『リリカルなのは StrikerS IF〜tentative title〜』
10話 「break―束の間―」
襲撃による被害は主要な施設が殆ど半壊か全壊し、奇跡的に死者は出なかったが――これは恭也が暗殺の実行者のドゥーエを捕まえ
た為だった。実行者が一人しかいないという事はドゥーエがいかに信頼されていたか、ということでもあった――重傷者が多数存在
した。その中にはレリックを守ろうとしたが物量の前に屈したシャマルやザフィーラも含まれていた。
だが二人は監査官であるヴェロッサ・アコースによって助け出され、難を逃れた。
あの後、恭也の予想通りなのはから怒られ、そしてまた泣かれた。
しばらくすると、はやてと共にやってきたシグナムとヴィータにも詰め寄られた。流石にこの二人は泣く事はなかったが普段表情の
変化が乏しいシグナムさえ怒っているのが見て取れた。
そして近づいたかと思うと二人は恭也へと殴りかかるがよけられる。ヴィータはよけんな、と騒ぎ立てたが避けた本人は、なのは達
はともかく二人は洒落にならない、と避け続けた。
三人の鬼ごっこも終わると最大の難所が訪れた。恭也にとってはある意味、なのはよりタチが悪かった。
その恭也がたじろんだ相手はフェイト・T・ハラオウンであった。
フェイトは恭也の目の前まで近づくと、怒ることなくただただ瞳を閏わせ続けた。恭也にとっては、なのはみたいに泣いたり怒った
り、はやてやシグナム達のように怒りを示してくれた方がありがたかった。
泣きそうで泣かないフェイトに声を掛けようにもうまく言葉がでず、助けを求めようと周りを見るとはやてだけニヤニヤと笑ってい
た。彼女はあの時に恭也を殴ったので満足したようだ。
周りでは救助隊に運ばれているスバルと、それに付き添うティアナがヘリに乗り込む所だった。二人は、はやてに事情を聞きたそう
な顔をしていたが今は無理だ、と判断したのか大人しく救助員に従った。
手当てを済ませたスバルとティアナが、崩壊した機動六課の隊舎の代わりに、とあてがわれた仮詰め所に着いてしばらく待機してい
るとエリオとキャロ達が合流する。彼らはルーテシアに六課で保管していたレリックを奪われ、逃げられたとスバル達に申し訳なさ
そうに話していた。エリオ達が話し終えると、ちょうどなのは達が帰ってきた。その後ろには恭也達の姿。
夜も更け、時間を確認するとあれから3時間程経過していた。心なしか恭也に傷が増えたような気がする。
エリオとキャロは、フェイト達と気さくに話す見知らぬ二人の姿を確認するとスバルへ問う。
「スバルさん、あの……」
「なに? エリオ、キャロもどうしたの?」
「フェイトさんとお話されてる男性ってどなたですか?」
「あと後ろの綺麗な方も」
スバルはその方向を見てみると、フェイトがシグナムとヴィータ、そして恭也と話していた。エリオ達は親が男性と楽しく会話する
姿を見るのは珍しく、最近では幼馴染の考古学者しか覚えはなかった。
「あぁ、あの人は恭也さん……なのは隊長のお兄さん、後ろの女性はお付のメイドで……えっと、ノエ……何だっけティア?」
「ノエル・綺堂・エーアリヒカイトさん。スバル……あんた失礼よ」
「えへへ、ごめん」
「当然、なのは隊長や八神隊長と同郷の人で、隊長や副隊長達とは昔から面識は合ったみたい……とは言っても横から聞いていただ
けだから詳しい事は何にもわからないけどね」
「へぇ、フェイトさん、あの人の事好きなんだ……」
「えっ、そうなの?」
「だってあんな笑顔私たちや、なのはさんにだって見せた事ありませんよ」
スバルとティアナの話を聞き男の正体が分かると、もう一度フェイトを見る。
フェイトもシグナム達も満足したのか、さっきとうってかわってにこやかに会話をかわしていた。
「恭也、落ち着いたら久しぶりに手合わせ願えないだろうか。総合戦はともかく近接戦闘で対等に戦えるものがシャッハぐらいでな
……シャッハに不満は無いが、お互い少々物足りなくてな……聞けばシャッハとは手合わせしていたと聞いたぞ」
「駄目ですよ、シグナム……恭也さんはお疲れなんですから。それよりも恭也さん、私の新しいモード見て頂けませんか? ぜひ、
恭也さんのご意見を聞きたいんですけど……駄目ですか? 恭也さんがドイツへ行かれてからずっと基礎を繰り返していたんです
よ。それに新しいモードも恭也さんを参考にさせてもらいましたからそちらも見ていただきたいんです」
「あ、ああ、後で見させてもらう。シグナムもな」
こんな娘だったか、と海鳴に居た頃の事を思い出し恭也はフェイトに圧倒されながら答える。
仮詰め所、と言ってもそこは比較的に他と比べて被害が少なかった隊舎のホールだった。
その決して広くないホールに機動六課の隊長を始めオペレーターなど内勤者も集まっており、更にクロノやカリム、シャッハが集ま
っており、事情をよく分かっていない者達は普段見ることの無い上司の存在が気になるのか、時折覗き見ながらも緊張していのが伺
えた。
そんな中、恭也が軽く周りを見回し彼らの視線が自分に集中しているのを確認すると口を開く。
「さて、知っている者もいるが、まずは此方から名乗ろう。俺の名は『月村 恭也』旧姓は『高町 恭也』……名前で分かるだろう
がこの愚昧の兄だ」
恭也が隣に座っているなのはの頭に手をやりながらそう言うと、なのははやめてよと手を振り払う気配を見せたが目尻がだらしなく
下がっているのが誰の目にも明らかだった。
『エース・オブ・エース』の他に『白い悪魔』『鬼教官』等の厳つい異名を不本意ながら持つなのは。
その彼女が見せる普段と違う一面に、面識の薄い者達は面を喰らっていた。
「後、なのはの関係でフェイトやはやて達とも昔からの馴染みだ。それと俺の後ろに控えているのが……ノエル」
「はい、私は月村家の侍女長と恭也様と奥様付きを勤めさせていただいております『ノエル・綺堂・エーアリヒカイト』と申します。
以後、恭也様共々よろしくお願いいたします」
ノエルがエプロンドレスの前で手を組みながら深くお辞儀をすると、男性局員の過半数が見惚れているのが見て取れた。
はやてが咳払いをわざとらしくすると恭也へ話をうながす。
「まず最初に言っておこう、君たちが『ナンバーズ』と呼んでいる少女達とは別の少女――俺の偽者と一緒にいた少女だが、あの子
の名は『雫』俺と妻である忍の娘『月村 雫』だ。だが今のあの子は『雫』であって『雫』では無い。と言っても分かりづらいだ
ろうな。何をどこから話そうか………………そうだな、5年程前の事だ――――」
恭也の謎掛けのような問いと謎の少女の正体に、戸惑い小さくざわめきだすが、語れば分かる事とそれを無視し恭也は語りだす。
続く
とりあえずは、一時だけれどもほのぼのと。
美姫 「とは言え、いつまでもそんな感じではいられないのよね」
事態は何も解決していないから。
美姫 「とうとう恭也の口から語られる真実の一旦」
これにより、どんな展開が。
美姫 「次回も楽しみにしてますね」
待っています。