Side:なのは
予想通りと言うか何と言うか、高町の家に戻って来てたお兄ちゃんは『君の腕前を見せて欲しい』って言って、ネロ君に一戦申し入れて来た。
まぁ、時間が時間だっただけに、模擬戦は翌朝になった。
で、今朝の道場では、その約束通りにネロ君とお兄ちゃんの模擬戦(?)が目の前で行われてる真最中なんだけど――此れは本当に模擬戦なのかな?
「模擬戦…だと思うよ?だって恭ちゃんは7割程度の力しか出してないし。」
「其れを言ったらネロ君だって半分程度の力しか出してないんだけどね……」
お互いに本気を出してないなら、模擬戦と言えなくもないのかな?
と、兎に角、目の前で繰り広げられてる2人の剣士の戦いはハンパじゃない――一瞬たりとも目を離す事が出来ない神速の剣劇が繰り広げられてる!
「オォォォォォォォォオオォォォ!!!」
「イィヤァァァ!Be gone!!(失せろ!!)」
お兄ちゃんの切り上げと、ネロ君の横薙ぎ――ストリークがかち合ったけど、あの姿勢ならネロ君の方が有利だね?
「Crazy!!!(ぶっ飛んでいこうぜ!!!)」
「!!!」
間髪入れずの『ハイローラー』で打ち上げて、更に連続攻撃……トドメは!
「覇ぁぁぁぁぁっぁ!Catch this!!(喰らいやがれ)!!」
「のわぁぁぁぁぁぁあぁ!!」
一撃必殺のバスター!
幾ら人間離れしてるお兄ちゃんでも、空中で散々ぱら振り回されて、その挙げ句に力任せに床に叩き付けられたら堪らないよね?如何、満足出来た?
「いやはやこれほどとは……凄まじい強さだなネロ君?
剣筋には荒さが残るが、其れを差し引いても君の反射神経と何よりもそのパワーには目を見張る物がある――何処で此れだけの事を……?」
「剣での戦い方を教えてくれた奴は居たが、基本以外は殆ど自己流で、後は実戦の中で力を磨いて来ただけだ。そっちの方が俺には合ってたしな。」
えっと、何か話してるけど、取り敢えず此れは模擬戦終了って事で良いんだよね?……なんか、朝からトンでもないバトルを見ちゃった気がするなぁ……
リリカルなのは×Devil May Cry 黒き騎士と白き魔導師 Mission27
『喫茶翠屋〜Cafe Midoriya〜』
お兄ちゃんとネロ君の模擬戦はネロ君が勝ったと言う事で良しとして、此れから翠屋の開店準備だけど――此れまた予想を裏切らなかったねお母さん?
ネロ君に支給されたのは白いYシャツと、黒のベストとスラックス、つまりはベーシックで割と誰でもイメージしやすい執事の服装その物だった。
まぁ、其れだけなら特に問題はないんだけど――お母さん、本気で私に此れを着せる心算なの!?
何かなこの異様に丈の短いセーラーシャツと、超ロングスカートと、え〜〜と、此れはサラシ?兎に角、如何見ても接客する為の服装じゃない物は!?
お母さんは、私に一昔前のスケ番の服装で接客をしろって言うの!?
「ダメかしら?」
「ダメ以前に着たくないです!翠屋は何時からコスプレ喫茶になったの!?」
「そんなのたった今からに決まってるじゃない♪」
「開き直った!?――じゃなくて、他の衣装はないのかなぁ?」
「あるわよ、矢絣袴♪」
「あるなら最初からそれを持って来てよ!!一々突っ込みれるのだって楽じゃないんだから!!」
「は〜〜い♪」
本当に分かってるか疑わしいなぁ?
大体ネロ君の執事服は、前に洒落でお父さんが着たやつだろうけど、こんな『ザ・スケ番なりきりセット』は何処から持って来たのか激しく謎だよ?
一応サラシを用意してくれた辺り、お腹を出さなくても良いようには考えてくれえたんだろうけど、だったら最初から矢絣袴の方にしてくれれば良いのに。
「じゃあ、なのはのは此れね?」
「出来れば最初から持って来て欲しかったの……」
まぁ、お母さん相手に何を言っても徒労に終わるからあまり深くは突っ込まないけどね――其れよりもさっさと着替えて準備しないと。
と、言う訳で着替えてみたけど如何?
「似合ってるんじゃないのか?」
「やっぱなのはは、私と違って『華』があるわ。」
なはは、ありがとう。
でも、お姉ちゃんだって充分『華』があると思うよ?お母さんから聞いたけど、現在翠屋のトップウェイトレスで、お姉ちゃん目当てで来る人も居るとか…
「実感ないんだけどねぇ?
