Side:ネロ


ったく、もう一度コイツを拝む事になるとは思っても居なかったが、何度見ても悪趣味な見てくれだなオイ?
こんなのが『神様』だって言うなら、なのはをはじめとした六課の女性陣は、揃いも揃って『大神様』になっちまうんじゃねぇか?つーか、神を名乗るなら、もっと見てくれも気
にしやがれってんだ――まぁ、そんな事を考える事は出来なかったのかもしれねぇけどよ。



「だとしても、此れは幾ら何でも悪趣味過ぎないかなぁ?
 見てくれの酷さだけだったら、シャマル先生の料理といい勝負なんだけど……何て言うかパッと見神々しいんだけど、その実態は吐き気がする位の邪悪な存在だよね?」

「否定はしねぇ。つーか、その通りだしな。」

こんなモンを『神』と呼ぶとか、精神が打っ飛んでるとしか思えねぇっての。
しかもこの見た目は、フォルトゥナでの一件の後でダンテから聞いたんだが、如何にもこの神とやらは、伝説の魔剣士『スパーダ』を模してるって事だったぜ?……其れが
マジだとしたら、冗談抜きで笑えねぇだろ?



「こんなのが伝説の魔剣士だったらガッカリしちゃうかな?って言うか、スパーダの悪魔の姿を模したにしても全然似てないよ?
 ダンテさんが、フォースエッジを装備した状態でデビルトリガー使った時の姿がスパーダなんでしょ?アレなら確かに『伝説の魔剣士』って言う感じで、カッコいい悪魔だっ
 たけど、此の『神(笑)』はダメだね。」

「だろ?もっと言うなら、人間の姿の状態だって、スパーダは可成りのハンサムだったんじゃねぇのか?
 生憎と会った事は無いが、少なくともこんな不細工な面はしてなかったと思うぜ?ダンテとバージル、其れに俺を見れば分かりそうなモンだ。」

「其れ、自分で言っちゃう?事実だとは思うけど。」



事実なら問題ねぇだろなのは?
其れよりも問題は、目の前の此の悪趣味なデカブツだ――コイツの見てくれはフォルトゥナでのアレと同じだが、もしもヴィヴィオがあの時のキリエと同じ状況に置かれてる
んだとしたら……



――ヒィィィィィィィィン……



「!……アレは、ヴィヴィオ!!?」



矢張り現れたか……!デカブツの額のコアの部分からヴィヴィオが!!
俺となのはに対する人質の意味もあるんだろうが、恐らくは其れだけじゃなく、此のデカブツを動かすための歯車としての意味合いもあるんだろうな?態々ヴィヴィオを攫っ
て行ったんだから、只の人質で終わるとは思えねぇぜ。

だが、そうなると、次は帰天したクソジジイに相当する奴が出て来る訳で……此れまでの事を考えると、来るのは帰天したスカリエッティだな――上等だ、やってやるぜ!
















リリカルなのは×Devil May Cry  黒き騎士と白き魔導師 Mission93
『狂科学者〜Jail Scaglietti〜』












Side:なのは


まるで巨大な大理石の石像みたいな不気味な『神』のおでこにあるクリスタルみたいな場所から現れたのは、攫われたヴィヴィオだった。
現れたのは上半身だけだったけど、その双眸は閉じられて頭は力なく垂れさがってる…誰が如何見ても、気を失ってるのは間違いない。若しかしたら意識も無いのかも。

其れだけでも怒りがこみあげて来るけど、こんな不気味なモノの中にヴィヴィオを放り込むだなんて、其れだけでも極刑モノなの!!
ねぇネロ、右腕伸ばしてヴィヴィオをあそこから引き剥がす事って出来ないのかな?



