Side:ネロ
……此処は何処だ?
何もない真っ白な空間――地面も天井も無さそうな不思議な場所……如何考えても『夢』だよな?
「ある意味でそうと言えるだろうが――此処はお前の精神世界と言った方が正しいかもしれんな。」
!!アンタはさっきの…!!
あ〜〜……さっきはありがとうな?アンタの『道案内』のおかげで、なのは達を見つける事が出来たからな?先ずは礼を言っておくよ。
だが、其れは其れとして、アンタは一体誰なんだ?
顔だけならダンテと瓜二つだが、ダンテじゃない事は俺でも分かる――そして、何でアンタと俺は意思の疎通が出来るんだ?
「俺が誰かと問われれば、お前がデビルトリガーを発動した際に現れる、青白い光の魔人の人格と言うのが一番適切だろう。
そしてお前と意思の疎通が出来るのは、単純にお前が強くなり、俺の意思を掴み取る事が出来るようになっただけの事だ、常時と言う訳では無いが。」
常時じゃないって事は、さっきみたいに切羽詰った時か、今みたいに夢の中じゃないとダメって事……なんだろうな多分。
――だとしても、今の言い方からするに、アンタはずっと俺の中に居たのか?
「居た。其れこそお前が生まれた時から、俺はお前の中に居た――ただ存在していただけだがな。
だが、お前がデビルトリガーを覚醒さえ、閻魔刀を手にした事によって俺は光の魔人として外に出て来る事が出来るようになった。
――が、俺の意志は断片的にしかお前に伝える事が出来なかった……『もっと力を』と言う、最も強い意志のみしかな。」
アレはアンタの意思だったのか!?
いや、俺自身も護る為の力は欲してたけど、あの時の異常な『力への執着』は、アンタの影響もあったって言うのかよ?
「そうだ……俺も過去の後悔から『護る為の力』を欲したが、その結果として力に捕らわれ、力に固執し、力を求めた理由を忘れてしまった。
その果てに、俺はダンテに敗れて魔界に堕ちた……だからこそ、お前には俺と同じ道を歩んでほしくはなかった…力の意味を分かって欲しかったのだ。
だが、今のお前を見る限りは大丈夫そうだ――一度は護りたいものを喪ったが、しかしそこから立ち直り、本当に大事なモノを見つけたようだからな。
お前の大切なモノ――あの亜麻色の髪の小娘を何があっても護り通せ……お前なら出来る筈だ――頑張れよ。」
ちょ、待てよオイ!言いたい事だけ言って消えるとかは無しだろ!!せめて名前くらい教えてくれよ!
「そうだな……名前くらいは教えても罰は当たらんだろう――バージル、其れが俺の名だ。」
バージル……OK、覚えとくぜ。
機会があったら、また夢の中で会おうぜ――そん時を楽しみにしてるからな?
リリカルなのは×Devil May Cry 黒き騎士と白き魔導師 Mission26
『海の鳴く街〜Uminari City〜』
……まさか、夢の中で会うとは思わなかったぜ。
バージル……多分アイツが、前にダンテがポツッと漏らした『兄貴』なんだろうな――つ〜事はアイツが俺の親父って事か?
まかり間違ってもダンテが俺の親父って事だけはないだろうから、消去法で行くならバージルしか残らねぇし。その辺は、今度夢の中で聞いてみるか。
っと、時間は――7:00か。
昨日と比べれば1時間半近く遅いが、昨日起きた彼是を考えればある意味で当然かもな……俺も人並みには疲れるって事なんだろうけど。
とは言っても少しばかり微妙な時間に起きちまったな?
今から道場の方に行っても、美由希の鍛錬は終わってるだろうし、だからって早朝ランニングって言う気分でもないかし、さて如何したもんか?