まぁ、其れは兎も角、なのはもネロ君も私と一緒にホール担当だから宜しくね?」
「了解です♪
ネロ君も、大丈夫だよね?」
「店内を動き回るのは問題ないが、客向けの営業スマイルってのが存外難しいな?
如何にも俺がやると『思いっきり演技してます』的な笑顔になっちまうみたいだからな……ま、俺の出来る範囲で接客をさせて貰うさ。」
その辺は何とか頑張ってとしか言えないけど、まぁネロ君なら多分大丈夫だと思うよ?
其れに何より、ネロ君は与えられた仕事はなんだかんだ言っても完璧にこなすから、ある意味で最高の戦力って言えるし。
ネロ君なら、意外と速攻で翠屋No1ウェイターの評価を得る事が出来るかもしれないね?
「うい〜〜〜っす!って、久しぶり!なのはちゃん!」
「毎度どうも〜〜〜♪って、久しぶりのなのちゃんや!!」
ほへ?って、晶さんとレンさん!!お久しぶりですね、如何したんですか!?
「如何もこうも、いまでもちょくちょく翠屋のお手伝いしとるから来たんやけど、まさかなのちゃんが居るとは予想外や〜〜〜。」
「中学卒業以来だから、彼是3年か?随分と美人さんになっちまってまぁ……に比べて、この亀は相変わらずだけどな?」
「む、其れは遠まわしにバカにしとるんかおサル?」
「あん?誰が猿だこの亀!やるか!?」
「やったろか!?」
あはは、なんだか物凄く懐かしい光景だけど―――2人とも喧嘩はダメですよ?(ニッコリ)
「!?あははは、け、喧嘩じゃないって!此れはアレだよ、こうダチ同士の少し過激なスキンシップと言うやつで……」
「そ、そうそう!決して喧嘩やあらへんからね!?」
そう?其れなら良いですけど……
「知り合いか?」
「あ、そう言えばネロ君は初めてだっけ?
紹介するね、ボーイッシュな格好の人が『城島晶さん』で、関西弁の人が『鳳蓮飛』さん。私が子供の頃からのお付き合いなの。」
「成程な。――ネロだ、宜しくな。」
「「なのはちゃんが(なのちゃんが)彼氏を連れて来た!?」」
違います!ネロ君はお友達で、私の部隊の新人さんです!!
「なんや、ちゃうんか……ちょっとがっかりや。」
「まぁ、なのはちゃんが彼氏なんぞを連れて来たとなれば、師匠が黙ってる筈がねぇか――確実に一勝負吹っかけてるよなぁ……」
え〜〜〜と、お兄ちゃんにどんなイメージ持ってるかは知らないけど、お兄ちゃんは決してシスコンじゃないからね?絶対に違うからね?
序に言っとくと、既にお兄ちゃんはネロ君と一勝負して、其れで見事に負けたから。
「は!?」
「師匠が負けた!?あの半分どころか、8割方人間辞めてる師匠が!?――つまりネロは、まかり間違っても人間じゃねぇって事か!!」
「ま、否定はしねぇけどな。」
リアルに純粋な人間じゃないからねネロ君は。だけど、少なくともお兄ちゃんは生物学上は人間であると思うのです……多分。
まぁ、高町家に於いては『魔法』を使える私が一番人間離れしてるのかもしれないけど――
「ネロ君は色々規格外だから。
其れより、晶さんもレンさんも、お手伝いに来てくれたんならそろそろ着替えた方が良いですよ?開店まで残り15分切ってますから。」
「っと、そうだな!積もる話は昼休みにでも聞かせて貰うぜ?」
「楽しみにしとるよなのちゃん♪」
取り敢えずはお仕事を頑張らないとだね♪
――――――
Side:ネロ
コイツはまた予想以上だな――!
「モーニングセットAを飲み物はコーヒーで、畏まりました、少々お待ちください!」
「すいません、注文お願いします〜〜〜〜!」
「はい、少々お待ちください!!」
俺となのはと美由希でホール係とやらを務めてるが、開店して直ぐにこんだけの客が来るって、ドンだけ流行ってんだよこの店は!?
流石に、店の外にまで列が出来る訳じゃないが、間違いなくこの辺りの喫茶店では文句なしのトップなんだろうな翠屋は……ま、納得だけどな。
桃子の作るスウィーツや料理は美味いし、士郎のコーヒーだって美味いからな、人が来るのも納得だぜ。
「スイマセン、其処の銀髪執事さん注文お願いします!」
「矢絣袴のウェイトレスさん、注文良いですか!?」
だがしかしだ、何だって俺やなのはを指定して注文出しやがるんだ?