「多分無理だろうな。
 あそこまで伸ばす事は出来るし、ヴィヴィオを掴む事も出来るが、引き剥がすのはまた別だ。恐らく、俺が掴もうとしたその瞬間に、ヴィヴィオの身体はアレの中に取り込ま
 れて、触れる事が出来なくなるだろうからな。
 っつーか、此処でヴィヴィオの存在を出して来たのは、俺達の動揺を誘うのが目的なんじゃねぇか?」

「だとしたら性格最悪な上に、やる事がせせこましいね。
 私もネロも、常に戦いは全力全壊だし、どんな手を使ってでもヴィヴィオを助け出すから、そもそも人質なんて言うのは意味を成さないんじゃないのかな?」

「その通りだが、これは仕方ねぇんじゃねぇか?こう言う展開はある意味でお決まりだろ?
 大事な存在を人質に取られた主人公が窮地に追い込まれて、そんでもってそこからの逆転ハッピーエンドってのが最高に観客が盛り上がる展開って相場が決まってる。
 まぁ、其れに至るには、色んな展開があるのかもしれないが、少なくとも最終的に勝つのは俺達だ――逆に言うなら、テメェに待ってるのは敗北だぜ、スカリエッティ!!」



「クククク……気付いていたか、実に見事!流石は、魔剣士スパーダの孫にして、閻魔刀を受け継いだ黒騎士と称しておこうかネロ君?」



――ジェイル・スカリエッティ!!
今回の事件の黒幕であり、最悪のマッドサイエンティスト……!!



「Ha!テメェなんぞに褒められたところで嬉しくもなんともないぜ、ゲロ以下のクソ野郎。つーか、ラスボスを気取るなら、その悪趣味な紫色の髪と金色の眼を何とかしろ。
 其れ以前に、趣味の悪い青紫のスーツの上にこれ見よがしな白衣の組み合わせはマジであり得ねぇ。もう少しファッションセンスを勉強してこいってんだクソ科学者が。
 如何やら、可成り高いレベルで帰天したみてぇだが、その程度で俺となのはを如何にか出来ると思ったら大間違いだからな?テメェは、此処で死ぬのがお似合いだぜ!」



其れに対して言いたい放題だねネロ。(汗)
ダンテさんはおちゃらけ乍ら相手を挑発するし、バージルさんは言葉は少ないけど的確な一撃で相手を挑発するから、言いたい放題もスパーダの血なのかも知れないね。

だけど、ネロの言う事には同意かな?
ヴィヴィオは助ける、そして貴方は倒す!!私とネロが一緒に戦うって時点で、既に貴方の勝率は限りなくゼロに近い――此処は、大人しく投降する事をお勧めするの。



「確かに、管理局のエース・オブ・エースと、閻魔刀を受け継いだ次代の魔剣士の2人を相手にするのは、如何に私が帰天しているとは言っても厳しいだろうね。
 が、戦場の主導権を握っているのは私だと言う事を忘れて貰っては困るな?今や、ミッド市民の命も、そしてあの小さき聖王の命でさえも私の手の上に有るのだから。」

「!!」

「テメェ……ヴィヴィオのみならず、ミッド市民全てを人質にするとか、中々良い性格してやがるな?……クソッ垂れが。」



マッタク持ってその通りだよ。人質は悪党の常套手段だけど、此れだけの最悪な人質は今まで見た事も無いの……外道悪党は、正に貴方の為にある言葉なんじゃないの
かな、スカリエッティ?

貴方ほどの外道には、本当に初めて会ったの!



