Side:ドゥーエ


極寒の地は天気が変わり易い…其れは分かってたけど、幾ら何でもなのはとネロの捜索を開始して数分後に猛烈な吹雪になるってドンだけの嫌がらせ!?
一気に視界が利かなくなる程の吹雪が発生って、一体ドンだけよ!?

これじゃあ捜索を続ける事なんて不可能だわ……一歩間違えば私達が二次遭難しかねないからね。


だけど、こんな状況下に置かれてるなのはとネロはそろそろ限界も近い筈……一刻も早く助け出さないと取り返しの付かない事態になりかねないわ!!

せめて2人の正確な位置さえ分かれば其処に次元航行艦を向かわせる事も出来るんだけど……ん?如何したの久遠?


「同じ世界に居るなら、なのはかネロに通信を飛ばす事は出来ないの?」

「……あ……」

言われて吃驚、完全に失念してたわ。
確かに同じ世界に居るなら通信は通じる筈――そして通信が通じれば2人が居る正確な座標を絞り出す事も出来る。GJ久遠、此れは叙勲モノの仕事だわ!


「勲章よりも油揚げの方が良いかなぁ?」

「……アイナに山盛りの稲荷寿司を注文しといてあげるから、其れで手を打ってくれる?」

「関東風の甘辛い味付けでしっかり煮しめたやつで宜しく。」

はいはい。
此れは結構な出費になるだろうけど、一葉さん1枚と英世2枚でなのはとネロを助ける事が出来たと思えば寧ろ安い――そう思うだけの価値があったから。

だったら善は急げ!

「高町一等空尉とネロ通信を入れて!この世界に居るなら通じる筈だから!」

「了解!!


この通信に応答があれば、少なくとも2人は生きてる。……でももし応答がなかったら?


……馬鹿なこと考えてるんじゃないわよ。無敵のエース・オブ・エースと悪魔を簡単に捻り上げる男が、そう簡単に死ぬ筈がないじゃない。
応答はある、絶対に!!













リリカルなのは×Devil May Cry  黒き騎士と白き魔導師 Mission37
『救出と生還〜Rescue&Return〜』











「コール30回目……今だ応答ありません。これは、もう……」

「諦めないでコールを続けて。
 ……それと、最悪の可能性を考慮するのは当然だけど、次に其れを口にしたらピアッシングネイルが貴女を貫くから覚悟しておきなさい?」

「し、失礼しました!!」


此方のコールに応えないなんて、確かに不安にはなるけど絶対に応えてくれる筈。
応答さえしてくれれば、なのはとネロの正確な位置を特定できるかも知れない訳だし――取り敢えずどっちでも良いから、さっさと応答しなさいよ!!


――ヴォン


『は、はい!此方高町なのは一等空尉!……って、ドゥーエちゃん!』

『誰からの通信かと思えばお前かよ?やっと来てくれたか……ったく、遅刻だぜ?』



なのは、ネロ!!よ、良かった〜〜〜……やっぱり生きてた、生きてくれてた。

「此れでも最速で来たんだけど、待たせたのには変わりはないわね……遅れてゴメンね。
 てかさ、無事なら無事でなんでこんなに出なかった訳?彼是40回近くコールを続けてたんだけど?」

『悪い、俺もなのはも寝てた。』

『場所が場所だけに、何をしなくても体力奪われるから、出来るだけ動かないようにしててね……それで、気が付くと寝てる事が多いんだよ〜〜。』



まぁ、コンだけの極地だからねぇ?
そりゃ何をしなくても寒さで体力は奪われてくだろうから、其れもまたしょうがないとは思うけど……この状況下で生きてたって事は暖と食糧は如何にか、ね。

「それで、2人は大丈夫なの?モニター越しでは特に目立った怪我とかはないみたいだけど?」

『命に係わるような怪我はしてないが、昨日地震があって、そん時に俺もなのはも結構擦り傷切り傷がな。
 それと、その地震のせいでなのはが右足首を捻挫した。一応そっちは応急処置してあるけど、出来るだけ早く治療した方が良いと思うぜ?』