美由希も偶に指定されてるが、俺やなのはが指定される回数は明らかに多いだろ!?つーか少しは、こっちの身にもなれってんだ、マッタクよぉ………
「そらネロ君がイケメンで、なのちゃんが美人さんやからやって。ほい、3番テーブルのイングリッシュマフィンサンド上がったで!」
「序に8番卓のモーニングセットBも出来上がり!頼むぜネロ!」
「All right.(了解だ)……つーか、そんな理由で指定するなってんだ……!!」
右腕とデビルトリガー使えば相当に楽なんだろうが、流石に此処で使う訳にも行かねぇしな?
ま、体力には自身があるから、へばる事だけはないだろうけど――ん?
「ねぇ君可愛いね、今日は何時に終わるの?終わったら少し俺と付き合わない?」
「えっと……今日は1日なんです。」
「そうなの?じゃあさ、閉店時間にまた来るから俺と遊ぼうよ?」
何だあの客?なのはの事をナンパしてやがるよな如何見ても?
なのはもやんわりと断ろうとしてるみたいだが、如何にもしつこい奴みたいだが――さて、俺は如何するのが一番良いと思う士郎?
「其れを僕に聞くかい、ネロ君?」
「一応今の俺は翠屋の一スタッフに過ぎないんでね、責任者の意見を仰いだ方が良いかと思ってな?」
「成程、確かに利に適った行動ではあるね。なら翠屋のマスターとして、お願いしようかな?
あの手の客はスタッフにもお客さんにも迷惑になるから退店させてくれるかい?……序に、なのはに手を出した事も後悔させてほしいかな♪」
OK、アンタも大概だな士郎?だが、そう言うのは嫌いじゃねぇ。
俺も、あの手の野郎は大嫌いだし、何よりも軽薄馬鹿がなのはに手を出そうなんて身の程知らずも良い所だろ?……取り敢えず退店させるか。
「お客様、当店のスタッフにその様な行為をされるのは非常に困るのですが?」
「ネロ君!」
「アン?なんだよお前、俺はこの子と話してんの、邪魔しないでくれる?」
「そうは言われましても、お客様の行為は店としても迷惑ですし、他のお客様にも多大なる迷惑を掛けているので、是非とも止めて頂きたいのですが?」
「るっせぇなぁ……客へのサービスって事で此れくらい良いだろ?
つーか、野郎に用はないからどっか行けよお前、俺はこの子にしか興味はないの、男はあっち行け。」
……OK、如何やら相当に頭のネジがぶっ飛んでるらしいなコイツは。
どうやら、言葉で言って分かる相手じゃないらしいが――やっちまっていいよな、なのは?
「やっちゃってネロ君――ハッキリ言って、この手の人は営業妨害以外の何者でもないから、思い切りやっちゃって良いよ!ぶっちゃけ隊長命令!!」
「All right Boss(了解したぜ隊長。)!まぁ、そう言う訳で、アンタみたいな迷惑な客には退店願うぜオイ。」
――ガシィィィ!!
「のわぁあぁ!?」
「ナンパする相手と言うか、ナンパを敢行する店間違えたなオイ?
自慢じゃないが、この店のスタッフは俺を含めて略全員が何らかの格闘技経験者だぜ?店にとって迷惑な奴を叩きだすなんて造作もねぇんだよ。」
それ以前になのははこの店の経営者の娘だぜ?
その娘がお前みたいな軽薄な奴にナンパされて困ってると知って黙ってると思ってんのか?精々テメェの浅はかさを呪うんだな。
取り敢えず、二度とその顔見せるんじゃねぇ!Then down to hell you go!(地獄に落ちな!)
――ブオン!!
「ぺぎゃらっぱぁぁぁぁぁぁあっぁっぁあぁぁぁぁ!?」
「一応最低限の手加減はしたんだが、思った以上にぶっ飛んでったな?」
「ネロ君のバスターは相当だからね?あっちの方向だと、海鳴臨海公園中央に着地予定って所だね。
まぁ、多分平気だろうとは思うけど、其れは兎も角、助けてくれてありがとうネロ君♪正直言うと如何したモノかって困ってたんだよ〜〜〜。」
まぁ、困ってるみたいだったから、士郎に一応の許可を得てこうした次第なんだが――今ので逆に翠屋の評判に影響が出たりしないかな?
事情が事情とは言え、店員が客をブン投げたとか噂になったら、店としては何ともありがたくない状態になっちまうじゃないかと思うんだが――――
「其れについては大丈夫だと思うよ?