「褒め言葉と受け取っておこう高町なのは君。
 だが、ミッド市民とこの幼子の命を護る術は私を倒す以外にも存在している……すなわちなのは君とネロ君が、個の神に吸収されて、神の一部となる事だ。」




……何ですって?私とネロが、神(笑)の一部になる?……其れは、頼まれたってお断りだよ。大体、私達には何のメリットも無いどころか、デメリットしかないでしょ其れ?
大人しく吸収されたところで、貴方がヴィヴィオを解放して、ミッド市街への攻撃を止めるって言う保証は無い訳だしね。



「ククク、その通りだが。メリットとデメリットについては、其れは君達の捉え方次第だ。
 私が見る限り、君達は互いに愛し合っていると見えるが、其れを踏まえて敢えて言おう――愛する相手と一つになりたいとは思わないかね?
 この神に取り込まれれば、君達は文字通り一つになる事が出来る…愛する者と、一つに溶け合って世界を支配すると言うのは、とても素晴らしい事だと思わないかね?」

「思わねぇよタコ。つーか、テメェなんぞは引き籠って○○○○○○○でも鑑賞しながら××××こいてろクソッタレ。」

「ネロ?」

「大体にして溶け合って一つになるとか、冗談も程々にしやがれってんだ。教団のインチキ爺も似たような事言ってたけどよ。
 溶け合って一つになっちまったら、ハグもキスもセックスも出来ねぇだろ?俺はそんなのはゴメン被るぜ?――惚れた女は、この腕で抱いてこそ価値があるってモンだ。」



な、何て言うか物凄く、弩ストレートに言い放ったね?いや、私も大筋では同じ気分だけど。
確かに溶け合って一つになっちゃったら、ネロに抱きしめて貰う事も、キスして貰う事も出来なくなっちゃうからね……そんなのは、全力全壊で拒否一択しかないの!!
そんな訳で吸収されるのは、全力で拒否するよスカリエッティ。

「其れよりも、貴方はヴィヴィオを如何する心算なの?
 アレだけ派手な陽動を仕掛けて、本命の六課本部を壊滅させてまで攫ったヴィヴィオが、只の人質としての価値しかないとは思えない……ヴィヴィオに何をさせる心算な
 のスカリエッティ?態々此処まで来た私達に対して、其れ位の説明はしても、罰は当たらないと思うけど?」

「ふむ……其れもそうだね?何も知らないままに死に行くと言うのも不憫であるし――良いだろう、エース・オブ・エースとスパーダの血筋に敬意を表して答えよう!
 ヴィヴィオと言うこの少女は、私が作り出した戦乱期のベルカ――古代ベルカの王の複製体……言うなればクローン人間と言うやつだよ。」



ヴィヴィオが、古代ベルカの王のクローン!?……そんな、まさか!
でも、若しそうだとしたら、あの時のシャッハさんの様子にも納得できる――シャッハさんは知ってたんだ、ヴィヴィオが古代ベルカの王族の力を引いていた事を!!



「ヴィヴィオが古い時代の王様のクローンねぇ?其れが本当なら大したモンだ、学会に発表してみろよ、何か賞が貰えるかも知れないぜスカリエッティ。
 んで?その古代の王様を作り出して、お前は何をしたかったんだ?つーか、此れからする心算だったんだ?」

「彼女は只の王のクローンではない。古代ベルカに於ける悲劇の聖王、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトのコピー……そう、彼女こそがゆりかごの聖王なのだよ!!」

「ゆりかごの聖王!?」

「ゆりかご?なんだそりゃ?知ってるのかなのは?」



うん……前に無限書庫で古代ベルカの歴史を記した書物を読んだ事が有るんだけど、其処に『ゆりかご』に関する記載があったんだよ。
それで、ゆりかごって言うのは古代の、戦乱期のベルカに存在した最強にして最悪の決戦兵器なんだ――ゆりかごの玉座に座した王の命を使って全てを殲滅するんだよ。
そして文字通り、己の命を投げ出してゆりかごを起動してベルカの戦乱を終わらせたのが、歴史にその名を残した聖王女オリヴィエ……私の髪飾りの本来の持ち主なの。



「マジかよ……そりゃあ確かに最悪の決戦兵器だな?人の命のを糧にとか、狂ってるにも程があるぜ。
 だが、其れがヴィヴィオを攫った事に如何関係して来るんだ?このカミサマとヴィヴィオは無関係なんじゃねぇのか?」

