Side:ネロ
視聴覚室に集められた俺達は、ある映像を見ていたんだが……なのはから話だけは聞いてたが、8年前に、こんな事が有ったとはな――。
『なのは!おい、確りしろなのは!!
救護班、直ぐに来てくれ!!――このままじゃ、なのはが……なのはが死んじまうーーーーー!!!』
映し出されたの映像には、血で真っ赤に染め上げられた雪原と、ぶっ壊れたレイジングハート。
そして、ぐったりとしたなのは――恐らく意識を失ってるんだと思うが――と、涙目で必死になのはに呼び掛けるヴィータ……此れが、8年前の事件の真相って事かよ。
まぁ、こんだけの事だから、なのはの腹の傷には納得だが……如何考えても雪原を染め上げた血の量からして、出血量は半端なモンじゃ無かった筈だ。
今、なのはが生きてるって事は、救護班が間に合ったって事なんだろうが、一歩間違えばなのはは死んででもおかしくなかった。
よしんば助かったとしても、身体に重い障害を抱えて生きて行く事になっただろうって事は想像に難くねぇ……今のなのはを見る限り、其れは杞憂だったんだろうがな。
「「「「「「「………」」」」」」」
其れでも、六課のルーキーには衝撃的な事実だったんだろうな『なのはが撃墜された』なんて事はさ――なのはは無敵のエース・オブ・エースとして有名だからな。
ともあれ、自分の中で封印しておきたい事実を、なのはは解禁したんだ――其れが、ティアナ達に伝わるかどうか……其れが、一番大事な事だろうな。
其れと同時にコイツは、俺が本当の意味でなのはの過去を知る機会なのかもしれねぇな……
リリカルなのは×Devil May Cry 黒き騎士と白き魔導師 Mission66
『大切な事〜Important thing〜』
Side:なのは
「こんな事が有ったなんて……マッタク持って予想もしていませんでした……」
まぁ、そうだろうね?
だけど、此処に映し出された物は全てのノンフィクションだから偽りはないの――つまりは、此れこそが8年前の、表の記録からは抹消された、消して貰った『高町なの
は撃墜事件』の『真相』なんだよ。
今の局員の中で、この事件の『真相』を知ってるのは六課の隊長陣と、レティさんを含めた提督クラスの人達位。
他の人達は、多分『高町なのはが任務中に怪我をした』程度の認識しかないと思うよ?……ティアナ達だって、今日此れを見るまでは、知らなかったでしょう?
「はい……こんな事が有ったという事すら知りませんでした。」
「でも……無敵のエース・オブ・エースが落とされたなんて、そんな事、やっぱり信じられませんよ!!」
「確かに、私のネームバリューを考えると、あり得ない事なのかもしれないけど当時の私は11歳……疲労で身体が思うように動かせなかったのを覚えてるんだ。
でも、異変を感じながらも、私は『私なら出来る』って言う感情が先走って、色んな任務に自ら志願して出撃して……結果として、こんな事態に陥っちゃったんだよ。
尤も、そのお蔭で私は気付く事が出来たんだ――私は、生まれ持った才能に甘えてたってね。」
其れからと言うモノ、私は徹底的に基礎を磨き上げ、真の意味でのエース・オブ・エースに上り詰める事が出来たんだよ。
勿論、その際には色々事故も起こしたけど、血反吐を吐くような日々の末に、私は翼を取り戻したんだ――只それでも、身体には一生消えない傷が残ったんだけどね。
「「一生消えない傷!?」」
「そう言えば、フェイトちゃんとはやてちゃんには言ってなかったけね。」
――ス……
「ちょお待って、何でいきなり服たくし上げて―――!!」
「それが、この傷痕だよはやてちゃん………」
「「「「「「「「「!!!!!!」」」」」」」」」
8年前のあの日に受けた攻撃の痕は、――その傷は、今もこの通り、私の身体に残ったままなんだよ……分かってくれた?
「此れは……お腹にバッサリって!!何で教えてくれなかったんやなのはちゃん!」
「隠し事なんて、そんなの酷いよ!!
