「洸桜刃ああああ!!!!!!」

 

硬直が溶けた瞬間、最も速い対抗手段を持っていた耕介が全力の霊撃を放つ。そして、それが男の放った魔術と激突。両者の生みだしたエネルギーが相殺を引き起こし、その余剰エネルギーが爆発を起こす。

 

「ほう。今のを防ぐか。」

 

男が関心したような口調で言う。だが、そのプレッシャーは今だ消えていない。

 

「・・・・・恭也君、あいつは俺が相手をする。」

 

「!!・・・・わかりました、お願いします。」

 

耕介が一歩前に出て言った。その言葉に恭也は一瞬驚くが、すぐに決断し任せた。それは耕介に対する信頼。そして“信頼するという覚悟”。この状況で逃げるという選択はない。そして耕介は今現在、この中で一番強く、今の恭也では目の前の男と戦うには非力でしかない。ならば、今、彼がやるべきことは彼を信頼し、任せ、他の敵を片付ける事。そして次の瞬間、耕介、恭也、志貴の3人は同時に3方向に飛び出した。

 

 

 

 

 

グサグサグサ

 

シエルの投げた黒鍵が地面に突き刺さる。それをかわす志貴。

 

「くそっ!!」

 

吐き捨てる志貴。敵に回して改めて感じるシエルの強さ。そして、機械的な眼、動き。彼女をこんな風にしたアルフレッド。そして彼女をなかなか救えない自分の不甲斐なさ。全てに腹が立つ。

 

ビュッツ

 

再び飛んできた黒鍵をかわす。だが、今度はかわしきれず腹にかする。支配されていても記憶は残っているのか、志貴に対してシエルは徹底的に遠距離戦を挑んできていた。彼女に対する“支配”を“殺す”為に近づくどころか、彼女の“支配”を“視る”暇すらない。

 

(冷静になれ!!)

 

自分に叱咤する志貴。シエルを“殺さない”事を強く意識するあまり、彼は“殺人貴”としての強さも冷静さも引き出せないでいた。その為、基本的な身体能力、技量の差がもろに出てしまっている。

 

ビュッツ

 

「ぐっ。」

 

またもシエルの黒鍵が飛ぶ。今度はかするどころか足に完全に黒鍵が突き刺さってしまう。機動力が殺され、うずくまる志貴の眼に無数の黒鍵が映った。

 

 

 

 

 

「あなたが一人で私の相手をするというのですが?」

 

アルフレッドが恭也に向かって言う。その声はいつもの嘲笑するような感じでなく不機嫌だった。

 

「本当に私もなめられたものです。」

 

彼は恭也を見下していた。神咲最強の剣士でも、直視の魔眼の持ち主でも、アトラスの錬金術師ですらなく、裏の世界では完全に無名な、そして先日自分に敗北したばかりの恭也が単独で戦いを挑んできた事を舐められたと感じていたのだ。呪文を唱え炎の魔術を放ってくる。

 

ブワア

 

その言葉を無視し炎をかわした恭也は逆に彼を挑発した。

 

「片腕の無いお前くらい俺でも十分だ。」

 

「・・・人間が!!調子に乗るな!!」

 

その言葉でアルフレッドは歯切しりをし、怒りをあらわにする。いままで距離を置いて戦ってきたのをやめ、直接飛び込んでくる。そしてそれこそ恭也の狙い通り。

 

御神流奥義の歩法・神速・二段がけ

 

神速を二段がけして最高速にまで一気に加速する。

 

御神流・奥義の五・雷徹

 

霊力が付与された刃を心臓に突き刺す。そこでその刀を手放し、もう一刀を一度鞘に収めると、そして、同じように霊力を付与された新たな一刀と共に抜く。

 

御神流・奥義の弐・虎切

 

抜刀術から放たれるその技が左右から挟みこみ、アルフレッドの頭部を切り裂いた。心臓と頭部、その両方を同時に潰されれば、不死性の高い一部の例外を除き、吸血鬼といえど、生きてはいられない・・・・・筈だった。

 

「!!」

 

後方から感じた殺気、とっさにしゃがみこむ。後ろから放たれた炎が彼の肩を掠める。火傷の痛みに耐えながら後方に向き合う恭也。そしてその数メートル先には無傷のアルフレッドの姿があった。

 

「あなたが貫いたのは投影という初歩の魔術を改良して作った偽者ですよ。あんな安い挑発に乗るとお思いですか?あなたは雑魚ですが、先日は雑魚となめて少々痛手を追わせられましたからね。見下しても侮ったりはしません。」

 

最後はかわされたとはいえ、自分の策に相手が見事に嵌ったことがうれしいのか、アルフレッドはおかしそうに笑った。そして、恭也に向かって魔術を放った。

 

 

 

 

 

ガキィィィィン

 

2本の剣が打ち合う音がする。正体不明の男は前回アルフレッドがアルクェイドを貫いた剣を持ち、耕介と互角に打ち合っていた。その事実に耕介は二重の意味で驚く。一つはその男の技量の凄さに。妖魔などの人でない存在は基本的に武術を用いない。生まれながらにして強大な力を持つ彼等にとってそれは必要ないものだからである。だが、目の前の男は耕介と同等の技量を持っていた。

 

ギィィィィィン

 

そしてもう一つの驚きはそんな相手に対して自分が互角に戦えているという事実。目の前の男の今も感じるプレッシャーはアルクェイドにすら匹敵する。そんな相手が武術まで修めている以上、その実力は自分を遥かに上回ってしかる筈なのだ。

 

(手を抜いているようには見えない。と、すると他に何かあるのか?)

 

戦いながら思案する。感じるプレッシャーが錯覚とは彼にはどうしても思えなかった。最初、相手が魔術を使ってきたことから最悪相手が“魔法使い”ですらある危険性を考慮する。

 

(ならば、一気に決める!!)

 

相手の出方がわからない。ならば、それを出す前に決める。そう決意して耕介は螺旋を発動した。

 

 


(後書き)

うーん、今回は3主人公に思いっきり活躍させて見せました。・・・・・ってあまり活躍してないですね。どっちかというと苦戦してますね。ラスト2話、戦いの決着、そして・・・・・っといったところです。一気に飛ばすんでお付き合いお願いします。

(今回も対談はお休み。ゲストが思い浮かばない・・・・・。)



ラスト二話、頑張って下さい〜。
美姫 「皆、苦戦してるわね〜」
まあ、言うならば第一部のラスボスだしな。
美姫 「苦戦も仕方がないか〜」
果たして、どんな決着が着くのか。
美姫 「楽しみにしてます〜」
ではでは。



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