「ところがそうでは無いのだよネロ君。
 アグナス君から聞いた話では、この神は魔剣スパーダと、スパーダの血をもって完全起動に至るとの事だったが、流石の私でも神掛かった魔剣を完全再現する事は出来
 なくてね……その部分を補う意味で、ゆりかごの機構を転用させて貰ったと言う訳さ。
 つまり、この神は彼女の力で50%の力を発揮できるのだ!無論、動かす代償として彼女の命が必要には成るが、其れもまた些細な事さ、新たな世界の幕開けにはね。」



――!!ふざけないで!!人の命が些細な事だなんて、よくも言えたモノだねスカリエッティ!?
命は、何にだって一つで代わりなんてない!!例えそれが誰かのクローンであっても同じ事なの!!フェイトちゃんが、アリシアちゃんのコピーじゃなくて『フェイト・テスタロ
ッサ・ハラオウン』として生きている様にね。
如何に聖王女オリヴィエのコピーだって言っても、ヴィヴィオはヴィヴィオだよ、オリヴィエじゃない!!



「なのはの言う通りだぜ、腐れマッドサイエンティスト。ヴィヴィオはヴィヴィオだ、それ以外の何者でもねぇ、例えテメェが作り出した存在だとしてもだ。
 其れでもヴィヴィオを、古代の王様のコピー扱いして、ゆりかごとか言うトンでも兵器の機構を内蔵したカミサマの動力にするってんなら――良いぜ、テメェ諸共このカミサ
 マをぶち壊してヴィヴィオを助け出すだけだ。
 こんだけふざけた事をしてくれやがったんだ、此処と次第によってはぶっ殺されるくらいの覚悟はしてたんだろ?クソ以下のマッドサイエンティストさんよぉ?」

「今の話を聞いて、1mmほども貴方を許す気が無くなったよ……覚悟は出来てるよね、ジェイル・スカリエッティ?」

初めて魔法と出会ってから10年間、色んな人達と出会って来たけど、貴方はその中でも最悪極まりない、正真正銘の絶対悪だよスカリエッティ!!
確かに過去にも『悪』と言える事をした人は居たけど、プレシアさんはアリシアちゃんを取り戻そうとして悪の道を選び、アインスさんは終わらない呪いのせいで闇に堕ち、キ
リエさんは故郷の為に『悪』となってしまう道を選んだ……誰もが、悪に身を落としてでもすべき事の理由があった!

だけど、貴女には其れが無いよスカリエッティ!!――有るのは、狂った欲望だけ……そんなモノは、今此処で粉砕してやるの!!レイジングハート!!!



『All right Master.Deviltrigger Drive ignition.』

「「I go by full strength!!(全力全開!!)」」

「「Do it!!(やってやるよ!!)」」



――轟!!!



私もネロも、デビルトリガーを発動してやる気十分!!そして、私とネロがデビルトリガーを発動した以上、貴方には万に一つも勝ちはあり得ないよスカリエッティ!!!



「此れは……ふむ、素晴らしい力だ。――ならば、その力見せて頂こうか?」



――ギュウゥゥゥゥ……



む……ヴィヴィオが額のクリスタル部分から中に入って行った……これ以上は姿を曝す心算は無いって言う事なんだろうね……今更な気もするんだけど。
でも、此れで決意が固まった――貴女は此処で叩きのめすよスカリエッティ!!ヴィヴィオを取り戻してミッドの平和を護って見せる!私の魂に誓ってやり遂げてやるの!