確かに傷痕は凄すぎるかも知れないけど、そんな大きな傷痕が残ったって言う事は、教えてくれたっていいんじゃないかななのは?」
うん、当然そう思うよね?
でも、言える筈ないよ……当時ははやてちゃんもフェイトちゃんも、自分の目標に向かって頑張ってた時期でしょ?この傷痕の事を知ったら、きっと自分を責めて目標に
向かう事が出来なくなっちゃっうと思って言わなかったの。私自身が、傷痕の事は言いたくなかったし知られたくなかったって言うのも、勿論あるんだけどね。
「其れを言われたら……」
「特にフェイトちゃんは、私が落とされた事を気にし過ぎて、執務官試験に落ちてるから、再挑戦に向かって頑張ってる時だったからね。
それなのに傷痕が残ったなんて言ったら、また落ち込んで、試験で実力が出せないんじゃないかと思ったの――まぁ、自分の中で踏ん切りが付いたら言う心算だった
んだけど、中々言い出す機会がなくてね……」
「それはまぁ、女の子が其れだけの傷を負って、しかも痕が残ったとなれば気にするわよね……」
「貴様が言っても説得力の欠片もないがな、レディよ。」
「知ってるわ。私が『普通じゃない』のは理解してるから。
でもなのは、今日知ったメンバー以外でも、既にその傷痕の事を知ってる人が何人か居るのよね?って言うか、家族は知ってるんでしょう?」
勿論、お父さんを初め、私の家族は知っています。
それ以外で知ってるのは、直接の上司であるレティさんと、あの時一緒に任務に当たってたヴィータちゃん、其れからネロ。シャマル先生も、私の担当医だったから当然
知ってる……大体こんな所かな?
「家族以外ではアタシだけかと思ったら、シャマルも知ってたのかよ!?」
「私はヴィータちゃんが知ってる事に驚いたわ。」
「って言うか、2人とも知ってたなら如何して教えてくれへんかったんやーーー!!」
「其れは、私が言わないでって2人にお願いしたからだよはやてちゃん。だから、ヴィータちゃんとシャマル先生を責めたりしないでね?」
「〜〜〜!!徹底しとるなぁなのはちゃん!……はぁ、もうえぇわ。
理由は分かったし、傷痕の事に関しては私等も何も言わへん事にする――フェイトちゃんも其れでえぇな?」
「うん、其れで良いよ。なのはの気遣いだったって言う事も分かったからね。」
ありがとう、はやてちゃん、フェイトちゃん。
えっと、其れでね?この時の経験が、今の私の教導のやり方に繋がってるんだ。
「教導の?」
「うん。どんな訓練であっても、必ず基礎的な部分を取り入れての訓練内容でしょ、私が行う訓練ていうのは?
本当の意味での基礎を疎かにしたら、火傷じゃ済まない痛手を被るって身をもって知ったから、基礎を大事にしてたんだよ――同じ目には、遭ってほしくないからね。」
でも其れが逆に、『強くなりたい』って言うティアナの気持ちを焦らせちゃったのかも知れないね?
もしも、皆が入隊したその時に、私の教導の考え方をちゃんと話していたら、今回の事は無かったかもしれないよ……やっぱり、ちゃんと言葉にしないと伝わらないよね。
ゴメンねティアナ、ゴートリングを追い出すための一撃、非殺傷とは言え痛かったでしょう?
「そんな!だ、大丈夫ですから気にしないで下さい!寧ろあの一撃のおかげで、アレから解放されたんですから謝らないで下さいなのはさん!
大体にして、アレに付け入られたのは私の心に隙があったから……私の中に『力を求める』思いが有って、必要以上に焦ったのが原因ですから、自業自得です……」
心の隙か……確かに、ゴートリングは人の心の隙や心の闇に巣食うって事だから、ティアナの中にそう言う物が有ったのは事実だろうね。
加えて、ゴートリングが作り出したドレカヴァクを見る限り、『力を求める意思』が結構大きくティアナの中に有ったのは間違いないんだろうけど……ティアナ、貴女は如何
して力を求めたのかな?
