『リリカルなのは StrikerS IF〜tentative title〜』
IF×IF 番外編U「バレンタイン」
ドイツ郊外 月村邸 厨房にて
2/14 AM4:00
「アイシス、これでよろしいの?」
「うん、そう。次はお鍋に生クリームと蜂蜜を入れて……って、ちょっ! それヨーグルトじゃない!」
「……アイシス、泡立て器取って……」
「えっ、あぁいいよ、はい」
「アイシス、次は?」
「えっと、そのまま火をかけながらゆっくりかき混ぜて……」
「……アイシス、ラム酒」
「…………はいはい」
「アイシ――」
「ちょっと、アルもセリカも少しは自分でやろうよ……アルはレシピは渡したでしょう? 上達しないよ」
「よっ、よろしいでしょう。それに知っていますでしょう。わたくしは二人と違って調理に特化していない事は……」
「……アイシスの方が近いから……」
「それに、アイシスはもう作り終えてますのでしょう」
「それはそうだけど……」
「……アイシス、ボウル取って」
「うぅ、もういいわよ」
おはようございます、私の名前は『アイシス・綺堂・エーアリヒカイト』と申します。
今はここ、厨房でチョコレートを作っております。当然、今日のバレンタインの為です。
渡す相手ですか? 旦那様に決まっているじゃないですか。アルとセリカも同様です。
しかし、何故こんな早朝に調理しているのかと申しますと、昨晩は奥様と雫お嬢様がここをお使いになられていたからです。
お二人もチョコレートをお作りになられておりました。自分達で作りたい、との事でしたので私達はお手伝しておりません。
お二人も旦那様にお渡しするようです。奥様は当然と致しまして、雫お嬢様は同級生にはまだ好い人はおられないようです。
まだまだ旦那様が一番のようですね。当然です。旦那様以上の男性がそうおられるとは思いません。
……失礼いたしました。少々興奮したようです。
話を戻させて頂きます。兎も角、昨晩は厨房が使用出来なかった為、この時簡に調理する事になりました。
私は料理は得意ですので、直ぐに作り終え、後は固まるのを待つばかりなのです。セリカも調理は得意な方なのですが……なにぶんあ
の性格ですのでマイペースで作業を行っております。
それと、アルことアルテッツァですが……彼女は少々料理に関しては不得手としております。いえ、下ごしらえ等の準備は出来るので
すが肝心な所でミスをしてしまいます。先ほどのように調味料等を間違えてしまいます。
原因は奥様がそういう風に仕上げてしまったからなのですが……未だに理解出来ません。
一度アルが奥様に何故こういう風に仕上げたのか、と尋ねておりました。
おもしろそうだったから、と一言で返された時のアルの顔は不憫でなりませんでした。直後に奥様は旦那様に怒られておりました。
奥様は学習すれば大丈夫と仰っておられましたので、アルもなるべく料理に参加しますがあまり上達する気配がありません。
不敬とは思いますが、この点につきましては奥様を疑います。
おや、アルももう直ぐ終わるようですね。型に流し込んでいます。
「あれ、セリカのチョコは?」
「……冷やしてる」
「相変わらずマイペースですわね。アイシス、後は冷やすだけですわね」
「ええ、そうよ。お疲れ様、見ていた限り問題は無かったわ。それなら旦那様も喜んで頂けるわ」
「旦那様と言えば、毎年の事とはいえチョコが沢山届いておりましたわ」
「……なのは様達からも……すずか様経由で届いていた」
「CSSの方々からも届いていたわね」
「先日の護衛対象の方のご息女からも届いておりましたわ」
「流石は旦那様ですわ」
「……二人とも……そろそろ朝食の用意をしないと」
「えっ、もう6時なの? 早く片付けないと」
「きゃぁ、ラム酒のビンが倒れましたわ」
「……中身が少なかったから……少ししかこぼれていないわ。アルは片付けておいて……私とアイシスで朝食の準備するから……」