『加えて焚き火の燃料はまだ大丈夫だけど、昨日で食糧が完全に尽きたから、出来るだけ早く助けてほしいんだけど……』



余裕そうに見えて、現実は結構一杯一杯って感じね此れ?特になのはの捻挫は出来るだけ早くちゃんとした治療をした方が良いだろうし……

「勿論こっちも早く助け出したいんだけど、生憎と捜索を開始して何分も経たない内に吹雪になっちゃって今は動けないのよ。二次遭難の危険性もあるしね。
 其れでなんだけどなのは、簡単な魔法使ってくれない?
 アンタの魔力反応を感知できれば、2人の現在位置を特定する事が出来るし、位置が特定できれば次元航行艦ごとそっちに向かうからさ。」

少しでも風が弱まれば、次元航行艦で移動する事は可能だし、って言うかそっちの方が人員裂いて捜索するより万倍楽だし何より早いからねぇ?
てか、捜索に出る前に気付こうよ私も……久遠に言われるまで気付かなかったって、自覚がないだけで結構パニくってたみたいね私も。


『うん、レイジングハート。』

『All right Master.プロテクションを最小出力で展開します。』



最小出力……魔力は回復し切ってないって事か――こんな状況に置かれてたら、完全回復する筈もないわね。
其れで如何?なのはの魔力は感知出来た?


「えと……はい!微弱ではありますが高町なのは一等空尉の魔力反応を感知!
 当艦の現在位置より北北西に約500mの……恐らくはやや地下にもぐり込んだ洞窟内部に居るモノと思われます!!」


洞窟?……成程、其処なら寒さも凌げるし、燃料と食糧があれば生き抜く事は可能ね。
でも、遂に食糧が尽きたって言ってたけど、こんな何もなさそうな場所で4日間も何を食べて凌いでたのよ2人とも?


『『蛇。』』

「は?」

『だから蛇だよ。洞窟内に出てきやがった大蛇を撃ち殺して、焼いたり燻製にしたりして食ってたんだ――四の五の言ってられる状況じゃなかったからな?』

『ゲテモノって思われるかもしれないけど、脂が乗ってて思った以上に美味しかったかなぁ?』



……其れはまた何ともへヴィな食事だったわね、蛇だけに。
てか、アンタ等思った以上にサバイバル出来てるわねぇ?………もしもこのまま助けに来る事が出来なかったら、環境に適応して野生化してたんじゃない?

普通にあり得そうで怖いわ。


と、兎に角、出来るだけ早くそっちに向かうようにするけど、全ては天候次第だからもう少しだけ気合で頑張って。
通信は通じるから、こっちからも状況確認を含めて出来るだけ通信を入れるようにするからさ?


『なはは……助けが来てくれたって分かっただけでも大分気が楽だよドゥーエちゃん。』

『取り敢えず燃料はあるから凍死する事だけはないからな?
 食糧の方は……出来るだけ動かないで腹空かさないようにしてみるさ。だけど、そっちで飯は用意しといてくれよな?出来れば温かいモノを頼むぜ。』


了解、アンタ達が居る場所に向かう時には、ボリュームがあって温かい料理を用意しとくわ。
取り敢えず一旦通信を切るわね?火急な事が有ったら、何時でもすぐに連絡入れなさいよ?こっちは24時間何時でも対応出来るようにしておくからさ。


『あぁ、分かった。』

『其れじゃあ、助けに来てくれるのを待ってるねドゥーエちゃん。』


えぇ、待ってて、必ず助けに行くから!



ふぅ……取り敢えず2人が生きてた事に一安心だわね……ホッとしたら、なんだか力が抜けたわ。
ん?そう言えば、モニターの向こうのなのはとネロは、2人で1つのコートに包まってたわよね?……寒さを凌ぐためでもあるだろうけど、若しかしてあの2人!


「自分の気持ちに気付いた……かな?」

「極限状況に置かれてやっと?……だとしたらあまりにもベタじゃないの?
 まぁ、やっとこ自分の気持ちに気付いたってんなら其れは其れで悪い事じゃないけどね――ぶっちゃけアイツ等さっさとくっつけって思ってたからねぇ……」

「2人ともそっちの方面は疎い上に超絶鈍感だから……其れこそ抹殺レベル疎くて鈍感だから。」


……否定はしないけど、自分のご主人様とその思い人に対して、結構キッツイわね久遠?……そう思う気持ちは分からなくもないけどさ。
だけど、だったら尚の事救出しないとよね?



なのはもネロも自分の気持ちには気付いたんだろうけど、多分お互いに伝えてはいないと思うから――其れを伝えないでって言うのは有り得ない事だもの。
OK、なのはとネロを救出せよって言うこのミッションは絶対にコンプリートしてやるわ!

