Side:ネロ
俺もなのはも長期休暇を貰ってるから、ソイツを消化するまでは地球で過ごす心算だったんだが、そうなると当然翠屋の手伝いってのはやって然るべきだよなぁ?
『働かざる者、食うべからず』って言葉が有るように、暫くはなのはの家に厄介になるんだから、翠屋の手伝い位は当然の事だ――当然の事なんだけど……
「なのはのウェイトレス姿は可愛すぎるだろコノヤロー!!
ヴィヴィオと久遠も、小さなウェイトレスとして、完成された形だし……アンタ、ドンだけのセンスしてんだ桃子!!このなのはだったら、パリコレ制覇出来るぞ!?」
「パリコレ制覇?……私の娘なら、パリどころか世界制覇よネロ君?」
言われてみりゃそうだったな!!
まぁ、悪ふざけは此れ位にしておくとして、アンタのセンスはマジで凄いと思うぜ桃子?
なのはのウェイトレス服は、所謂ドイツの『ディアンドル』を模したもんで、セクシーさを演出しながらもなのはの可愛さを損なってねえし、ヴィヴィオと久遠は、ジャパ
ンの矢絣袴で、子供特有の可愛さを際立たせてるからな。(久遠は見た目は子供だけど、実年齢不詳だがな。)
んで、俺は俺で、黒のスラックスに、白のワイシャツに、その上から黒のベストを着て、首元には蝶ネクタイって言うホストかあるいはバーテンかってな衣装なんだ
が、此れは此れで受けてるみたいだから、問題はねぇな。
寧ろ問題点を上げるって言うなら――
「……注文しろ。」
「あ、はい……えっと、このケーキセットAを……」
「……了解した、暫し待つが良い。」
桃子のチョイスで、サムライスタイルで接客してるバージルだろうな!
てか、衣装だけならまだしも、帯に村正と脇差刺して接客すんじゃねぇよ!ぶっちゃけ何処の素浪人だよアンタ!!客が滅茶苦茶ビビってんじゃねぇかよオイ!!
こう言っちゃなんだが、バージルをウェイターにしたのは間違いだったんじゃねぇか桃子?
「そんな事は無いわよネロ君、バージルさんみたいな人にはコアなファンが付くモノなのよ♪」
「そうかい。」
ま、アンタ等が其れで良いなら、俺はこれ以上何も言わねぇけどよぉ?
けど、バージルが前に言ってた嘱託を辞めて喫茶店を開くってのは、案外冗談でもないのかも知れねぇな?接客の合間に士郎に、コーヒーの淹れ方習ってるしな。
何にしても、偶には平穏を満喫しても罰は当たらねぇだろうなきっと。
リリカルなのは×Devil May Cry 黒き騎士と白き魔導師 Mission117
『最強喫茶翠屋〜Avex Cafe〜』
Side:バージル
ふむ、客商売と言うのは初めての経験だが、やってみると中々如何して面白いモノだな?
当然の事だが、店内の様子は常に変化するから、其れに目を光らせておかねばならんし、客からオーダーの要請が有った場合も迅速に対応する事が大切だろう。
特に、昼時の様に忙しい時は尚更な。
おかげでこの数日で喫茶店のノウハウは大体覚える事が出来た。士郎からコーヒーの淹れ方も教えて貰ったからな――コーヒーも、中々に奥が深いモノがある。
「おいバージル、4番テーブル開いたから、片付けて次の客を通せるようにしてくれ!
なのは、此のランチセットBのアイスティー付は何番テーブルだ?」
「え〜っと、其れは2番テーブル!あ、お会計いま行きまーす!!」
そして、なのはとネロの働きっぷりは実に見事な物であると言ってよかろう。
ネロは前に一度手伝った事があると言っていたが、おそらくなのはは幼少の頃から手が空いた時には店を手伝っていたのだろう、次にすべき事を言われずとも理
解しているようだな……なのはの使い魔の久遠もだが。
ふむ、俺が店を開いたその時は、管理局の仕事が非番の時に手伝って貰うとするか。
「スケアクロウの中身を機械に変えた人形要る?」
「要らん。と言うか、何を作っているのだ久遠よ?」
「悪魔人形……可愛いよ?」
「不気味だ。そんなモノが店内をうろついていたら客が逃げる。」
「因みに、気になるお値段は、1体100円。」
「幾ら雑魚中の雑魚、レッドオーブとグリーンオーブの製造機であるとは言え安すぎる、せめて500円にしてやれ。」
「く〜ちゃん、バージルさん、コントやってないで働いてください!
