最早純然たる人間とは言い難い上に、ボルヴェルグ本人とガチバトルし腐った上で、その力と彼の者の使い魔を譲り
受けた、正真正銘の『限りなく人間に近い、人間じゃない何か』やで?



「其れを言いきるとは……心が強いと言うか何と言うか。
 だが、確かにもうひと踏ん張りの様だはやて司令、バージル……地獄門が止まるまで、一人の犠牲者も出さない様に、力を尽くすぞ!!」

「フン……誰に物を言っている。
 正直、市民がドレだけ悪魔の犠牲になろうと、俺の知った事ではないが――息子と、そのパートナーが護りたいと思った場所で好き勝手されると言うのは、流石に父
 として看過出来んのでな……もう少し、村正に血を啜らせてやるとしよう。」



あはは……ホンマ、素直やないなぁバージルさんは。ホンマに、知った事やなかったら、そもそも六課に協力もせんやろに。
でもまぁ、クレドさんとバージルさんに後れを取るっちゅうのも、総司令としてちょっと格好がつかんから――

「「It's full strength opening from here!!(此処からが、全力全開や!!)」」

さぁて、デビルトリガーを発動し、フレキとゲリを従えた今の私は、此れまでよりもちょっと強いで?――勝てると思てんなら、掛かって来いや、此のダボ共が!!!








――――――








No Side


劇場とは、使われているその時は、舞台に演者とセットが存在し、其れをライトが照らし、舞台上の素晴らしいパフォーマンスに観客は感動し、演目が終われば、鳴りや
まぬ拍手喝采が溢れんばかりの、華やかな場所だろう。

だが、使用されていない時の劇場と言うのは、まるで正反対の様に、静寂に満ち、そして空虚な空気が漂う場所だ――ダンテが、到着した劇場の内部は、正にそんな
状態だった。


――パッ!!


しかし、その劇場に於いて、突如スポットが起動し、劇場内のある人物を照らし、その存在を明らかにする。
その人物は、白い服を纏い、褐色の肌で右目モノクロをかけ、長く伸ばした神を一つに纏め、特徴的な顎が目を引く人物――スカリエッティ一味のアグナスだ。


「悲しいかな……悪魔如きでは、君達を止める事は出来ないらしい――それ程までに、力の差があると言う事か……」


まるで芝居を演じるかのようなモノ言いだが、其れに呼応するかのように、今度は別のスポットが、これまた別の人物を照らし出す。
その人物とは――言うまでもない、ダンテだ。


「悪魔を呼び出し、其れを退治する……何ともイカレタ出来レースだ。
 そんな事を、するとは……何が神だ、恥を知れ!!」


ダンテもアグナスに呼応するように、芝居がかった態度をとる。


「人とは……真に愚かな存在だ。
 一度滅びを経験しなければ、神の存在を認めようとはしない――真に悲しき運命、だ。」


――フッ


今度はアグナスは、人の愚かさを語り乍ら、手にした頭蓋骨を砕き手の中に残った粉を、吹き飛ばす。


「まぁ、そんな事は如何でも良い。――だが、そろそろ、此処にある『アレ』を返して貰おうか!!」


だが、ダンテからしたら、アグナスの講釈など如何でも良いらしく、肘をついて床に寝そべった姿勢で対応したかと思えば、即座に立って、其れこそハリウッドスターでも
ビックリするほどの演技を見せる――とは言え、言ってる事はガチだが。


「「閻魔刀とレイジングハートだな!!
  だが、貴様が其れを手に入れる事は無い!!何故なら、此処に、私が、居るからーーーーーーー!!」」


其れに応えたのは、帰天したアグナス。
手にした、剣状態のグラディウスを振り回し、高らかに閻魔刀とレイジングハートの奪還は不可能だと言いきる!――だが、ダンテがそんな物に怯む事は無い訳で…


「Ha-ha!言われてみりゃそうだったな……悪かった。」


――ガァァァァァン!!


シートを滑らせてアグナスの前に躍り出るや否や、心にも思っていないであろうセリフを口にし、そのまま天井に向けてハンドガン一発!!