あの人は初めての人だったけど、翠屋はリピーターが多くて常連さんも居るから、今の騒動で悪い噂が独り歩きする事だけはないから大丈夫。
寧ろ『迷惑千万なナンパな客を銀髪のウェイターが撃沈した』って言う事の方が大きく印象に残って、そっちの方の噂が広がるかもだけどね。」
店側に損害はないってか?……其れなら良いけどな。
――パチパチパチ!!
An?何で拍手が……
「良いぞ銀髪に兄ちゃん良くやった〜〜〜!!!」
「久しぶりになのはちゃんの顔を見たのに、あんな軽薄な奴がなのはちゃんをナンパなんてねぇ?やってくれてスカッとしたよ!」
本気で問題なかったみてぇだな。
普通だったら、客がビビって蜘蛛の子散らすように逃げると思うんだが、翠屋の常連にはこの程度は如何って事なかったか――やっぱりスゲェ店だな。
ま、俺のした事が間違いじゃなかったってんなら悪い気はしないぜ。
とは言え、其れで仕事の量が減る訳じゃないけどな!!――一騒動あったが、まだまだここからが本番だろなのは!!
「そうだね、此処からランチタイム終了までが最大の山場だから、ファイトだよネロ君!!」
「やっぱりかよ!!……いいぜ、やってやるよ!
受けた仕事はこなしてなんぼだからな、全力でやってやる!!Things're really beginning to heat up!!(寧ろ燃えて来たぜ!!)」
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正直に言う、物凄く疲れた――其れこそ3ダース分の雑魚悪魔をぶち殺すのよりも疲れた……ウェイターってのがこんなに大変だったとは思わなかった。
注文を取るのは兎も角、営業用のスマイルってのは俺には絶対に無理だなうん。
本気でなのはや美由希を『凄い』と思っても、多分罰は当たらないよな?
まぁ、単純に店の手伝いだけならそうでもなかったんだが、桃子から『お昼のまかないはネロ君が作ってね』って事で、料理したのが結構来たみたいだ。
何を作れば良いのか分からなかったから、フォルトゥナの孤児院で作った『ジャンバラヤ』を作ったら意外と好評だったのは良かったぜ。
んで、慌ただしい一日を終えて、現在夕食の真っ最中。
レンと晶も、桃子が『折角だからご飯食べてって、序に泊まって行くと良いわ』って事で、同席。何とも賑やかな食事風景になったモンだぜ。
賑やかなのは嫌いじゃないし、談笑しながらの飯は悪くないんだが……
「ぬぎぎぎぎ………」
どうやって纏めるんだ此れは!?
人数が多いならって事で『手巻き寿司』ってのをやってるんだが、海苔で巧くまとめるのが如何にも……なんで、どいつもこいつも巧く巻けるんだよ!?
「…ちょと貸して。―――はい、どうぞ♪」
「あ、Thank youなのは……うん、美味いな。」
「巻くのが苦手だったら私に言ってくれていいよ?ネロ君が食べたいの巻いてあげるから。」
「え?いや、其れは有り難いが、其れじゃあなのはが食べる暇なくなるだろ?」
「その辺は適当にやるから大丈夫。
ネロ君のを作るのと同時に自分のを作れば問題ないし、折角のお寿司なんだからネロ君にも味わってもらわないとね♪」
そう言うもんか?ま、なのはが良いって言うならその言葉には甘えさせてもらうけどな。
にしても、やっぱ良いモンだなこう言うのって。
「良いモノって、何が?」
「こう言う賑やかな食事風景がさ。
俺は孤児院育ちだから、本当の意味での団欒の食卓ってのは知らないんだ――家族同然に付き合ってた奴等とも一緒に食事を摂る事は稀だったし。」
だからこそ、こう言うのは心底いいって思う事が出来るんだよ。ま、其れも高町家の懐の大きさがあれば故の事かも知れないけどな。
或はなのははこんな事も予想して、俺をこっちに誘ってくれたのか……真相は分からないが、確かに退屈だけはしそうにないぜ――コイツ等と一緒なら。
休暇は残り3日だが、3日目の午前中にはミッドチルダに帰る事になってるから、自由に出来るのは明日を含めて残り2日――まぁ思い切り楽しむだけだ!
「ネロ君、次は何が良い?」
「え〜〜と――そうだな、その『キンメダイ』ってのを頼めるか?」
「ご注文、承りました♪」
因みに、何故か食事中に俺となのはに、主に桃子から妙に生温い視線が送られてたのを感じたんだが、アレは一体何だったのか…気にしたら負けか……
取り敢えず、明日もまたウェイター業を頑張らないとだな!
To Be Continued…
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