ほら、4番テーブル片付けたらお客さんを案内して、く〜ちゃんは8番テーブルからオーダー取って来て!!お母さん、ケースの中のシュークリーム売り切れた!」
うむ、遊んでいる場合では無かったな。
如何に無償の手伝いであるとは言え、やる以上はきちんと仕事をせねばならないからな――む?
「あ!」
子供がフォークを落として……させん!!
――シュン!パシィ!!
ふぅ、落ちる前にキャッチ出来て良かったモノだ……手が滑ると言う事は、人間誰しもある事だから仕方ないが、次からは注意するが良い。――まぁ、此処の甘味
に夢中になってしまって、注意力が散漫になると言うのは、仕方のない事かもしれんがな。
「ありがとう、侍のお兄ちゃん♪」
「気にするな、サムライとは人の為に義を尽くすのが本分なのでな。」
……うむ、俺も存外ノリノリの様だな?こんな事を自然と口にしてしまうとは……此れが場の雰囲気、或は翠屋という店だからこその不思議な空間の力なのか…?
まぁ、悪い気はせんがな。さて、昼間のピークもそろそろ一段落するだろうから、この辺りで一息入れる事が出来るかも知れん――
「おぉ、久しぶりだな銀髪の兄ちゃん!大体1年ぶりって所か?相変わらず元気そうじゃねぇの?」
「……誰だっけ、お前?」
「うおぉぉぉぉぉぉい!盛大にぶん投げた相手忘れんじゃねえや!!
俺だよ俺!1年前にこの店に来て、いちゃもん付けたらテメェにぶん投げられた不良客だ!!思い出したか!?てか、結構シャレにならねぇダメージだったぜ!」
「……そう言えば居たなそんな奴が。完全に忘れてたぜ。
1年ぶりに会うとは思わなかったが、今度は一体何の用だ?悪いが、見ての通り俺は今暇じゃないから、テメェの相手をしてる暇はねぇ――其れ位分かるだろ。」
と思って居たら、見るからにガラの悪い客がやって来たな?
何やらネロと因縁のある相手の様だが、事と次第によっては動かねばな――翠屋のスタッフとして、そしてネロの父親としてな。荒事にならなければいいが………
「いやぁ、喧嘩には自信あったんだけど、あぁも簡単にやられちまうとは思ってなくてよぉ俺も。
んでだ、もう一度面拝みてぇと思って来てみたら、『休暇が終わって仕事してる場所に帰った。次いつ帰ってくるかは分からない』って言われちまって、そんでもっ
てそれから毎日通うように成っちまって、今じゃすっかり常連だぜ俺も。」
「だから何なんだよ?」
「まぁ、何が言いてぇのかって言うと……俺を弟子にしてくれ!!」
「……What's you say?(何言ってんだお前?)」
と思っていたら、何やら妙な話になって来たな?
……それ以前に仕事をしながら、あの客と会話を続けているネロが普通に凄いと思うのだが…其処は、指摘したりしてはいけない部分なのだろう、略間違いなく。
しかし、嘗て自分を叩きのめした相手に弟子入りとは、ある意味で王道だが、
「だから、俺を弟子にしてくれって言ってんだよアンタの!!」
「そりゃ無理だ。俺は教えるのには向いてねぇし、休暇終わったら本来の仕事場に戻るし、向こうに戻ったら忙しくて指導とかしてる暇全くねぇから。
てか、俺に弟子入りするよりも、この店のマスターである士郎に弟子入りした方が良いぜ?――何てったって、俺と互角以上に戦ったスゲェ人だからな。」
「父さんに弟子入りすると割と大変だぞネロ?
俺と美由希も子供の頃から鍛えられてるけど、弟子の成長が見て取れると、途端に父さんはテンションが上がって指導が厳しくなるんだ。
……美由希は女子と言う事で多少は手加減されてたんだろうけど、俺にはほとんど手加減なしだったからなぁ?正直、何度か三途の川を幻視した事が有る。」
「いやぁ、恭ちゃん、私も何度か川の向こうで手を振ってるお婆ちゃんに会った事が有るからね?」
「だとよ……如何する?
