Side:レジアス


ワシが自我を取り戻したのを見て慌てて転移させたようだが、少しばかり遅かったな道化師よ……六課にワシの異常は伝える事が出来たからな……!!


「Bravo!マジBravo!!
 ギリギリの状態で自分をぶっ飛ばして正気取り戻して、あの嬢ちゃん達に自分の異常を伝えるとか、アンタマジ最高!!
 だけどよぉ……あんまし、好き勝手するのは良くないぜぇ?……あんまし勝手な事すると、殺しちゃうよ………アンタの娘さんをさぁ?」


貴様!!……ふざけるな、オーリスを解放しろ!!
貴様等が欲するのはワシの権力であり、ワシの補佐官であるオーリスは何の関係もない!!事と次第によっては、補佐官などは幾らでも替えの効く役職だからな!


「ひ〜っひっひ、美しいねぇ?其れが親の愛ってやつかい?
 だが、其処まで言うならアンタの娘さんをゴートリングの支配下から解放して、管理局に戻してやってもいいぜ?――俺っちの出す条件を飲めばの話だけどよぉ?」

「何だと?……貴様は何が望みだ!!どんな条件であろうとも、オーリスが助かるならばその条件を飲んでやろう!!」

「そうかい?……なに、実に簡単な事だぜ?……アンタの自我を完全にゴートリングの支配下に置く、只それだけの事だ。
 まぁ、ソイツをやったら、よっぽどの事が無い限りアンタの自我はゴートリングに封印されて、身体は奴の操り人形になっちまうだろうけどなぁ〜〜〜?シッシッシ!」


対価はワシの存在か……ならば迷う事もない……老いたこの身でオーリスを助ける事が出来るのならば、男親として本望よ!
寧ろ、ワシの存在程度でオーリスが解放されるのならば釣りがくるくらいだが――先ずは、オーリスを解放して管理局に転送して貰おうか?貴様は信用ならん故な。


「そう言われると傷つくぜぇ?オレッチは大事な取り引きで嘘ついた事はねぇんだが、疑われてる以上は仕方ねぇか……おらよ、目覚めなお嬢ちゃん!!」


――パチン!


「………?此処は一体…………って、中将!!」

「正気に戻ったかオーリスよ……お前は間もなく本局に転送されるが、向こうに戻ったら即座に機動六課に保護を求めろ――其れが、お前の命を護る最善の策だ!
 そして、六課に保護されたらワシがどうなったかをあの女狼……レティ・ロウランに伝えろ……!!頼んだぞオーリス……ワシの愛娘よ!!!」

「そんな……そんな事……!!中将……お父さんーーーーー!!!」


後は頼んだぞオーリス………ワシは、如何やらここまでであるようだからな………うぐ…ぐあ……グワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!


グフ……ゼストよ、もしもお前が生きていたならば、今のワシを見て一体何と言うのだろうな……どうやら、近い内にそっちに行く事になりそうだぞゼストよ……














リリカルなのは×Devil May Cry  黒き騎士と白き魔導師 Mission60
『予想外の事案〜Unexpected〜』











Side:なのは


あの日の訓練の後、ヴィータちゃんから『レジアス中将と何話してたんだ?』って聞かれた時は、流石に驚いたね。認識障害が掛けられてたと思ってたから。
でも、よくよく聞くとヴィータちゃんには私達とレジアス中将が『普通に何か話して、話が終わったら歩いて帰って行った』様に見えてたらしい――つまりは、認識障害
じゃなくて、私達は誤認識魔法を使われていたって言う事だった。

私やネロにはヴィータちゃん達が普通に訓練してるように見えて、ヴィータちゃん達からは私達がレジアス中将と普通に話してるように見えたらしいね。
こうなったら流石に報告しない訳には行かなくて、レジアス中将と本当は何があったのかを話したら、ヴィータちゃんとシグナムさんも信じられなかったみたい。

で、はやてちゃんにも報告したら、当然レティさんにも報告が行く訳で、転移の方法とかも含めて調査するって言う事になったんだけど……






「「「レジアス中将が行方不明?」」」


数日後、レティさんから聞かされたのは、レジアス中将が行方不明になったとの事だった。
勿論、直ぐに捜索隊を組織して捜索に当たるらしいんだけど、まさか行方不明になるだなんて……


「誰だっけ其れ?」

「この間、要らん横槍を入れて来た奴だ。貴様は人の名前と顔を覚える事が苦手なのかダンテ?」

「自分にとって如何でも良い奴の事は、一々覚える気は毛頭ねぇよバージル。」

「喧嘩吹っかけて来たと思ったら、どっか行っちまって、挙げ句に行方不明とか、大丈夫かあの……なんつーか『生きたモアイ像』みてーなオッサンはよ?」


人の名前は覚えた方が良いと思いますよダンテさん?

