『リリカルなのは StrikerS IF〜tentative title〜』
IF×IF 番外編「Das Dienstmadchen sah aus」
『世界は変わらず 慌ただしくも 危険に満ちている』
現状を思い返しましたら、この言葉が突然思い浮かびました。どなたが仰られた言葉でしょうか。
いつ学習した言葉か分かりません。ですが記憶にあったこの言葉程、的を射た言葉を存じ上げておりません。
どういたしましょう。実は私、先日の夜にとんでもない物を見てしまいました。
その日の夜、この屋敷の主人である旦那様と奥様の寝室で、その部屋で敬愛する旦那様が、奥様以外の女性を抱かれていたのです。
しかもそのお相手が、こちらも敬愛する侍女長で私のお姉さまにあたる方だったのです。
奥様はその日は不在でした。所用で、親戚のお宅へお出かけになり、そのままお泊りになられた日だったからです。
旦那様とお姉さまの会話から察するに、随分前から続いている関係のようでした。
どういたしましょう。
あぁ、申し遅れました。私の名前は『アイシス・綺堂・エーアリヒカイト』と申します。
ここ『月村家 ドイツ邸』のメイドを務めさせていただいております。
少しだけ、この『月村家』に住む人々を紹介いたします。
現在、このお屋敷には旦那様の恭也様、奥様の忍様、先日1歳のお誕生日を迎えられました雫お嬢様。姉であり、侍女長でもあるノ
・・
エルお姉さま、そしてアイシス事、私。後、私と同機で姉妹でもある『アルテッツァ』と『セリカ』がおります。
旦那様と奥様の故郷でもある日本の海鳴市には、奥様の妹であらせられます『すずか様』とすずか様付きの『ファリンお姉さま』や
海鳴の家を警護しております『イレインお姉さま』他にも、後数人の姉妹たちがおりますが、ここでは割愛させて頂きます。
旦那様と奥様は、ご結婚された後に海鳴市からここドイツへと旦那様の仕事の都合上、移り住まわれました。
侍女長であるノエルお姉さまは、海鳴とドイツにいるメイド達の中では最古参のメイドで、イレインお姉さま以外のメイドは全て、
ノエルお姉さまを元に奥様が造られました。言わば奥様は私たちにとっては創造主にあたる存在なのです。
その奥様の夫であられます旦那様は、私たちなんかを分け隔てなくお優しく接して下さっております。
もちろん、奥様もとてもお優しいです。
そんな旦那様とお姉さまが、奥様がお留守の最中に逢引されていただなんて…………他の姉妹に相談すべきでしょうか。それとも、
奥様に直接ご報告を……いやいやいや、駄目です。奥様がお怒りになられたら、旦那様の命が危ないです。
以前、某ソングスクール出身で、世界的にも有名な歌手の方との食事風景をパパラッチされた時には、それはもう言葉では言い表せ
ないお怒り様でした。実際は護衛任務とコンサートを無事に終えた慰労会で、旦那様とその歌手の方以外にもスタッフが何人かおら
れたようですが、カメラマンが意図的にツーショットに写るようにしたようです。
………………申し訳ありません。話がそれてしまいました。
どこまで話しましたか……あぁそうでした。奥様に相談できないなら旦那様とお姉さまに直接……いやいやいや、同じ事でした。
やはりアルやセリカにも確認を……しかし、もし知らなかったら余計な事を言う事に……
あぁ、私は一体どうしたらいいのでしょうか。
「こんな所で何をしているのですアイシス。掃除は終わりましたか?」
「だっ、旦那様! ノエルお姉さまっ。しっ、失礼いたしました」
「はしたないですよ。みっともない声をあげて」
「ノエルが不意に声を掛けたからだろう……アイシス、すまない。ノエルが驚かせてしまったようだ。仕事の最中だったのだろう」
「そっ、そんな旦那様! 私ごときに勿体無いお言葉です」
「これくらい気にするな」
「いえ、そんなっ」
「……旦那様、そろそろお出になりませんとCSSのツアーの警備打ち合わせに遅れてしまいます」
「そうか、わかった。ノエル、車を頼む」
「はい」
「アイシスも、あまり無理はするなよ」
「はいっ、ありがとうございます」
もう、見えませんね。ふぅ、驚きました。まさか問題のお二人とお会いするなんて……それにしても、旦那様はお優しすぎます。
…………はっ! 危うくトリップしてしましそうになりました。危なかったです。
しかし、待っていても問題は解決しておりません。私には今日中に解決しなければならない理由があるのです。
実は明日、月に一度の『定期調整の日』なのです。しかも、奥様とノエルお姉さまが直々に調整していただきます。
明日の午前中までに何らかの対処をしませんと、奥様とお姉さまに行動記録を見られてしまいます。
見落とされる可能性もありますが、私はセリカみたいに希望的観測に賭ける真似はできませんし、記録の改竄もお二人にはすぐに判
別されてしまいます。
もし、その記録を見られでもしたら泥沼です。混沌です。いえ、ブラックホール並に抜け出せなくなりそうです。
なんとか今夜中を目処に対策を立てませんと……
夜です。深夜です。真夜中です。正確に言うなれば『定期調整の日』の当日、午前0時です。
私は電気の消された中、月明かりと暗視モードの中、屋敷の廊下を歩いています。
私達メイドには夜の当番があります。と言っても艶っぽい物ではなく『寝ずの番』『夜番』とも言い、屋敷の見回りです。
今夜の当番はセリカです。決して私の番ではありません。その私が休眠モードに移行していないのは対策が出来ていないからです。
約12時間後にはメンテナンスに入ります。どうにかしないと……
気付けば旦那様と奥様の寝室の前まで来てしまいました。
あれっ? 中から音が漏れて……って、どうやら旦那様と奥様の睦言のようです。
やはりお二人はとても仲がよろしいです。それなのに何故、旦那様とお姉さまは……いやいやいや、考えるのは後にしましょう。
気付かれる前に離れませんと………………ふぅ、どうやら気付かれていないようです。まだ会話が聞こえてきます。
旦那様と奥様がとても楽しそうに話されているようです。
あっ、2ラウンド目に入ったようです。
とても、いえ、少しだけ興味ありますがお邪魔するわけにはいきません。
そう思いながら、私は歩き出します。後ろからかすかに奥様とノエルお姉さまの嬌声が聞こえてき、少し頬の熱が上がって――――
………………えっ?
