『リリカルなのは StrikerS IF〜tentative title〜』
序章
『世界は変わらず 慌ただしくも 危険に満ちている』
薄暗く広い空間に甲高い音が響く……
恭也は目の前の襲撃者に大きな声で呼びかけた。
「くっ!! 目を覚ませ雫!!」
雫と呼ばれた少女は無表情で剣術とは呼べず、ただ刀を振り回しながら襲ってきた。
ノエルの慌てた声が部屋に響いた。
「おやめください、雫お嬢様」
雫は声のする方へ顔を向けると自分と声の主との間に赤い血の色の様な宝石が浮かんでいるのを確認した。
突如、雫の体は向きを変えてノエルの方へ走り出し、間にある宝石へと視線を向けたまま……
恭也は雫が何を狙っているのか察し、自分より近くにいるノエルへと命じた。
「ノエル! それを奪われるな!」
主の命を受けた瞬間にノエルも前方の宝石に向けて弾けたように飛び出した。
「はい、恭也様!!」
間一髪、雫より先に宝石に届くと確信したノエルは手を伸ばした瞬間、今まで物陰に身を潜めていたエリザがノエルの行動に気づき、
静止の声を上げた。
「だめ!! 今それに触ったらっ!!」
普段の状況ならばノエルは止まったかもしれなかった。しかし、弾丸のように飛び出したノエルの勢いを止める事は出来なかった。
宝石に触れた瞬間、レリックを中心として光が溢れ出し近くに居た恭也達は光へ引っ張られていった。
恭也は光の方へ目をやると丁度、雫が吸い込まれようとしていた。近くに居たノエルも時間の問題と考え、離れていた為か光の力に
影響されていないエリザとさくらに目をやり声を掛けた。
「っ! さくらさん、エリザさん忍の事よろしくお願いします。必ずもど……」
恭也の声が途切れた瞬間、光が中心に集まっていったかと思うと光の粒が弾け飛び、そのまま掠れていくように消えてしまった。
「恭也君!! ノエル!! 雫!!」
光が収まった部屋にはエリザとさくらしかおらず二人の声以外何も聞こえなかった。
『聖王教会』中央教堂、そこで女性は主神に祈りをささげていた。
その女性――カリム・グラシアは敷地内に異常な魔力反応を感じ、修道女のシャッハを伴いその反応があった場所へと向かった。
たしか、この事に関することが予言に詠まれていた気がする。
特に災いとは無関係な内容だったので気に留めていなかったが、と思いながらもいつの間にか早歩きから小走りになってい
た。聖王教会の裏庭、そこは木々や草花があふれ楽園という名が相応しい場所があった。
しかし、そこにはその楽園にそぐわない所々破けている黒を基調とした服を着た男性とメイド服を着た女性−恭也とノエルが倒れて
いた。カリムとシャッハは、警戒しながらもまず近くにいた恭也を抱き起こし意識の確認を行おうとしたが、抱き起こした瞬間にう
めき声が腕の中から聞こえてきた。
「っ! こ……こは?」
恭也はうめき声を上げながら瞼を重そうに上げていった。
序章 終
もう一つの物語が今、語られる。
美姫 「こちらはなのはサイドとは異なるお話」
二つの物語が交差するまでに、何があるのか。
美姫 「とっても気になる次回は……」
この後、まとめてすぐ!
美姫 「それでは、また後で〜」