「其れじゃまぁ、そろそろおっ始めようぜ?
 神様の使いと言われる天使様と、こうして出会えた上に戦える!!こんな幸運……滅多にないぜ?」


そして、その一瞬の内に、アグナスの背後の2階席に降り立ち、戦いの始まりを告げるゴングになるであろう一言を言い放つ!
――まぁ、『天使』と戦えると言う事を幸運と言うのが、何ともダンテらしいが。
因みに、此れまでのやり取りは、一切事前の打ち合わせなどしていなく、ぶっちゃけその場でのアドリブ……つまり、この2人ノリノリであったと言う訳であり、案外漫才
でもやらせたらかみ合うのかも知れない。

だが、今は敵同士。ダンテは閻魔刀とレイジングハートを奪還するため、アグナスは閻魔刀とレイジングハートを死守するためにも戦う以外の選択肢は、ありえない!


「Ha-ha!行くぜ、天使様よぉ?
 折角こんだけの大ホールだ、ハードロックをガンガン鳴らして、オープニングからオーディエンスを総立ちさせてやろうぜ?なぁ!!!」


開幕と同時に、仕掛けたのはダンテ。
2階席のからジャンプすると同時に、エボニー&アイボリーを超高速で連射し、アグナスに銃弾の雨をお見舞いする。
宛らマシンガンのような連射をハンドガンで行うダンテの技量も凄いが、そのダンテの無茶な使い方に耐えられるエボニー&アイボニーは、流石『45口径の芸術家』と
称された初老の女性が、己の命を懸けて『トニー・レッドグレイヴ』の為に作り上げた逸品であると言えるだろう。


「「生憎と、私はクラシックの方が好きでね……下品なハードロックは好みではないのだよ。」」


並の悪魔ならば、これでハチの巣になって、各種オーブに姿を変えるのだが、トーレやセッテよりも、より高いレベルで帰天しているアグナスの肉体は、上級悪魔に匹
敵する強度を会得しており、45口径とは言え、ハンドガンの弾丸程度ではビクともしないらしい。


「はぁ?オイオイオイ、冗談だろ?
 ハードロックの、あの一種イカレタビートが分からないとは、アンタ男として人生半分損してるぜ?
 バージルもバラードやクラシックの方が好きだったが、ジャズも好きだった事もあって、俺がハードロックのレコード掛けた時にゃ、意外と乗ってくれたってのになぁ!」


元よりダンテとて、ハンドガンの連射で勝負が付くとは思っていない。
今の高速連射は、言うなれば自分が着地するまでの牽制……時間稼ぎであり、其れを示すかのように、ステージに降り立ったダンテは、間髪入れずにスティンガーで
一気に間合いを詰めながら強襲!!


――ガキィィィィン!!!


「「だとしても、趣味に合わないモノは、矢張り合わないのだよ。」」


そのスティンガーを、剣形態のグラディウスを使って止め、帰天したアグナス――アンジェロ・アグナスは、不敵且つ不気味な笑みをその顔に浮かべる。
ハッキリ言って、蟲としか言いようのない帰天形態で、笑みを浮かべられると、最高に気持ち悪い事この上ないのだが、其れは余り戦いには関係ないので保留する。


「「解剖してやる――麻酔無しでな!!」」

「そいつは、何とも刺激的なモンだが……流石にそんなモンは遠慮願うね!!」


危険なセリフを吐きながら、アグナスは自身の背後に展開した魔法陣から、グラディウスとバジリスクを召喚し、一斉にダンテへの攻撃を命じる。


「「見るがいい、此れが私の生み出した魔獣の数々だ!!」」

「アンタが作ったのかい此れは?……マッタク趣味が悪いねぇ?鳥にしろ犬っころにしろ、もう少し可愛いのを作らないと、世のお嬢ちゃんには振り向いて貰えないぜ?
 つーかだな、鳥は良く分からねぇが、犬ならザフィーラやアルフ嬢ちゃんみたいなワイルドなイケメンか美人さんを作ってくれよ?
 テメェの頭を飛び道具として使う様な犬っころじゃ、危なっかしくて頭を撫でてやる事も出来ねぇからな!!」