「……着替えて、顔洗ってから、ブレックファーストの準備を手伝うのが無難か?」
世話になってる訳だから、其れ位はしたって罰は当たらねぇだろうし。
……まぁ、俺が手伝うって言ったところで、実際に出来る事はそんなにないだろうけど、タダ飯喰らいってのも気が引けるからな。
「あふ……ん……あ、おはよーネロ君……」
「Good morning Nanoha.(おはようなのは。)――眠そうだな?」
「んん〜〜〜……そりゃ、昨日アレだけの事があったから流石に疲れるよ?
何時もは追いかける側なのに、まさか自分が誘拐されるとは思ってなかったし、どうやら眠り薬が完全に抜けきってなかったみたいで……」
「そう言えば、昨日はやたらと寝るのも早かったな。」
「だってだるかったし……ネロ君は平気なの?」
いや、俺も疲れてはいたらしいぞ?昨日よりも起きるのが1時間半ほど遅かったからな。
まぁ、水族館でアンだけはしゃいで、追跡劇繰り広げて、15人の馬鹿相手に大立ち回りすれば流石に――尤も一番堪えたのは、警察での彼是だがな?
「あ〜〜、アレは私も参ったかな?
一応私とすずかちゃんは被害者で、ネロ君とアリサちゃんは犯人逮捕に貢献したって事だから仕方ないけど、ネロ君は特に大変だったよね?」
「誘拐犯どもが『その小僧は巨大な刀剣を使っていた!銃刀法に抵触する筈だ!!』とか抜かしてくれたおかげでな……」
そのせいで身体検査受ける羽目になっちまったからな?
流石にこんな所に入る筈はないと思ったのか、右腕だけは調べられなかったが、アレが一番精神的にキツかったのは間違いないぜ。
「まぁ、その精神的疲労は今日の海鳴観光仕切り直しで癒して貰おうかな?」
「実を言うと、そいつが楽しみで中々寝付けなかったってのも理由なんだけどさ……」
「……遠足前日の小学生?」
「全力で否定したい所だが、滅茶苦茶楽しみにしてたのは事実だから、否定も出来ねぇな……」
と、そんな事よりブレックファーストの手伝いをした方が良いんじゃないのか?
昨日の朝の事を考えるとソロソロだし、皿並べるくらいはしても問題はないだろ?
「ないけど……別にそんなに気を使わなくても良いのに。」
「タダ飯喰いってのはあんまり気分が良くないんだよ――寧ろ人の家に居座って当たり前のようにタダ飯喰らってた奴には殺意すら覚えたからな……」
「聞くまでもないと思うけど、其れって絶対にダンテさんの事だよね?」
「It's so.(その通りだ。)」
腕っ節強くて、その上容姿だって良いってのに、金銭管理とか天運の無さとかその他諸々のマイナス面でプラス面が全部帳消しなんだよなダンテって。
一時は借金もなくなった事も有ったらしいが、だったら何でまた借金塗れになってんだよ………あのオッサンには色んな意味で疑問持つだけ無駄だな。
まぁ、良いか。
あのオッサンは、例え一生涯掛かっても返せない借金抱えたとしてもレディ以外の奴は、ビビって取り立てなんぞできないだろうからな。
時になのは、今日は何処を案内してくれるんだ?
「其れは後でのお楽しみかな?
だけど今日のこの天気なら、とっておきの場所に案内できるから期待してくれていいよ♪」
この天気って事は、今日の快晴が影響するような場所って事か?……Ok This may be fun.(良いね、楽しめそうだ。)期待してるぜ?
「うん、期待してくれていいよ♪」
さて、何処に連れて行ってくれるのか、マジで楽しみで仕方ないな。
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で、ブレックファーストを済ませて、少し休んでから海鳴観光の仕切り直しに繰り出したわけだ。
因みに、手伝いを申し入れたら快諾してくれたんだが、俺が料理を出来るのは意外だったみたいだな……まぁ、出来るようには見えないよなヤッパリ。
ま、結果的には良かったみたいだから問題ないけどな。
其れは兎も角、俺達は一体何処に向かってるんだなのは?
バスを降りて随分歩いたと思うんだが、この丘の上に何かあるのか?
「あるよ、朝言った『とっておき』がね♪」
「行き成りそこなのか!!そりゃあテンション上がるな?