差し支えなければ、其れを教えてくれないかな?
貴女が力を求める理由を知る事が出来れば、今回みたいな事を二度と起こさない様に出来るかも知れないからね。
――――――
Side:ネロ
なのはが訓練で基礎を大事にしてたのにはそう言う理由が有った訳か。
まぁ、確かに基礎ってのは大事だよな?クレドも、俺が教団騎士になったばかりの頃は口酸っぱくして『如何なる時でも基礎を疎かにするな』って言ってたし、思い返す
と訓練校の時も、なのはの教導は徹底して基礎を大事にしてたからな……そのおかげで、フォルトゥナに居た頃よりも数倍は強くなったけど。
けど、此れでなのはの真意もティアナ達に伝わっただろうから、少々ショッキングな映像だったが事件の事を話したのはマイナスにはならねぇだろうよ。
んで今度はティアナだ。
なのはの言う通り、なんだって力を求めたんだお前?
「力を求めるのは、戦いの場に身を置くのならば当然の事だが、身の丈に余る力を求めれば待っているのは破滅だ。
歴史を紐解いてみても、過ぎた力を求めた者は、一時の勝利や栄光を手にしても、最終的に身を滅ぼし破滅への一途を辿ったのだ――力を求め過ぎてはダメだ。」
「……アンタが言うと、滅茶苦茶説得力があるよなバージル………流石は経験者。」
……まぁ、俺も俺の中に居たバージルの『力を手に入れろ、もっと力を』って声に導かれて、力を求めて暴走しかけた事が有るから偉そうな事は言えないんだけどさ。
「……私には、兄が居たんです。名前はティーダ・ランスター……優秀な魔導師で、私の自慢の、そして憧れの兄でした。
でも、ある事件で兄は任務中に殉職し、命を落としてしまったんです。
妹の私が言うと手前味噌なんですけど、兄は魔導師として優秀だっただけでなく、その人柄から友人も多くいて、兄の葬儀には多くの人が集まってくれたんです。
でもその中には兄さんの上司も居て、如何やらその人は兄さんの殉職の件で酷く糾弾されたらしく、其の腹いせみたいな感じで吐き捨てたんです『役立たずが』って。
其れも、呟くんじゃなくて、葬儀に参列した人全員に聞こえるような大声で!おまけに有る事ない事……まるで兄さんが先走って命を落としたような事まで平然と!!
許せなかった……そして同時に悔しかった……見返してやりたかったんです、兄さんは役立たずじゃないって証明したかったんです、私が実績を積む事で……!!」
何だよ其れ!?……ふざけてるどころの騒ぎじゃねぇな、ソイツは!!
お前の兄貴は、命懸けで任務に当たってたんだろ!?……まぁ、仕事柄『死ぬ覚悟』は決めてたとしても、テメェの命懸けて働いてた奴になんて事言いやがるんだ…!
『無茶しやがって、あの馬鹿野郎……!』とかなら、悲しみを誤魔化すためのセリフと思えるけど、ソイツの其れは完全に死者を冒涜してるじゃねぇか!
――メキィ!!
「おい、ティアナ嬢ちゃん……そのクソッ垂れの名前を教えな――命懸けで任務に当たったナイスガイを冒涜したクソッ垂れに、ちぃとばかし灸を据えてやるからよ…!」
って、ちょっと待てオッサン!気持ちは分かるけど落ち着け!
正直言うなら、俺も其のクソ野郎をバスターでブッ飛ばしてやりたいが、兎に角落ち受け!つーか、怒りで缶コーヒーのスチール缶を握り潰すなよオッサン!!