しかし、飛び交うグラディウスの群れも、撃ち出されるバジリスクの頭部もダンテにとっては何のその。
リベリオンで的確に弾き返しながら、左手に持ったエボニーでこれまた的確に敵を撃ち抜いて行く。もっと言うのならば、リベリオンに弾き返されたグラディウスは、その
時点で、身体が真っ二つに両断されて、お陀仏になっていた。

ネロが最強と称する未来のダンテと比べれば劣るとは言え、其れでもダンテはダンテ、戦いに於けるセンスは矢張りぴか一にスタイリッシュだ。


「序に此れでも喰らっとけ!!」


更に、何処から持って来たのか、グレネードランチャーを取り出し、強烈な榴弾で群がるグラディウスとバジリスクを鎧袖一触!!正に、最強のデビルハンターである。


「「貴様、それは……!!!」」

「あぁ、コイツか?
 ガジェットとか言う、アンタ等が使ってるガラクタにくっついてたモンだが、中々に上等なモンだったんで拝借させて貰ったぜ?――思った通り、中々良い武器だぜ。」


しかも、そのグレネードランチャーは、ガジェットに搭載されていた物だった。
其れを一体どうやって、人が使えるように魔改造を施したのかは不明だが、銃器の扱いにも長けたダンテが、人が持つ事の出来る銃器の中でもトップクラスの破壊力
を有する物を手に入れたのは間違いないだろう。


「「小癪な……切り刻んでやる!!」」

「Ha!切り刻みたいなら、キャベツでも千切りにしてろよ。トンカツショップが良い値で買ってくれるかもしれないぜ?」


一方のアグナスは、グラディウスの突撃や、バジリスクの頭部射出ではダンテにダメージを与える事は出来ないと悟ったらしく、カットラスを両手に持った状態で、高速
回転しながら、ダンテに突撃!
カットラスの背鰭は鋭利な刃物と化しており、其れはつまり、今のアグナスは鋼鉄すら両断する超高速の回転カッターであるのと同義なのだ。


「良いねぇ、最高だ!!!やっぱり、戦いってのは、此れ位じゃないと面白くないぜ!」


しかしダンテは、アグニ&ルドラの二刀流で、その高速回転カッター攻撃を捌いて行く――其れも只捌くだけではなく、まるで舞うかの様に、あくまでもスタイリッシュに。
だが、同時にダンテは、此処までの攻防で、アグナスの実力を見抜いていた。


「……そろそろ終わらせるか。」


そう呟いた瞬間、アグナスの前からダンテが消え……


「オラァァァ!!!」

「「!?」」


背後から、強烈な飛び蹴り、『キラービー』がアグナスに突き刺さった。
まさかの事に、アグナスは慌てて背後を攻撃するが、既にそこにダンテの姿は無く――


「何処見てやがる!!えぇ、天使様よ!!」


――バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ!!バガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!


又しても背後から、今度はケルベロスのフリッカーで、殴って殴って殴りまくって、連打の締めにはベオウルフを装備しての、強烈なストレイトで殴り飛ばす!!
その強さは、正に圧倒的!!
デビルトリガーを発動していないにもかかわらず、その力はアンジェロ・アグナスを遥かに凌駕していた。


「「ばばば、馬鹿な……何故いきなりこんな……何故いきなり、そそそ其処まで速くなれるーーーー!!」」


逆に、堪らないのはアグナスだ。
此れまでの攻防と、嘗ての経験から、目の前のヤングダンテは、自分を倒したダンテと比べれば大きく力では劣っており、帰天した自分ならば勝てると思っていた…に
も関わらず、箱を開けてみれば、マッタク持って歯が立たない状況なのだ。

全ては、ダンテの急激なスピードアップに有るのだが……


「あん?俺が速くなったんじゃねぇよ、アンタが――引いては、俺以外の世界の全ての時が遅くなったのさ。」

「「なにぃ!!?」」


何と、スピードアップの正体は、ダンテが速くなったのではなく、ダンテ以外の時が遅くなった事が原因――つまり、ダンテが時を操って見せたのだ。
嘗て戦った、時を操る上級悪魔『ゲリュオン』から受け継いだ、時の流れに干渉する能力『タイムラグ』は、消耗は大きいが、しかしその消耗を補って有り余るだけの力
を有しているのだ。

全てが低速化した世界で、自分だけが常速で動けるのだから。

とは言え、消耗の大きさから乱用は出来ないが、しかし、タイマン勝負に於いて、これ程までに強い能力も存在しないだろう。――更に、



――バキィ!!!