それと、生きたモアイ像って、其れは流石にないよネロ?
確かに、あの顔はネタとしてモアイ像に改変されても仕方ないかもしれないけど、一応は陸のお偉いさんなんだから、其れなりの敬意は……


「喧嘩吹っかけて来た時のあのジジイに、払う心算なんぞ毛頭ねぇ。」

「うん、そう言うと思ったよ。」

この間のレジアスさんは、思いっきりネロの嫌いなタイプの人だったからね。
だけど、レジアスさんは本当は六課の設立を容認してくれたような人なのに、如何してあんな事を――しかも、転移前にはまるで自分が操られてるような事まで……


「その件に関してなんだけど、レジアス中将が行方不明になった数時間後に、六課に保護を求めてきた人物がいるのよ。」

「なに?……何か裏がある気がするが、ソイツは何者だレティ・ロウラン?」


六課に保護を!?
其れって相当な事ですよね?…バージルさんの言うように、一体何者か気になるんですけど……何処の誰なんですか、六課に保護を求めてきた人って言うのは?


「彼女よ……」

「オーリス・ゲイズです……しばらく世話になります。」


って、オーリスさん!?


「アンタは……あのモアイジジイの側近だったよな?……何だって六課に保護を……」

「其れは確かに気になるな………何故、貴様は六課に保護を求める?――答え如何では、今此処で貴様を斬り捨てるぞ?」


って、行き成り物騒な事言わないでくださいバージルさん!クールな様で、意外に血の気は多いんですか!?
少なくともオーリスさんは補佐官としては優秀だけど、リンカーコアが無い訳だから私達の敵にはなり得ないよ?――戦ったら、絶対に私達が勝っちゃうからね。


其れは兎も角、オーリスさんは如何して六課に保護を?……若しかしなくてもレジアス中将失踪に関係してたりしますか?


「関係大ありです……父は、レジアス・ゲイズは私の命と引き換えに、己の存在を差し出したのです――悪魔に。」

「「悪魔!?」」

「聞き捨てならんな……詳しい事を聞かせて貰おうかオーリス・ゲイズ。」


聞かせて貰えますね、オーリスさん?


「えぇ……数日前に会議を終えた私と父の前に、ピエロの様な姿をした者が現れたのです。名は名乗りませんでしたが、噂に聞いた『悪魔』だと直感しました。
 尤も私は、直ぐに意識を刈り取られてしまったのですが、その時には既に私は操られ、父も操られてしまったようなのです……」

「ピエロ……アイツか。」

「うん、間違いなくジェスターだね。」

「ジェスターと言う名前だったのですかアイツは……次に気が付いた時には、私は転送される直前で、目の前には父とジェスター、そして山羊の半獣人の様な悪魔の
 姿があり……父は、自らの存在と引き換えに私を救おうとしてるのだと分かりました……そして、私は局の近くに転送され、今に至ると言う訳です。」


そんな事が……!!やっぱりあの時のレジアス中将は操られてて、自分を殴る事で一時的に正気を取り戻したんだ。
と言う事は、誤認識の魔法と転移魔法はジェスターか、山羊獣人の悪魔のどっちかがやったって言う事で間違いなさそうだね?


「けど、そうなると捜索隊を組織しても……」

「見つけるのは難しい――と言うよりも、略不可能でしょうね。
 只、ジェスターが居たという事は、レジアス中将はスカリエッティの手に堕ちた可能性は極めて高いから、彼のアジトが分かれば救出は可能だと思うわ。」

「しかし解せんな……そのスカリエッティと言う奴は、悪魔と手を組み、管理局の高官を手駒と化して何を企んでいる?
 よもやとは思うが、この世界に地獄門を開いて魔界を直結させ、手駒と化したレジアスを指揮官において人と悪魔の戦争でも始める心算なのか?」

「そりゃねーだろバージル?
 地獄門を開くための鍵である閻魔刀は俺が持ってるんだぜ?此れが無きゃ、地獄門を開く事なんざ出来ねぇよ。」

「其れもそうか……フォースエッジもあるが、アミュレットはダンテの物しかないから、其れもまた魔界の封印を解除する鍵にはなり得んしな。」


えっと……何れにしても、最重要人物であるジェイル・スカリエッティを如何にかしないとダメという事ですね?
で、其れを何とか出来ればレジアス中将は助け出せるし、レジアス中将を操ってる悪魔を倒せば元に戻るだろうから、今は期を見て機を待つのが一番だね。



「な〜〜〜んか、面倒な事になって来たッスねぇ?」

「そう?僕的には、ドキドキワクワクが止まらないんだけどなぁ?――って言うか、どんな事でも楽しまないと損だぞうぇんでぃ!」

「楽しまないと損……確かにその通りっす!!良い事言うッスねぇ、レヴィヴィン!!」

「あ〜〜〜っはっは!こう見えて、僕は実は凄いんだぞ〜〜〜〜〜!!」



……レヴィとウェンディが何か言ってるけど、其れはこの際無視して、つまり今は特別な事をせずに、此れまで通りにやって行けば良いって言う事ですねレティさん?