――――――








No Side


そうして始まった戦闘は、先ずはスカリエッティが先手を取って来た。


「帰天の力を知るが良い!」


帰天によって得た圧倒的な魔力に物を言わせて、独立機動するビット兵器とでも言うモノを複数展開し、更に己を魔力のバリアで包み込んでいたのだ…用意周到である。

だが、だからと言って怯むネロとなのはではない。
スカリエッティの布陣を見たその瞬間に、なのはとネロの中では如何戦うかが組み立てられており、そして互いにパートナーが如何戦おうとしているのかも理解していた。

別に凄い事ではない。ネロとなのはは、武装隊時代から常に戦闘での最前線を切って戦って来た上に、剣士と魔導師の典型的なトップ&バックのコンビであるが故に、態
々口に出さずとも、互いにすべき事は分かっているのである。


「さぁ、裁きの時は来た!」


スカリエッティの右手と、ビット兵器から無数の火炎弾が放たれると同時に、なのははバックジャンプで其れを躱し、躱すと同時に12個のアクセルシューターを撃ち出し、火
炎弾を相殺し、ビット兵器にも攻撃を仕掛けて行く。

ネロはと言うと――


「「Eat this!!(喰らいやがれ!!)」」

「なに!?一瞬で……瞬間移動と言うやつかね!?」

「「正解だ、冴えてるじゃねぇか?……つっても、出来るようになったのは今だけどな!!」」


一瞬でスカリエッティに肉薄し、レッドクイーンでの重い一撃を魔力のバリアに叩き付けていた。瞬間移動――『エアトリック』を使って、数mの距離を一瞬で詰めたのだ。
尤も、ネロ自身が言っているように、完璧に出来るようになったのは今この瞬間だった。

一度無意識に使ってから、意識的に使えるようにトレーニングはしていたが、この場所に来て、更にスカリエッティの攻撃に対して瞬間的にエアトリックの完成に至ったので
ある――或は、ヴィヴィオを助け出すと言う思いが、エアトリックを完成に至らせたのかもしれないが。

ともあれ、此れで戦闘の布陣は決まっただろう。
なのはは砲撃射撃魔導師として、ビット兵器に対処し、本命のスカリエッティは、ネロがエアトリックを駆使して徹底的に張り付いてクロスレンジの戦闘を仕掛けると言う布陣
であり、またこれは理にもかなっているのだ。

なのはは10年にも及ぶ戦闘の経験から、魔力のバリアは魔力砲撃で貫くよりも、アームドデバイスによる強烈な物理攻撃で叩き割る方が効率が良いと知っていた。
だから、ネロにスカリエッティを任せたのだ。六課最強のパワーを有するネロならば、バリアを砕いてスカリエッティにダメージを与えてくれると信じていたから。

そして、己は徹底してビット兵器の攻撃に集中する。


「「次から次へと鬱陶しい事この上ないね……だったら纏めて吹き飛ばすだけなの!!」」

『Accel Shooter Around shift。』



――ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!




計6基のビット兵器は、縦横無尽にフィールドを移動して攻撃を仕掛けてくるために全てに対処するのは難しいが、個々に狙うのが難しいのならば、逃げ場がない位に攻撃
すればいいだけの事であり、なのはは自身を中心に上下左右360度全てに高密度の絨毯爆撃とも言うべき射撃魔法を展開!!

その効果は凄まじく、ビット兵器からの攻撃を相殺するのみならず、ビット兵器を一時的に沈黙させ、この施設其の物すらも適当に破壊していたのだ。恐るべしである。



一方でネロは、此方は苦戦と言う訳ではないが、予想以上のバリアの堅さに少々手間取っていた。
フォルトゥナでの経験から、レッドクイーンでの空中コンボからキャリバーに繋いで、ルーレットスピンを喰らわせればバリアが破れると思って居たネロだが、スカリエッティの
バリアは、教皇の張ったバリアよりも遥かに強固だったらしいのだ。

とは言え、其れで怯むかと言われれば其れは否だ。


「「I'ts strong.(頑丈だな。)だが、バリアが堅くなってる事くらいは予想済みだ――出番だぜ久遠!!」」

「任せて。燃えろぉぉぉぉぉ!!」

「なにぃ!?」



――ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!