「「グハァ!?」」

「おいおい、油断は禁物だぜぇ?」


又してもアグナスの背後からの攻撃――だが、ダンテは目の前にいる。
援軍が来た様子もない……ならば、一体何者が攻撃したのか?……答えは簡単だ。


「「此れは……ドッペルゲンガーか……!!」」

「大正解!」


悪魔『ドッペルゲンガー』を倒した際に手に入れた特殊所能力『アフターイメージ』で、実体有る己の分身を作り出し、アグナスの背後からの攻撃を行ったのである。
そして、タイムラグとアフターイメージの存在は、確実にアグナスの勝機を奪い去って行ったのは間違いないだろう。

時の流れに干渉し、更には己の分身まで作り出すダンテに対し、アグナスはある意味で全ての詰め手を封じられてしまったのと同義なのだから。
この先、どんな攻撃を仕掛けた所で、其れはタイムラグで簡単に躱され、仮にダンテの本体を捉えて攻撃したとしても、その瞬間にアフターイメージの分身が、死角から
攻撃を仕掛けて来る……正に、チェックメイト状態だ。

尤も、普段のダンテならばこんな戦い方はせずに、あくまでも戦いを楽しむようにするだろう。
だが、今は戦いを楽しむよりも、閻魔刀とレイジングハートを奪還する事が最優先事項であるが故に、ダンテも一切の遊びをしないで、ガチで戦いに臨んだのである。


「ソロソロフィニッシュと行こうか?」

「「!!」」


フィニッシュ宣言をしたダンテは、ダンスマカブルでアンジェロ・アグナスを斬って斬って斬りまくり、其処からハイタイムジャンプで斬り上げると、今度はアグニ&ルドラの
スカイダンスを繰り出し、其処からケルベロスのフリッカー、リベリオンのエリアルレイブに繋ぎ、ベオウルフのハンマーで地面に叩き落す!


「此れでも喰らいな!!」


其れだけではなく、エボニー&アイボリーのレインストームで、鉛弾の雨霰を降らせ、更には其処から一気に急降下して拳を地面に叩き付けてヴォルケイノを発生させ
て、アグナスを攻めたてる。

如何に悪魔と同等の頑丈さを手に入れたとは言え、此れだけの連撃を喰らったらアグナスとて堪ったモノではない。
現実に、粉塵の中から現れたアグナスは、帰天こそ解かれていないが、大ダメージを受けたのを示すかのようにフラフラで、羽根を使って宙に浮いているのが精一杯
と言った状況なのだから。


だからと言って、ダンテは情けを掛けたりはしない!


Sweet dreams!(寝んねしな!)


宙に浮いているアグナスに向かって、スティンガー!吹き飛んだところに、またスティンガー!そのからの追撃もまたスティンガー!兎に角右に左に、縦横無尽にステ
ィンガーを繰り出し、アグナスを攻めたてる!


Game set!!(終わりだ!!)


その連続スティンガーの締めは、略零距離から放たれた、力の籠ったスティンガー!――これが、ダンテの編み出したスティンガーの究極系『デビルマストダイ』だ。
此れだけの強烈な突きを喰らいまくったアグナスは、最後の一撃で客席まで吹き飛ばされ、そして帰天が強制解除されてしまった。


「ばばば、馬鹿な……何故だ、如何して勝つ事が出来ない!!」

「簡単なこった、お前が人間辞めちまったからさ……と、コイツは未来の俺が、過去のアンタに言ったセリフかも知れないけどな。」


アグナスとしては、その結果が満足出来ようはずもないだろう。
嘗てフォルトゥナで己を倒した相手に、再び、しかもフォルトゥナの時と比べれば、実力が劣る状態であるにも関わらず、今こうして再び苦汁を舐めさせられたのだから。


「確かに、人間は肉体的には悪魔の遠く及ばない位に脆弱なのは間違いないが……だが、悪魔にはない力を持ってるんだぜ?そんな事も知らなかったのかい?」

「だからそれは何なのだ!!
 前に戦った時も、其れに関する答えは聞かせて貰えなかったぞ!!!」


そして、又してもダンテから悪魔にはない人の強さと言うモノを言われ、その正体を教えろと言う。


「Ha-ha!そんな事も分からなのかい?……恐らくは、未来の俺も過去のアンタに、似たような事を言ったんだろう?……悪魔にはない人の力の正体については、未
 来の俺が、アンタに課した『宿題』って所か?
 だが、生憎と俺もその宿題の答えを教えてやる心算はねぇよ。」


――ガァァァァァァァァン!!