「そう成るわ、此方からできる事は余りにも少ないですもの。
 だけど、警戒だけは怠らない様にね?――何時、何が起こるかは分からないから。」

「「「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」」」


まぁ、確かに警戒してし過ぎるって言う事は無いからね。って言うか、今の六課の戦力を考えると、誰が相手でも負ける気が全くしないからね。


「まぁな。……けど、ゴートリングとは、面倒な奴が出て来たもんだぜ。」

山羊に連なる者(ゴートリング)?」

「オーリスが言ってた山羊頭の悪魔だ。
 ランクは中級程度だが、人の心を惑わし操る力を持ってるクソッ垂れだ……決して恐れる相手じゃないんだが、無駄に耐久力高いからなアイツは……」

「其れって苦戦するレベル?」

「新米デビルハンターならキツイだろうが、俺達からしたら只のサンドバッグだな。
 少なくとも俺達が操られる事は絶対に無いし、出てきたら、撃って斬って殴ってそんで終いだが、頑丈だから面倒なだけだぜ。」


だったら大して恐れる相手でもなさそうだね。

レジアス中将が行方不明になるっていうトンデモナイ事になっちゃったけど、逆に其れが六課の皆の気持ちを高めるに至ったみたいだね?
オーリスさんも、六課で保護する以上は六課の裏方に係わる事になると思うし……もしかしたら、レジアス中将は此処まで見越して、自分を犠牲にしたのかな……?

だとしたら、私達は其れに報いないとだよ!!


「せやな……レジアス中将の覚悟を無駄にしたらアカンからね。私等は私等の為すべき事をする、其れだけや!!
 だけどまぁ、六課で保護する以上はオーリスさんも隊員宿舎を使って貰う事になるんやけど、そうなると部屋が足りなくなるから此れは部屋割りを変えなアカンな?
 そんな訳で、なのはちゃんはお引越しやね――ネロ君の部屋に。」


ちょっと待ったーーーー!!
オーリスさんが隊員宿舎を使うとなると、確かに部屋が足りなくなるから部屋変えは当然かも知れないけど、如何して私がネロの部屋にお引越しなの〜〜〜!?
普通に考えたらフェイトちゃんかドゥーエちゃんと同室にする物じゃないのかなぁ!?


「そっちの方があり得んわい!!てか、なのはちゃんとネロ君はラブラブなんやから同部屋でも問題ないやろ!!」

「アホか、問題大ありだ!!」

「ネロの言う通り問題大ありだよはやてちゃん!!此処は私がフェイトちゃんかドゥーエちゃんの部屋にお引越し、若しくはネロがバージルさんの部屋にお引越しする
 のが普通だと思うんだけど!?」

「普通に考えれば確かにそうやけど、ネロ君となのはちゃんやったら恋人同士やから間違いは起こらへんやろ?
 オーリスさんは1人部屋の方が落ち着くやろし、バージルさんかて1人の方がえぇと思うし、そもそもネロ君はダンテさんとの相部屋は絶対に堪えられへんやろ?」

「そりゃ無理だな、速攻でバスターで殴って、叩き付けて投げ飛ばす事間違いねぇ。
 バージルと親子水入らずってのも悪くはないが、下手したら空気が死にかねねぇ……其れを考えると、なのはと同室ってのは確かに良いのかも知れないな?」


にゃぁぁぁあぁあ〜〜!!其処で、そっちに傾くのネロ!?///
正直な事を言うなら、ネロと一緒の部屋って言うのは嬉しいけど、流石に恥ずかしいよぉ……其れは決定事項なのはやてちゃん?聞くだけ無駄かもしれないけど。


決定事項に決まっとるやろ?
 フェイトちゃんとの相部屋も考えたんやけど、アラストルがなのはちゃんを畏怖してるって事で止めたんや、魔具が力を発揮できんのは良くないからな。」

「魔具が畏怖するって、ドンだけなんだ、なのは嬢ちゃんはよ……」

「其れだけの力があると言う事だろうな……高町なのはは、差し詰め『魔王』と言ったところかも知れんな。」


バージルさん、其れ全然褒めてないですからね?