ネロが右腕を突きだすと、何とそこから久遠が現れ、強烈無比な火炎放射を略ゼロ距離で放って見せたのだ。此れはバリアに包まれていると言っても堪った物ではない。

実はここに来る前に、ネロは久遠を己の右腕に『収納』していたのだ。
悪魔の右腕は『魔具や其れに準ずるモノを取り込める』という特性を利用し、なのはの使い魔であり、同時に最高位の妖怪である久遠を右腕に忍ばせていたのである。

ネロとなのはの2人で来いと言う事には違反してると思うだろうが、そもそも其れは相手方の言う事であって、従う儀理は全く無い上に、今この瞬間までは間違いなく『なの
はとネロの2人だけ』だったのだから全然全く問題は無いのだ。
そもそも『使い魔は連れてきちゃダメ』とは言われていないのだから合法だ。誰が何と言おうと、合法だ。ルールの穴を突いた戦術なのだ。


「クハハハハハハ……まさかそう来るとは思わなかった。見事だ、実に見事だよ!!
 だが、其れでも私を倒す事は出来ないと知り給え!!これが、神の力を手にした者の力だ、その身で存分に味わうと良い!!!」



――ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!



しかし乍ら、スカリエッティは高熱に顔を歪め乍らも余裕の態度は崩さずに、回避不能の不可視の衝撃波を放って来た。
其れの威力は馬鹿に出来る物ではなく、なのはのバリアジャケットやネロのコート、久遠の巫女服を破損させていくが、ネロもなのはも久遠も、その程度では怯まない!!


「「うざったいんだよテメェは!!」」

「大人しくヴィヴィオを返せ!」


傷つきながらもスカリエッティに肉薄し、ネロは悪魔の右腕での渾身のパンチを、久遠はありったけの力を込めた鋭い飛び蹴りをブチかます!!



――バリィィィィン!!!



して、その攻撃の効果は抜群!
スカリエッティを覆っていたバリアが砕かれ、スカリエッティの本体が顕わになったのだ。こうなれば決定的なダメージを叩き込む事が可能だろう。

無論、この好機を逃すなのはでは無い。


「「レイジングハート!」」

『All right A.C.S Standby.Strike Frame.』

「「エクセリオンバスターA.C.S――ドライブ!!」」


すぐさま、レイジングハートをエクセリオンモードに変形させ、A.C.Sを展開して、バリアを失ったスカリエッティに突撃する。
だがスカリエッティも、距離を取って直撃を避けようとするが、其れは叶わぬ結果となった――身体が動かなかったのだ。

答えは簡単だ、避けようとしたスカリエッティに対してネロが右腕を伸ばし、魔力の腕でスカリエッティを抑え込んだのである。此れならば動く事が出来はしないだろう。



――バガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!



かくして必殺の一撃はスカリエッティに突き刺さって、最大級のダメージを与えるに至り、スカリエッティを空から引き落とす事にも成功したのだ。
更に此れだけではない!!


「「オラァ!!!」」


――バキィ!!!


地上に落ちたスカリエッティを、ネロがスナッチで引き寄せ、其のまま破壊力抜群の右フック一閃!!
そして其れを皮切りに、左右の拳でスカリエッティの事を、殴る、殴る!息を吐く暇さえ与えずに殴る!ボクサーも顔負けのラッシュで殴る!!殴って殴って殴りまくる!!
誰が何と言おうと漢はパンチなのだ!!ストレート、フック、アッパーカットと繰り出される多様なパンチのラッシュに、なのはですら見入ってしまっていた。


「「You who aren't God are a devil!(神じゃない、テメェは悪魔だ!)」」


その連続ブローのフィニッシュを飾るのは、渾身の力を込めた右腕のアッパーカット!!完全に顎を捉えた、その一撃の破壊力は計り知れないものがあるだろう。
現実に、このアッパーカットで、スカリエッティは数mもブッ飛ばされたのだから。