「何で止める坊主!俺は、こう言うクソッ垂れが大っ嫌いなんだよ!!トニーって名乗ってた頃に『ボビーの穴倉』って酒場利用してたから余計にな。
其処に来てた連中は、普段は軽口叩き合って口喧嘩してるような一件仲悪そうな奴等でも、仕事で命を落とした時にゃその死を悼んで、絶対に死者を罵倒する事だ
けは無かった……だからこそ、テメェの部下だった奴を罵倒した、そのクソッタレは心底ムカつくんだよ!!」
「けど、アンタがソイツに何かやっちまったらレティの立場が悪くなるし、はやての立場も悪くなって、下手したら六課は強制解散なんて事になりかねないから、此処は我
慢してくれ……六課が無くなっちまったら、元も子もねぇだろ!」
「……ち、そう言う事ならしょうがねぇか……」
アンタがやると、ワンパンどころか顔面崩壊レベルで相手の事フルボッコにしかねぇからな……まぁ、此のクソッ垂れは、別の方法で社会的に抹殺してやるとするけど。
でも、そんな事が有ったならティアナが力を求めて『強くなりたい』って思うのは当然なんだろうが、なんだって焦っちまったんだお前?
別に焦る事なんて無いだろう?お前はマダマダ成長途中なんだから、此れから幾らでも伸びるんだ――特別焦る必要なんて無かったんじゃねぇかと思うんだけど……
「其れは……その、六課のメンバーが凄過ぎて圧倒されたんです。
隊長陣に管理局屈指の騎士と魔導師が配置され、隊員も武装隊最強隊員と言われていたネロさんに、若干10歳で竜を使役するキャロ。
同じく10歳で電気変換資質を持つエリオ、シューティングアーツ有段者のスバルとノーヴェ、遠距離支援能力に長けたディエチと、トリッキーな動きで相手の陣形を崩
すのが得意なウェンディ……此れだけの人材が揃ってる中で、私には簡単な幻術しかなかった……私には何もなかったんです。
ネロさんには『凡人じゃない』って言う事を言って貰ったけど、其れでも私には何もないとしか思えないくて……その心の隙を、ゴートリングに突かれたんですね多分。」
成程な、そう言う事か。
確かに六課には精鋭が揃ってるからな……だけどな、今一度言うぜティアナ?お前は凡人なんかじゃねぇ。
確かに直接的な戦闘力に限れば、スバルやノーヴェには大きく劣るだろうが、お前の幻術と『指揮官としての能力』は其れを補って有り余る程の物があるんだぜ?
其れに、そのクソッたれ以外の誰も、お前の兄貴を『役立たず』だなんて思っちゃいねぇよ。
だから胸を張れ!顔を上げろ、前を向け!お前の兄貴は最高の魔導師だった――なら、お前はその遺志を継ぐのが一番大事な事だろティアナ?
死んじまった兄貴も、お前が自分の汚名を晴らす事よりも、自分の遺志を継いでくれることを望んでるんじゃねぇのか?
「兄さんの……遺志?」
「うん、確かにそうだね……ティアナ、貴女のお兄さんは、生前何を望んでたの?――少なくとも、自分の有能性を示す事では無かったんじゃないかと思うよ?」
「兄さんの望み……兄さんの望みは、ミッドの市民が安心して暮らせる平和な世界を創る事だった……!決して自分の有能性を示す事じゃなかった……!!
私は、兄さんの汚名を晴らす事に躍起になって、そんな大切な事も忘れてたんですね……ゴートリングに付け入られる訳ですよ…これじゃ、兄さんに笑われますね。」
かもな。
だけど、道を誤るギリギリで気付けたんだ……多分、アンタの兄貴は天国でホッとしてると思うぜ?――妹が道を誤らずに済んだ訳だからな。
「うん、きっとホッとしてると思うよティアナ。」
「同時に喜んでるでしょうね、貴女に此処まで慕われていたって言う事に……ホント、兄思いの妹だわ貴女って。」
「なのはさん、レディさん…………うあ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
――ガバッ!!
如何やら今まで溜めてたモンが決壊したみてぇだな……ま、今は泣くだけなくと良いさ――其れを受け止めてくれる奴が居るんだからな。
さてと、此れでティアナは大丈夫だろうが、ティアナの兄貴を冒涜したクソッ垂れには、強烈な灸を据えてやる必要があるよな?
