第四話「契約成立」
〜私立星條高校〜
「皆居るな!? 今、本校の理事が連続殺人事件を受けて対応を話し合っている。理事会の結論が出るまでは授業を行う」
教師が生徒に言う。
「よおし。教科書を開け!!」
そう言って、授業が始まる。
「此の公式を、そうだなぁ……」
教師が指名しようとした時。
ピンポンパンポーン。
『授業中に失礼します。全校生徒にお知らせがあります』
「お前ら、静かに聴け!!」
『協議を続けていました理事会から連絡がありました。当面の間、休校にするとになりました。之は、生徒の安全を確保する為の措置です』
理事会の決定が伝えられる。
『尚、再開時期は友枝テレビでお伝えします。以上、理事会の協議結果をお伝えしました』
「残念ながら授業は、終わりだ!! 此れから課題を用意するから少し大人しくしとけ」
そう言って数学の教師は課題の準備の為、職員室に戻っていった。
教師が去ると、生徒達はガヤガヤと騒ぎ出した。
「此れから如何する?」
「俺の家でゲームで遊ぼうぜ」
皆が皆、遊ぶ事の相談をしている。
「何か、隣の三咲町でも起きているらしいぜ!!」
「吸血鬼殺人だろ」
「知ってる。知ってる。体中の血が抜かれてるんだろ」
「本当に吸血鬼なんか居るんか!?」
「お前の親父、警察の偉い人なんだろ。詳しい情報を知らんか」
「親父、何も教えてくれないんだから」
簡単に捜査情報を話す親が居るはずがない。
「ようし。席にもどれ!! 此れから休校の間の課題を配る。前から回せ」
担任が最前列の席に課題を配る。
前の席から後ろの席へ課題が回される。
「良いか? 今配った課題は、一週間分ある。各自、大人しく家でやる様に」
〜大道寺邸〜
「早い帰りだな」
「学校が無期限休校になりましたから」
「其れでか……」
「さくら様は?」
「さくらちゃんでしたら家に戻りましたわ」
「そうか」
〜三咲高校〜
『昨夜の警官殺害事件を受けて友枝町教育委員会は、町内の全ての小中学校を無期限の休校とすることを決定しました』
「小中学校は、休みか……」
羨ましがる有彦。
『友枝警察では、対応できないと判断し周辺警察への応援要請をしたとの事です』
テレビからは警官殺害事件のニュースが繰り返し流れる。
「シエル先輩は、今日もカレーですか?」
「遠野くん。今カレーをバカにしましたね? カレーの神に謝りなさい!!」
「毎日、カレーばかりで飽きないんですか?」
「飽きるわけないじゃないです」
そして放課後……。
志貴は、家路に向かっていた。
「やっと見つけた!! 探すの大変だったんだから」
アルクェイドが志貴に声をかける。
「先日は、お世話になったわね。もう忘れちゃったの?」
アルクェイドが志貴へ歩を進める。
「先日、私を…ナイフで、これでもかってくらいにバラバラにしてくれたじゃない?」
「う…うああああああああああああああ」
志貴は、カバンを落として走っていく。
「此処まで来れば……」
「此処まれ来れば?」
「わああ」
「カバン落として行ったわよ」
志貴のカバンを持ったアルクェイドが追いかけてきた。
「もう、余計な手間を取らせないでよね」
「どうやら言葉は通じるらしいな……。なら……ついて来い!!」
志貴は、何処かへ歩いていく。
「それ以上、何処へ行くつもりかしら?」
「人に会いそうにないところまでだ。如何やら俺は、気が狂っているらしいからな」
気が狂っていると言う志貴。
「誰も居ないはずなのに一人でぶつぶつ言っていたら気持ち悪いだろ?」
志貴は、周囲の視線を気にしている。
アルクェイドに問う志貴。
「幻覚が俺に何の用だ?」
「酷い言いようね。人を殺しておいて、其の言い方はないんじゃない?」
「……ち、違う」
「違わないわよ。貴方は私をイキナリ17個の肉片に変えてくれたのよ。忘れていなかったから、逃げたんでしょ?」
「ち……がう……俺は……」
「凄く痛かったんだから。生き返るのだって、一日以上かかったんだから!」
生き返るのに一日以上かかったというアルクェイド。
「あんまり痛いから気がぶれそうになるんだけど、やっぱり、あまりに痛くて正気に戻るの。そんなのを一日以上繰り返した、私の気持ちわかる?」
「わかるよ……だいたい死んだ人間は、生き返るわけないだろ?」
「うん。だってわたし人間じゃないもの。あたりまえでしょ体中バラバラにされて一人で再生できる人間がいると思う?」
「ふ、ふざけるな!! 人間じゃなかったら何なんだよ」
「そうね。一般的には、『吸血鬼』 って呼ばれてるけど」