「「Hey!hey!hey!Come on!babes!(如何した如何した、来いよオラ!)」」

「「Isn't it the end yet?(まだ、終わりじゃないよね?)」」

「此れで終わりだったら拍子抜けだけどね。」


正に圧倒的!攻撃を受けても尚、この程度の傷が如何したと言わんばかりの3人は正に最強にして無双と言えるだろう。
何よりも、ブッ飛ばしたスカリエッティに対して中指を立てるネロ、サムズダウンするなのは、首を掻っ切る仕草をする久遠が、スタイリッシュな事この上ない位にカッコイイ。



「クククク……フハハハハハハッハハハハハハッハハハ!!!素晴らしい!!実に素晴らしい力だよ高町なのは君、ネロ君、そして使い魔の少女よ!!
 だからこそ、改めてその力が欲しくなった!!――見せてあげよう、神の力の一端を!!!」


しかし乍らスカリエッティは未だ健在。
必殺級のネロのバスターを喰らってなお無事である辺り、完全に人ではなくなったのだろうが、そうであっても殆ど無傷であると言うのは、完全に驚愕に値する事であろう。



「フハッハッハッハッハ!!クライマックスは此れからだ!!」


そして、言うが早いか、自身を神の額のクリスタルに埋め、そして中に入り込む。



「「ネロ、此れって若しかして………」」

「「あぁ、なのはの考えてる通りだと思うぜ?……未完成ではあるが、神(笑)を起動させるんだろうな……此処までフォルトゥナと同じとは笑えねぇよ。」」



――ヴィン!!


次の瞬間、神と呼ばれた巨大なモノには、その目に不気味な光が宿った――50%の状態ではあるが、スカリエッティ手によって起動したのだ、最悪にして最強の神が。


「「来やがったか……此処からが本番だ、C'mon!Babes!(来いよオラ!!)」」

「「使える力は何だって使えば良い、だけど私とネロとくーちゃんが、其れを粉砕するの!!そして、全てを粉砕してヴィヴィオを助け出すだけだよ!!」」

「お前じゃなのはとネロには勝てない。」


対して黒き騎士と白き魔導師、九尾の使い魔は一切怯みはしない。不撓不屈の闘志を宿しているが故に、相手が何であろうとも怯む事など有り得ないのである。


「死ぬが良い!!」


そして、神からの強烈な右拳での一撃を持ってして、決戦の第2ラウンドのゴングが打ち鳴らされたのだった。








――――――








Side:チンク


……まさか、こんな事になってしまうとは……ドクターは、もう昔のドクターではなくなってしまったのだな――魔の力に魅入られ、正真正銘の悪魔となってしまったのだな。
昔のドクターならば、絶対にこんな事はしなかった。マッドサイエンティストな部分は有ったが、其れも愉快犯で済む程度であり、こんな異常な事はしなかった、絶対に!!

魔の力に魅入られ、悪魔となってしまった以上、ドクターを救う術はないだろう……ならば、貴方の娘として引導を渡してやるのがせめてもの務めだ。

申し訳ありませんドクター。
妹達を護るため、そして何よりも貴方の魂をほんの少しだけでも護るために、私は貴方を殺します!!この最大の親不孝を、如何か許してください――もう、これ以上悪魔
となってしまった貴方の事を見ていたくはないんです――!!











 To Be Continued… 




やはり待ち構えていたスカリエッティ。
美姫 「それでもなのはとネロのコンビを前にしては分が悪いみたいね」
だな。とは言え、奥の手を持っていたようだが。
美姫 「この辺は流石に一筋縄ではいかないわね」
果たして勝利を手にするのはどちらなのか。
美姫 「それも気になるけれど、最後のチンクの言動も気になるわよね」
だな。果たして、どうなるのか。
美姫 「次回も楽しみにしてますね」
次回も待っています。



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