操縦士に通達、何時でも動けるように、エンジンを常時稼働状態にして艦全体の状態をニュートラルに設定、即時出撃状態を維持しておいて!


「「「了解!!」」」


後は、出来るだけ早く吹雪が弱まるのを待つだけ。
此ればっかりは私達では如何しようもないんだけど、もしも存在してるなら私の願いを聞いてよ神様……吹雪を、出来るだけ早く弱くして――お願いだから!








――――――








Side:ネロ


ドゥーエとの最初の通信から2日………まだ外の吹雪は強いのか、救助は来ねぇ。
つーか、人は水だけででも10日間過ごせるって、アレは絶対嘘だろ!?食糧が尽きて3日目だが、結構空腹がヤバイ……動かなくても腹は減るんだな……


兎に角、気合と根性で耐えるのにも限界がある……このままだと冗談抜きでヤベェぞ?



――ヴォン


『なのは、ネロ、吹雪が弱くなったから今からそっちに行くわ。
 動けるなら、洞窟の入り口付近まで来て貰っても良いかしら?――あくまで動ければの話なんだけどさ……』



ドゥーエ!!……ったくやっとかよ?待ちくたびれたぜ。
けどまぁ、洞窟の入り口まで行く事くらいは大した事じゃねぇし、其処まで行けば、助かるんだろ?だったら是非もねぇ、今直ぐ向かうぜ。


『くれぐれも無理だけはしないでよ?、入り口付近まで来る事が出来なかったらこっちの魔導師が救出に向かうからね。』


了解だ。
つー事で、移動なんだけど、歩けるかなのは?


「…………ゴメン、腰に力入らないや……ずっとおんなじ姿勢で居たって事に加えて漸く助かるって思ったら気が抜けると同時に腰も抜けちゃったの。
 なはは……何とも頼りない部隊長だよねぇ?」


其れは仕方ないんじゃないのか?
どんなに凄い奴だって、極限状態から脱するのは難しいんだ、寧ろこの状況で、腰が抜けた程度で済んでるなのははお世辞抜きに大した奴だぜ。


けどまぁ立てないって言うなら仕方ない、少しばかりこれで我慢してくれよな?


――ひょい


「!!?……に、にゃぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁっぁぁぁあぁぁぁ!?ね、ネロ君、如何してお姫様抱っこ!?」

「こうした方が、捻挫した足に負担をかけないで済むだろ?
 捻挫を重傷化させない為の処置だから、少しばかり失礼するぜ?」

「あう……ね、ネロ君だったら嫌じゃないけど……優しく運んでね?」


了解だ。
取り敢えず細心の注意を払って進んで行かないとだが、入り口までの道のりは完全に覚えてるから、多少崩れてても問題ないぜ。








で、約10分後に俺達は洞窟の入り口に到着し―――



「なのは、ネロ!!」

「なのは〜〜!ネロ〜〜〜〜!!」

「ドゥーエ!!」

「ドゥーエちゃん!!其れにくーちゃんも!!」



目出度く救助隊と合流する事が出来た――ったく、悪魔と戦う以上の緊張感を持った1週間だったな……同時に、人の生命力ってのは凄いって思ったけど。
俺もなのはも、普通なら野垂れ死にしててもおかしくない状況に有ったにも関わらずこうして生きてるんだからな……精神力の強さは肉体を凌駕するか。


「まさかのお姫様抱っことは思わなかったんだけど!?」

「邪推すんなアホ!
 なのはは捻挫してるし、安心した事で腰が抜けたみたいだからこうして連れて来るより他がなかったんだよ!!其れ位察しろよドゥーエ!!!」

「まぁ、詳しい事は後でじっくり聞かせてもらうとして、取り敢えずお帰り、なのは、ネロ……生きていてくれた事が、この上なく嬉しいわ。」


そうかい……まぁ、此れで漸くサバイバル生活から解放されるかと思うと気が楽になるぜ。
取り敢えず、この次元航行艦に入ったらまずはメシだな……流石に何も食べずに丸2日って言うの幾ら俺となのはでもキツイ事に変わりはなかったからな。


「その気持ちは分かるけど、ご飯の前に2人とも医務室で簡単な検査だけは受けて貰うからね?
 一番酷い怪我がなのはの捻挫って言う事だから、そんなに面倒な事にはならないと思うけど、一応の検査だけはしておかないとアレだから…」


そいつは予想してたから如何って事はないぜ?
寧ろ、こんな極地から生還したってのがそもそも奇跡に近いんだ、精密検査くらいは受けて当然だろ?