「吸血……鬼?」
「そう吸血鬼。貴方達風にいうなら、人間の血を吸って生きる怪物ってところかな」
「うそだ! 吸血鬼なんているわて……」
其処へカラスがやって来た。
飛んできたカラスは建物の屋上にとまった。
「じゃあ、貴方に殺されたはずの此の私を如何説明するの?」
カラスは、二人の様子を見ている。
「それよりも貴方よ。私を殺した手際のよさ、貴方こそ何者なの?」
「何者って……俺は、唯の学生だ」
唯の学生だという志貴。
「ふ―――…ん……」
考え込むアルクェイド。
「うん。決めた!! わたしに強力してもらうわ」
「強力?」
「吸血鬼退治よ」
吸血鬼退治と言うアルクェイド。
「最近、此の町や隣町で起こっている殺人事件。知っているよね」
「警官が殺されたって……」
「其れは、違うわ。私が探している奴と手口は似ているけど」
アルクェイドは、一旦話をきる。
「おかしな話よね。自分達で『吸血鬼の仕業か』って言ってるくせに、誰も吸血鬼退治をしないんだものだから―――」
「……で、俺は何を強力させられるんだ?」
「貴方には、わたしの盾になってもらう。貴方のおかげで、わたしはとっても弱っているの。後数日休まないと元の状態には戻らないわ」
腕組みをして言うアルクェイド。
「其の前に『奴』に襲われたら危ないじゃない?」
「盾?」
「くあう」
「ん?」
志貴は、泣き声のした方を見た。
「カラスか……」
カラスを見つめるアルクェイド。
「まいったなあ。もう見つかっちゃうなんて」
「見つかったって、何が……」
すると路地の出口から獰猛な獣が現れた。
「な……犬?」
獣は、志貴とアルクェイドへ襲い掛かった。
「来るわよ」
「え?」
遅い来る獣をよける為、志貴を突き飛ばすアルクェイド。
「うわっ」
突き飛ばされた志貴は箱に激突する。
「痛……何をするんだ!?」
「いいから前!!」
既に戦闘体制に入っているアルクェイド。
「うそ……だろ?」
再び襲い掛かる獣。
獣は、志貴に狙いを定めたようだ。
そんな獣をアルクェイドは、爪で引き裂いた。
「な……何だ今のは……」
「敵の使い魔よ」
「使い魔?」
「もう……まずい事になったわね」
まずい事になったと言うアルクェイド。
「見つかっちゃった以上、貴方には本当に盾になってもらわないといけないみたいね」
「何?」
「まずは何処か安全な場所に隠れて回復を図らないと―――」
「ちょっと待ってくれ!! 今の見ていたらろ。俺に何が出来るというんだ? お前一人の方がよっぽどマシじゃないか!!」
「そうでもないわ。今ので力を全部、使い果たしちゃったみたいだから。凄腕の殺人鬼なんでしょ? 早く行きましょ」
「違う……。俺は、普通の人間だ!」
普通の人間だという志貴。
「じゃあわたしが休んでいる間、見張ってくれるだけでいいわ」
「そ……そんな……」
「ああ、もう!!」
優柔不断な志貴にキレるアルクェイド。
「勘違いしないで。貴方に拒否権はないの。協力するか、ここで死ぬか」
志貴に拒否権を与えるつもりはないようだ。
「う……」
アルクェイドの脅しに覚悟を決める志貴。
「じゃ、契約成立だね」
にぱっと笑顔になるアルクェイド。
「私の名前は、アルクェイド・ブリュンスタッド。長いからアルクェイドでいいわ。一応、真祖って区分される吸血鬼よ」
「……遠野志貴。生憎と唯の学生だ」
「それじゃ、宜しくね志貴」
アルクェイドの差出した手をとる志貴。
「私を殺した責任、ちゃんと取ってもらうんだから」
ケロちゃんにおまかせ
「こにゃにゃちわ〜今回は、ちゃんとお送りするで」
ちゃんとお送りするというケルベロス。
「第4話目にして月姫の主役二人登場したで。真祖の姫君と貧血持ちのメガネをかけた兄ちゃんや。原作ゲームをプレイした者は、知っとるやろ」
ジュースを少し飲む。
「知らん者の為にワイが説明したる。先ずは、アルクェイド・ブリュンスタッドや。まさか、イキナリ殺されとるとは驚きや。しかも十七分割や。殺ったんは、メガネをかけた小僧や。其のメガネは、魔眼殺しや。小僧の名は、東野志貴と言ってアルクェイドを殺した張本人や!! 普通の人間遣ったら完全に豚箱へのフリーパスなんやで。まあ、殺したんが真祖やったから豚箱に行かんですんだんや。運のいい小僧や」
再びジュースを口に含む。
「聞いて驚くんやないで。あの兄ちゃんの目は、直死の魔眼や。直死の魔眼なら真祖を殺せても不思議はあらへんねん」
ケルベロスが、マイクを前に熱く語る。
「今回は、何とか話せたで。次回も楽しみにしててな」