けど、そう言う事なら仕方ないかな?自分の相棒が力を発揮できないのは確かによくないしね。

其れに、よくよく考えれば、ネロと一緒の部屋って言う事は、毎日とは行かなくてもネロに朝ごはんを作る事が出来るって言う事だよね?


……だとしたら、悪くない。寧ろ最高なの!!――えっと、不束者だけど、此れから宜しくねネロ?


「あ、あぁ、宜しくななのは。其れと久遠もな?」

「くぉん、宜しくね?」


そっか、く〜ちゃんも一緒なんだよね。なら、相部屋でも問題ないね。



でも、其れは其れとしてオーリスさん、ようこそ機動六課に!!私達は、貴女を歓迎します!――此れから、宜しくお願いしますね?


「其れは私のセリフだわ高町一等空尉。
 ふぅ……本日付で機動六課の配属になったオーリス・ゲイズです。宜しくお願いしますね、機動六課の皆さん。」

「「「「「「「宜しくお願いします!!」」」」」」」


フォワードの皆も良い感じだし、オーリスさんの六課加入は間違いなくプラスになったね♪








――――――








Side:ネロ


オーリスってのが六課に保護って形で所属してから3日……俺は居合の技を、なのははデビルトリガーバーストを習得するためのトレーニングをしてる最中だ。


なのはの方は元々の才能がスゲェからかどうかは知らないが、速攻でデビルトリガーバーストを使うとは驚きだぜ。しかも、発動の隙が無い殆ど完成型の状態でな。


此れにはバージルも驚いてたが、同時に『見事だ』って称賛してたな。


だけど、其れとは裏腹に、俺は如何にもバージルの言う『本物の居合』が習得できねぇな……力が入り過ぎって事だけど、脱力した状態から攻撃ってのが難しいぜ。
尤も、シロウやキョウヤだったら、脱力しての奥義も可能なのかもしれなけど、俺は如何してもレッドクイーンを使う時の力任せが抜けねぇな……


「だから、基本は『脱力』だと言っただろう?」

「分かってるが、其れが簡単に出来たら苦労しねぇんだよバージル!」

まぁ、アンタのおかげでマキシマムベットは閻魔刀一本で使えるようになったし、レッドクイーンで『マキシマムオーバードライブ』も使えるようになったから良いけどな。
だけど、居合の脱力ってのは如何にも勝手が違うみたいで苦労してんだよ!!

此れさえできれば絶刀も完成するらしいが……頭では分かってるんだが、如何にも力が入っちまうんだよなぁ……如何したもんか……


「軌道がそれた?……此れは……逃げて下さいネロ!!」


シュテル?……って、何だよこのバカでかい火球は!?
逃げろったって、逃げ切る事が出来る筈ねぇだろが!!――下手したら丸焦げだろ此れ!?……クソッたれが…なら、火球をぶった斬るだけだぜ!!



――バシュン!!……ズバァァァァァァァァァァァァァァァアァ!!!!



ふう、何とかなったな……って、如何したなのは?


「凄い、凄いよネロ!!今の一撃、完璧な居合が出来てた!
 お父さんやお兄ちゃん、其れにバージルさんが使うような、無駄な力を一切排除した完全な居合だった!剣閃がまるで見えなかったもん!!」

「マジか……!?」

まさか、殆ど無意識で放った攻撃が正解に辿り着くとはな………だが、今のが脱力した際に得られる力か……だとしたら確かにコイツは強力だぜ!!
コイツが出来れば、『絶刀』の完成にも繋がるし、閻魔刀の真価を発揮する事が出来るからな。


とは言え、まだまだ荒削りだろうから、その辺は自分でトレーニング繰り返して何とかするしかねぇんだろうけどよ。



だが、俺もなのはも強くなった事は間違いねぇ……俺となのはだったら、魔帝を相手にしても本気で負ける気がしねぇぜ!!!










だが、流石に予想外だったぜ?俺となのはの新たな力を披露する機会が、思った以上に近い内に訪れるなんて言う事はな――














 To Be Continued… 




レジアスの文字通り体を張った行動で、一連の事情を説明する事が出来たな。
美姫 「そうね。オーリスにとっては辛い事でしょうけれどね」
だな。多少の敵の情報は得れたが、何をするつもりなのかは流石に分からないままか。
美姫 「レジアスを操って何かをすると思ったんだけれどね」
翌日には行方不明になっているしな。
美姫 「一体、何をするつもりなのか本当に気になるわよね」
ああ。次回が楽しみだ。
美姫 「次回も楽しみに待っていますね」
待っています。



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