ソイツの結果が『異常なし』ってんなら逆に安心できるからな。



ともあれ、何とか生き抜いてやったぜ!!!――同時に自分の生命力の強さを実感したけどな。


けどまぁ、此れにて一件落着だな?――此れでミッドチルダに帰る事が出来る……そしてミッドに戻ったら俺はなのはに、俺の思いをぶつける心算だからな。


ったく緊張するぜ……悪魔との戦いでも此処まで緊張した事はなかったかもしれないな――そんだけ、俺の中では大きな事柄であるって事なんだろうよ。



俺が気持ちを伝えたら、君はどんな顔をするんだろうななのは?
困った顔?怒った顔?……どんな顔でも良いから、なのはの偽らざる本音を俺に教えてくれ――どんな答えが返って来ても、俺は覚悟は出来てるからさ。








――――――








Side:なのは


この世界に来て約1週間……やっとこドゥーエちゃん達が到着してくれて、何とか保護された……サバイバル訓練を受けてなかったらお陀仏だったかもね。
そのお蔭で、エネルギーの節約が出来たし、ネロ君が撃ち殺した蛇で凌ぐ事が出来たけど、やっぱり何時までもサバイバル生活って言う訳にも行かないよ。

本気で助かった……そう思っても罰は当たらないよね。




だけど、それ以上にネロ君………



「外傷が殆ど治りかけてる…本気で頑丈よねアンタって……」

「あぁ?悪魔舐めんなよこら?」




この気持ちはもう抑えきれないよ……ミッドに戻ったら、包み隠さず、一切の誤魔化しなしで私の思いを伝えるよ?……貴方が如何答えるかは別としてね。




大好きだよネロ君……心の底から大好きだよ、如何しようもない位に。


なはは……はやてちゃんに知られたら盛大に弄られる事は確実だね?



だけど其れでも良い、私のこの気持ちには一切の嘘偽りはないって自信を持って言える。私はネロ君の事が好き、此れは神様でも否定させないからね!!


「ん?…如何したなのは?」

「何でもない……漸く助けて貰ってホッとしてただけだよ?」

「そうかい……まぁ、俺もさ。
 だけどまぁ、お互いにアンだけの極限状態で良くも生き延びたもんだぜ……お疲れさんなのは……ミッドに戻ったらゆっくり休もうぜ?」


うん、そうだね。



ふふ、ネロ君の右手――ゴツゴツした悪魔の腕でも撫でられるのは嫌じゃないかな……何とも言えない温かさを感じるしね。




ふぅ……私のこの思いはネロ君に伝わるかなぁ?……伝わると良いなぁ……


『No problem Master.貴女の思いはきっとMr.ネロに伝わると思います。
 ですから、迷わずにその思いをぶつければ良いのではないでしょうか?……いつ何時でも小細工なしの全力全開、其れがMasterの取り得なのですから。』



ありがとうレイジングハート。
そうだよね、何も迷う事なんて無いんだ……只思うが儘にこの気持ちをネロ君にぶつければ良い。うん、大丈夫!!


サバイバル生活とは此れでおさらばだけど、ミッドに帰ってからが、ある意味ではもう一頑張りかも知れないね?









……貴方の事が好きだよ、ネロ君――















 To Be Continued… 




ようやく到着したものの、捜索に手間取ってしまったな。
美姫 「流石に吹雪の中、捜索はできないしね」
どうなるかと思いきや、久遠の機転でどうにかなったか。
美姫 「とは言え、それでも救助自体にはそれから二日程掛かったみたいだけれどね」
本当に凄い環境下の世界だと今更ながらに痛感だな。
美姫 「ともあれ、二人とも無事に救助できて良かったわね」
だな。不幸中の幸いと言って良いのかは分からないが、二人の仲には進展があったしな。
美姫 「かなり鈍感な二人が気付いたっていうのは大きいかもね」
まあ、二人ともすぐにそれを伝える気みたいだしな。
美姫 「一体どうなるのか、気になる所よね」
次回も楽しみに待っています。
美姫 「待っていますね〜」
ではでは。



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