「志貴君、少し休んだ方がいい。」
「でも、アルクェイドの側についていてやりたいんです。」
戦いの後、耕介達は気を失ったアルクェイドを連れて、一旦さざなみ寮に戻った。耕介は恭也とリスティを休ませため、それぞれ部屋に無理やり押し込んだ後、彼女を寝かせた部屋に戻り、今度は自身かなり消耗しているにも関らず、休もうとしない志貴に対して休むように説得する。
「気持ちはわかるよ。だが、今度、敵が攻めてきた時、満足に戦えないようでは彼女を守る事もできない。それでは本末転倒だろ?」
「・・・・・・そうですね。じゃあ、少し休ませてもらいます。」
ためらいながらも耕介の言う事に納得し、志貴はそこを自由に使っていいと言われた空き部屋に移動する。それを見送る耕介とシオン。シオンはアルクェイドを診察していた。最も、それで出来る事など微々たるものなのだが。
「それで、アルクェイドさんの容態はどうなんだい?」
「自然界からの魔力供給がかなり弱まっています。おそらくは対真祖用の特別な概念武装で貫かれたのでしょう。」
「対真祖用の概念武装?そもそも真祖を殺せる概念武装は存在しないって聞いたけど。」
「殺せるという意味ではないに等しいです。実際、彼女はこうして生きています。しかし、強者には強者の弱点があるのです。真祖の強さはその神性の強さによる退魔力能力と、自然界からの無限のエネルギー供給、おそらく、彼女を突き刺した剣は、その供給を断ち、さらに神性の強いものに効果的になる概念武装だったのでしょう。もっとも、それを差し引いても桁外れに強力な概念武装なのは間違いないでしょうが。」
シオンの答えに納得し、次の問いかけを、最も重要な問いかけをする。
「なるほど・・・・・。それで、彼女はどうなるんだい?」
「供給は完全に断たれた訳ではないので、時間をかければ回復できる筈です。1日や2日でという訳にはいかないでしょうか。」
「そうか、とりあえず命には別状ないんだな。」
その答えにほっとする。だが、戦力的にかなり危うい状況になったのには変わりない。耕介はその事を切り出した。
「ところで・・・・アルフレッドの奴は次、いつ攻めてくると思う?」
「・・・おそらくは今夜にでもでしょう。時間はこちらに有利に働きます。真祖が回復し、こちらが万全の態勢を整えたならばそれこそ二十七祖クラス、それも上位のものを複数つれてきでもしなければ対抗できないでしょう。最も、今現在アルフレッドの方にこれ以上の余剰戦力がないのならば攻撃を控えてくる可能性も0ではありませんが。」
推論を述べた後、最後に別の意見を付け加える。最も、彼女自身それはあくまで0では無い可能性としか捕らえていず、耕介もその同じように考えた。
「楽観はしない方がいいだろうね。夜までにどのくらい回復できる?」
「今日はまだ三日月ですが、私は比較的消耗が少ないのですし10時くらいまでにはほぼ全快にできると思います。貴方の方は外気功というのはどのくらい回復できるものなのですか?」
「睡眠と合わせてやれば霊力は6割、体力は8割と言ったところかな。ただ、身体のダメージはすぐには抜けない。完全回復には2日はかかる。うかつだったな。まさか、昼間から死徒が攻めてくるとは思っていなかったよ。すまない、現状は俺が模擬戦何かしようとした性だな。」
そう言って申し訳なさそうな顔をする耕介。だが、シオンはそんな彼を擁護した。
「いえ、確かに提案したのはあなたですが賛同したのは私達です。責任はあなた一人にある訳ではありません。それに、あの戦いによって私達はお互いの実力を理解しあい、それを信頼できるようになりました。それに既に終わってしまった事を言っても仕方がありません。」
合理的な考え方の中に見え隠れする気遣い。その答えに耕介はほっとする。
「ありがとう。そう言ってもらえると少し救われるよ。確かに今はこれからの事、考えないとな。」
「はい、その方が建設的です。現状の戦力には不安があり、短期の回復は不可能。と、なれば、援軍が欲しいところですが、戦力の補強にだれが当てはありませんか?」
「戦力か・・・・。」
当てが無いわけでは無い。耕介の知り合いの中で恭也やリスティに近いレベルかそれ以上の実力者は10指を超える。その中でこの街に住む者だけでも4,5人はいる。彼女等は、頼めばおそらくは力を貸してくれるだろう。