この小高い丘の上にどんな『とっておき』があるのか、想像するだけでも楽しくなってくるってもんだ。」
頂上まではもう少し――よし、到着だ。
って、何もないぞ?如何して此処が『とっておき』なんだよ?
「この丘の上そのものには何もないんだけど、あっちを見てみて?」
「アン?………アレは!!」
遠くに見えるアレはまさか『フジヤマ』なのか!?話には聞いてたが見るのは初めてだぜ……噂通りのビューティフルマウンテンだな?
ジャパンの象徴ってのも納得できるってもんだ…マジで綺麗だぜ!
「此処は海鳴富士見台って呼ばれる場所で、江戸時代とかは此処から今日みたいに富士山を見る事が出来たんだって。
だけど今は、良く晴れた日の午前中の9:30までしか見る事が出来ないんだ――それもハッキリ見えるのは今日みたいな快晴の日だけなんだよ。
運の要素が絡むから、ネロ君に見せてあげる事が出来るか不安だったんだけど、巧い具合に快晴になってくれて良かった♪」
確かにお天道様に感謝だな。
何時も見る事が出来る訳じゃない絶景……確りとハートに焼き付かせて貰ったぜ。――そして此処に連れて来てくれたなのはにも最大級の感謝だな。
――――――
Side:なのは
海鳴富士見台を案内した後は、其れこそ思いつくところを手当たり次第に回った。
ユーノ君と初めて出会った公園に、翠屋FCの練習場になってる河原に、海鳴の名物とも言える人情派の人が揃ってる商店街とかね。
決して観光に向いた場所じゃないけど、私の中では海鳴を語る場合は外せない事だからね。
其れでもネロ君は心底楽しんでみたいだけど……商店街で会う人会う人、全員が『なのはちゃんが彼氏を連れて帰省した』って言う反応は如何なの!?
好きか嫌いかで問われれば、間違いなくネロ君の事は好きだけど、其れはあくまでもお友達として何だけどなぁ……
『……思った以上に鈍感ですねMaster.』
むぅ、レイジングハートも何かあれなの。
まぁ、あんまり気にしても仕方ないか……そろそろお昼にしようか、ネロ君?
「そうだな、結構歩き回って腹も減ったし、そろそろランチには良い時間だろ?」
「ジャスト12:00だからね。」
「昨日のランチは馬鹿共のせいで流れちまったからな……今日はどんなメニューなんだ?」
今日はね、おにぎりとだし巻き卵と和風の鶏のから揚げ2種と金平牛蒡だね。
おにぎりの具は梅干しと塩鮭と明太子の3種類!――味の方は保証できると思うんだけど……如何かな?
「Very delicious.(凄く美味いな。)どの料理も凄く美味い、こう言うのを『箸が止まらなくなる』って言うんだろうな。」
「なら良かったの、頑張った甲斐があったよ♪」
「桃子の料理も美味かったけど、なのはの料理は若しかしたらそれ以上じゃないのか?
特にこのカラアゲは絶品だな?フライドチキンなんかよりも遥かに美味い!!――此れなら俺は無限に食す事が出来るかもしれない。」
「無限て……其れは流石に無理じゃないかな?」
「そう思う程美味いって事さ。
そう言えば、2種って言ったが、味付けは塩と醤油……だよな?」
其れだけじゃないよ?
色の濃い方は味醂と醤油とネギと生姜のタレに漬け込んだ物で、色の薄い方はお酒で伸ばした塩麹に柚子胡椒を混ぜたタレに漬け込んだ物なの。
「結構凝ってるんだな?――いや、和食そのものが手の込んだ凝った物ばかりか。
少なくとも、イギリスやアメリカではこんなに手の込んだものは作らないからな?チキンを揚げるって言っても、こんな風に漬け込んだりはしないし。
其れにこの出汁巻き卵みたいな卵料理だってない。大概はオムレツかスクランブルエッグ、或はフライドエッグだからな。」
「まぁ、全部お母さんから教わった事なんだけどね。」
「其れを実践できるってのは、なのはの才能があったからだろ?
