恭也の“閃”と小次郎の“燕返し”が激突する。そして恭也の技生み出された刃を切り裂き、小次郎の刀を砕いた。

 

パリ−ン

 

軽い破砕音が鳴り響く。だが、同時に小次郎の生み出した3つの刃のうち、残りの2つが恭也を切り裂いた。

 

「ぐっ・・・・。」

 

血が流れ、元々重症を負っていた恭也はふらふらとよろめく。2つの刃が恭也に届くよりも早く恭也の一撃は小次郎の刀を砕き、彼が喰らったのはいわば力の残滓とでもいうべきにすぎないものだったので傷はそれほど深くは無かった。深くは無かったが・・・もう、彼に戦う力が残されていないのも事実だった。

 

「高町・・・恭也と言ったな・・・・。」

 

小次郎が恭也を、見据えながらそう静かに語りかける。恭也は力を振り絞り腕をあげ、刀を構え直した。だが、小次郎の方に仕掛けてくる気配がまるで感じられないのに気づく。

 

「貴公のような相手と戦えた事、誇りに、そして嬉しく思う・・・・。」

 

その時、恭也は気づく。小次郎の姿がうっすらと透明になり消えかけていた事を。。

 

「私はもともと土地に括り付けられる形でこの世に現界していたのだが、その寄り代を無理やりこの刀に移し変えられていたのだ。刀が砕かれた以上、私はもう直ぐ消える。」

 

小次郎はそう言って右手にある砕けた刀を一瞥すると、恭也の方に向き直り。笑みを浮かべた。その笑みは嬉しそうでもあり、また寂しそうでもあった。

 

「この試合は引き分けであろうな。貴公は私に切られ、瀕死の状態になり、私は現界する力を失った。決着をつける機会が与えられぬのが唯一の心残り・・・・いや、唯一度でもお主と戦えたのだ。それだけでも私にとっては過ぎた幸運・・・・。」

 

そう言って小次郎は遠い眼をする。彼の姿は既にそのほとんどが消えかけていた。

 

「最後に一つ頼みがある。この件の黒幕はおそらくは貴公も知るルーカスという男だ。そして、もう一体のサーヴァント、あの紫の髪の女、ライダーはそのマスターを人質に取られている。そして、そのマスターの為に衛宮士郎、遠坂凛というその者の知り合いと彼らに従うセイバーのサーヴァントもまた、従わねばならない状態になっている。これらは皆、そのような状態に置いて置くには惜しいもの、そして私を高揚させてくれた好敵手達だ。よければ彼らを助けてやって欲しい。」

 

そう、恭也に頼み込む。それに対し、恭也の答えは無論決まっていた。

 

「ああ・・・、わかった。必ず助ける。」

 

「感謝する・・・・・・。」

 

しっかりとその目を見据えて言ったその答えに小次郎は満足そうな表情を浮かべ、消えた。

 

 

 

 

 

「今ので倒しきれませんか・・・・。まずいですね。」

 

ノエルの前で、その渾身の一撃を喰らった筈のライダーは今だ立っていた。

 

「ペガサスがかばってくれましたから。それに対してあなたにはもう余力が残っていないようですね。」

 

ライダーのその言葉どおり、波動砲によって残りのエネルギーの殆どを放出してしまったノエルは既に停止寸前だった。しかも、両腕がない状態である。だが、そんな状態でも彼女は決して引こうとしなかった。

 

「私はお嬢様達を守ります。」

 

「・・・・・あなたは本当に敬意に値する人ですね。いいでしょう、私も全力を持ってあなたに止めを刺します。」

 

そう言って、ライダーは杭を握り締めた。

 

 

 

 

「諦めたのか?」

 

アイルトンの言葉。彼とカシューを相手どっているエリザは既に満身創痍な状態だった。だが、それに対し二人にはまだ余力があった。

 

「流石の“魔術師殺し”も年貢の納め時のようだな。」

 

面白そうに笑うカシュー。だが、それに対し、エリザは“笑顔”を返した。

 

「そうかしら?」

 

ザシュ

 

エリザの態度に訝しげな態度を見せたカシューはその表情のまま絶命した。その腹にはエリザの持つものに似た形の刃が生えている。

 

「エリザ様、お怪我の方は大丈夫ですか?」

 

カシューの後方から聞こえてくる声、それはクラリスのものだった。彼女の手にはカシューを貫いている刃が握られている。

 

「ええ、大丈夫よ。」

 

クラリスの言葉に笑顔で返すエリザ。そして流石に驚いた顔をしているアイルトンに目をやる。

 

「恭也の回復具合、あの重症から短時間であそこまで回復させるには相当の魔力が必要。そして彼女は主人である私のピンチにもでてこない。そのことからクラリスは魔力を使い果たしたと思ったんだろうけど、甘かったわね。確かに魔力はほとんど使い果たしちゃっただろうけど、彼女は魔術だけでなく剣術でも私の弟子なのよ。しかも、暗殺やだましを中心とした裏技中心のね。彼女が今まで出てこなかったのは単に絶好の攻撃機会を狙っていただけ。」

 

そう言って、してやったりと言った表情を見せるエリザ。二人にはさまれる形になったアイルトン。そして、彼は叫んだ。

 

「ライダー!!ひくぞ!!!」

 

その声に答え、ノエルに攻撃をしかけようとしていたライダーが方向を転換し飛び込んでくる。そして、カシューを抱きかかえるとそのまま飛び去った。

 

「追いますか?」

 

「いえ、こっちもダメージが大きいわ。ここは深追いしない方がいい。それよりも恭也やノエルの方を見に行きましょう。」

 

そう言って、エリザは追撃を諦めた。そして、その夜はそれ以上は何事もなく、次の日の朝を迎えた。

 

 


(後書き)

久々の更新です。どうも、遅くなってすいません。次からは舞台がさざなみに戻って志貴、耕介中心になっていくと思います。しかし、レギュラー増やしすぎた・・・・。他、月姫キャラ誰出そう・・・・・。




おおー、ライダーのマスターが人質に。
美姫 「それで、彼女は仕方がなく従っているのね」
果たして、今後どんな事になるのか。
美姫 「次回はさざなみに戻るらしいけれど、そちらではどんな話が……」
う〜〜ん、次回も楽しみぃ。
美姫 「それでは、また次回も楽しみにしてますね」
ではでは。



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