フィジカル面だけじゃなく、メンタル面も大幅に鍛えられそうだが……耐えられなかったら廃人コースだな此れは。肉体的にも精神的にも冗談抜きの方向で。」
「や、止めとこうかなーーーー!
うん、ヤッパリ俺は翠屋の常連名乗って、健全な(?)不良やってるのが丁度良いぜ!平和って素敵だなーーーーーーー!!!」
断られた上に、更に過酷な修業を課す師を勧められたのでは堪ったモノではない――其処は退いて正解だな。
と言うか士郎よ、貴様自分の子供達に一体どんな鍛錬をしていたのだ?鍛錬で涅槃に渡りかける等、普通は有り得んぞ?――実の弟を、何の躊躇いもなく刺し貫
く俺が言っても説得力は皆無かも知れんがな。
まぁ、何か妙な事になってしまったが、荒事にならずに良かったと言う所か。――厄介事は、悪魔共の出現だけで充分なのでな。
「バージルさん、5番テーブルのオーダー上がったからお願いね?」
「うむ、了解した。」
忙しいが、管理局の仕事とは違い、此の忙しさは『平和の中での忙しさ』故に、実に新鮮な物が有る。
平和な世界でなければ起こり得ない忙しさ――ある意味での平和の象徴とも言える風景……そして、スパーダとダンテが『裏切者』を称されても護り通そうとした物
が此れだと言う事か。
ならばこの世界では、俺がネロ達と共に其れを護ろう。
一度は道を誤ってしまったが、幸いにもこうしてやり直す機会を得た訳だからな……今度は間違えん。それが、俺の犯した罪の贖罪であるとも言えるだろうからな。
――――――
Side:なのは
ふわ〜〜〜、久しぶりに翠屋を手伝ったけど、相変わらずの凄い人気だね?
ピーク時の混雑なんて半端じゃなくて、この混雑を捌くのと比べたら、ガジェットや下級悪魔100体を相手にする方が全然楽だって、あらためて思い知ったよ〜〜。
「まぁ、直射砲一発でブッ飛ばせる訳じゃねぇからな、喫茶店の客ってモンは――てか、そんな事したら大問題だし。」
「撃って倒せる相手なら怖い物は無いよ?」
「俺も、殴って倒せる相手なら怖い物はねぇぜ?」
お互い様だね♪
だけど、この前までスカリエッティ一味と、生きるか死ぬかの戦いをしてた事を考えると、こう言う『平和な疲労』って言うのは、随分と久しぶりな気がするなぁ〜〜。
「パパもママもお疲れ様〜〜♪」
で、今は仕事が終わって、軽くシャワーを浴びて、此れから晩御飯て言う所。
おいでヴィヴィオ、髪乾かしてあげるから。
「あらあら、なのはもすっかり『お母さん』が板についてるみたいね?」
「なはは……ミッドでも、基本はこんな感じだから、自然と身に付いて来たのかも。
でも、私よりもネロの方がもっと上手なんだよお母さん?泣きだしちゃったヴィヴィオを即時泣き止ませる事が出来るし、絵本の読み聞かせは私よりも巧いから。」
「フォルトゥナでは、孤児院の手伝いをしてたから、ガキの扱いにゃ慣れてんだよ、其れだけの事だ。」
「その割には『11匹とネ○とア○ウドリ』の『11わぁ!!』が随分と年季が入ってた感じがするんだけど?」
「フォルトゥナでも、リクエストが多かったからなその絵本は……何度も読み聞かせしてりゃ、如何すりゃ子供が喜ぶかどうか位は自然に分かってくるもんだろ?」
其れは確かにそうだね。
でも『ぶ○ぶ○くんのおかいもの』の八百屋さんのお姉さんの早口をアレだけテンポよくやるのはやっぱり難しいの…そして、何処を探しても夏みかんにしょっぱい味
は存在しないと思うの。
「甘い、酸っぱい、苦いは兎も角として、しょっぱいは無いな。」
「無いよね。」
まぁ、其れは如何でも良い事として、今日の晩御飯は何かなお母さん?
