「クラリス、あなたは恭也君と忍を連れて屋敷の中へ移動しなさい。」
それだけ、指示を出すとエリザが比喩抜きに弾丸に近いスピードで飛び出す。それを迎え撃つのはアイルトンと長い刀を持ったサーヴァント。
ギィィィン
カシューがエリザの刃を受け止め、そこに刀を持ったサーヴァントが踏み込んでくる。
「我が名は佐々木小次郎。多数で、しかもこのような立場での戦いは不本意だが、あなたのような強者との戦い楽しませていただこう。」
サーヴァント、佐々木小次郎は剣を振るいながらその名を名乗る。エリザは2人の剣を切り払う。だが、そこにさらにライダーが飛びこんでくる。
「速い!?」
どちらかと言うと正統派の剣の使い手である二人に対し、女のサーヴァントは杭のようなものを使ってトリッキーな攻撃を仕掛けてくる。そして、強化したエリザには僅かに劣るもののその動きは驚くほど速い。
「エリザ様、援護します!!」
バスターパーツの主砲以外から、魔力のエネルギー砲を放出する。だが、その攻撃はカシューによって防がれる。が、同時にそれによりきりあう互いの間に僅かな距離があいた。
「виаби!!」
剣を抜いたまま呪文を唱え、雷撃を放つエリザ。その一撃が女のサーヴァントに直撃する。
「くっ。」
女のサーヴァントは苦悶の表情を浮かべる。そのタイミングでノエルは次の行動にでた。
《・・・・バスターパーツ、バージ。魔術回路90%稼動、魔力回路バイパス接続・・・・》
このまま後方から小規模な援護をしていても不利、かといって大出力な攻撃ではエリザを巻き込んでしまうと判断したノエルは追加装甲であるバスターパーツを外し、後部に取り付けられたブースターに魔力をまわす。
《接続完了・・・。光の翼、起動!》
ブースターから魔力が勢いよく噴出される。それはまるで翼のようにも見え、ノエルはその噴出力を持って亜音速まで加速し、飛んだ。
ギィィィィン
ノエルのブレードと女サーヴァントの杭がぶつかる。そして女サーヴァントはその勢いに負け吹き飛ばされた。
ずさあああああああああ
女サーヴァントは地面をすべる。一言言ってノエルは追撃を仕掛けた。
「こちらは任せてください。」
「くっ。なめてもらってわ困ります!!」
女サーヴァントは素早くおきあがり迎撃体勢をとる。最高速度ではノエルの方が上、敏捷性、柔軟性では女サーヴァントの方が上。ハイスピードな戦いが繰り広げられる。そしてその間エリザ達の戦いも続く。
ギィィィィンギィィィィン
切り結ぶ音、2人の剣士とエリザの戦い、その形成は五分だった。だが、エリザの方があせりが強い。戦い始めて既に10分以上が経過し、その間強化の魔術を維持し続けてきたエリザは既にかなりの魔力を消耗していた。体力にはまだ余裕があるが、それにしても相手、サーヴァントは魔力の供給があるかぎり無限の体力を持つので不利になる。それにエリザは目の前の二人のみならずカシューにも注意を払わなければならない。
(まずいわね。少し強さを見誤っちゃったみたい。)
エリザは2人のサーヴァントの魔力量を見て取った。それは確かに強大ではあったがエリザよりもかなり劣る。実の所、これは彼らが今、十分な魔力供給が受けられない状態であったためなのだが。それはともかくエリザその魔力量のみを持って強さを判断し、どうにかなる相手だと考えてしまったのだ。だが、サーヴァントの真髄はその魔力や身体能力のみならず、技量にもある。そしてその技量はエリザと同等かそれ以上だった。
(さすがは英雄ってとこか。クラリスを残すべきだったかもね。)
自分の判断を一瞬後悔する。だが、すぐにそれを捨てる。今は後悔や反省よりもこれから何をすべきかを考える方が先立った。
(なんとかこの状況を打破しないとまずい。その為には多少の危険を犯してでもどちらか一人倒すしかない。)
そう判断し、エリザは小次郎の懐へと飛び込もうとした。小次郎の持つ刀は長剣ゆえ懐にもぐりこまれると弱い。そして、それが邪魔となって味方も援護しにくくなる。その判断は正しかった。ただし、相手が彼でなければ。
ビュン
今までにない最高速で振るわれた刃が懐に入ろうとしたエリザを阻んだ。慌てて防御にうつる。そしてエリザの防御は小次郎の刃を一刀防いだ。そう“一刀”は。
ザシュ
腰から肩口にかけて斜めに振るわれた筈の刃は、しかしそこから左右にずれた二箇所を切り裂いた。――――秘剣・燕返し――――恭也の“閃”同様、ただ武術を極めた先にたどり着いた魔法の境地。平行世界からの攻撃を含めた同時3連攻撃。そのうちのエリザが防いだ一撃を除く二撃がエリザを切り裂いていた。
「ぐっ・・・・。」
苦悶の声が漏れ、傷口から血が流れだす。その傷は夜の一族でなければ致命傷であったほど深い。そしてそんな彼女にアイルトンのとどめの一撃が振るわれようとする。それをどこか悲しみのようなものがこもった眼で傍観する小次郎。そして剣が振るわれた。
ビュッ
振るわれた剣。だが、それが止まる。いや、“止められる”。アイルトンの腕には一本のワイヤー、鋼糸が結び付けられていた。
「貴様!!またしても邪魔をするか!!」
カシューが叫ぶ。鋼糸のその先、そこにあったのは一人の男の姿。
「俺の、御神の剣士の前で守るべきものを殺させたりはしない。」
御神の後継。そしておそらくは御神史上最強の男。黒き守護者、高町恭也だった。
(後書き)
皆さまに謝罪をしなければならない事があります。以前アンケートを取った外伝の内容ですが、あの後、細かくプロットを考えた結果ほとんどを没にしてしまいました(汗)いずれ、かけるようになれば書くかもしれませんが、当分はお蔵入りです。次の外伝では本編に出番のない那美、美由希、フィアッセ、あるいは知佳あたりについて書こうかと思っています。戦闘ものにするかそれ以外にするか現在思案中です。それからエリザ、圧縮スペルにしても少し反則すぎると途中で気付きましたが・・・・・・勘弁してください。
恭也、復活〜〜〜?
美姫 「それは次回で明らかに」
サーヴァントは小次郎とライダーの二人だったね。
美姫 「そして、ノエルのパワーアップVer.2で良いのかしら?」
光の翼だね。他に、どんなパワーアップがされているのだろう。
美姫 「それも、追々と分かるでしょう」
と、言う訳で、次回も楽しみ〜。
美姫 「でも、外伝がちょっと残念ね」
まあ、それは仕方がないよ。
でも、代わりに出番のない者たちの外伝があるみたいだしね。
美姫 「それはそれで、楽しみね」
うんうん。本編と合わせて、首を長くして待とう。
美姫 「それじゃあ、柿の種さん、また次回で〜」
ではでは。