そんなアグナスに対して、答えを教える気はないと言ったダンテは、アイボリーを一発撃ち、更に其処から、ベリアルとの戦いの後で手に入れた人造魔具『ゴーガンダン
テス』の魔力刃を投擲し、アグナスを突き刺していく!!


「ガハァ!!!……こんな、こんな事が……あああ、有り得ない!!有り得ないぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

「だが、此れが現実だ――宿題の答え合わせも、地獄でやってな。」



――パァン!!


――ババババババババババババババババババババババババババババババッバババァァァン!!!


そして、ダンテが手を叩くと如何に、突き刺さったゴーガンダンテスの魔力刃が炸裂し、憐れアグナスは爆発四散!!
帰天して、悪魔となったアグナスの身体は、砕け散ると同時に、各種オーブに姿を変え、跡形もなくこの世から消滅したのである……もう二度と、復活する事も無ない。


「派手な演目だったが、幕が下りれば、後に残るのは静寂のみか……」


――ガァァァァン!!


勝者であるダンテは、これまた芝居がかったセリフと同時に、天井に向かってアイボリーを一発!!――その銃声は、宛ら舞台の終わりを告げる、ブザーの様だった。








――――――








Side:ダンテ


さてと、あの顎をぶっ倒したら転送ポートが現れたんで、其れに乗って来たんだが……まさか、こんな場所が有ったとはな。
ミッドの地下にもともと存在してたもんなのか、其れとも地獄門を造った際に出来たモノなのか……何れにしても、此処が地獄だと言われても信じちまいそうな光景なの
は間違いねぇな。

ったく、ドクタースカリエッティは、中々に良い趣味をお持ちみたいだぜ――が、生憎と俺の趣味とは合いそうにないから、貰うもん貰って、さっさとトンズラこくが吉だな。



――ヒィィィィィィィィィィィン……



「スゲェ魔力に包まれてやがるな、閻魔刀とレイジングハートは……其れこそ、一般人が触れたら火傷じゃ済まなさそうだ。」

だが、生憎と俺にとっては大した事じゃないんでね……返して貰うぜ、閻魔刀とレイジグハート――六課最強コンビと名高い2人の、力の象徴って奴をな!!!



――ズボォォォォォオォ!!


――シュゥゥゥゥゥゥゥゥン




と、レイジングハートが巻き付いた閻魔刀を引き抜いたら、さっきまで溢れかえらんばかりだった、魔力と、魔界特有の瘴気が、一瞬で消え去りやがった……って事は、
地上の真の地獄門も停止したって事だよな?

てか、地獄門を起動させるための鍵が閻魔刀だってんなら、その鍵穴から閻魔刀を引き抜きゃ、真の地獄門も停止して然りって所か。


だがまぁ、取り敢えず必要なモンは取り返す事が出来たから、目的は果たした訳だ――後は、コイツを如何にかしてネロとなのは嬢ちゃんに届けてやるだけってな。



もう少しだけ待っててくれよ、坊主、なのは嬢ちゃん!――必ずお前さん達に、コイツ等を届けてやるからからよ!!













本当のお楽しみは、此れからだな。












 To Be Continued… 




まさかのシュテルに使い魔。
美姫 「猫に懐かれるからってねぇ」
予想外だったが、戦力的には更にアップだな。
美姫 「確かにね。ダンテの方もアグナスを打ち破ったし」
遂にレイジングハートと閻魔刀を取り戻したな。
美姫 「これで地獄門も停止ね」
だな。いよいよ、クライマックスか。
美姫 「次回がどうなるのか楽しみにしています」
次回も待っています。



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