幾ら教わっても、教わる側の能力が低かったら教えられた事の半分も身にならないだろうからな――時に、なんだか物凄く視線を感じるんだが……?」
ネロ君も?――実を言うと私も視線を感じてるんだよねぇ?
何て言うかこう、突き刺さるような視線を……
『Masterには女性から、Mr.ネロには男性から嫉妬と羨望の視線が向けられていますね、えぇ間違いなく。』
「「は?」」
『無自覚ですか?
MasterもMr.ネロも誰もが認める美男美女なのは間違いありません……そんな2人が仲睦まじく昼食を共にしているんですよ?
彼氏彼女の居ない女性男性にとっては羨望と嫉妬の的でしょうに……言うなれば『リア充爆発しろ』と言うところですよ。少しは自覚してください。』
そうは言われても、私とネロ君は付き合ってる訳じゃないんだけどなぁ?
『ですから他人からはそう見えるんですよ。
ハッキリ言って、私から見ても今の御二人はデートの真っ最中の美男美女のカップルにしか見えません。』
そうなのかなぁ?
確かにネロ君はカッコいいと思うけど、だからって此れがデートしてるように見えるのかな?仲の良いお友達なら此れ位は普通だと思うんだけど。
「嫉妬と羨望って、見て嫉妬するくらいなら羨ましくても見るなよ……ったく、意外と暇人が多いのか?つーか人の事ジロジロ見るなってんだ。
尤も言った所で如何にもならないだろうけどな――其れは兎も角、ご馳走様。凄く美味かったぜ。」
「お粗末様♪……って、未だから揚げが1個残ってるよ?」
「え?……俺の方からは死角になるところに残ってたのか?」
みたいだね?
私は、もうお腹一杯だから、ネロ君食べる?
「なら頂こうかな?」
「はい、どうぞ♪」
「んな、あの銀髪野郎!!あんな美人の彼女から食べさせて貰えるなんて羨ましい事この上ねぇ!!」
「しかも、女の方は自分の箸で食べさせたわよ!?ナチュラルに間接キスだなんて〜〜〜〜!!!」
「神は死んだ!!カップルなんて滅びちまえ〜〜〜〜〜!!」
なんだか周囲が騒がしいね?まぁ良いか、多分関係ないだろうし。
「はいネロ君、食後のお茶♪」
「Thank you.……うん、ジャパンのお茶も美味いな。紅茶とは違った味と香りが最高だぜ。」
「ネロ君は和食が好きだから、お茶を緑茶にしたのは正解だったね?って言うか、ネロ君が緑茶の味の分かる人で良かったよ……」
世の中には、湯呑一杯の緑茶に角砂糖を8個入れた挙げ句にミルクまで加えて飲む人が居るからねぇ……渋いのが嫌なら飲まなきゃいいのに。
しかも、あの劇物を物凄く美味しそうに飲むんだから味覚レベルを疑いたい所だけど、普通に料理は出来るんだから謎なんだよねぇ……
「此れに砂糖とミルクって、流石に有り得ねぇ……其処まで言うと其れはもう只の砂糖水のレベルだろ?想像するだけで胸焼けして来たぜ……
取り敢えず、人の好みは千差万別って事で納得するとして、午後は何処に連れて行ってくれるんだ?」
ん?えっと、先ずはあそこかな?岬の方に見える『海鳴マリンタワー』。
最近出来たばかりなんだけど、海と海鳴の街が一望できる展望台は、海鳴の新たな観光名所になってるみたいだから先ずは其処にね。
其れでその後は、本日の『とっておき』第2弾!