既にレティに連絡して、クソ野郎の汚職やら何やらは分かってるんだが、其れだけじゃ足りねぇからな?……少しばかり協力して貰うぜドゥーエ?
「OKよネロ。このクソッ垂れには、社会的制裁をブチかました上で、最大級のトラウマを植え付けてやろうじゃないの……私のライアーズマスクを使えば簡単だしね…」
「以心伝心ってやつか?……何にしても、此のクソッ垂れには最大級の恐怖を味わってもらった上で地獄に落ちて貰わねぇとな……!」
ティアナは此れで大丈夫だろうが、後始末はキッチリしとかねぇとな。
ティアナが心の闇を有するに至った原因であるコイツは絶対に許さねぇ……狩らせて貰うぜ、テメェの意思と自我ってモノをな!!――覚悟は良いな、このクソ野郎!
――――――
No Side
「ふぅ……今日も良く働いたわい。」
時刻は17:00……ちらほらと、仕事を終えた局員が帰宅する時間帯に、嘗てティーダが所属していた部隊の隊長を務めていた男が、自分のオフィスに向かっていた。
恐らく、今日の記録なんかを整理する心算だったのだろうが――
「よう、久しぶりだな隊長さんよ?元気そうで、安心したぜ。」
「!!き、貴様はティーダ・ランスター!?……な、何故死んだはずの貴様が此処に!!!」
突如現れた、嘗ての部下であるティーダ・ランスターが目の前に現れた事で、完全に冷静さを欠いての混乱状態だ――死んだ筈の人間が現れたら当然なのだろうが。
「何故か……決まってるだろ?命懸けで戦った俺を無能と罵倒し、更には俺の妹の心に深い傷を刻んでくれた礼をするために、地獄から舞い戻って来たんだよ……!」
「ひぃ……!!」
「俺1人が罵倒されたってんなら、まぁムカついても我慢できるんだが、其れがティアナに影響を及ぼしたってのは見過ごせねぇんだわ、兄貴としてな。
ま、其れは機動六課の連中が何とかしてくれたみたいだから良いとして……テメェみたいのが生きてると、第二の俺やティアナを生み出しかねなんでな……来いよ。」
――ガシィ!!
「な、何をする心算だ!!止めろ、止めろー!!!!」
「連れない事言うなよ?俺と一緒に楽しもうぜ、地獄巡りツアーってやつをな!!」
「あ……やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!私が悪かった、許してくれぇぇぇえっぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「だが断る!!」
――プツン
ティーダの亡霊(?)が引き込み始めたところで、ティーダの上司であった人物は完全に気を失い、白目を剥いて口から泡を吐いての完全失神!其処に威厳などない。
「蓋を開けてみれば、只の小心者か……マジで笑えねぇ。」
「死者を罵倒する屑なんて、大抵はこんな物よね……てか身長165pで体重90kgって、普通に只のチビデブよねコイツって。」
其れと同時にティーダの亡霊はネロに変わり、オフィスの壁からはドゥーエが現れる。
何の事は無い、ティーダの亡霊と思われて居たモノは、ネロがドゥーエの『ライアーズマスク』でティーダ・ランスターに変装した姿であり、ドゥーエはギリギリまで姿を隠し
ていたらしい――此れもある意味で、最高のコンビネーションと言えるだろう。
「しっかしまぁ、良くもこんな方法を思いついたもんだわ……本気で尊敬するわよネロ。」
「アンタの『ライアーズマスク』が有ればこそだけどな。
ま、何にしてもコイツは此れでお終いだろ?コイツが関わってた不正や汚職その他の事はマスコミその他に送ったから、明日の朝刊トップは間違いねぇよ。
精々、命を懸けて戦ったナイスガイを冒涜した事を、牢獄とあの世で後悔しな……The one which can be made you is
only that.(アンタに出来るのは其れだけだ。)」
此れもまた、ティアナの話を聞いたネロなりの弔いなのだろう。
「序に良い機会だから覚えとけよ爺――人望のあった奴の死を冒涜した奴には、必ずそのしっぺ返しの破滅が訪れるって事をな……!!」
――ガァァァァァァァン!!