絵っ!? 江? どういう事でしょう。現状に演算が追いつきません。とにかく情報収集です。
私は脱兎の如く、それでいて音を立てずに扉の前へと耳を貼り付けました。集音システムの感度も上げ忘れておりません。
中からは確かに声が聞こえてきます。旦那様と奥様と……ノエルお姉さまの嬌声が。
何やら会話をされているようですが……私の能力では内容までは聞き取るのは無理のようです。気になります。
ん? という事は……旦那様とお姉さまとの関係を奥様がご存知なら、私の心配も杞憂に終わったようです。一安心です。
しかし、一体何をお話されているのでしょうか。
「ん?」
「どうかしたの、恭也」
「いや、少しな」
「聞き耳を立てているアイシスの事でしょうか?」
「あっ、やっぱり? アイシスだったんだ」
「なんだ、忍も気付いていたのか」
「うん、これでも耳はいいから……それにしてもあの子が最後になっちゃったわね。恭也、今度あの子も仲間にいれようか。残って
いるのはあの子だけでしょう?」
「それでは、私はあの子が旦那様と奥様に粗相をしないように調きょ……いえ、教育を施しましょう」
「ノエル姉さま、私もお手伝いしますわ」
「お姉さま……私も手伝う」
「アルテッツァ、セリカ。わかりました、それでは明日のメンテナンス後から行いましょう」
「…………程ほどにしておけよ」
う〜ん、うまく聞き取れません。流石は旦那様達の寝室です。防音設備も完璧です。大きな声以外はよく聞こえません。
会話している人数が増えたような気がいたしますが気のせいでしょう。恐らく反響したせいと思われます。
しかし、これで安心して今日のメンテナンスを迎えられそうです。
遅くなりましたが部屋に戻って休ませてもらいましょう。なんだか、今日はいい日になりそうな予感がします。
「ノエル姉さま、こちらをお使いになられては如何でしょう」
「……それはあなたの趣味……」
「うるさいですわよ。セリカ」
「落ち着きなさい、アルテッツァ。セリカも茶化さないように」
「「はい……」」
「……お前たち、本当に程ほどにしておけよ」
「いいじゃない、恭也の為にでもなるんだから」
「むぅ……」
アイシスの運命や如何に……
秘密を知ったつもりで、実は自分だけ知らなかったというオチ
続かない
あとがき
こんにちは。そして読んでいただきありがとうございます。
「リリカルなのは StrikerS IF〜tentative title〜」の番外編です。
題名の「Das Dienstmadchen sah aus」はドイツ語です。翻訳サイトでつくりましてんで正しいのかは不明ですが……
訳しますと「メイドは見た」です。最初は日本語で「家政婦(メイド)は見た」だったんですが、ちょっと味気なく感じてしまい、ど
うしようかと思ってましたら舞台がドイツだったのを思い出し、ドイツ語にしてみました。
アイシスは本編の過去編で少しだけ台詞があったメイドの事です。
オリキャラの名前って付けるの迷いますよね。
私は凄い迷いました。結果、メイド三人娘の名前は「リリなの」らしい名前の付け方になってしまいました。
最初はノエルやファリンの様な名前にしようと思ったんですが、ノエルは直ぐに分かりましたが、イレインやファリンは由来が全然
わからなかったんで、開き直って他のTVのキャラと同じ名付け方にしました。
隠すまでも無いのですが(検索したら出てきますし)某社の製品名です。
今回は情景描写を全く無視し、いやいや決して楽したいからと言うわけではありませんよ。ホントウデスヨ。
ただ、情景描写を省くと、説明台詞や人物の口調で判断が付く様にしないと駄目なことに気づき、メイド三人娘はとても分かりやす
い口調になってしまいました。
とにかく、色々と試行錯誤がありましたがアイシスの視点で話が進む、という風にしてみました。
その方がオチに繋げやすいかなぁ、と思ったんですがどうだったでしょうか。
オチテイナイノハキノセイデス orz
書いていて楽しかったんで、またテンションが上がれば書いてみようと思います。
それでは失礼します。
アイシスの口調や正確が凄く良い。
ああ、和むと言うか何と言うか。
美姫 「それにしても、月村家、それで良いの」
まあ、奥さんである忍が許しているのなら良いんじゃないか。
美姫 「酒池肉林ね」
あははは。この後、アイシスも無事に仲間入りしたのかな。
美姫 「番外編、ありがとうございました」
楽しませてもらいました〜。
美姫 「それでは、この辺で」
ではでは。