「恭也!!」
屋敷の中からエリザに遅れて現われた忍が恭也の方を見て叫ぶ。慌てて駆け寄ろうとする彼女をエリザは片手で制止し、その代りにクラリスが恭也を彼女のもとまで運んでくる。その間、二人の間はエリザのみに注意を払い動かなかった。
「クラリス、あなたは恭也君の回復に専念して。」
「しかし、それではエリザ様お一人で二人を相手にする事に。」
エリザの指示にクラリスが意見を発する。恭也の傷は深い。ある程度回復するまででも数十分は魔術をかけつづけ魔力の大半を費やさなければならない。つまり、エリザだが、その指摘に対してエリザは妖艶ともいえる笑みを浮かべながら答えた。
「私があの程度の二人に負けると思う?」
「・・・・失礼しました。」
エリザの言葉にクラリスは引き下がる。そして呪文を唱えると魔術をかけ始めた。忍はその様子を心配そうに見守る。
「さて、ほんとに好き勝手やってくれたわね。『剣を使うもの』アイルトン・ビルバーグ、それと、『結界殺し』カシュー・キリオネス。」
エリザはクラリスが承知したのに満足すると、二人を睨みつけて言った。エリザは二人に見覚えがあった。共にルーカスの傘下の夜の一族である。一族で厄介者扱いされているルーカスだが、封印されてなお強力なその実力とカリスマ性から傘下につく者も少なからずいる。そして、目の前の二人はその中でもてだれ。剣であれば何でも使える特異能力者の剣士と結界解除のプロフェッショナルな魔術師。
「それにしても、エクスカリバーなんてそんな伝説級の代物どこから持ってきたの?それにカシュー、いかにあなたが結界の解除が得意であっても私の屋敷に張ってあった複数の結界、あれを私に探知させずに破れるとは思えないわ。その手に持っているナイフに仕掛けがあるのかしら。」
二人を観察して言ったエリザの言葉に対して、カシューは舌打ちするとナイフをおさめる。その行動事態エリザの言葉を認めたと同じで魔術師としてはともかく、それ以外に対しての男の未熟さが感じさせられた。
「さて、ここまでやってくれたんだから同族とはいえ容赦はしないわ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・覚悟しなさい」
言葉と共にエリザは飛び出した。魔術による強化をかけ、夜の一族としての力を全快にした夜のエリザの動き、それはまさしくアルクェイドにも見劣りしないものだった。
「ちぃ!!」
凍結された腕を解除し、エクスカリバーを振るうアイルトン、仮にも『剣を使うもの』とまで言われた剣士、その特異性をも含めた実力は一級だった、だが真祖の身体能力と達人級の腕前を持ったエリザの前にあっという間に防戦一方になる。
「追尾する光の蛇!!」
そこでカシューが魔術で援護する。味方をさけ、敵だけを狙う光の鞭が蛇のようにうねりくねりながらエリザを狙う。
ビュン
その攻撃を飛び上がってかわすエリザ。だが、光の鞭はついてくる。
シュッツ
エリザの円月刀がそれを切り裂く。今、彼女が持つのは昼間恭也と戦った時に使ったものとは違い、刀身事態が強力な魔力を秘めた魔剣だった。光の鞭はあっさり霧散する。
「約束された・・・・」
「аине!!」
エクスカリバーの力を再び発動させようとするカシューに対し、それよりも早く魔術で炎を生み出すエリザ。カシューはそれに飲み込まれる。
「ぐぬうううう。」
苦悶の表情を浮かべながら、抗魔力でその炎を打ち消そうとする。だが、それよりもエリザの剣は速かった。
「終わりよ。」
宣言し、カシューを切り裂こうとする。だが、そんな彼女の刃を釘のようなものが弾き飛ばした。
「・・・・誰?」
その攻撃で体勢を崩したエリザは一旦距離を取る。すると、エリザの屋敷を取り囲む森の中からさらに二人現われる。その圧倒的なプレッシャーにエリザは僅かに気おされる。
「この霊圧・・まさか英霊!?」
エリザが彼女にしては珍しく驚いた顔をする。そこにいたのは英霊、霊長の抑止力として存在する過去の英雄。一人目に眼帯をした紫色の髪をした女。そしてもう一人はやたら長い髪をした、一瞬女かと見まがうほど整った顔つきをした男。彼等の気配は使い魔の類だが、その“格”の高さは完全に別格だった。彼女の知識にある限り、そんな存在は英霊しかありえない・・・・が、本来、英霊とは例え夜の一族であっても“人”に呼び出せるような存在ではない。