「ええ、お願いしますわ」
その日の晩、夕食後に旦那様へチョコレートが渡されました。
奥様は後で渡す、との事でしたので雫お嬢様から渡されておりました。
お嬢様は市販のチョコを溶かして型に流し込んだだけの物でしたが、そのハート型に愛が込められていたのが解りました。
ノエルお姉さまはシフォンケーキを、アルは生チョコ、セリカはトリュフチョコを、私はショコラフォンデュを……
甘いのが苦手な旦那様にこの日は酷だとは思いますが、近しい人からの贈り物は全て小さく、そしてビターのチョコですので旦那様も
問題なく食べて頂けます。アルのチョコを食べた時に僅かに眉をひそめられたのは気のせいではないでしょう。アルは気づいていなか
ったようですが……気になります。
あっ、奥様がお戻りになられた様です。が、奥様を見た瞬間思考が飛びました。
ノエルお姉さまが『ソレ』に気付き、いち早く雫お嬢様の目を手で覆いそのまま部屋を出て行きました。恐らくお嬢様の部屋へとお送
りした思われます。グッジョブです、お姉さま。
「恭也〜、私からはこれよ」
「……一応聞くがチョコかそれは」
「これ? そうよ。私のはチョコレートフォンデュよ」
「……で、何にチョコをつけるんだ」
「この格好みてわからない? 勿論、ワ・タ・シ」
奥様はチョコレートソースが入ったボウルを手に入ってきました。が、その格好に一同驚きました。表情の乏しいセリカも目を見開い
て口も開けていました。
奥様の格好は水着姿で、その体にリボンを巻かれておりました。
あっ、旦那様が天井を見上げました。
旦那様は顔を戻すと、その瞬間姿が消えたかと思うと奥様の背後に回っておりました。
そして、背後に回ったかと思うと拳で奥様の頭を叩きました。
「ったぁ、何するのよ」
「殴った」
「もう、こんな事に『神速』使わないでよ」
「……なら使わす様な事をするな」
「ちょっとしたお茶目なのに……あっ、丁度よかった。ノエルあれを出して……本当はこっちのフルーツよ」
「はい」
「最初から素直にそうしておけば良かったものを……」
旦那様、悪党の臭いがプンプンです。
しかし、驚きました。奥様は何故こうもメチャク……いえ、突拍子……いえいえ、凡人には思いつきもしない事を思いつくのでしょう
か。対象の殆どは旦那様ですので私たちには被害は少ないですが……
…………えっ? あぁ、アルの事は運が悪かったとしか言いようがありません。
旦那様は奥様にそう言いつつも、そのチョコを美味しそうに食べておりました。
今年もなんとか無事(?)にバレンタインは終わりそうです。
終わり
おまけ
「旦那様、アルのチョコに何かあったのでしょうか? 眉をしかめておいででしたが……」
「見ていたのか……」
「はい」
「……酒を入れすぎだ」
「え?」
「チョコより酒の味が強かった」
「うっ、そっ、それは……ちょっと……」
あとがき
こんにちは。そして読んでいただきありがとうございます。
「リリカルなのは StrikerS IF〜tentative title〜」の番外編です。
現在2/14の24:46……なんとかバレンタイン中に書き上げましたw
時系列としましてはエピローグ後の話です。
地球に帰還し、再び日常へ戻った後の話です。
元々この話は番外編Vに当たる予定だったんですがUが途中で止まってしまった為に、急遽予定していたバレンタイン話を書き上げま
した。
あぁ、アルコールの力は偉大です。再認識しました。
P.S.
前回の番外編後にアイシスは仲間入りしておりますのでアシカラズ
チョコだけにちょっと甘いお話〜。
美姫 「月村家、平和で良いわね」
うんうん。ほのぼのとした感じもあって、とっても良かったです。
アイシスがやっぱり可愛い!
美姫 「はいはい。まだ番外編は続きそうね」
とっても楽しみです。
美姫 「次も楽しみにしてますね」
待ってます。