おまけとばかりに、気絶した男の横っ面に、ブルーローズでの一発をかすめさせ、顔に『一生消えない傷』を刻み込む――此れが、ネロ流の裁きと言う事だろう。
数日後――この男は、己の不正と汚職がミッドチルダ全域に報道され、管理局を懲戒処分になり、逮捕されて服役する事となった。
其れと同時に、ティーダ・ランスターの功績が改めて認められ、一人の心無い下衆のせいで貶められたティーダ・ランスターの名誉は、見事回復される事になったのだ。
つまりは此れで、ティアナの心の闇の原因となって居たモノは、全てこの世界から消え去ったのであった――
――――――
――なのはの告白から数日後
Side:ネロ
アレから数日後、今日も今日とて訓練な訳だが――
「スバルとノーヴェは、左右からクロスレンジでの格闘戦をダンテさんに挑んで。
其れでディエチは遠距離砲撃でレディさんを牽制!キャロとエリオとウェンディは、落とされない様に注意しながらバージルさんの対処を!!!」
ティアナの奴、まるで憑き物が落ちたみたいに良い顔してるぜ。
今の模擬戦だって、司令官として適切な指示を送って、ダンテ、バージル、レディのチームを相手に、互角以上に渡り合ってるからな――此れなら、大丈夫そうだよな?
「うん、今のティアナなら、もう道を誤る事は無いと思うよ。
今のティアナからは焦りも迷いも感じられないから、きっと自分の目標に向かってまっすぐ進んで行ってくれる筈だと思うの――あの事を話した甲斐が有ったよ。」
だろうな。
8年前の事は、なのはにとっても重い事だろうからな……その詳細を曝すってのは、相当な覚悟が有ったはずだ――その覚悟を決めた甲斐は確かにあったみたいだ。
今回の事で、六課の結束も強くなったみたいだし、此れが『怪我の功名』ってやつなのかもな……テメェの思惑通りにゃならかったみたいだぜ山羊頭が。
「どぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「おらぁぁあっぁ!!打っ飛べぇ!!!」
――ガキィィィン!!
「Ha-ha!!良いねぇ、嬢ちゃん!その気迫は嫌いじゃないぜ?なら、ガンガン行こうぜ?
本当なら、此処からのライブはR指定なんだが、特別に嬢ちゃん達は招待してやるからな――簡単にイッちまわないで、最後までついて来いよ?Let's rock!!」
寧ろテメェの下らねぇ横槍のおかげで、部隊の結束力は強固になった訳だからな。
っと、そろそろ模擬戦終わりにした方が良くねぇかなのは?スバル達だけなら兎も角、オッサン達が本気だしたら、訓練施設が吹っ飛んじまうぜ?
「だね……はい、其処までーーーー!!模擬戦終了なのーーーー!!!」
なのはの号令を受けて、模擬戦は終了。
結果としては引き分けだが、バージル、ダンテ、レディの3人を相手にして誰一人落とされなかったってのはスゲェよマジで……此れは指揮官の有能さゆえだろうな。
今回は引き分けだったが、ゴートリングの支配から解放されたティアナなら、この引き分けから得た物は多いだろうし、多少の自信には繋がったんじゃねぇかな?
「やるな嬢ちゃん……今回はちぃとばかし焦ったぜ……」
「次やる時には、必ず落として見せますよダンテさん……」
其れを示す様に、ティアナの表情にも余裕が見受けられるぜ。
若しかしたら、この前の事を経た事で、機動六課は真の意味で一つの部隊として纏まったって事なのかもしれねぇな。
だとしたら、機動六課は今正に最強の部隊になったってこったから、その真の力を見せてやろうぜ?――真の絆を手に入れた俺達に、敗北だけは有り得ないからな。
To Be Continued…
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