「аине!!」
恭也にアイルトン達が気をとられた瞬間、エリザは炎を放ち、素早く立ち上がる。そして回復魔術をかけながら恭也がいる位置まで素早く下がった。取り合えず出血はとまっているようだが、それでも傷痕がはっきり残っていて痛々しい。
「大丈夫ですか?」
恭也が声をかける。エリザは明らかに苦しそうながらそれでも何とか笑顔を作って答える。
「大丈夫・・・・・とはいえないけどね。それはあなたも同じでしょ?」
「・・・・・隠しても無駄でしょうね。でも、少しなら何とかなります。」
以下に回復魔術を施したところで恭也の受けた怪我は10分かそこらで回復するようなものではなかった。表面的な怪我などは癒えているように見えるが薄皮一枚隔てた内部にはかなりの損傷が残っている。
「クラリスは?」
「魔力が尽きてしまったそうで・・・・・気を失ってしまいました。」
「そう。じゃ、私とあなたで何とかするしかないわね。」
それを聞いた時、エリザが何故かニヤリと笑ったように恭也には見えた。だが、それに対しては問わない。共に戦士としての覚悟を感じ、ふたりは無言で構えた。
「全力が出せない状態とはいえ、機械がサーヴァントと互角に戦うとは技術はずいぶん進歩したのですね。」
女サーヴァントがノエルに対しそう語りかける。ノエルは無表情のまま、ただ目だけは真剣に答える。
「私の身体は忍お嬢様とエリザ様に作っていただいたものですから。」
「・・・・主人を大切に思っているのですね。私はあなたを機械如きと侮っていた。それを謝罪します。ですが、主人を思うのは私も同じ。負ける訳にはいきません。」
そう言って女サーヴァントは一瞬だけ微笑むとすぐに厳しい表情になって距離を取る。
「あなたに敬意を表して切り札を使わせていただきます。」
そう言って女サーヴァントの魔力が高まる。同時にノエルもその切り札を起動準備に入った。
―――――――魔術回路95%起動――――――――――――――――――――――――
ノエルが両手を突き出し指を組む。
―――――――スパイラル・グラヴィトン・ナックル起動――――――――――――――
「ベルレー・・・・・・・・」
女サーヴァントが宝具の真名を唱えその力を解放しようとする。何かが召還されようとする気配。
「ファイエル!!」
「フォン!!」
魔術によって重力加圧された組まれたノエルの拳が回転しながら飛んでいく。
宝具によってその能力を一段階引き上げられた幻獣ペガサスが高速で突撃する。
そして、二つがぶつかり合う。拮抗する二つの力。だが、基本的に最初に与えられた推進力で飛ぶノエルの拳と違ってペガサスは力を込め続けることが可能だった。拮抗が崩れる。腕が砕け散り、ノエルのもとにペガサスが突撃する。
――――――――――魔術回路100%起動――――――――――――――――――――
――――――――――ラスト・ジョーカー(最後の切り札)発動―――――――――――
だが、力が拮抗し押し合い状態になっている間にノエルは次の一手を供えていた。
「波動砲、発射します。」
先端の無くなったノエルの腕から残された全魔力が放出される。高速度で直進していたペガサスは回避する事も出来ずその一撃に飲みこまれた。
エリザはアイルトンとカシューを相手取り、そして恭也はサーヴァントと佐々木小次郎と一騎打ちをしていた。
「貴公ほどの剣士と戦えるとはな、名を聞きたい。」
恭也の名を問う小次郎。それに対し、恭也は口と剣の両方で答えた。
「永全不動八門一派、御神真刀流、高町恭也。」
―――――――――――――御神流・奥義の六・薙旋――――――――――――――――
連続の4連撃。しかし、小次郎は長い刀を盾のように用いて相手はその全てを防ぐ。
「恭也か。私も名を名乗っておこう。サーヴァント、アサシン、佐々木小次郎。」
――――――――――――――横一文字切り――――――――――――――――――――
小次郎も技を返す。それは決して珍しい技では無い。しかし、小次郎の刀、物干し竿のリーチ、重量とその剣速をもってすればそれはまさに必殺の一撃。恭也はそれを2本の小太刀を重ねて防ぐ。
「できれば貴公とはお互い完全な状態で戦いたかったな。」
小次郎は魔力供給が足りない。恭也は怪我をしていて動きが僅かに鈍い。だが、それでもなお二人の強さは超越していた。
「そうだな。それにしても、何故お前のような男がこのようなことをする。お前達の目的は何なんだ?」
短い間とはいえ、剣と僅かな言葉をかわし、恭也はおぼろげながらも小次郎の本質を掴んでいた。その本質と今の夜襲という行動がかみ合わない。
「ふっ、この身は今、他者に自由にされていてな。今は唯の傀儡という訳だ。だが、特に口止めもされておらんから、私を使役しているものの目的なら知る限り教えよう。ルーカスなるものが己の封印を解き、そして更なる力を手に入れようとしている。それに関して私の今の主は邪魔となりうるこの館の主を殺そうとしているらしい。」
「そうか。」
答え、恭也は小次郎の刀をはじく。話しながらも二人は切りあい続けていた。
「もはや語ることも無いだろう。長引けばつまらぬ結果になる。決着をつけよう。」
「ああ。」
このまま戦いが長引けば先に倒れるのは間違いなく恭也だろう。重症を負った恭也と違い、魔力が足りないとはいえ、小次郎はまだしばらく動ける。だが、それを理解していながら小次郎はその選択を選ばなかった。彼の言った通り、もはや二人に語る事はない、言葉はいらない。無言で構えを取る。
―――――――――――御神流・斬式奥義の極み・閃―――――――――――――――
―――――――――――――――秘剣・燕返し―――――――――――――――――――
二人の最大の技、共に剣技のみで魔法の領域にまでたどり着いた技が激突した。
(後書き)
次回で戦いの決着がつきます。そして同時に2部前半が終了し、舞台がさざなみにうつり主役は志貴になります。(3部は3人とも、4部が耕介の予定です。)
ところで小次郎って相手のことどんな風に読んでましたっけ?以前のエリザに対する呼び方も含めおかしかったら教えてもらえるとありがたいです。
おおー。小次郎対恭也。
お互いの最高の技を繰り出す!
美姫 「果たして、結果は!?」
おぅおぅおぅ〜。気になるね〜。
美姫 「何なのよ、その変なテンションは」
あはははは〜。まあまあ。
さて、小次郎の呼び方だけど、貴公で良かったかと。
美姫 「うんうん。そんな感じだったと思うわよ」
さて、次回で決着が着くらしいから、大人しく次回を待つとするかの、ばあさんや。
美姫 「誰が婆さんだ!」
ぐげろぼしゃっーー!じょ、冗談もい、命がけですか……。