「エクスカリバーのみならず、英霊までつれてくるなんて、一体どんなイカサマしたのかしら?それに、そっちの英霊も仮にも英雄のあなた達が何故こんな奴等に従うの?普通の契約じゃああなた達を縛れないと思ったけど。」
エリザにしても英霊など見た事がない。流石に動揺しながら、挑発し、情報を引き出そうとする。夜の一族の二人は何も言わなかったが英霊2人は口を開いた。
「あなたに言う必要はありません。」
「私は強者と戦えると聞いてな。それに少々不快な拘束をされていて逆らえんのだよ。」
女はにべもなかったが、男は“拘束”という単語を混ぜた。それで、彼女は思い出す聖杯戦争の事を。英霊は仮に召還できたとしても普通ならまず、使役できない。それを可能にする聖杯戦争のアイテム、令呪。
(聖杯戦争で残ったサーヴァントを何とかして具現させ続けたのかしら?それにしても流石にきついわね・・・・。)
夜の一族の実力者2人に英霊(サーヴァント)2人、いかにエリザといえど、昼間に切り札を使い切ってしまっている今の状態ではかなり厳しかった。実の所短時間での強さでならば彼女の強さは吸血衝動を解放しないアルクェイドに匹敵する。だが、エリザは彼女とは違い不死身では無い。傷つきもすれば疲れもする。敵の数が増えれば当然それだけ不利になる。
(どうする?クラリスに一旦恭也君の回復をやめてもらって援護してもらう?)
エリザは思案する。戦い始めて数分、その間ずっと回復魔術をかけつづけていたのならば、既に命に別状の無い状態に位は回復している筈である。一旦、回復は後回しにして、まずは目の前の敵をクラリスと2人で撃退する。それがベストだと判断し、後方にいる筈のクラリスに呼びかけようとしたときだった。
「魔術回路60%起動、ノエルバスターライフル発射します。」
そんな声がして彼女のすぐ脇を強大な魔力エネルギーが通りすぎた。4人の敵のもとにとんでいく。慌てて回避行動を取る4人。
ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン
そしてその一撃が地面に直撃し轟音が起こった。
「ノエル!!あいつらを思いっきり痛い目に合わせて頂戴!!恭也の仇を討ってあげて(死んでないけど)!!」
忍が叫ぶ。戦闘が始まってすぐエリザを援護する為に、忍は屋敷の中の工房に戻り、ノエルを起動させ、さらにあらかじめエリザが開発していたバスターパーツを装備させたのだ。
「ちょ、ちょっと!!忍いきなり何するのよ!!」
突然後方から強力な一撃が飛んできた事にエリザは忍に文句を叫ぶ。だが、忍は“えっ”と言う顔をして言い返した。
「何よ!!当たってないからいいでしょう?」
「当たらなくたってびっくりするでしょうが!!」
そんな言い争いをしつつもエリザは4人に対する警戒を怠ったりはしない。同時にノエルの参戦に少し安堵した。
(テスト無しだったけどうまく起動してるみたいね。)
2対4なら勝ち目は十分にあるとエリザは考える。より、勝算を高めるのならばクラリスを加えた方が確実だが、その場合恭也と忍が無防備に近くなってしまうのでこのまま自分とノエルだけで戦う事をエリザは選んだ。
「エリザ様、援護を致します。」
「うん、お願い。じゃ、いくわよ。」
エリザの隣に並ぶノエル。それに答えるエリザ。こちらが構えをとる。相手の4人は先ほどの攻撃を完全にはかわしきれなかったのか多少のダメージが見られる。そして、戦いが再開された。
(後書き)
ノエル魔術仕様、戦闘モード、Ver1発動です。Ver1と言う事で2もありますし、1.2とかもあります。1はリアルロボット志向ですが、2は全く違います。後、時期的に聖杯戦争は既に終わった時期ですが、どのEDの後とかそういう事はまだ秘密です。
あ、それから次回かその次で2部前半が終わる予定です。
パワーアップノエル〜〜!!
美姫 「Ver1という事だけれど、他のヴァージョンはどんなのがあるのかしら」
それも楽しみにだが、まずは目の前の敵だね。
夜の一族でも強いだろう二人に、英霊二人。
美姫 「それに対するは、エリザとノエルの二人」
果たして、勝利は誰の手に。そして、聖杯戦争はどう関わってくるのか。
美姫 「一体、どのED後のお話かしらね?」
それらも含め、今後の展開も楽しみだね〜。
美姫 「ええ」
それでは、次回も楽しみにしております。
美姫 「まったね〜」