「いない事もないんだが。」
耕介は考え込む。この街で死徒や鬼とも戦えるであろう実力を持つものは今、この場にいるものを除けば耕介の知る限り全部で7人。美由希、フィリス、さくら、ノエル、そして寮生である那美、久遠、ティムである。しかし、美由希は実戦経験の面で、フィリスは精神面でそれらと戦わせるには不安がある。それにフィリスに対しては二度とこんな血生臭い事には関らせたくないというのもあった。それから、さくらには実は助っ人を既に頼んだ事があるのだが、夜の一族である忍に何らかの危険が迫る恐れがあるので彼女を守りたいという理由から断られてしまった。夜の一族の血は死徒にとって上質な餌なのでこれは無理なからぬところである。よってノエルも同じ理由で駄目になる。つまり当てにできるのは寮生の3人のみ。だが、那美は未熟だし、ティムは性格、能力共に現在はあまり戦闘向きではない。最もティムの場合、その本来の力はアルクェイドにすら匹敵しうる可能性があるのだが。
「ここの寮生に退魔士の娘と妖狐がいる。ただ、退魔士の娘、那美はまだちょっと未熟だから戦力としては正直役不足かな。」
複雑な表情で答える耕介。そして、その答えを聞いて、シオンは驚いた顔をした。
「妖狐が!?なるほど、貴方が管理しているという訳ですね。・・・・。」
「いや、俺じゃなくて、那美って娘のほうなんだけどね。それはそれとしてシオンの方は誰か心当たりはないのかい?」
今度は耕介が尋ねてきた。シオンは少し考えた後で―――――最も分割思考のおかげで彼女以外にとっては一瞬だが―――――答えた。
「国内で今、現在居場所がつかめるのでは2人です。ですが、一人は少々説得に苦労しそうですし、もう一人は無闇に動けない理由があります。それに経験や精神面という意味ではやはり不安が残りますね。」
シオンが思い浮かべたのは秋葉とさつき。しかし、秋葉は今の状態を話せばそのまま志貴を屋敷に連れ帰ろうとしかねないし、さつきは現在、遠野家に居候しているが、それは一応、保護、監視という名目なのであまりあちこち移動させるのは望ましくない。
「そうか。」
そこで、ふうっ、と溜息をつく耕介。その時、ちょうど美緒と舞、那美の風校トリオが帰ってきた。そしてそれから2時間の間に他の全ての寮生がそろった。
(後書き)
リンディ:今回のゲストのリンディです。
柿の種:うむ、よろしく頼む。
リンディ:今回名前だけでてきたティムさんですけど。アルクェイドさんに匹敵する力って?
柿の種:うむ、彼女は美緒シナリオの10年後EDで名前と簡単な設定だけでてきたちょっと特殊なドイツ系ハーフの少女というキャラなのだが、性格、能力にオリジナルな設定を加えてある。その能力ははっきり言って反則そのもの。まあ、今はその大半が使えない状態になっているがな。ヒントは琥珀さんの能力*100+アルクェイドの空想具現化をルートした能力と言ったところか。
リンディ:あのーまったくわからないんですが。
柿の種:まあ、俺も自分で言っててちょっとよくわからんが、答えを言ったらおもしろくあるまい。最も本編でその真なる力が発揮されるかどうかはわからんが。彼女に関してはその力が暴走し、さざなみ寮の全員でそれに立ち向かったという事があり、外伝かなんかでその辺は書くかもしれん。
リンディ:そうですか。ところで他にはどんな寮生がおられるのですか?
柿の種:現在の寮生は耕介と愛を除いて現在8名と一匹、後おまけで御架月だ。具体的に上げると、愛、リスティ、真雪、美緒、麗、舞、アリサ、ティム、那美、久遠だ。このうち、耕介と既に関係があるのが、愛、リスティ、真雪の3人。今後そうなる可能性が高いのが美緒だ。他のメンバーについては今後、話の中で耕介や他の寮生等との関係を語っていこうと思う。
リンディ:確か槙原さんは8股かけているとか。
柿の種:あ、あれは9股の間違いだった。しかも、さらに増える可能性もあるな。
リンディ:・・・・・・もう、何も言えませんね。
柿の種:まあ、気にするな。そういう訳で今回はこの辺で。
物凄くシリアスな展開…。
美姫 「ドキドキね」
果たして、アルフレッドはすぐにやって来るのか。
美姫 「そして、耕介たちの戦力補強は?」
ドキドキのワクワクで次回を待つとしよう。
美姫 「そうしましょう」