「冬も深いから、今日は鍋よ♪
更に今日は、皆大好きすき焼き鍋で〜〜す♪」
「すき焼き?すき焼きソングのすき焼きか……楽しみだ。」
「「すき焼きソング?」」
「日本題だと『上を向いて歩こう』だね。」
「「なぜそれがすき焼きになる!?」の!?」
「海外の人に分かり易いように、日本のすき焼きを当てたらしいよ?――尤も、当時の日本人にしてみれば、上を向いて歩こうを英訳するのは難易度が高かったか
ら簡単にしたのかも知れないけどね。」
世界的に有名な歌のまさかの真実だね此れは。
だけど、お母さんのすき焼きは子供の頃からの大好きメニューだったし、鍋物を皆で囲むって言うのは、とっても『家族』って言う感じがするからベストチョイスだよ♪
加えて、お母さんのすき焼きは割り下を使わない関西風だから『本当のすき焼き』を味わう事が出来るからね?楽しみにしてていいよネロ、バージルさん。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
と言う訳で、晩御飯の時間なんだけど、如何かなネロ、バージルさん、お母さんのすき焼きは?
「鍋で焼いた具材に、直接砂糖と醤油をかけるのは下品とも思ったが、逆に其れが肉の旨みを引き出しているようだな?
割り下を使わない事で、肉の旨みが汁に溶け出す事を防いだ上での調理法だったと言う訳か……実に見事なモノだ。」
「肉も美味いが、俺はこの豆腐が気に入ったぜ?
焼かれた香ばしさに加えて、醤油との風味と砂糖の甘みが絶妙だぜ!コイツは、比喩じゃなくてドレだけでも行けるってモンだ!フォルトゥナのガキ共に食わして
やりたいモンだぜ。」
「其れは良かったの♪」
お母さんのすき焼きは、シュークリームと同じ位に最強だからね。……私もこの味をマスターできるようにならないとだよ。
「精進しなさいなのは、私の味をマスターするのは簡単じゃないわよ?」
「だけど出来ない訳じゃないから、絶対にマスターして見せるよお母さん!
何よりも、私とお姉ちゃんがマスターできなかったら、世界最高のシュークリームを後世に伝える事は出来ないからね…絶対にお母さんの味をマスターするの!」
「その意気や良し!
それと、この場だから言っちゃうけど、なのはとネロ君の結婚式は、来週の25日に――クリスマスに設定したから♪」
「ふむ……聖夜に結婚式とは、中々良い演出だな桃子よ?」
って、何時の間に式場の予約を取ったのお母さん!?
クリスマスの結婚式って言う事に関しては異論はないけど、逆に其処は予約が『ジューンブライド』に次いで多い筈なのに、どうやって予約を取ったのお母さん!?
「其れは……色々とね?」
「「分かりました。」」
………ネロも、私と同じ反応を示してくれたから言える事だけど、世の中には知らない方が良い権力って言う物が有るんだね――はやてちゃんとレティさんも同類
何だろうねきっと。
でも、その結果が悪い事になった事は無いから、きっと今回も大丈夫だろうね。
「あーーーーーー!!バージル、テメェ肉取りやがったな!?
その肉は特別デカいから、ヴィヴィオの為に取っておいたモンだったのに……何してくれてんだアンタはよぉ!!!」
「そうだったのか?……其れは済まぬことをした。
まだ口は付けていないから、此れはお前にやろうヴィヴィオ、元々お前の物だったようだからな。」
「ありがとう、バージルお爺ちゃん♪」
ネロとヴィヴィオとバージルさんも、良い親子&お爺ちゃんと孫な関係を築いているみたいだからね♪――だからきっと、此れから先も大丈夫だって言いきれるよ。
「てか、肉ばっかり取るなバージル!ネギ食えネギ!後は豆腐!!肉に負けず劣らず美味いぞ!?」
「そんなに美味いのならば貴様にくれてやる。」
「其れらしい事言ってんじゃねぇ……バスターかますぞこら!!」
「なはは……喧嘩はダメだよ?」
「「其れは了解しているから安心しろ。」」
なら、大丈夫だね♪
そして、そんなこんなで、あっと言う間に1週間が過ぎ……私とネロの結婚式の当日がやって来た。――きっと此処からが、新たな道のスタート地点なんだろうね。
To Be Continued…
|