「耕介様!!大丈夫ですか!?」

 

「あ、ああ。なんとかな。」

 

御架月の叫びに答える耕介。攻撃を受けた瞬間、御架月との同調率を最大にひきあげ、ひらたくに言うと意識を残したまま憑依させた状態にし、癒しの力を内側から最大限に癒すことで出血を止めた。だが、それによる体力、霊力の消耗は避けられないし、傷が完全に治った訳でもない。

 

「お前、一体何者だ?」

 

今は10メートル程間合いを取って向き合った男に問いかける。空想具現化は地球の自然意思の体現である真祖やごく一部の二十七祖にしか使えない。そんなものを目の前の男は使ったのだ。

 

「悪いが、それに答えるつもりは無いな。」

 

男は剣を振り上げる。耕介は剣を構える。この状態ではもう長くは戦い続けられないし、もう一度空想具現化を使えば耐えられない。

 

(御架月、こうなったら鬼滅刃(きめつじん)を使うぞ。)

 

鬼滅刃、それは無尽流奥義にして魂すらも完全に滅する秘技、そしてかって神殺しをなした技。

 

(!!しかし、今の耕介様の体では奥義の併用は不可能です。)

 

(やらなきゃ、負ける。そうなったら・・・・・真雪さんにぶっ飛ばされるからな。)

 

そこで耕介は心の中でおどけて返した。それに一瞬、呆れた表情をした御架月は笑って答えた。

 

(・・・・くすっ、そうですね。僕も真雪様に折檻されるのはごめんです。)

 

(悪いねえ。頑固な主人で。)

 

(いえ、慣れてますから。じゃあ、いきましょうか。)

 

(ああ!!)

 

心の中で答え、飛び出す。相手との距離が詰まる。揺らぎ、空想具現化の予兆を感じ取る。

 

 

―――――――――――――神咲無尽流奥義・螺旋―――――――――――――――――

 

 

耕介とそして御架月が今、可能とする限界の3.2倍にまで時間を引き延ばす。そして祝詞を呟いた。

 

「神気発祥・・・・・・」

 

さきほどのように生み出される刃、本来なら一瞬で発生し、生み出された瞬間、目標を切り裂く筈のそれらは引き伸ばされた時間の中で一瞬のタイムラグを持ち、完全に具現化される前に御架月によって破壊された。

 

「神咲無尽流・奥義・・・・・・」

 

今度は爆発が生み出される。だが、そこで脚部を強化し、一気に加速。爆発が“生み出されて”から“発現”するまでの間にその位置を駆け抜ける。

 

「破神・・・・・・」

 

御架月が完全なる無色の光を発する。それは全てを滅する光。

 

鬼・滅・刃!!

 

男が盾にした剣を切り裂き、そのまま男を真っ二つに切り裂いた。そしてその瞬間、御架月から光が消えた。

 

 

 

 

 

耕介と男は1メートル程の間合いを置いて向き合っていた。魂すらも削りとられ、なお男は生きていた。だが、そのダメージは深い。そして耕介もほとんど力尽きていた。互いに最後の一撃を繰り出すタイミングを狙う。その時だった。

 

「ル、ルーカス・・・・・た、助けて・・・・・。」

 

アルフレッドが空間転移してその場に現われたのだ。彼が呼んだルーカスというのが耕介の目の前にいる男の名前なのだろう。アルフレッドのその肉体は原型を留めていない。恭也の放った“閃”はその刀に宿る霊力を数倍に増幅して一気に放出し、それを受けたアルフレッドは半死半生の状態で逃げ出してきていた。ルーカスもまた死に掛けの状態なのに気付いてすらいない。そして、次の瞬間、ルーカスは予想外の行動にでた。

 

ザクッ

 

アルフレッドに噛み付き、その血を吸ったのだ。自身への攻撃以外、もはや気を配る余裕の無かった耕介はその動きに反応できなかった。

 

「な・・・・・・。」

 

アルフレッドが灰になっていく。そして、多少、力を取り戻したルーカスが耕介に向き合う。耕介は死を覚悟した。だが、そうはならなかった。

 

ビュン

 