海鳴が海鳴って呼ばれる所以になったモノを見せて……ん?この場合は聞かせての方が正しいかな?……兎に角、楽しみにしてくれてていいよ♪
「そいつはまた楽しみだな?特に2つ目が。
ウミナリの名前の由来となった何か……凄く楽しみだぜ。じゃあ、行くか!」
「そうだね、行こうか♪」
「グギギギギギ……ナチュラルに手を繋ぎやがって!!イケメンなんて嫌いだ、滅びればいいんだ!!」
「きぃ〜〜〜!!私もあんなイケメンに手を繋いでもらいたい!!チクショ〜、美人なんて絶滅すればいいのよ〜〜〜〜!!!」
ん〜〜〜、本当になんか周囲が騒がしいなぁ?
ま、良いか。多分、私達には関係ないだろうからね。
――――――
Sied:ネロ
午後の部の最初に行った『ウミナリマリンタワー』って場所の展望台は、確かに凄い眺めだったな。
海も、ウミナリの街並みも一望できたし、何よりも展望台から下を見たら人がまるで豆粒だったってのにはマジで驚いたぜ、流石は地上300mだ。
……あの高さから、正確に自分の家の位置が把握できてるなのはの『空間認識能力』には改めて脱帽したけどな。
で、只今現在進行形で『とっておき第2弾』とやらに連れて来て貰ってるんだが、此処はジャパニーズテンプルか?
「海鳴神社。海鳴では最もポピュラーな神社で、お正月には初詣の人達で結構賑わう場所なんだ。」
「そうなのか?で、此処が『とっておき第2弾』?」
見たところ、大きな建物がある以外は特に目立ったものは無さそうだが、『とっておき』って言うんだから何かあるんだよな?
午前中の『フジミダイ』だって、何もないと思ったらジャパンの象徴であるフジヤマを拝めた訳だから、此処にも何か有ると思って間違いないだろう。
「……そろそろかな?」
「なのは?」
「始まるよ……海鳴がそう呼ばれるようになった所以となる出来事が……」
一体何が始まるんだ?……ん?
――ヒュオォォォォォォォォォォォォォォ……
!!
此れは……海が鳴いてる!?いや、そんな筈は……だけどこの音は、海の方から聞こえて来る――コイツは一体……?
「此れが『海鳴』の名前の由来だって言われてるんだ。
1年の内、季節が夏から秋に変わる6日間の、しかも夕方のこの時間に5分間だけ、海鳴市のみで海の鳴く音が聞こえるの。
多分、風が吹き抜ける音なんだろうけど、如何して1年の内6日間だけ、しかも海鳴の街だけで聞けるのかは分かってないんだけどね。
だけど、この不思議な海の鳴く現象が、この地が『海鳴』と呼ばれるようになった由縁なんだって――凄く神秘的だよね、こう言うのって。」
「そうだな……だけど、この自然のメロディは何とも心地いい――なのはが『とっておき』って言うのも納得だぜ。
しかも、この海の鳴く音がこの街の名前になったなんて、何とも分かり易くてロマンチックじゃないか?流石ジャパニーズは感性が豊かだな。」
――ヒュルルルルルルルルルル……
ん?でも昨日は聞こえなかったような気がするんだが…
あ、昨日のこの時間は誘拐犯相手に大立ち回りしてたんだな。アンだけ派手にドンパチやってたら、そりゃ聞こえる訳ねぇか。
「うん、昨日は誘拐彼是でお流れになっちゃったから、今日来れて良かったよ。
其れに、今日は海が鳴く6日間の最終日だから、今日を逃したら次は1年後だからね?何としても此処だけは絶対に案内したかったんだ。」
「その心遣いに感謝するよ。」
こう言うのを『風情がある』って言うんだろうな。
観光の最後に最高の体験をさせて貰ったぜ、Thank you Nanoha.(ありがとうな、なのは。)
「なはは、気に入ってくれたみたいで良かったの。
丁度良いタイミングでの休暇だったし、折角海鳴を案内するんだからこの場所だけは絶対に外せないからね♪」
「外せないか……何となくそう言うのも分かる気がするぜ。―――で?」
「ほへ?」
いや、今日の観光は時間的に此処までだろ?で、明日は何処を案内してくれるのかな、と。
「へ?観光は此れで終わりだよ?目ぼしい所は全部回っちゃったもん。」
「何だと!?いや、休暇は後4日もあるんだぞ!?