黒い塊、黒鍵がルーカスに向かって飛んできたのだ。それを紙一重でかわすルーカス。

 

「私を操ってくれた借りは返させてもらいますよ。」

 

志貴によって支配から解放されたシエルが鬼を全滅させたシオンと久遠から事情を聞き、戦いで力を使い果たしてしまった恭也と志貴に変わって救援に駆けつけたのだ。

 

「・・・・・・流石にこの身体で代行者の相手は不利だな。ここは退散させていただこう。」

 

「逃がすと思っているのですか?」

 

シエルが再び黒鍵を投げる。だが、その瞬間、ルーカスは虚空に消えた。

 

「しまった。血を吸った事でアルフレッドの力を奪って・・。」

 

ルーカスの気配が周囲から消えた事に気付き、歯軋りをするシエル。しかたなく、黒鍵をおさめると、耕介の方に向き合う。そして、耕介は彼女の前で血を吐いて倒れた。

 

 

                         黒の月と白の月、第1部・完 

 


(後書き)

柿の種:今回のゲストはなのはちゃんだ。

なのは:あわわ、どうもです。

柿の種:んで、今回と言うか、まずは後書きを休んだ前回から。

なのは:前回、お兄ちゃんが凄く強そうでしたけど、刀だけで本当に魔法とかにも勝てるんですか?

柿の種:勝てる、というか、魔法とか霊力の使い方を習わないでということで使わないということじゃないんだな。

なのは:?どういうことですか?

柿の種:Fateという作品で武術を極めた先に、魔法と同等の効果を生み出した佐々木小次郎というキャラがいる。恭也もその域に達しつつあるのだ。力を数倍に増幅というのもその原理だ。

なのは:はー、なるほど、そうなんですか。

柿の種:で、次は今回だが。

なのは:あの、ルーカスって人は一体どんな人なんですか?アルクェイドさんと同じ空想具現化とかまで使ってたみたいですけど。

柿の種:今回、アルフレッドの血を吸ったことで吸血鬼であることは明らかになったが詳細はまだ秘密。ただ、このシリーズを通しての最大の強敵である事だけは明かしておこう。

なのは:そうなんですか。ところで耕介さんが何か大変な事になってるみたいですけど大丈夫なんですか?

柿の種:その辺は2部が始まれば明らかになるようになってるから、それまではやっぱり秘密だな。

なのは:ところで、2部はお兄ちゃんが主役って事ですけど。

柿の種:うむ、2部はレギュラーが一新される。今まで出番の無かった3のキャラやオリキャラが多く登場し、また月姫キャラも出てくる予定だ。

なのは:と、いうことは私やお母さんも出番があるんですか?

柿の種:一応予定ではな。クロノやリンディさんも出てくる予定だ。

なのは:それで、更新はいつごろ?

柿の種:キリのいいところなので、他の連載がある程度まとまり、2部の構想が整理されてからになるので少し間が空く事になると思う。

なのは:そうなんですか。なるべく早く頑張ってくださいね。こんな作品でも少しぐらいは楽しみにしている方が(多分)いるんですから。

柿の種:・・・・・きついな。まあ、頑張る。それでは、皆さん、ここまでお付き合いありがとうございました。これから先もよろしくお願いします。




一部が終ったけど、最後に耕介が−!
い、一体、どうなるんだー!
そして、2部が今から待ち遠しいーー!
美姫 「そして、アンタはうるさいのよ!」
ぐげぇっ!……お、俺もなのちゃんみたいに優しい相手が良いよ。
美姫 「悪かったわね、優しくなくて」
がっ!ちょっ!ま、待…、や、やめ……。
がっ、げっ、ぐっ、ごっ、がはっ!ま、ま…………。
美姫 「ふんっ、だ」
……ピクピク。
美姫 「柿の種さん、1部完結おめでとうございます。2部も楽しみにしていますね〜♪」
……ちょ、ちょっとは手加減をしろよ。
美姫 「もう目を覚ましたの?」
な、何を言うか。わざと意識だけは刈り取らないようにしていただろう。
美姫 「何の事かしら〜。それじゃあ、またね〜」
ぐぬぬぬ。まだ、身体が言うことをきかない……。



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