後4日は、適当に暇潰して過ごせってのか?……其れじゃあミッドに残ったのと大差ないと思うんだけどな?」
「あ、其れなら大丈夫。高町家に居るだけで退屈だけはしないと思うから。」
と、言うと?
「昨日は、月村の家に帰ったお兄ちゃんも、多分今日は家の方に来るだろうから、そうなればネロ君に手合わせを申し込んでくるのは確実だからね?
お兄ちゃんとしては、15人の誘拐犯相手に無傷で完勝したネロ君の実力は見ておきたいと思うし。」
「そいつは何とも……なのはの兄貴って事はやっぱり強いのか?」
「魔法を使えない人の中では、間違いなく最強だねお兄ちゃんは。……現役時代のお父さんはそのお兄ちゃん以上だったらしいけど。
で、ネロ君はお母さんの前でも『タダ飯喰いは良い気分じゃない』って言ったでしょ?だから、多分翠屋の方のお手伝いを頼まれると思うんだよね。」
恭也も割と人間辞めてる部類って事か。
まぁ、恭也と手合わせするのは別に構わないが、翠屋の手伝いは如何だろうな?
まさか調理の方をやらせる訳じゃないだろうとは思うんだが、そうなるとウェイターって事だろ?俺に接客なんぞ出来るかねぇ……?
「其れは大丈夫。こう言ったらなんだけど、翠屋って可也フリーダムな店で、お姉ちゃんを含めお手伝いしてる人が超個性的な人達ばかりだから。
あの集団の中に入ったら私やネロ君なんてむしろ普通なレベルだよ?……其れに、多分お母さんが私とネロ君用の衣装を用意してるだろうし……」
「ちょっと待て、その濃いであろう面子も気になるが桃子は俺となのはに一体何を着せる心算だ?」
「ネロ君は執事服一択だろうね。
私の場合は、普通に考えればメイド服か矢絣袴か、大穴でセーラー服とか……思考が最大限ぶっ飛んだ場合にはバリアジャケットでお仕事かな?」
「……因みに拒否権は?」
「無いよ?高町桃子には逆らえない!!」
なんだか良く分からないが、凄まじい説得力だなそいつは!?
確かに桃子にはどうやっても逆らえる気がしねぇ……戦闘力なら絶対に俺の方が上だが、こう……本能的に逆らう事が出来ない感じがするんだよな。
「お母さんは高町家のヒエラルキーのトップに君臨してるからね。」
スゲェな桃子は!?……若しかしたら『アノ』ダンテですら桃子には敵わないのかもしれないな、割と本気で。
まぁ、だが其れなら確かに退屈だけはしなくて済みそうだ――俺がドンだけ役に立つかは分からないが、ウェイターをやれってんならやってやるさ。
「まだ決定じゃないけど、多分略確実だから宜しくねネロ君?」
「All right Boss.(任せときな隊長。)バッチリ務めて見せるぜ。
其れは其れとして、改めて今日はありがとうななのは。最高の1日を過ごさせて貰ったよ――楽しかったぜ。」
「そう言ってもらえると私も嬉しいかな?案内した甲斐があったの♪」
あぁ、マジで楽しめたよ。特にこの場所では、神秘的な体験も出来たしな。
フォルトゥナに居た頃からは想像も出来ないくらいの穏やかな1日だった――コイツは幾らなのはに感謝してもし過ぎるって事はないだろうな多分。
ともあれ休暇は後4日。
なのはの言う事は多分本当の事だろうから退屈だけはしないで済みそうだが、果たしてどんな事が待っているんだろうな?
期待半分、不安半分って所だが、だからこそワクワクして来る……若しかしたら、残りの4日間は人生の思い出に残る4日間になるかもしれないぜ。
何よりも折角の休暇なんだから、楽しんで過ごさなきゃ損だからな?残り4日間も、目一杯楽しませてもらう事にするよ。
To Be Continued…
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